微分幾何では, ベクトル場, リーマン計量, 微分形式をテンソル場として考える. その際も曲率について議論する際もテンソル積が自然に現れる. ここではベクトル空間のテンソル積について考える. 何かございましたらどうぞコメントをください.
$V$を$m$次元ベクトル空間, $W$を$n$次元ベクトル空間とする. $(e_1,…,e_m), (f_1,…,f_n)$を$V, W$の基底とする. $mn$次元ベクトル空間$T$について$V×W$から双線型写像$\otimes:V×W \to T$(片方の変数を固定した時もう片方について線型な写像)があり, $(\otimes(e_i,f_j))_{i=1,…,m, j=1,…,n}=(e_i\otimes f_j)_{i=1,…,m, j=1,…,n}$が$T$の基底となる時, $T$を$V, W$のテンソル積と言い$V\otimes W$で表す.
このテンソル積の定義は普遍性による定義と同値である.
例(1) $m×n$型実行列全体の成すベクトル空間$\mathbb{R}^{mn}=\mathbb{R}^m\otimes\mathbb{R}^n$である. ここで$\otimes(e_i, f_j)=E_{ij}$であり$E_{ij}$は行列単位($(i, j)$-成分が$1$で他の成分は$0$の行列)である.
例(2) ベクトル空間$V$上の$(r, s)$型テンソル全体の成すベクトル空間, すなわち$V×…×V×V^*×…×V^*$から$\mathbb{R}$への双線型写像全体の成すベクトル空間は$V^*\otimes…\otimes V^*\otimes V\otimes…\otimes V$である. ここで$V^*$は$V$の双対空間, すなわち$V$上の実数値線型写像全体の成す線型空間であり, $(V^*)^*=V$である.
例(3) 一般にテンソル積は可換ではないが, 多様体$M$上の接束$TM$と$T^*M$についてもテンソル積が定義され, その要素は可換である.
例(4) ベクトル束$B$の, ベクトル束$E$とのテンソル積は「$B$の$E$値化」である. 例えば$M$上の$E$値微分形式の成す空間は$\Gamma(M, T^*M\otimes E)$である.