$V,W$を線型空間とし, $f\colon V\rightarrow W$を線型写像とする.
$f$が単射であるとは, 任意の$x,y\in V$に対して, $V$において$x\ne y$ならば$W$において$f(x)\ne f(y)$となるときをいう.
$f$が単射であることは, $\ker f=\{0\}$となることに同値である.
(1)単射$\Rightarrow\ker f=\{0\}$の証明
$f$は線型写像であるから$f(0)=0$である. 任意の$x\in\ker f$は$f(x)=0$となるが, $x\ne0$ならば単射性に矛盾する. 従って, $x=0$である. よって$\ker f=\{0\}$となる.
(2)$\ker f=\{0\}\Rightarrow$単射の証明
$x,y\in V$に対して, もし$f(x)=f(y)$ならば, $0=f(x)-f(y)=f(x-y)$であり, 仮定より$\ker f=\{0\}$であるから, $x-y=0$である. よって$x=y$であるから単射性の定義の対偶が示された.
この命題は群論では既知だが, 線型代数レベルでも用いられることがあるようなので, 投稿した.
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