0

Hausdorff空間

44
0
$$$$

$$ \newcommand{\abs}[1]{\left| #1 \right|} \newcommand{\identity}[1]{\boldsymbol{1}_{#1}\!} \newcommand{\norm}[1]{{\left\| #1 \right\|}} \newcommand{\braket}[1]{{\langle #1 \rangle}} \newcommand{\Braket}[1]{{\left\langle #1 \right\rangle}} \newcommand{\relmiddle}[1]{\mathrel{}\middle #1 \mathrel{}} \newcommand{\primes}{\mathbb{P}} \newcommand{\naturals}{\mathbb{N}} \newcommand{\integers}{\mathbb{Z}} \newcommand{\rationals}{\mathbb{Q}} \newcommand{\reals}{\mathbb{R}} \newcommand{\comp}{\mathbb{C}} $$

目次

はじめに

距離空間にあって一般の位相空間にはあるとは限らない位相的性質の一つに「Hausdorff性」があります。
では、実際に位相的性質としてのHausdorff性にはどういった嬉しい性質があるでしょうか。この記事は、それら性質のうち比較的少ない前提知識で説明できるものを簡単にまとめたものです。
前提としている知識としては、基本的な集合論と位相空間論くらいです。

Hausdorf性とは

$X$を位相空間とする。

Hausdorff空間

位相空間$X$Hausdorff空間であるとは、$X$の相異なる2点が近傍で分離されるとき、すなわち$X$の任意の異なる2点$x,y$に対して$x\in U,\ y\in V,\ U\cap V=\emptyset$を満たすような$X$の開集合$U,V$が存在するとき言う。

Hausdorff性は位相的性質

$X,Y$を同相な位相空間とする。このとき、$X$がHausdorff空間ならば$Y$もまたHausdorff空間である。

証明本文$f\colon X\to Y$を同相写像とする。$a,b\in Y$$a\neq b$を満たすとして任意にとり固定したとき、$f^{-1}(a)\neq f^{-1}(b)$より$U\cap V\neq\emptyset$となるような$f^{-1}(a),f^{-1}(b)$$X$における近傍$U,V$がとれる。ここで、$G=f(U),H=f(V)$とすると$f^{-1}(a)\in U^\circ,f^{-1}(b)\in V^\circ$より$a\in f(U^\circ)\subseteq f(U)^\circ=G^\circ,b\in f(V^\circ)\subseteq f(V)^\circ=H^\circ$なため、$G,H$$Y$における$a,b$の近傍であって$G\cap H=f(U)\cap f(V)=f(U\cap V)=\emptyset$となる。これらより、$a,b$$Y$において近傍で分離される。したがって、$Y$はHausdorff空間である。

フィルター

フィルターの定義

冪集合上のフィルター

$X$を集合とし$\mathcal{F}$$\emptyset\notin\mathcal{F}$を満たすような$X$の部分集合族とする。
$\mathcal{F}$が有限交叉で閉じているならば$\mathcal{F}$フィルター基底であるといい、特に上方に閉じているようなフィルター基底をフィルターという。

フィルターはフィルター基底により生成され、フィルター基底は有限交叉性をもつ部分集合族により生成される。これらについて説明するために必要な概念をいくつか定義しておく。

集合族の細分

$X$を集合とし、$\mathcal{A},\mathcal{B}$$X$の部分集合族とする。このとき、

$\mathcal{A}<\mathcal{B}:\iff \forall A\in\mathcal{A},\exists B\in\mathcal{B}\mbox{ s.t. }A\subseteq B$
として$X$の部分集合族全体$2^{2^X}$に二項関係$<$を入れると、$<$$2^{2^X}$上の前順序関係となる。
$<$$X$における細分関係といい、$\mathcal{A}<\mathcal{B}$のとき$\mathcal{A}$$\mathcal{B}$細分であるという。

フィルター基底の両立

集合$X$上のフィルター基底$\mathcal{F},\mathcal{G}$に対して、$X$の部分集合族$\mathcal{F}\wedge\mathcal{G}$を次のように定める。

