最近, 数学を初歩からやりなおしながらたまにナビエ-ストークス方程式の研究をしている. 研究については少しだけ進捗があったがまだ記事にするほどではない. ただ, Mathlogの全ての記事で関数のノルムを絶対値記号4本で書いていたのをTeXの標準的な物にした. またいくつかの記事で議論を修正または変更した. よかったらまたご覧いただきたい.
さて, 定義域の内部$D$で(複素)微分可能な関数は$D$で連続である.
$$f(z+h)-f(z)=\frac{f(z+h)-f(z)}{h}\cdot h \to f'(z)\cdot 0=0 \,(h \to 0, z\in D).$$
その逆は, 一般には成り立たない.
数直線$\mathbb{R}$の開区間$(0, 1)$の各点で連続かつ各点で微分不可能な実数値関数$T$が存在する.
高木『定本 解析概論』の黒田成俊氏による補遺, または猪狩『実解析入門』93ページ-97ページを参照されたい.
数直線$\mathbb{R}$の各点で連続かつ各点で微分不可能な実数値関数$W$が存在する.
松坂『解析入門 上』312ページ-314ページを参照されたい.
複素平面の或る領域とその各点で連続かつ複素微分不可能な複素数値関数が存在する.
複素平面$\mathbb{C}$の正方形$(0, 1)^2$の各点$(x, y)=x+iy$に対して関数$f$を
$f(x+iy)=T(x)+iT(y)$
で定める. $f$は連続関数の線型結合だから連続だが, $f$の実部と虚部は$(0, 1)^2$のいかなる点でも全微分不可能である. 一般に, 複素平面の領域$D$上の複素関数$g:D \to \mathbb{C}$が点$a+bi \in D$で複素微分可能であるためには$g$の実部と虚部が点$(a, b)$で全微分可能かつコーシー-リーマン方程式を満たすことが必要十分であるから, $f$は複素関数として$(0, 1)^2$全体で複素微分不可能である.
同様に$\mathbb{C}$の各点$x+iy$に対して関数$F$を
$F(x+iy)=W(x)+iW(y)$
で定めると$F$は$\mathbb{C}$で連続かつ複素微分不可能である.
$x$と$y$を入れ替えたり, 高木関数とワイエルシュトラス関数を混ぜたり($T(x)+iW(y)\,(x+iy \in (0, 1)\times \mathbb{R})$など), 適当な線型結合にすることで似たような例を非可算無限個つくれる.
一般に$\bar{z}$を含む関数は至る所複素微分不可能だが, 高木関数やワイエルシュトラス関数を使った例を挙げてみた.
実部と虚部は全微分可能なら偏微分可能かつ連続だが, 上の例では実部と虚部が全微分不可能だが連続な例である.