私が高校生の時に見つけて面白いと思った問題について、色々なパターンが作れるなと思ったので紹介します。
問題掲載サイト: 2006年 芝浦工業大学 (MathClinic)
この問題の問3のみを書くと
$$ \lim_{n \to \infty} n \left( \int_0^1 \dfrac{dx}{x+1} - \sum_{k=1}^n \dfrac{1}{n+k} \right)=\dfrac{1}{4} $$
この問題を掲載しているMathClinicさんの解説では、関数の面積を図形を用いて面積の上下を挟んで、はさみうちの原理から極限を一致させることで解いています。
注目してほしいのは、括弧内の総和の極限は同じ括弧内の積分に一致することです(そうでないと、この問題の極限は無限大に飛びますが...)。
(GeoGebraで作った図)
この問題は図1で言うところの赤く塗られた部分の面積の和を求めることになり、無限大に飛ばすことで区分求積法の誤差を大きくして求めることができます。
さて、ここから色々なパターンに適応できるようにしていきましょう。
置換積分と区分求積法を用いて
$$
\int_0^\alpha f(x) \ dx=\alpha \int_0^1 f(\alpha x) \ dx=\lim_{n \to \infty} \dfrac{\alpha}{n} \sum_{k=1}^n f\left( \dfrac{\alpha k}{n} \right)
$$
と表せますから、先程の問題の形にすると、
以下の極限が0でない実数に収束するような実数$p$を定め、そのときの収束する値を求めよ。
$$\lim_{n \to \infty} n^p \left( \int_0^\alpha f(x) \ dx - \dfrac{\alpha}{n} \sum_{k=1}^n f\left( \dfrac{\alpha k}{n} \right) \right) $$
このようなテンプレート問題を作れます。
試しに、$f(x)=\sin{x},\,\alpha=\pi$とおいて値を求めてみよう。
類題: 以下の極限が0でない実数に収束するような実数$p$を定め、そのときの収束する値を求めよ。
$$
\lim_{n \to \infty} n^p \left( \int_0^\pi \sin{x} \ dx - \dfrac{\pi}{n} \sum_{k=1}^n \sin{\left( \dfrac{\pi k}{n} \right)} \right)
$$
$\sin{x}$の総和の等式
$$
\sin{x}+\sin{2x}+\cdots\cdots+\sin{nx}=\dfrac{\sin{\dfrac{nx}{2}}\sin{\dfrac{(n+1)x}{2}}}{\sin{\dfrac{x}{2}}}
$$
より
$$
\sum_{k=1}^n \sin{\left( \dfrac{\pi k}{n} \right)}
=\dfrac{\sin{\dfrac{\pi}{2}}\sin{\dfrac{(n+1)\pi}{2n}}}{\sin{\dfrac{\pi}{2n}}}
=\dfrac{\sin{\dfrac{(n+1)\pi}{2n}}}{\sin{\dfrac{\pi}{2n}}}
=\dfrac{\cos{\dfrac{\pi}{2n}}}{\sin{\dfrac{\pi}{2n}}}
$$
だから
$$
\lim_{n \to \infty} n^p \left( \int_0^\pi \sin{x} \ dx - \dfrac{\pi}{n} \sum_{k=1}^n \sin{\left( \dfrac{\pi k}{n} \right)} \right)
$$
$$
=\lim_{n \to \infty} n^p \left( 2 - \dfrac{\pi \cos{\dfrac{\pi}{2n}}}{n \sin{\dfrac{\pi}{2n}}} \right)
$$
$$
=\lim_{n \to \infty} n^p \left(2n \sin{\dfrac{\pi}{2n}} - \pi \cos{\dfrac{\pi}{2n}} \right)\cdot\dfrac{1}{n \sin{\dfrac{\pi}{2n}}}
$$
$t=\dfrac{\pi}{2n}$とおくと、$n\to\infty \Leftrightarrow t\to0$より
$$
\lim_{n \to \infty} n^p \left(2n \sin{\dfrac{\pi}{2n}} - \pi \cos{\dfrac{\pi}{2n}} \right)
$$
$$
=\lim_{t \to 0} \left( \dfrac{\pi}{2t} \right)^p \left(\dfrac{\pi}{t} \sin{t} - \pi \cos{t} \right)
$$
$$
=\dfrac{\pi^{p+1}}{2^p} \lim_{t \to 0} \dfrac{\sin{t}-t \cos{t}}{t^{p+1}}
$$
ロピタルの定理より
$$
=\dfrac{\pi^{p+1}}{2^p} \lim_{t \to 0} \dfrac{\cos{t}-(\cos{t}-t \sin{t})}{(p+1)t^p}
$$
$$
=\dfrac{\pi^{p+1}}{2^p (p+1)} \lim_{t \to 0} \dfrac{\sin{t}}{t^{p-1}}
$$
$p=2$を代入して、
$$
=\dfrac{\pi^{3}}{12} \lim_{t \to 0} \dfrac{\sin{t}}{t}=\dfrac{\pi^{3}}{12}
$$
よって、$p=2$のとき
$$
\lim_{n \to \infty} n^2 \left( \int_0^\pi \sin{x} \ dx - \dfrac{\pi}{n} \sum_{k=1}^n \sin{\left( \dfrac{\pi k}{n} \right)} \right)
$$
$$
=\lim_{n \to \infty} n^2 \left(2n \sin{\dfrac{\pi}{2n}} - \pi \cos{\dfrac{\pi}{2n}} \right)\cdot\dfrac{1}{n \sin{\dfrac{\pi}{2n}}}
$$
$$
=\lim_{n \to \infty} n^2 \left(2n \sin{\dfrac{\pi}{2n}} - \pi \cos{\dfrac{\pi}{2n}} \right)\cdot\dfrac{\dfrac{\pi}{2n}}{\sin{\dfrac{\pi}{2n}}}\cdot\dfrac{2}{\pi}
$$
$$
=\dfrac{\pi^{3}}{12}\cdot1\cdot\dfrac{2}{\pi}=\dfrac{\pi^{2}}{6}
$$
に収束する。
あとがきの出来損ない: 高校範囲内で解きましたが、普通に級数展開した方が早かったりするときもあるんじゃないかな~とか思ってたりします。