前提知識
外微分
上の関数 に対して, とかくことにすれば, とかける.(この式は,多様体を知っていれば微分形式の等式と理解しても良いし,そうでなければ単なる形式的な記号と思っても良い.)
ここで,以下のように記号を定める:
これは,(余)接空間の基底の取り換えと考える.このとき, となる.特に が正則であるときには となって便利である.
ストークスの定理
(これはやはり多様体を知っている前提であるが)次が成り立つ:
(ストークスの定理)
を向きづけられたコンパクト 次元多様体とし, をその境界とする.
上の 形式 に対して が成り立つ.
コーシーの積分公式
とおく. である. を含む開集合の上で正則な関数 に対して が成り立つ,というのが有名なコーシーの積分公式である.
今回の話
コーシーの積分公式の左辺に注目すると,これはストークスの定理の左辺に似た形をしている.ストークスの定理での は 上で定義されている必要があり,いまの場合 は で定義されていないから,ここは超関数微分(あるいはカレント(超関数係数微分形式)の意味での外微分)と考える必要はあるが,細かいことに目を瞑れば次のようになる.
となる. は において正則だから, 偏微分をすれば になる.ということは (ただし はディラックのデルタ関数)となりそうである.実はこれは正しく,また,この結果は次のように整理できることが知られている:
(Poincaré-Lelong の公式の一部)
が成り立つ.ただし左辺はカレントの微分の意味である.