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整数集合の表現

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こんにちは。M{R}です. 今回の記事では,整数についてのある興味深い性質について扱おうと思います. 具体値を用いたものは大学入試問題でも出題されていますが,一般的な場合についてみていくことにしましょう.

$a$,$b$は互いに素な自然数とし,$an+bm$($n,m\in\mathbb{Z}$)の形で表される数全体の集合を$\mathrm{M}$とする. このとき,$\mathrm{M}$は整数全体の集合を表す.

この事実を証明して行く上で,いくつかの補題を示すこととします.

$\mathrm{M}$の正の最小元が$d$のとき,$\mathrm{M}$$d$の倍数全体の集合に一致.

以下では,$d$の倍数全体の集合を$\mathrm{K}$と置く.
題意を示すには,


任意の$d$の倍数は$\mathrm{M}$の要素であること

とそれに加えて,

$\mathrm{M}$の任意の要素は$d$の倍数であること

を示せば良い.

まず,前者について示す. $d$$\mathrm{M}$の要素なので,


$d=an_{1}+bm_{1}$

と表せる. したがって,

$dk=kan_{1}+kbm_{1}=a(kn_{1})+b(km_{1})$

なので,$n_{2}=kn_{1},m_{2}=km_{1}$とおけば,$n_{2},m_{2}\in\mathbb{Z}$なので,任意の$d$の倍数である整数は$\mathrm{M}$の要素であることが示された.

次に,後者については背理法で示す. つまり,$d$の倍数でない$\mathrm{M}$の要素$x$が存在すると仮定する. このとき,整数$y,r$を用いて


$x=dy+r$ $(1 \leq r \leq d-1)$

と書くことが出来て,さらに$x$$\mathrm{M}$の要素であることより,

$x=an_{3}+bm_{3}$

と表され,一方,$dy$$d$の倍数であることより,上の議論から,

$dy=an_{4}+bm_{4}$

と表せる. したがって,

$r=a(n_{3}-n_{4})+b(m_{3}-m_{4})$

と表せて,$n_{3}-n_{4},m_{3}-m_{4}\in\mathbb{Z}$より,$r$$\mathrm{M}$の要素となるが,$1 \leq r \leq d-1$より,これは,$d$$\mathrm{M}$の正の最小元であることに反する. したがって,仮定は誤りで,$\mathrm{M}$の任意の要素は$d$の倍数である.

以上,前者と後者の議論より,補題1が示された. (証明終)

では,次に補題2を示しましょう. 補題2に関しては,比較的有名な事実でしょう.

$a,b$が互いに素なら,$\mathrm{M}$の正の最小元$d=1$

まず,$a$,$b$はそれぞれ以下のように表せる.

$a=a\cdot1+b\cdot0$$b=a\cdot0+b\cdot1$

したがって,$a,b$$\mathrm{M}$の要素であり,ここで,補題1で示した内容について,$\mathrm{M}$の任意の要素は$d$の倍数であるので,これらを合わせて考えると$a,b$$d$で割り切れる. つまり,$d$$a,b$の公約数となるが,$a,b$が互いに素であることより,$d=1$であることが分かる. (証明終)

最後に,次の補題3を示します.

$a,b$の最大公約数$g$$d$に一致する

補題1の内容より,補題3を示すことは,$\mathrm{M}$$g$の倍数全体の集合であることを示すことと同義である.

まず,$a,b$の最大公約数が$g$であることより,互いに素な自然数$a',b'$を用いて,$a=a'g,b=b'g$と表せる. したがって,


$an+bm=(a'g)n+(b'g)m=(a'n+b'm)g$ $\cdots$(A)

と表せる. 今,$a',b'$が互いに素な自然数であるとき,補題2と補題3より,$a'n+b'm$$d=1$の倍数全体の集合となるので,つまり,これは整数全体の集合を表す. (A)より,このとき,$\mathrm{M}$$g$の倍数全体の集合であることが示された. したがって,$g=d$であることが示された. (証明終)

以上より,$an+bm$($a,b\in\mathbb{N},n,m\in\mathbb{Z}$)の形の数全体の集合は,


$g(=gcd(a,b))$の倍数全体の集合


を表し(補題1),$a,b$が互いに素な自然数のとき,$an+bm$($n,m\in\mathbb{Z}$)の形の数全体の集合は
整数全体の集合

と一致することが分かります. 実際の入試問題ではこのような問題がありました.

大阪大学(2000年第3問)

どのような負でない2つの整数$m$$n$をもちいても
  $x=3m+5n$
とは表すことができない正の整数$x$をすべて求めよ。

ちなみにこれを解くだけなら,ここまで大袈裟なことはしなくても良くて,$n=0,1,2$の時を見ればもう結果は明らかです。この問題の詳しい解答は世の中にありふれていますので,読者さん自身が良さそうなものを参考にしてもらえばと思います. それでは今回はここで. 最後まで読んで頂きありがとうございました. ぷぇっ~(⊂ ๑•﹏•๑`∩)

投稿日:2021517

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