私は 『ナビエ-ストークス方程式の解の存在と滑らかさの直観的議論および一意性』 において, ナビエ-ストークス方程式の台がコンパクトで滑らかな外力$f$に対する初期値ゼロの解が以下の「解の公式のような」式で近似できることを述べた. 以下, 記号は上の記事に従う.
$$\varPhi[u_n]^i(t, x)=\int_{\mathbb{R} \times \mathbb{R}^3} E^i(s, y) \, ( \, f^i(t-s, x-y) - (u_n \cdot \nabla)u_n^i(t-s, x-y))dsdy$$
ここで$\{u_n \} \subset V_{0}^{m, 2}$は$u_n(t, x)=(u_n^1(t, x), u_n^2(t, x), u_n^3(t, x))$であり$t \lt 0 ⇒ u_n^i(t, x)=0, $かつ$$\lim_{\nu, n \to \infty}\|u_{\nu} - u_n \|_{H^m}=0$$である物から適当に取った物である. また$$E^{i}(t, x)=\frac{H(t)}{\sqrt{4 \pi t}^3} e^{-\frac{|x|^2}{4t}}$$であり, $H(t)$はヘビサイド関数, すなわち
$H(t)=\begin{cases}
1 & (t \gt 0) \\
0 & (t \le 0)
\end{cases}. \,$
ナビエ-ストークス方程式の解の近似について本やインターネットで調べたが, そもそも解の存在と滑らかさがわかっていない方程式の解を近似するのはまだ無理なのかもしれない. しかし$\{u_n\}$を適当に取れば初期値ゼロの解は近似できるのではなかろうか.
ここで, $\{u_n\}$と$\{\varPhi[u_n]\}$が同じ極限に収束しなければならないが, これは今まで考えてきた$\varPhi$の不動点の存在と, ほぼ同値であろう.
私は流体力学や数値計算を少ししか知らず, また詳しく知ってもこの問題が解決できるかはわからないが, 解の存在はまだ厳密には言えなくても, 解の近似はできるのではないかと考えている. $H^m$の元とは物理学的には$m$階までの弱導関数の運動エネルギーが有限な関数の空間だから, 設定としても不自然ではないだろう.