Existence and Uniqueness Theorem for the Time-fractional Nonlinear Diffusion Equations.
Introduction
今回は次の初期値境界値問題
を考える.
今回の記事では, 非整数階時間微分を含む非線形拡散方程式の基本定理について述べる.
本記事は以下のような構成になっている. 第2章ではCaputo微分におけるNon-local chain ruleとCaputoの右側微分に対するエネルギー等式, 不等式を与え, 拡散係数が退化性(または特異性)を有さない場合の解の存在性, 一意性と最大値原理について述べる.
第3章では, 拡散係数が退化(または発散)する場合の弱解の存在性, 一意性とエネルギー評価を与える. さらに, 評価を与える.
Preliminaries
Key lemma
本節では, 第3章以降で用いる重要補題を準備する.
Non-local chain rule inequality
, をの開部分集合, を非増加非負関数, を凸関数, , with for a.e. とする. さらに, (例えば)であると仮定する. このとき,
が成立する.
を実Banach空間とし, , , と仮定する. もし, のとき, かつである.
次に, 次章で弱解の一意性の証明を与えるため, Caputoの右側微分と呼ばれるものを導入する. Caputoの右側微分とは, と十分滑らかなに対して,
と定義される. ここで, はRiemann-Liouvilleの右側積分と呼ばれる. このとき,
が成立する. 実際,
以上の議論から, 次のCaputoの右側微分におけるエネルギー等式と不等式が得られる.
Non-local energy identity and inequality
, とする. このとき,
が成立する. 特に,
である.
定義より,
となる. ここで, 平均値の定理より,
が得られる. 以上で定理の証明が完了した.
補題3より, 次の補題が得られる.
, with かつ, と仮定する. このとき,
が成立する.
を,
かつをみたす滑らかな関数とする. このとき, であるので,
がしたがう. したがって, とすれば, 証明が得られる.
Initial-boundary problem in the non-degenerate case
本章では, for all かつ,
をみたすが存在すると仮定する. が問題の弱解であるとは,
かつをみたす任意のに対して,
が成立する.
Existence and Uniqueness in the degenerate case
拡散係数が退化(または発散)しない場合, 次の弱解の存在定理が得られている.
とし, 式が成立すると仮定する. このとき, 問題の弱解が存在し,
が成立する. ここで, はに依存する定数である. さらに, のとき, かつである.
さらに, に特別な仮定を加えることで次の一意性定理が成立する.
が上で狭義単調増加とする. このとき, 問題の弱解は一意である.
弱形式は
と書き換えられる. ここで, である. 実際, 積分の順序交換より,
となる. 故に, をとなる問題の弱解とすると,
である. ここで, , とおき, とする. ただし, は strongly in をみたす滑らかな関数である. このとき, 式の左辺第1項は
となる. 第2項は補題4より,
となる. ここで,
であり, as がしたがう. 実際,
と評価できる. 以上より,
であるので, これは a.e. in を意味する.
Maximum principle
問題に対して次の最大値原理が成立する.
Maximum principle
定理5と同じ仮定を与え,
とする. このとき, 問題の弱解は
をみたす.
問題の弱解は任意のに対して
をみたす. ここで, とおく. ただし,
である. よって,
となるので, 左辺第2項は
と非負であることがわかる. 左辺第1項は, とおくと, であるので, 補題1より
と評価できる. ここで,
as である. 実際, はの吉田近似であるので,
となる. 故に,
である. ただし,
という事実を用いた. 実際, であるので,
となる. よって, とすれば,
が得られる. これは, a.e. in を意味するので,
である. 同様にして,
が得られる. 以上で証明が完了した.
Initial-boundary value problem in the degenerate case
本章では, , on かつ, の近傍で狭義単調増加していると仮定する.
Existence and uniqueness of weak solution and energy estimate
まず, 問題の弱解の定義を与える.
Weak solution
が問題の弱解であるとは, 次の(i), (ii), (iii)をみたすことである.
(i) ,
(ii) ,
(iii) となる任意のに対して,
をみたす.
次の定理が成立する.
, ,
と定義し, と仮定する. このとき, となる問題の弱解 a.e. in が一意に存在し, は
をみたす. さらに, のとき, である.
とする. さらに, 拡散係数の退化性(または特異性)を回避するため,
と定めると,
である. ここで, 次の近似問題
を考える. このとき, 前章の議論から問題は任意のに対して
をみたすが一意に存在する. さらに, 最大値原理より,
である. 再度最大値原理を用いると, a.e. in であるので,
がしたがう. これは,
を意味する. ここで, とおくと,
となる. さらに,
と定義すれば, , であるので, が凸関数であることがわかる. よって, Lemma 1を適用すれば,
となる. ここで,
である. したがって, とすれば,
が得られる. の単調性と, であることを用いると,
となる. また, ここでであることを用いた. 実際,
であるので,
を得る. 以上より, 式の左辺はに関して一様有界であることがわかる.
次に, の評価を行う. 弱形式
において, をとなるものと仮定すれば,
となる. ここで,
である. よって, 式の右辺はに関しての意味で一様有界である. 以上の議論より,
となるとが存在する. さらに, は上のに関して一様有界な単調増加列であるので,
となるが存在する. 最後に, 得られたが定義1の等式をみたすことを確かめる. 各項
となる. 弱解の一意性と連続性は前章の議論から得られる. 以上で証明が完了した.
-estimate
本節では, 次の定理を示す.
-estimate
, , とし, を仮定する. このとき, となる問題の弱解が一意に存在し,
が成立する. ここで, はに依存する定数である.
をテスト関数とすると,
となるので, Classical Chain-ruleより
がわかる. さらに, Lemma 1を用いると,
が得られる. ここで,
であるので, とすれば
を得る. との合成積を取れば,
が得られる. 故に, は内の上に有界な単調増加列であるので,
となるとが存在する.