1.初めに
2.歴史
3.性質など
4.予想
5.終わりに
初等幾何を勉強する際、五心、フェルマー点、オイラー線、ブロカール軸や、レスター円、キーペルト双曲線、シュタイナー楕円など多くの奇麗な性質を持つ線に出会うと思います。
五心やオイラー線は参考書にも記載されている場合が多いですし、フェルマー点関連の話が大学の二次試験で出題されたこともあるそうです。
しかし、上の例に挙げた線はすべて二次以下の曲線であり、三次以上の曲線は、あまり、聞くことがありません。
本記事ではそのような曲線の一つ、Neuberg3次曲線(Neuberg cubic)について紹介しようと思います。
上記の通りNeuberg Cubicは日本では、あまり知名度がなく、今回私が参照した記事は、ほとんど外国のものです。翻訳の誤りなどありましたら、指摘していただけると幸いです。
記事のタイトルでは気取って$Neuberg\ cubic$と書きましたが、見にくいので以下"ノイベルグ三次曲線"とします(Neubergの訳にはノイベルグ、ノイベルクのどちらとも存在します)。
ノイベルグ三次曲線は1884年、$Joseph\ Jean\ Baptiste\ Neuberg$が著書、「Géométrie. Mémoire sur le tétraèdre, présentant la solution de diverses questions proposées dans les Annales」にて、公表した、三角形に対し一意に定まる曲線です。
ノイベルグが採用した定義は以下のものです。
$\triangle ABC$について、以下を満たす点$P$の軌跡をノイベルグ三次曲線とする。
$\begin{vmatrix} 1 & BC^{2}+AP^2 & BC^2 \times AP^2 \\ 1 & CA^2+BP^2 & CA^2\times BP^2 \\ 1 & AB^2+CP^2 & AB^2\times CP^2\end{vmatrix}=0$
$P[p,q,r],(p+q+r=1)$で$AP^2=b^2q^2+c^2r^2-(b^2+c^2-a^2)qr $が成り立ちます。
それを使って変形すると整理すると以下のようになります。
$\begin{vmatrix}
p & \dfrac{a^2}{p} & (a^{2}(b^{2}+c^{2})+(b^{2}-c^{2})^{2}-2a^{4}) \\
q & \dfrac{b^2}{q} & (b^{2}(c^{2}+a^{2})+(c^{2}-a^{2})^{2}-2b^{4}) \\
r & \dfrac{c^2}{r} & (c^{2}(a^{2}+b^{2})+(a^{2}-b^{2})^{2}-2c^{4})\end{vmatrix}=0$
$$
\sum_{cyc}^{}p(a^{2}(b^{2}+c^{2})+(b^{2}-c^{2})^{2}-2a^{4})(b^{2}q^{2}-c^{2}r^{2})=0
$$
三線座標($p;q;r$)では
$\begin{vmatrix}
p & \dfrac{1}{p} & \cos A-2\cos B\cos C \\
q & \dfrac{1}{q} & \cos B-2\cos C\cos A \\
r & \dfrac{1}{r} & \cos C-2\cos A\cos B \end{vmatrix}=0$
$$
\sum_{cyc}^{}p(\cos(A)-2\cos(B)\cos(C))(q^{2}-r^{2})=0
$$
ちなみに、行列式の3列目はオイラー無限遠点の重心/三線座標であることから下記の「$P$と$P$の等角共役点を結んだ直線は、元の三角形のオイラー線と平行である」が導かれます。
ノイベルグは、
・$A,B,C,X_{3},X_{4},X_{13},X_{14},X_{15},X_{16}$
・$A,B,CのBC,CA,AB$による鏡映点
・$\triangle QBC$ が正三角形となる$Q$2点($CA,AB$でも同様にして計6点)
・$BC$の垂直二等分線と$AB,AC$との2交点を結んだ線で$A$を鏡映した点($B,C$についても同様にして計3点)
計21点がこの式を満たすことを発見しました。
また、1921年には$B. H. Brown$が新たに内心や傍心を含む、16点がこれを満たすことを発見しました。(※このことから別名、21点三次曲線、37点三次曲線ともいわれます。トムソン三次曲線が17点三次曲線と言われるのと一緒ですね。)
ノイベルグ三次曲線は「Self-isogonal cubic」(後述)なので、線上の点の等角共役もまた線上にあります。特に名前のない等角共役は省いて書いています。
これ
を適当に改変しました。
番号は対応してます。
以下、特に断りのない限り、点$P$をノイベルグ曲線上の点とします。
[1]$P$を$BC,CA,AB$で鏡映した点と$A,B,C$を結んだ直線は共点である。また、その点の軌跡は三次曲線K060である。
[2]$\triangle PBC,PCA,PAB$の外心($X_3$)と$A,B,C$を結んだ直線は、共点である。
また、その点の軌跡はNapoleon cubic(K005)である。 (ノイベルグ自身による同値変形。)
[4]$\triangle PBC,PCA,PAB$のオイラー線は共点である。(モーリー親子による)
[5]$P$の$BC,CA,AB$に対する垂足をそれぞれ$N,M,L$とすると$\triangle PML,PLN,PNM$のオイラー線は共点である。(またその点の軌跡は六次曲線Q093である。)
[6]$\triangle ABC,PBC,PCA,PAB$のブロカール軸は共点である。
(ブロカール軸は外心($X_{3}$)と疑似重心($X_{6}$)を結んだ直線)
[11]$Orthopivotal\ cubic\ O(X_3)$はノイベルグ三次曲線である。
