0

円順列が (n-1)! になる理由

2
0
$$$$

異なる $r$ 個の要素から成る集合 $\{x_1,x_2,\dots,x_r\}$ を取り出したとき、
その内部で並べる(順序をつける)方法の総数は
$$ r \times (r-1)\times \cdots \times 1 := r! $$
である。

$r$ を正の整数とする。第$1$位置に置く要素は、集合の中から任意の$1$つを選べるので $r$ 通り。
$2$位置に置く要素は、残りの $r-1$ 個から任意に選べるので $r-1$ 通り。
同様に、第 $k$ 位置には残りの $r-(k-1)$ 個から選ぶので $r-k+1$ 通り。
最終的に第 $r$ 位置には $r - (r-1) = 1$ 通り しか選択肢がない。
$ $
各段階での選択肢の数は、それ以前に何を選んだかに依らず一定である。
すなわち、第$1$段階で何を選んでも、第$2$段階の選択肢の数は変わらないため、乗法原理より
$$ r \times (r-1)\times (r-2)\times \cdots \times 1 \;=\;r! $$
が全並べ方の総数となる。
$$ \Box$$

$n$個のものから$r$個を取り出して並べる順列の総数は、
$$ \begin{aligned} \frac{n!}{(n - r)!} \end{aligned} $$
である。ここで、$n$ は全体の要素の数、$r$は選び取る要素の数、$n!$$n$の階乗を表し、
$$ \begin{aligned} n! := n \times (n-1) \times (n-2) \times \dots \times 1 \end{aligned} $$
で定義される。

$n,r$を整数とし、$1 \le r \le n$とする。
$ $
$n$個の異なるものから $r$ 個を順番に選んで並べるとき、
最初に何を選び、次に何を選ぶかというように段階的に考える。

  1. $1$段階
    最初の$1$個を選ぶとき、選べるのは $n$ 個のうちのどれかであるから、$n$ 通り
  2. $2$段階
    次に$1$個選ぶときは、すでに$1$個使っているので、残りは $n - 1$
  3. $3$段階
    次に$1$個選ぶときは、すでに$2$個使っているので、残りは $n - 2$
    $$ \vdots $$
  4. $r$段階
    最後に $r$ 個目を選ぶときは、残りは $n - (r - 1) = n - r + 1$

-よって、これらは連続した選択の段階であり、各段階での場合の数を掛け合わせればよい(乗法原理)。
すなわち、$r$個を順番に選ぶ方法の総数は、
$$ n \times (n - 1) \times (n - 2) \times \cdots \times (n - r + 1) $$
これを階乗によって表すと、$n!$ の前から $r$ 個だけ掛け合わせたものに等しい。すなわち、
$$ \frac{n!}{(n - r)!} $$
である。
$$ \Box$$

異なるものを並べる順番付きの組み合わせを順列という。
順列の総数を計算する場合、$n$個のものから$r$個を取り出して並べる順列の総数は、次のように定義される。
$$ \begin{aligned} {}_{n}P_{r} := \frac{n!}{(n - r)!} \end{aligned} $$
ここで、$n$ は全体の要素の数、$r$は選び取る要素の数、$n!$$n$の階乗を表し、
$$ \begin{aligned} n! := n \times (n-1) \times (n-2) \times \dots \times 1 \end{aligned} $$
で定義される。

円順列

$ n $ 個の互いに区別可能な元からなる集合 $ S $ に対し、円形に配置することを「配置」と呼び、
配置のうち回転変換によって一致するものを同一視する。
$ $
すなわち、配置 $ (a_1, a_2, \dots, a_n) $ と、任意の $ k \in \{0, 1, \dots, n-1\} $ に対して
$$ (a_1, a_2, \dots, a_n) \sim (a_{1+k \mod n}, a_{2+k \mod n}, \dots, a_{n+k \mod n}) $$
とみなす。このとき、順列の個数は
$$ \frac{n!}{n} = (n-1)! $$
となる。

$n$$1$以上の整数とする。
集合 $S$ の元を $n$ 個すべて並べる順列は、通常の(直線上の)順列として
$$ n! $$
通り存在する。しかし、ここでは「回転によって一致する並べ方を同一視する」ので、以下のように考える。
$ $
直線上で並べた順列 $(a_1, a_2, \dots, a_n)$ を円形に配置するとき、回転によって同じ配置になるものは、
以下のように対応する。
$$ (a_1, a_2, \dots, a_n), \quad (a_2, a_3, \dots, a_n, a_1), \quad (a_3, a_4, \dots, a_n, a_1, a_2), \;\dots\;, \quad (a_n, a_1, a_2, \dots, a_{n-1}) $$
これは、配置 $ (a_1, a_2, \dots, a_n) $ と、任意の $ k \in \{0, 1, \dots, n-1\} $ に対して
$$ (a_1, a_2, \dots, a_n) \sim (a_{1+k \mod n}, a_{2+k \mod n}, \dots, a_{n+k \mod n}) $$
とみなす事に等しい。

ここで、$\bmod n$ は「$n$ で割った余り」を取ることを意味する。
インデックスが $n$ を超えたら、ぐるっと先頭に戻るために使っている。
$ $
例として $n=5$ で説明すると、$k=2$ のとき

  1. $1+2=3$
    ここで、$3 \bmod 5$ は、$3$$5$ で割ると、$0$ 回しか割れなくて余りが $3$ であるから、
    $$ 3 \bmod 5 = 3 $$
    よって、
    $$ a_{1+2\ \bmod\ 5} = a_3 $$
  2. $4+2=6$
    ここで、$6 \bmod 5$ は、$6$$5$ で割ると、$1$ 回割れて余りが $1$ であるから、
    $$ 6 \bmod 5=1 $$
    よって、
    $$ a_{4+2\ \bmod\ 5} = a_1 $$

