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解説自己紹介・試用
文献あり

試験投稿 線型代数の地味な補題 (9月1日 13:39 加筆)

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$V,W$を線型空間とし, $f\colon V\rightarrow W$を線型写像とする.

単射

$f$が単射であるとは, 任意の$x,y\in V$に対して, $V$において$x\ne y$ならば$W$において$f(x)\ne f(y)$となるときをいう.

単射性の特徴づけ

$f$が単射であることは, $\ker f=\{0\}$となることに同値である.

(1)単射$\Rightarrow\ker f=\{0\}$の証明
$f$は線型写像であるから$f(0)=0$である. 任意の$x\in\ker f$$f(x)=0$となるが, $x\ne0$ならば単射性に矛盾する. 従って, $x=0$である. よって$\ker f=\{0\}$となる.

(2)$\ker f=\{0\}\Rightarrow$単射の証明
$x,y\in V$に対して, もし$f(x)=f(y)$ならば, $0=f(x)-f(y)=f(x-y)$であり, 仮定より$\ker f=\{0\}$であるから, $x-y=0$である. よって$x=y$であるから単射性の定義の対偶が示された.

この命題は群論では既知だが, 線型代数レベルでも用いられることがあるようなので, 投稿した.

(この記事はTwitterのフォロワーの協力を得て公開した. )

参考文献

[1]
堀田良之, 代数入門 ー群と加群ー (新装版), 数学シリーズ
投稿日:2021423
更新日:20221110

投稿者

研究の記事の他に, 発見シリーズ, 行間シリーズ, 超入門シリーズも書いています. 北田均『数理解析学概論』新訂版序文の「ほぼ独学と思われる熱心な読者」, 結城浩『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』あとがきの「類太郎」. 指摘を受けたり自分で誤りに気付いて, 後から訂正することも多々あります. 寛容な目で温かい目で見て頂きたいです. 何かあればご連絡を下さい. 悪意のあるきつい言い方をされることも多々ありますが, それさえしなければ指摘については真摯に対応したいです. 普通のご指摘でも私は人間なので必ずしもすぐには対応できないことはご理解ください. 数式, 特に偏微分方程式が好き. 多変数複素解析のヘルマンダーの方法:複素多様体における外微分 d を d=∂′+∂′′ とするとき‚ 既知微分形式 f と未知微分形式 u について ∂′′u=f (ディーバー方程式)の可解性で諸問題を考える方法, 複素多様体における微分幾何として複素モンジュ-アンペール方程式の解の存在, 代数解析の偏微分方程式への応用でも何かを遺したいです.

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研究の記事の他に, 発見シリーズ, 行間シリーズ, 超入門シリーズも書いています. 北田均『数理解析学概論』新訂版序文の「ほぼ独学と思われる熱心な読者」, 結城浩『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』あとがきの「類太郎」. 指摘を受けたり自分で誤りに気付いて, 後から訂正することも多々あります. 寛容な目で温かい目で見て頂きたいです. 何かあればご連絡を下さい. 悪意のあるきつい言い方をされることも多々ありますが, それさえしなければ指摘については真摯に対応したいです. 普通のご指摘でも私は人間なので必ずしもすぐには対応できないことはご理解ください. 数式, 特に偏微分方程式が好き. 多変数複素解析のヘルマンダーの方法:複素多様体における外微分 d を d=∂′+∂′′ とするとき‚ 既知微分形式 f と未知微分形式 u について ∂′′u=f (ディーバー方程式)の可解性で諸問題を考える方法, 複素多様体における微分幾何として複素モンジュ-アンペール方程式の解の存在, 代数解析の偏微分方程式への応用でも何かを遺したいです.