0

線形代数祭第二問講評

45
0
$$$$

はじめに

こんにちは, 早稲田大学基幹理工学部学系Ⅰの卯月熊です。1/7まで 線形代数祭 という記述式のコンテストをやっておりました。ここでは🧸が作問した第二問の解説&講評&感想を載せていきたいと思います.

第二問解説

第二問問題

第二問 第二問
mathlogで\iddotsが使えなかったので, 本問だけ画像です.

第二問(1)

本解

!FORMULA[0][1092072872][0] $A+tB$
となるので, である. $k$($k=1,\cdots,2023$)行目と$4047-k$行目は同じであり, 左上側のX字の行列について考えればよく, 行と列の並べ替えにより, $l=1,2,\cdots,1011$として,
$P_l= \begin{pmatrix}l & lt\\(2024-l)t&2024-l\end{pmatrix}$
を用いて,
$ $$\mathrm{rank}\, (A+tB)= \begin{cases} 1+\displaystyle\sum_{l=1}^{1011}\mathrm{rank}\, P_l\quad(t\neq-1)\\ \displaystyle\sum_{l=1}^{1011}\mathrm{rank}\, P_l\quad(t=-1) \end{cases}$
とできるから,
$ \mathrm{rank}\, (A+tB)= \begin{cases} 2023\quad(t\neq\pm 1)\\ 1012\quad(t= 1)\\ 1011\quad(t=- 1)\\ \end{cases}$
故に次元定理から
$\mathrm{null}\, (A+tB)= \begin{cases} 2023\quad(t\neq\pm 1)\\ 3034\quad(t= 1)\\ 3035\quad(t=- 1)\\ \end{cases}$

別解

$(A+tB)\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}$の解空間の次元を求める. $\boldsymbol{x}={}^t(x_1,x_2,\cdots,x_{2024})$とおくと,
$kx_k+ktx_{2024-k}+ktx_{2023+k}+kx_{4047-k}=0\quad(k=1,\cdots,2023)$
ここで, $x_k+x_{4047-k}=a_k$と置くと,
$a_k=-ta_{2024-k}$
すなわち
$a_k=\begin{cases}t^2a_k\quad(k=1,\cdots,1011)\\0\quad(k=1012,t\ne -1)\\\mathrm{任意}\quad(k=1012,t= -1)\end{cases}$
かつ$a_{2024-k}=\begin{cases}-\dfrac{a_k}{t}\quad(t\neq 0)\\0\quad(t=0)\end{cases}\quad(k=1,\cdots,1011)$
となる,

  • $t=\pm 1$のとき
    $a_k=\begin{cases}0\quad(k=1012,t= 1)\\\mathrm{任意}\quad(k=1012,t=-1\,\mathrm{または}\, k=1,\cdots,1011)\end{cases}$
    よって $x_k=c_k$($k=1,\cdots,2023$)とおけばパラメータは$c_1,\cdots,c_{2023},a_1,\cdots,a_{1011}$$t=-1$のときは$a_{1012}$があるので,
    $\mathrm{null}\, (A+tB)= \begin{cases} 3034\quad(t= 1)\\ 3035\quad(t=- 1)\\ \end{cases}$
  • $t\ne\pm 1$のとき
    $a_k=0\quad(k=1,2\cdots,4046)$
    よって $x_k=c_k$($k=1,\cdots,2023$)とおけばパラメータは$2023$個.

以上より,
$\mathrm{null}\, (A+tB)= \begin{cases} 2023\quad(t\neq\pm 1)\\ 3034\quad(t= 1)\\ 3035\quad(t=- 1)\\ \end{cases}$

第二問(2)

行と列の並び替えによって, (置換の符号は最高次の係数を比較することにより出る)
$\det (xE-A)=\displaystyle\prod_{k=1}^{2023}\det D_k=\displaystyle\prod_{k=1}^{2023}\det\begin{pmatrix}x-k&-k\\-k&x-k\end{pmatrix}$
であるから, $\phi_A(x)=x^{2023}(x-2)(x-4)\cdots(x-4046)$

ここで$\det(A-xE)$としても答えは変わらない.

であり, 固有値は$0,2,\cdots,4046$と求まる. ここで, 各固有値における固有空間の次元をもとめる. 固有値$\lambda$における固有空間の次元は, $\lambda E-A$の退化次数であり, 同様に行と列を並び替えることによって,
$D_k=\begin{pmatrix}\lambda-k&-k\\-k&\lambda-k\end{pmatrix}$
としたとき,
$\mathrm{rank}\,(\lambda E-A)=\displaystyle\sum_{k=1}^{2023}\mathrm{rank}\,D_k$
rankを求めると,
$\mathrm{rank}\,(\lambda E-A)=\begin{cases}4045\quad(\lambda=2,4,\cdots,4046)\\2023\quad(\lambda=0)\\\end{cases}$
となるから, 退化次数は
$\mathrm{null}\,(\lambda E-A)=\begin{cases}1\quad(\lambda=2,4,\cdots,4046)\\2023\quad(\lambda=0)\\\end{cases}$
よって, 固有空間の次元の総和は$4046$なので, この行列は対角化可能であるから,
$P^{-1}AP=\mathrm{diag}\,(0,0,\cdots,0,2,4,\cdots,4046)$
となるので, 最小多項式は$\psi_A(x)=(x-2)(x-4)\cdots(x-4046)$.

第二問(3)

本解

一次方程式$B\boldsymbol{x}=2024\boldsymbol{x}$を解く. $\boldsymbol{x}$の第$k$成分を$x_k$と書くと, $k=1,\cdots,2023$に対して,
$kx_{2024-k}+kx_{2023+k}=2024x_k=2024x_{4047-k}$
すなわち
$\begin{cases}2kx_{2024-k}=2024x_k\\x_k=x_{4047-k}\end{cases}$
よって実数$t$を用いて$\boldsymbol{x}=t(\boldsymbol{e}_{1012}+\boldsymbol{e}_{3035})$とできるので, 固有空間の次元は$1$.

別解

!FORMULA[54][1177802126][0] $B-2024E$
より, $1012$行目と$3035$行目が線形従属なので, $2024$$B$の固有値である. また, 行と列の並べ替えによって, $k=1,\cdots,1011$に対して
$B_k=\begin{pmatrix} -2024&k&0&0\\ 2023-k&-2024&0&0\\ 0&0&-2024&2024-k\\ 0&0&k&-2024\\ \end{pmatrix}$
とすると,
$\mathrm{rank}\,(B-2024E)=1+\displaystyle\sum_{k=1}^{1011}\mathrm{rank}\,B_k$
であり, $\mathrm{det}\,B_k=\{2024^2-k(2024-k)\}^2>0$より, $B_k$は正則行列なので$\mathrm{rank}\,(B-2024E)=4045$から, 固有空間の次元は次元定理より$4046-4045=1$.

講評

固有空間, 対角化, 階数に関する問題でした。この問題はTwitterがXに改名したので一般の次元に関する行列の取り扱いを見る目的で出題しました. あと見た目のインパクトを追究しました. さて, 採点の講評ですが, 結構複雑ですが解答してくださった方は高得点でした. 特に(1)(3)は成分ごとに愚直に計算しても刺さる(なんなら(3)はその方が速い)ので, それで高得点になった模様です. あと小問同士はあまり関係がないのであきらめずに点を稼ごうとすれば稼げるという感じですね.

最後に

第四問、第五問もすぐに書こうと思います.

投稿日:18

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中