自分は合同式や不定方程式について高校数学程度しか知識がありませんでした。
ゆえに数字根の拡張という、調べたなかで見つからなかったことをしたと勝手に喜んでいましたが、数字根としてそれをやる人がいなかっただけでした。ショックです。
以降の文は常体になります。
ここでは数字根の$0$と最大となる数($10$進法でいう$9$)は同一視し、$0$として扱う。
$10$進法における$n$の数字根$\mathrm{dr}(n)$は、$\mathrm{dr}(n)\equiv n\enspace (\bmod 9\ )\enspace (0\le\mathrm{dr}(n)\lt9)$
モジュラ逆数のように、これを形式的に変形すると
$n^{-1}\mathrm{dr}(n)\equiv 1\enspace (\bmod 9\ )$
これに対応する不定方程式は
$n^{-1}r+9s=1$
$\therefore\ r+9ns=n$
であろう。
ただし$s$は重要ではないため、$r-9ns=n$としておく。
この不定方程式の整数解について、$r$の数字根をとったものが拡張された数字根といえる。
$1$と$-9n$は互いに素であり、明らかに$r=n,\ s=0$を整数解にもつから、整数解は$r=9nk+n,\ s=k\enspace (k\in\mathbb{Z})$である。
$n$が非負整数なら、数字和を$1$桁になるまでとり続ける数字根と同じであり、負整数でも$9mn+n\enspace (m\in\mathbb{Z},\ 9mn+n\gt0)$の数字根をとればよいことがわかる。
$n=\dfrac{a}{b}\enspace (\ a,\ b$は互いに素な整数$)$とする。
方程式を変形して$br-9as=a$
$b$と$-a$は互いに素であるから、$b$と$-9a$が互いに素でないのは$b$が$3$の倍数である場合のみである。このとき$a$は$3$の倍数でない。
$(1)\ b$が$3$の倍数でない場合
方程式の整数解の$1$つを$r=\alpha,\ s=\beta$とすると
整数解は$r=9ak+\alpha,\ s=bk+\beta\enspace (k\in\mathbb{Z})$である。
$(2)\ b$が$3$の倍数である場合
方程式が整数解をもたないから、数字根は存在しない。
$r$と$s$が整数ならば$n^{-1}r$は無理数,$9s$は整数となってしまうので$n^{-1}r+9s=1$の整数解は存在しない。
したがって、数字根も存在しない。
これで、拡張された数字根が複数存在する場合がないことがわかったが、あくまで形式的に合同方程式を不定方程式に変形して定義したのみである。
次に示す性質が成り立つことの証明ができなかった。おそらく、次の性質が成り立つように数字根を拡張することはできてもそれが上の拡張された数字根と同じであることを示すのは自分には厳しい。
$\mathrm{dr}(64)=1$
$\mathrm{dr}(32)=5$
$\mathrm{dr}(16)=7$
$\mathrm{dr}(8)=8$
$\mathrm{dr}(4)=4$
$\mathrm{dr}(2)=2$
$\mathrm{dr}(1)=1$
$2r-9s=1$の整数解の$1$つに$r=5,\ s=1$があるから
$\mathrm{dr}\left(\dfrac{1}{2}\right)=5$
$4r-9s=1$の整数解の$1$つに$r=7,\ s=3$があるから
$\mathrm{dr}\left(\dfrac{1}{4}\right)=7$
$8r-9s=1$の整数解の$1$つに$r=8,\ s=7$があるから
$\mathrm{dr}\left(\dfrac{1}{8}\right)=8$
$\vdots$
$\mathrm{dr}(343)=1$
$\mathrm{dr}(49)=4$
$\mathrm{dr}(7)=7$
$\mathrm{dr}(1)=1$
$7r-9s=1$の整数解の$1$つに$r=4,\ s=3$があるから
$\mathrm{dr}\left(\dfrac{1}{7}\right)=4$
$49r-9s=1$の整数解の$1$つに$r=-2,\ s=-11$があるから
$\mathrm{dr}\left(\dfrac{1}{49}\right)=7$
$343r-9s=1$の整数解の$1$つに$r=1,\ s=38$があるから
$\mathrm{dr}\left(\dfrac{1}{343}\right)=1$
$\vdots$
というふうに、$3$の倍数でない整数の累乗でループを作ることができる。
$10$進法の場合、整数の逆数の数字根を求めたければ、その整数の$5$乗の数字根を求めれば確実である。それが$0$でなければ存在し、同じである。
$\mathrm{dr}(4^5)=\mathrm{dr}(1024)=7$
$\mathrm{dr}\left(\dfrac{1}{4}\right)=7$
$\mathrm{dr}(5^5)=\mathrm{dr}(7\cdot5^3)=\mathrm{dr}(8\cdot5^2)=\mathrm{dr}(4\cdot5)=2$
$\mathrm{dr}\left(\dfrac{1}{5}\right)=2$
$\mathrm{dr}(20^5)=\mathrm{dr}(7\cdot2)=5$
$\mathrm{dr}\left(\dfrac{1}{20}\right)=5$
$\mathrm{dr}\left[\mathrm{dr}\left(\dfrac{1}{4}\right)-\mathrm{dr}\left(\dfrac{1}{5}\right)\right]=\mathrm{dr}(7-2)=5$
$4r-27s=3$の整数解の$1$つに$r=-6,\ s=-1$があるから
$\mathrm{dr}\left(\dfrac{3}{4}\right)=3$
$\mathrm{dr}\left[3\mathrm{dr}\left(\dfrac{1}{4}\right)\right]=\mathrm{dr}(3\cdot7)=3$
このように九去法ができる。