$\mathcal{F}\wedge\mathcal{G}=\{F\cap G\mid F\in\mathcal{F},G\in\mathcal{G}\}$

$\emptyset\notin\mathcal{F}\wedge\mathcal{G}$のとき$\mathcal{F}$$\mathcal{G}$は両立するという。このとき、$\mathcal{F}\wedge\mathcal{G}$$X$上のフィルター基底であり、特に$\mathcal{F}\wedge\mathcal{G}<\mathcal{F}$かつ$\mathcal{F}\wedge\mathcal{G}<\mathcal{G}$である。

明らかなため省略する。

細分関係と包含関係

集合$X$上のフィルター$\mathcal{F}$とフィルター$\mathcal{G}$に対して、$\mathcal{F}<\mathcal{G}$であることと$\mathcal{G}\subseteq\mathcal{F}$であることは同値である。

証明本文$\mathcal{F}<\mathcal{G}$ならば$F\in\mathcal{F}$に対して$F\subseteq G$なる$G\in\mathcal{G}$が取れて$\mathcal{F}$が上方へ閉じているため$G\in\mathcal{F}$となる。
フィルターの生成

集合$X$上のフィルター基底$\mathcal{F}$に対して、次を満たすような$X$上のフィルター$\mathcal{F}^\ast$が唯一つ存在する。

$\mathcal{F}<\mathcal{F}^\ast$であり、$X$上の任意のフィルター$\mathcal{G}$に対して$\mathcal{F}<\mathcal{G}$ならば$\mathcal{F}^\ast<\mathcal{G}$が成り立つ。
このことから、$\mathcal{F}^\ast$$\mathcal{F}$の生成するフィルターという。

証明本文
  1. 存在性
  2. $\mathcal{F}^\ast$を次のように定める。
    $\mathcal{F}^\ast=\{F\in 2^X\colon\exists S\in\mathcal{F},S\subseteq F\}$
    このとき、$\mathcal{F}^\ast$の定め方より$\mathcal{F}^\ast$はフィルターであり$\mathcal{F}<\mathcal{F}^\ast$を満たす。また、$\mathcal{F}<\mathcal{G}$を満たすような$X$上のフィルター$\mathcal{G}$を任意にとり固定したとき、$G\in\mathcal{G}$に対して$F\subseteq G$を満たすような$F\in\mathcal{F}$が取れるため$F\in\mathcal{F}^\ast$より$\mathcal{F}^\ast<\mathcal{G}$となる。
  3. 一意性
  4. $\mathcal{F}^\ast$とは別で定理の主張を満たすようなフィルター$\mathcal{G}$が取れるとすると、満たすべき条件より$\mathcal{F}^\ast<\mathcal{G}$かつ$\mathcal{G}<\mathcal{F}^\ast$となるため$\mathcal{F}^\ast=\mathcal{G}$となる。
有限交叉性とフィルター基底

有限交叉性を満たすような$X$の部分集合族$\mathcal{A}$に対して、次を満たすようなフィルター基底$\mathcal{F}$が存在する。

$\mathcal{F}<\mathcal{A}$であり$X$上の任意のフィルター基底$\mathcal{G}$に対して$\mathcal{G}<\mathcal{A}$ならば$\mathcal{G}<\mathcal{F}$である。
また各$\mathcal{A}$に対して定まる$\mathcal{F}$の生成するフィルターは、$\mathcal{F}$の取り方によらず一意である。このことから、$\mathcal{F}$$\mathcal{A}$により生成されたフィルター基底という。