-なので
$$ (a_1,a_2,a_3,a_4,a_5) \sim (a_{1+2 \bmod 5}, a_{2+2 \bmod 5}, \dots, a_{5+2 \bmod 5}) \sim (a_3,a_4,a_5,a_1,a_2) $$
となり、直観的には、$k$は左へと移動させた回数と見なせる。

ここで、任意の順列 $(a_1,\dots,a_n)$ は、出発点まで巡り着くまでにちょうど $n$ 回の操作が必要である(補足を参照)。
$ $
すなわち、通常の順列の集合を「回転による同値関係」で割ると、
$1$つの同値類(同一視されるクラス)には必ずちょうど $n$ 個の順列が含まれる。
$ $
以上より、順列全体の個数が $n!$ 通りあり、各同値類にちょうど $n$ 個ずつ順列が含まれるので、
円形配置の「代表パターン」(回転で同一視したときのクラス)全体の個数は
$$ \frac{n!}{n} = (n-1)! $$
となる。
$$ \Box$$

出発点まで巡り着くまでにちょうど $n$ 回の操作が必要

$n$ 個の互いに異なる元 $a_1,\dots,a_n$ があるとする。
添字は $\{1,2,\dots,n\}$ を法 $n$ で見たもの(円周上の番号)とみなす。
$ $
■ 仮定
ある $k$$1 \le k \le n-1$)について
$$ \text{「k だけ回転させても元の並びと同じになる」} $$
と仮定する。すなわち、
$$ (a_1,\dots,a_n) = (a_{1+k\ \bmod\ n},\dots,a_{n+k\ \bmod\ n})\cdots★ $$
が成り立つと仮定する。
$ $
一般に
$$ (x_1,\dots,x_n) = (y_1,\dots,y_n) $$
が成り立つとは、「各成分が等しい」という意味なので
$$ x_i = y_i \quad (i=1,\dots,n) $$
がすべて成り立つ。これを $★$ に適用すると
$$ a_i = a_{i+k\ \bmod\ n} \quad (i=1,\dots,n) \cdots① $$
が全ての $i$ について成り立つ。ここで、① に対して $i=1$ の場合に適用すると
$$ a_1 = a_{1+k\ \bmod\ n}\cdots② $$
が得られる。ここで、$1 \le k \le n-1$ なので $1+k$$2,3,\dots,n$ のいずれかである。
$1+k< n$の場合と、$1+k=n$$2$通りに分けて考える。

  1. $1+k < n$ の場合
    $1 \le k \le n-2$ のときは $1+k$
    $$ 2 \le 1+k \le n-1 < n $$
    なので、$1+k$$n$ で割ると、商が$0$となるから、
    $$ 1+k = 0 \cdot n + (1+k) $$
    となり、余りが $1+k$ となる。したがって
    $$ (1+k) \bmod n = 1+k $$
    となる。したがって、この場合
    $$ a_{1+k\ \bmod\ n} = a_{1+k} $$
    であるから ② は $a_1 = a_{1+k}$ という形になる。
    $ $
  2. $1+k = n$ の場合
    直ちに、
    $$ a_{1+k} = a_n $$
    が成り立つ(単に「$1+k$ 番目 = $n$ 番目」なので同じ要素)。
    一方で ② から、
    $$ a_1 = a_{1+k\ \bmod\ n} $$
    である。ここで
    $$ 1+k = n = 1\cdot n + 0 $$
    なので、通常の整数の剰余としては
    $$ (1+k)\ \bmod\ n = n \bmod n = 0 $$
    である。ここで、余り $0$ を添字 $n$ と同一視すると、
    $$ a_{1+k\ \bmod\ n} = a_n $$
    となる。したがって、② から、
    $$ a_1 = a_n $$
    を得る。

-いずれにせよ、
$$ a_1 = a_j $$
となる添字 $j$ が存在し、その $j$
$$ j = 1+k \in \{2,3,\dots,n\} $$
なので $j \neq 1$ である。もともとの前提で「$a_1,\dots,a_n$ は互いに異なる」と仮定しており、
$$ i \neq j \quad\Rightarrow\quad a_i \neq a_j $$
が成り立つ、しかし、いま $1 \neq j$ かつ $a_1 = a_j$ という状況が ② から導かれ、
これは明らかに「互いに異なる」という仮定に反する。
$ $
したがって、そもそもの仮定 $★$ が間違っており、つまり、$1 \le k \le n-1$ の中で、
$$ (a_1,\dots,a_n) = (a_{1+k\ \bmod\ n},\dots,a_{n+k\ \bmod\ n})\cdots★ $$
が成り立つことはありえないと結論できる。
$ $
言い換えると、並べ方を $k$ 個だけ回転させて同じ並べ方になるのは
$k=0$(=全く回転しない)か、 $k$$n$ の倍数(=ちょうど $1$周、$2$周…回して元に戻る) の場合だけ。
$ $
今回考えているのは $1 \le k \le n-1$だから、
「非自明な回転($0$ でも $1$ 周分でもない回し方)で元の順列に戻ることはない」 という結論になる。

$n$ 個の異なるものを円形に並べたとき、回転によって一致する並べ方を同一視したときの並べ方のことを、
$n$ 個の円順列という。

投稿日:2日前
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中