[12]$\triangle PBC$の外接円と$AP$との$P$でない方の交点を$A'$とし$B',C'$についても同様に定める。$\triangle A'BC,A'BC,ABC'$の垂心($X_{4}$)を頂点とする三角形は$\triangle ABC$と配景的である。
[19]$\triangle PBC,PCA,PAB$のノイベルグ三次曲線は共通の点$X$を持つ。特に、$X_{399},P,X$は共線で、3つのノイベルグ三次曲線は外接三次曲線となる。
[3]$\triangle PBC,PCA,PAB$の外心($X_3$)を頂点とする三角形の外心はオイラー線上にある。
[8]キーペルト放物線(Kiepert parabola)の$BC,CA,AB$との接線をそれぞれ$U,V,W$とすると、それぞれ$A,B,C$を通る$U,V,W$中心の円は2点で交わり、その二点と$X_3$は共線である。
[16]$\triangle PBC$の$X_{2},X_{6}$を結ぶ直線と$BC$の交点を$A'$、$B',C' $も同様に定義したとき、
$\triangle ABC,A'B'C'$は配景であり、配景の中心は$\triangle ABC$の$X_2,X_6$を結ぶ直線上にある。
[21]外接円と$P$を通るそれぞれ$A,B,C$中心の円の根軸の作る三角形は$\triangle ABC$と配景的である。配景の中心はジェベラク双曲線上にある。また配景の中心を$Q(P)$のように表すとき、$X_{3}$を通る直線$l$とノイベルグ三次曲線との交点を$P_1,P_2$とし、$Q(P_1)=Q(P_2)$で$Q(P_1)$は$l$とジェラベク双曲線の$X_3$でない方の交点である。
・$\triangle G_aG_BG_C$を反中点三角形(中点三角形側から見た元の三角形)とする。$B,C,G_a,BC$に対するAの鏡映点,$A$を通る$BC$の垂線と外接円の($A$でない方の)交点,の計5点を通る放物線を$h_a$とし$h_b,h_c$についても同様に定義する。$h_a,h_b,h_c$の3交点$U_a,U_b,U_c$はノイベルグ三次曲線上にある。(また$h_a$の漸近線と$BC$のなす角は$60\degree $)。
さらに、$\triangle U_aU_bU_c$のオイラー線は$\triangle ABC $のオイラー線と一致する。
さらにさらに、$U_a,U_b,U_c$の等角共役点をそれぞれ$U_a',U_b',U_c'$とすると$U_a',U_b',U_c',\triangle U_a'U_b'U_c'$の辺の中点,その等角共役点,はすべてノイベルグ三次曲線上にある。そのことから$U_a',U_b',U_c$は半径$2R$,中心$X_{3}$の円上にあることが分かる。
そしてそれぞれ$U_a'U_b'U_c'$と$\triangle U_a'U_b'U_c'$の辺の中点の等角共役点を結ぶ直線は$X_{399}$(パリー反射点)で交わる。
[17]4点、$\triangle ABC,PBC,PCA,PAB$のそれぞれ$X_{115},X_{125}$(それぞれキーペルト双曲線、ジェベラク双曲線の中心)は共円である。(一般化できるかも...?)←本家に書いてあった
[18]3点$\triangle PBC,PCA,PAB$のそれぞれ$X_{99},X_{110}$(ぞれぞれシュタイナー点、キーペルト放物線の焦点)と$P$は共円である。(一般化できるかも...?)←本家に書いてあった
[22]$P$を通る$A$中心の円で$B,C$を反転した点、$B,C$でも同様にして出来た点、の計6点は同一二次曲線上にある。
[7]$(X,Y,Z)$を$Z$を通る$Y$中心の円の$X$の方べきの値とするとき、
$(P,A,B)(P,B,C)(P,C,A)=(P,B,A)(P,C,B)(P,A,C)$である。(ノイベルグ三次曲線と同値)
[9]外接円に対する$X_{74}$(オイラー無限遠点の等角共役点)を通る接線の等角共役点の軌跡となる外接放物線は$X_{476}$(Tixer point)を通り、その軸はオイラー線と平行であるが、ある点とその等角共役点の外接放物線に対する極線が平行であるとき、その点の軌跡はノイベルグ三次曲線となる。
[20]$\triangle PBC$のオイラー線で$B,C$を鏡映した点をそれぞれ$B_{a},C_{a}$とし$\triangle PCA,PAB$でも同様に定める。円$AB_{a}C_{a},BC_{b}A_{b},CA_{c}B_{c}$の半径は等しい。
・$P$と$P$の等角共役点を結んだ直線は、元の三角形のオイラー線と平行である。またノイベルグ三次曲線は、線上の点の等角共役も線上にある「Self-isogonal cubic」である。
・$P$の垂足三角形を$P$を中心に$k$倍拡大した三角形が基準三角形と配景対応するような$P$の軌跡は三次曲線である。ノイベルグ三次曲線は$k=2$の場合にあたる($k=1$はDarboux,$k=-1$の場合はThomson)
$Orthopivotal\ cubic\ O(P)$とは
$\triangle ABC$について$R$を通る$AR,BR,CR$の垂線とそれぞれ$BC,CA,AB$との交点は共線である(この線はorthotransversalと呼ばれる)。また$R$のorthotransversalの三線極を$Q$とする。$P$と$Q$と$R$が共線であるような$R$の軌跡を$Orthopivotal\ cubic\ O(P) $という。
任意の点$P$に対し$Q$を中心とする正三角形が$\triangle ABC $と配景的になるようにとると、配景の中心の軌跡とOrthopivotal cubic O(P)は一致する。
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