証明本文
  1. 存在性
  2. $\mathcal{F}$を次のように定める。
    $\mathcal{F}=\left\{\bigcap_{i=1}^{n}A_i\relmiddle{|}(A_i)_{i=1}^{n}\in\mathcal{A}^n,n\in\naturals\right\}$
    このとき、$\mathcal{F}$の定め方より$\mathcal{F}$はフィルター基底であり$\mathcal{F}<\mathcal{A}$を満たす。また、$\mathcal{G}<\mathcal{A}$を満たすような$X$上のフィルター$\mathcal{G}$を任意にとり固定したとき、$F\in\mathcal{F}$に対して$F=\bigcap_{i=1}^{n}A_i$となるような$(A_i)\in\mathcal{A}^n$が取れて仮定より$G_i\subseteq A_i$となる$(G_i)\in\mathcal{G}^n$が取れるため$\bigcap_{i=1}^{n}G_i\in\mathcal{G}$かつ$\bigcap_{i=1}^{n}G_i\subseteq\bigcap_{i=1}^{n}A_i$より$\mathcal{G}<\mathcal{F}$となる。
  3. 弱い一意性
  4. 定理の主張を満たすようなフィルター基底を$\mathcal{F},\mathcal{G}$ととると、$\mathcal{F}<\mathcal{G}$かつ$\mathcal{G}<\mathcal{F}$なため$\mathcal{F}^\ast=\mathcal{G}^\ast$となる。
超フィルター

集合$X$上のフィルター$\mathcal{M}$が次を満たすとき、$\mathcal{M}$$X$上の超フィルターという。

$X$上の任意のフィルター基底$\mathcal{F}$に対して$\mathcal{F}<\mathcal{M}$ならば$\mathcal{M}=\mathcal{F}^\ast$が成り立つ。

超フィルターの性質

$X$上のフィルター$\mathcal{M}$に対して、次の条件は同値である。

  1. $\mathcal{M}$は超フィルターである。
  2. $\forall A\in 2^X,[\forall M\in\mathcal{M},\ A\cap M\neq\emptyset]\Rightarrow A\in\mathcal{M}$.
  3. $\forall(A_i)_{i=1}^{N}\in(2^X)^N,\ \exists k\in\{1,\ldots,N\}\mbox{ s.t. }\bigcup_{i=1}^{N}A_i\in\mathcal{M}\Rightarrow A_k\in\mathcal{M}$.
  4. $\forall A\in 2^X\Rightarrow A\in\mathcal{M}\lor A^\complement=X\setminus A\in\mathcal{M}$.

証明本文
  • [i.$\Longrightarrow$ii.]
  • $\mathcal{M}$を超フィルターと仮定し、$A\in 2^X$を任意に取り固定する。このとき、各$M\in\mathcal{M}$に対して$A\cap M\neq\emptyset$と仮定すると、$\mathcal{F}=\mathcal{M}\cup\{A\}$としたとき$\mathcal{F}$は有限交叉性を満たし尚且$\mathcal{F}<\mathcal{M}$であるため、$\mathcal{F}$の生成するフィルター基底として$\hat{\mathcal{F}}=\{\bigcap_{i=1}^{n}F_i\colon(F_i)\in\mathcal{F}^n,n\in\naturals\}$ととったとき$\hat{\mathcal{F}}<\mathcal{M}$となることから、超フィルターの定義より$\mathcal{M}=\hat{\mathcal{F}}^\ast$となる。ここで、$A\in\hat{\mathcal{F}}$より$A\in\hat{\mathcal{F}}^\ast$となるため、$A\in\mathcal{M}$となる。
  • [ii.$\Longrightarrow$iii.]
  • ii.を仮定し、$(A_i)_{i=1}^{N}\in(2^X)^N$を任意にとり固定して、$A=\bigcup_{i=1}^{N}A_i\in\mathcal{M}$と仮定する。このとき、いずれの$i\in\{1,\ldots,N\}$についても$A_i\notin\mathcal{M}$であると仮定すると、ii.より各$i\in\{1,\ldots,N\}$に対し$A_i\cap M_i=\emptyset$となる$M_i\in\mathcal{M}$が存在する。 このとき、$A\cap\bigcap_{i=1}^{N}M_i=\emptyset$となるが、$A\in\mathcal{M}$かつ$\bigcap_{i=1}^{N}M_i\in\mathcal{M}$より矛盾する。よって、$A_k\in\mathcal{M}$となる$k\in\{1,\ldots,N\}$が存在する。
  • [iii.$\Longrightarrow$iv.]
  • iii.を仮定すると、$X\in\mathcal{M}$かつ$X=A\cup(X\setminus A)$よりiv.は成り立つ。
  • [iv.$\Longrightarrow$i.]
  • iv.を仮定する。$\mathcal{F}<\mathcal{M}$を満たすようなフィルター基底$\mathcal{F}$を任意にとり固定して$\mathcal{F}^\ast\setminus\mathcal{M}\neq\emptyset$と仮定する。ここで、$A\in\mathcal{F}^\ast\setminus\mathcal{M}$を取ると、$X\in\mathcal{M}$かつ$X=(X\setminus A)\cup A$より$X\setminus A\in\mathcal{M}$となるため、$A\cap(X\setminus A)=\emptyset$から$\mathcal{F}^\ast$の有限交叉性に反する。よって、$\mathcal{M}=\mathcal{F}^\ast$が成り立つ。
超フィルターの存在

