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解説大学数学以上
文献あり

台がコンパクトでない可微分関数で導関数の台がコンパクトになる例 (1月31日 19:53 訂正)

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『ナビエ-ストークス方程式の解の存在と滑らかさの簡単な議論および一意性』 で用いた, 『台がコンパクトな超関数の基本定理』

$\mathbb{R}^N$上の任意の定数係数線型偏微分作用素$P$の基本解, すなわち
$PE=\delta$
を満たす$E \in \mathcal{D}^{\prime}$を取ると, 台がコンパクトな超関数$\, f \in \mathcal{E}^{\prime}$または台がコンパクトな$C^{\infty}$-級関数$\, f \in C_0^{\infty}$について, 方程式
$Pu=f$
の解$u$のひとつは$u=E * f \in \mathcal{D}^{\prime}$または$u=E * f \in C^{\infty}$で与えられる.

ここで$\, f \in \mathcal{E}^{\prime}$ならば
$\langle E*f, \varphi \rangle = \langle E(x), \langle \,f(y), \varphi(x+y) \rangle \rangle,$

$\, f \in C_0^{\infty}$ならば
$(E*f)(x)=\langle E(y), f(x-y) \rangle.$

を推敲していて気がついたが, これをよく見てみると, $f$の台はコンパクト, ゆえに$Pu$の台もコンパクトだが, $u$の台がコンパクトではないことがありうる.

簡単に話をするため, 関数の台のみ定義を書く. 超関数の台の定義は 『微分積分と線型代数と簡単な集合位相で学ぶ超関数超入門 (2023年1月15日 6:55 最終推敲)』 を参照されたい.

関数の台

関数$u:\mathbb{R} \to \mathbb{R}$について$u(x) \neq 0$となる$x \in \mathbb{R}$全体の集合の閉包
$\overline{\{x \in \mathbb{R} \mid u(x) \neq 0 \}}$
$u$の台(support)と言い, $\mathrm{supp}(u)$で表す.

有界開集合の閉包はそれに境界を付け加えた和集合である.

台がコンパクトな可微分関数$u$について
$\mathrm{supp}(u')\subseteq\mathrm{supp}(u)$
であるから$u$の導関数の台はコンパクトだが, 逆は成り立たない.

噴火した富士山型関数

関数$u:\mathbb{R} \to \mathbb{R}$
$$\begin{cases} u(x)=\exp({-\frac{1}{9-x^2}})+1&(|x|\lt 3)\\ u(x)=1&(|x|\ge 3) \end{cases}$$
と定めると$\mathrm{supp}(u)=\mathbb{R}$だが, $\mathrm{supp}(u')=\{|x|\le 3\}$である.

$u(x)=\exp({-\frac{1}{9-x^2}})+1 \, (|x|\lt 3)$
$x$で微分すると
$u'(x)=(-\frac{1}{9-x^2})'\exp({-\frac{1}{9-x^2}})=-(-\frac{1}{(9-x^2)^2})(-2x) \exp({-\frac{1}{9-x^2}})\,(|x|\lt 3),$
$u(x)=1\,(|x|\ge 3)$を微分すると, $u'(x)=0\,(|x|\ge 3).$

参考文献

投稿日:116
更新日:25

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研究の記事の他に, 発見シリーズ, 行間シリーズ, 超入門シリーズも書いています. 北田均『数理解析学概論』新訂版序文の「ほぼ独学と思われる熱心な読者」, 結城浩『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』あとがきの「類太郎」. 指摘を受けたり自分で誤りに気付いて, 後から訂正することも多々あります. 寛容な目で温かい目で見て頂きたいです. コメント欄は事実でないコメントや侮辱あるいは中傷のコメントで荒らされておりPTSDになったので見ていません. 何かあればXのDMやリプでご連絡を下さい. 悪意のあるきつい言い方をされることが多々ありますが, それさえしなければ指摘については真摯に対応したいです. 普通のご指摘でも私は人間なので必ずしもすぐには対応できないことはご理解ください. 数式, 特に偏微分方程式が好き. 多変数複素解析のヘルマンダーの方法:複素多様体における外微分 d を d=∂′+∂′′ とするとき‚ 既知微分形式 f と未知微分形式 u について ∂′′u=f (ディーバー方程式)の可解性で諸問題を考える方法, 複素多様体における微分幾何として複素モンジュ-アンペール方程式の解の存在, 代数解析の偏微分方程式への応用でも何かを遺したいです.

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研究の記事の他に, 発見シリーズ, 行間シリーズ, 超入門シリーズも書いています. 北田均『数理解析学概論』新訂版序文の「ほぼ独学と思われる熱心な読者」, 結城浩『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』あとがきの「類太郎」. 指摘を受けたり自分で誤りに気付いて, 後から訂正することも多々あります. 寛容な目で温かい目で見て頂きたいです. コメント欄は事実でないコメントや侮辱あるいは中傷のコメントで荒らされておりPTSDになったので見ていません. 何かあればXのDMやリプでご連絡を下さい. 悪意のあるきつい言い方をされることが多々ありますが, それさえしなければ指摘については真摯に対応したいです. 普通のご指摘でも私は人間なので必ずしもすぐには対応できないことはご理解ください. 数式, 特に偏微分方程式が好き. 多変数複素解析のヘルマンダーの方法:複素多様体における外微分 d を d=∂′+∂′′ とするとき‚ 既知微分形式 f と未知微分形式 u について ∂′′u=f (ディーバー方程式)の可解性で諸問題を考える方法, 複素多様体における微分幾何として複素モンジュ-アンペール方程式の解の存在, 代数解析の偏微分方程式への応用でも何かを遺したいです.