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解説大学数学以上
文献あり

至る所複素微分不可能な連続関数 (12月24日 12:27 最終推敲)

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最近, 数学を初歩からやりなおしながらたまにナビエ-ストークス方程式の研究をしている. 研究については少しだけ進捗があったがまだ記事にするほどではない. ただ, Mathlogの全ての記事で関数のノルムを絶対値記号4本で書いていたのをTeXの標準的な物にした. またいくつかの記事で議論を修正または変更した. よかったらまたご覧いただきたい.

さて, 定義域の内部$D$で(複素)微分可能な関数は$D$で連続である.
$$f(z+h)-f(z)=\frac{f(z+h)-f(z)}{h}\cdot h \to f'(z)\cdot 0=0 \,(h \to 0, z\in D).$$
その逆は, 一般には成り立たない.

高木関数

数直線$\mathbb{R}$の開区間$(0, 1)$の各点で連続かつ各点で微分不可能な実数値関数$T$が存在する.

高木『定本 解析概論』の黒田成俊氏による補遺, または猪狩『実解析入門』93ページ-97ページを参照されたい.

ワイエルシュトラス関数

数直線$\mathbb{R}$の各点で連続かつ各点で微分不可能な実数値関数$W$が存在する.

松坂『解析入門 上』312ページ-314ページを参照されたい.

複素平面の或る領域とその各点で連続かつ複素微分不可能な複素数値関数が存在する.

複素平面$\mathbb{C}$の正方形$(0, 1)^2$の各点$(x, y)=x+iy$に対して関数$f$
$f(x+iy)=T(x)+iT(y)$
で定める. $f$は連続関数の線型結合だから連続だが, $f$の実部と虚部は$(0, 1)^2$のいかなる点でも全微分不可能である. 一般に, 複素平面の領域$D$上の複素関数$g:D \to \mathbb{C}$が点$a+bi \in D$で複素微分可能であるためには$g$の実部と虚部が点$(a, b)$で全微分可能かつコーシー-リーマン方程式を満たすことが必要十分であるから, $f$は複素関数として$(0, 1)^2$全体で複素微分不可能である.

同様に$\mathbb{C}$の各点$x+iy$に対して関数$F$
$F(x+iy)=W(x)+iW(y)$
で定めると$F$$\mathbb{C}$で連続かつ複素微分不可能である.

$x$$y$を入れ替えたり, 高木関数とワイエルシュトラス関数を混ぜたり($T(x)+iW(y)\,(x+iy \in (0, 1)\times \mathbb{R})$など), 適当な線型結合にすることで似たような例を非可算無限個つくれる.

一般に$\bar{z}$を含む関数は至る所複素微分不可能だが, 高木関数やワイエルシュトラス関数を使った例を挙げてみた.

実部と虚部は全微分可能なら偏微分可能かつ連続だが, 上の例では実部と虚部が全微分不可能だが連続な例である.

参考文献

投稿日:20221222
更新日:20221228

投稿者

収入が少ないので, Mathlogのお金を支払う機能で支援してくだされば幸いです. 研究の記事の他に, 発見シリーズ, 行間シリーズ, 超入門シリーズも書いています. 北田均『数理解析学概論』新訂版序文の「ほぼ独学と思われる熱心な読者」, 結城浩『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』あとがきの「類太郎」. 指摘を受けたり自分で誤りに気付いて, 後から訂正することも多々ある. 寛容な目で温かい目で見て頂きたい. 何かあればご連絡を頂きたい. 悪意のあるきつい言い方をされたことも多々あったが, それさえしなければ指摘には真摯に対応したい. 数式, 特に偏微分方程式が好き. 多変数複素解析のヘルマンダーの方法:複素多様体における外微分 d を d=∂′+∂′′ とするとき‚ 既知微分形式 f と未知微分形式 u について ∂′′u=f (ディーバー方程式)の可解性で諸問題を考える方法, 複素多様体における微分幾何として複素モンジュ-アンペール方程式の解の存在, 代数解析の偏微分方程式への応用でも何かを遺したい.

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