このとき、有限交叉性を持つような$X$の部分集合族$\mathcal{F}$を任意にとったとき、$\mathcal{M}<\mathcal{F}$を満たすような$X$上の超フィルター$\mathcal{M}$が必ず存在する。

証明本文$\mathcal{F}$を有限交叉性を持つような$X$の部分集合族として任意にとり固定して、$\mathcal{G}<\mathcal{F}$を満たすような有限交叉性を持つ$X$の部分集合族$\mathcal{G}$全体を$\mathbf{fip}(\mathcal{F})$とすると$\mathbf{fip}(\mathcal{F})$は包含関係$\subseteq$によって半順序集合となる。ここで、$\mathbf{fip}(\mathcal{F})$の全順序部分集合$\mathbf{P}$を任意にとり固定して$\mathcal{P}=\bigcup\mathbf{P}$とすると、$(A_i)_{i=1}^{n}\in\mathcal{P}^n$に対して$A_i\in\mathcal{P}_i$なる$\mathcal{P}_i\in\mathbf{P}$をとり$\mathcal{P}^\prime=\max_\mathbf{P}\{\mathcal{P}_i\colon i=1,\ldots,n\}$とすると$\mathcal{P}^\prime\subseteq\mathcal{P}$かつ$\mathcal{P}^\prime\in\mathbf{P}$より$\bigcap_{i=1}^{n}A_i\neq\emptyset$となる。これらより$\mathcal{P}$は有限交叉性を持つような$X$の部分集合族となるため、$\mathcal{P}$$\mathbf{P}$の上界となる。したがって、$\mathbf{fip}(\mathcal{F})$は帰納的順序集合となるため、Zornの補題より$\mathbf{fip}(\mathcal{F})$の極大元$\mathcal{M}$が存在する。ここで、$\mathcal{M}$の生成するフィルターを$\mathcal{M}^{\wedge}$とすると$\mathcal{M}\subseteq\mathcal{M}^{\wedge}$$\mathcal{M}$の極大性より$\mathcal{M}=\mathcal{M}^{\wedge}$となる。

フィルターの収束

$X$を位相空間とし、$\mathcal{U}$$X$の近傍系とする。このとき、各$x\in X$に対して$\mathcal{U}(x)$はフィルターとなる。
次に、フィルター基底の収束を定義する。

フィルター基底の収束

$\mathcal{F}$$X$のフィルター基底としたとき、点$x\in X$に対して$\mathcal{F}<\mathcal{U}(x)$が成り立つとき$\mathcal{F}$は点$x\in X$収束するといい、$x$$\mathcal{F}$極限点という。$\mathcal{F}$の極限点全体を$\lim\mathcal{F}$とする。また、$\lim\mathcal{F}\neq\emptyset$なるフィルター基底$\mathcal{F}$を収束フィルター基底という。

例えば、$X$を距離関数$d$による距離空間として$(x_n)$$X$上の点列としたとき、各例えば、$X$を距離関数$d$による距離空間として$(x_n)$$X$上の点列としたとき、各$n\in\naturals$に対して$F_n=\{x_k\colon n\leq k\}$として$X$の部分集合族$\mathcal{F}=\{F_n\colon n\in\naturals\}$を定めると$\mathcal{F}$はフィルター基底であり、任意の$x\in X$に対して次が同値となる。

