この記事の主旨とあまり関係はないのだが,約数関数はメビウス変換と深い関係がある.そのためメビウス変換をよく理解しようと,関数を乗法的関数と加法的関数に絞って研究し,分かったことを記事にすることにした.
しかしいざ書いてみると,とんでもなく長い記事になってしまうことが分かった.そのため前回のようにはするまいと,しかたなくこうして幾つかに分けたのである.
「数論的関数のメビウス変換4」と「数論的関数のメビウス変換5」に関しては現在進行形で研究が進んでいるので,公開がいつになるのかはわからない.まあ応用のようなものなので読まなくてもかまわない.
数論的関数のメビウス変換1
1. はじめに
2. 目次
3. 準備
数論的関数のメビウス変換2
こちら
4. メビウス変換
5. 変換の計算例
数論的関数のメビウス変換3
こちら
6. メビウスの反転公式
7. 逆変換の計算例
数論的関数のメビウス変換4
8. メビウス変換の拡張1
数論的関数のメビウス変換5
9. メビウス変換の拡張2
関数$f$が乗法的であるとは,次の性質を持つことである.
互いに素な自然数$m,n$に対して
$f(mn)=f(m)f(n)$
が成立するとき,関数$f$を乗法的関数または乗法的であると言う.
すぐにわかるように$f(1)=1$である.
また,関数$f$が加法的であるとは,次の性質を持つことである.
互いに素な自然数$m,n$に対して
$f(mn)=f(m)+f(n)$
が成立するとき,関数$f$を加法的関数または加法的であると言う.
すぐにわかるように$f(1)=0$である.
次に,関数$f$にメビウス変換$M$を施した関数$Mf$を定義する.
$$ Mf(n)=\sum_{d\vert n,0\lt d}f(d) $$
次に,この記事で使う代表的な関数の定義を書いておく.
「見なくても大丈夫」という猛者は飛ばして結構.
$n\equiv 0 \ (\mathrm{mod} \ p^{x})$かつ$n\not\equiv 0 \ (\mathrm{mod} \ p^{x+1})$
であるような非負整数$x$を$p$進付値と言い,$v_p(n)$と表す.
$n$を変数と見れば関数$v_p$は加法的である.
$n=1$のとき
$\omega(n)=0$
$\Omega(n)=0$
$n\gt 1$のとき
$\displaystyle \omega(n)=\sum_{p\vert n} 1$
$ \ $
$\displaystyle \Omega(n)=\sum_{p\vert n} v_p(n)$
どちらも加法的関数である.
$n$が平方因子を持つとき
$$\mu(n)=0$$
$n$が平方因子を持たないとき
$$\mu(n)=(-1)^{\omega(n)}$$
メビウス関数は乗法的である.
$$\sigma_x(n)=\sum_{d\vert n,0\lt d} d^x$$
約数関数は乗法的である.
$n=1$のとき
$$\varphi(n)=1$$
$n\gt 1$のとき
$$\varphi(n)=n\prod_{p\vert n}\left(1 -\dfrac{1}{p}\right)$$
オイラー関数は乗法的である.
$n=1$のとき
$$J_x(n)=1$$
$n\gt 1$のとき
$$J_x(n)=n^x\prod_{p\vert n}\left(1 -\dfrac{1}{p^x}\right)$$
Jordanのトーシェント関数は乗法的である.
$$\mathrm{Id}_x(n)=n^x$$
関数$\mathrm{Id}_x$は乗法的である.
\begin{eqnarray} \varepsilon(n)= \left\{ \begin{array}{l} 1 \ \ \ \ (n=1) \\ 0 \ \ \ \ (n\gt 1) \end{array} \right. \end{eqnarray}
関数$\varepsilon$は乗法的である.
関数$\mathrm{rad}$は乗法的である.
$$1(n)=1$$
関数$1$は乗法的である.
$$\tau_n : \lbrace 1,2,\cdots,n \rbrace \rightarrow \lbrace 1,2,\cdots,n \rbrace $$
が全単射であるように関数$\tau_n$を定める.
次の記事 数論的関数のメビウス変換2