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多項式の合成的分解

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$$\newcommand{bm}[1]{\boldsymbol{#1}} $$

今回考えたいのは以下のような問題である。

$K$上の多項式$f$$f=g\circ h$のように書けるのはどのようなときか?

この記事において、単に「多項式」というときは体$K$上の多項式を意味するものとする。
まず、ひとつ演算を導入する。

逆合成

多項式$f,g$に対し、$g^{-1}\circ f :=(x-g(\alpha_1))\dots(x-g(\alpha_n))$と定義する。
ただし、$f=(x-\alpha_1)\dots(x-\alpha_n)$であるものとする。
また、左側に書くのは結合律に配慮してのことである:
$g_1^{-1}\circ (g_2^{-1}\circ f)=(g_1\circ g_2)^{-1}\circ f$

$K=\mathbb{Q}$,$f=x-1,g=h=x^2$とすると、
$g^{-1}\circ f=x-g(1)=x-1$
$(g^{-1}\circ f)\circ h=(x-1)\circ h =x^2-1$
$g^{-1}\circ (f\circ h)=g^{-1}\circ (x^2-1)=(x-g(1))(x-g(-1))=(x-1)^2$

よって、一般には$ (g^{-1}\circ f)\circ h\neq g^{-1}\circ (f\circ h)$である。しかし、最後の例は次のように一般化できる。

例1の最後の例の一般化

多項式$f,g$に対して、$g^{-1}\circ (f\circ g)=f^{\deg g}$
ただし、$\deg g$$g$の次数である。

$m=\deg m,\,f=(x-\alpha_1)\dots(x-\alpha_n),\,f\circ g=(x-\gamma_{11})\dots(x-\gamma_{nm})$とする。ただし、$\gamma_{ij}$$g(x)-\alpha_i$の根とする。
すると、$g^{-1}\circ(f\circ g)=(x-g(\gamma_{11}))\dots(x-g(\gamma_{nm}))=f^{\deg g}$

このようなことができると、当然その逆もできるかどうか知りたくなる。
そこで以下の命題が成り立つ。

補題2の(部分的な)逆

多項式$f,h$は重根をもたないものとする。多項式$g$(これは重根をもってもよい)によって
$g^{-1}\circ f=h^{\deg g}$ならば、$f=h\circ g$である。

$n=\deg h,\,m=\deg g$とする。このとき$\deg f =nm$である。
$h=(x-\beta_1)\dots(x-\beta_n),\,f(x)=(x-\alpha_{11})\dots(x-\alpha_{nm})$
とする。ただし$g(\alpha_{ij})=\beta_i$となるように添え字をつける。
このとき、$g(x)-\beta_i$$\alpha_{ij},\,1\leq j\leq m$を根に持つ$m$次多項式である。$f$は重根をもたないという仮定より、$g$$\alpha_{ij},\,1\leq j\leq m$という形の根以外の根を持たない。したがって、$K(h)$上で$g(x)-\beta_i$$f$を割り切る。
また$h$が重根を持たないことより、$g(x)-\beta_1,\,\dots,\,g(x)-\beta_n$は共通根を持たない。よって、$g(x)-\beta_i,\,1\leq i \leq n$たちの根には、$f$の根$\alpha_{ij}$がすべて、しかも一度だけ現れる。
したがって、$f=(g(x)-\beta_1)\dots(g(x)-\beta_n)=h\circ g$

ほんとうはもう少し色々やる予定でしたが、証明に致命的なミスが見つかり... ^^;
短くなってしまいましたが、今回は以上にしたいと思います。

投稿日:427
更新日:427
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