  1. 点列$(x_n)$$x$に収束する点列である。
  2. $\mathcal{F}$$X$上の点$x$へ収束する。

実際、$F_a,F_b\in\mathcal{F}$に対して$F_a\cap F_b=F_{\max\{a,b\}}$なため$\mathcal{F}$はフィルター基底である。また、$(x_n)$$x$へ収束する点列と仮定すると、$U$$x$の近傍としたとき$B_r(x)\subseteq U$となるような点$x$の半径$r$な開球$B_r(x)$が取れる。ここで、ある$N(r)\in\naturals$が存在して、任意の$n\in\naturals$に対して$n\geq N(r)$ならば$x_n\in B_r(x)$なため、$F_{N(r)}\subseteq B_r(x)$となる。よって、$x\in\lim\mathcal{F}$となるため$\mathcal{F}$は収束するフィルター基底である。逆に、$\mathcal{F}$$x$へ収束するフィルター基底と仮定すると、任意の$r>0$に対して$F_{N(r)}\subseteq B_r(x)$なる$N(r)\in\naturals$が存在するため、$n\in\naturals$に対して$n\geq N(r)$ならば$x_n\in F_{N(r)}\subseteq B_r(x)$より$d(x,x_n)< r$となる。よって、$(x_n)$は収束点列である。

また距離空間$X$において、その部分集合$A$の閉包$\overline{A}$は、$A$上の収束点列の極限点全体と等しくなるという性質があるが、より一般の位相空間においても同様な関係がある。

閉包とフィルター基底

位相空間$X$の部分集合$A$として、$x\in X$に対して次が同値である。

  1. $x\in\overline{A}$
  2. $x$に収束するような$A$上のフィルター基底が存在する。

証明本文
  • [i.$\Longrightarrow$ii.]
  • 仮定より、$U\in\mathcal{U}(x)$に対して$U\cap A\neq\emptyset$なため$\mathcal{F}=\{U\cap A\colon U\in\mathcal{U}(x)\}$とすると$\mathcal{F}$$A$上のフィルター基底であって$\mathcal{F}<\mathcal{U}(x)$なため$x\in\lim\mathcal{F}$となる
  • [ii.$\Longrightarrow$i.]
  • $x\in\lim\mathcal{F}$となるような$A$上のフィルター基底$\mathcal{F}$をとったとき、$F\in\mathcal{F}$を任意にとり固定したとき、任意の$U\in\mathcal{U}(x)$に対して$\emptyset\neq U\cap F\subseteq U\cap A$より$x\in\overline{A}$となる。

このことから、位相空間$X$の部分集合$A$に対して$\overline{A}=\bigcup\{\lim\mathcal{F}\colon\mathcal{F}\mbox{は}A\mbox{上のフィルター基底}\}$が成り立つ。

収束するフィルター基底$\mathcal{F}$に対して、$\mathcal{F}$の極限点$x,y$は近傍で分離されないという性質がある。

近傍系の両立とフィルター基底

$X$を位相空間とし$\mathcal{U}$$X$の近傍系する。このとき、$x,y\in X$に対して次が同値である。

  1. $x,y\in\lim\mathcal{F}$を満たすような$X$上のフィルター基底$\mathcal{F}$が存在する。
  2. $\mathcal{U}(x)$$\mathcal{U}(y)$は両立する。すなわち、$\emptyset\notin\mathcal{U}(x)\wedge\mathcal{U}(y)$を満たす。

証明本文
  • [i.$\Longrightarrow$ii.]
  • 仮定より、$\mathcal{F}<\mathcal{U}(x)$かつ$\mathcal{U}(y)$なため$A\in\mathcal{U}(x)\wedge\mathcal{U}(y)$に対して$A=U\cap V$となる$U\in\mathcal{U}(x),V\in\mathcal{V}(y)$が取れて$F\subseteq A$となる$F\in\mathcal{F}$が取れて$F\neq\emptyset$より$A\neq\emptyset$。したがって、$\mathcal{U}(x)$$\mathcal{U}(y)$は両立する。
  • [ii.$\Longrightarrow$i.]
  • 仮定より$\mathcal{F}=\mathcal{U}(x)\wedge\mathcal{U}(y)$はフィルター基底であり、$\mathcal{F}<\mathcal{U}(x)$かつ$\mathcal{F}<\mathcal{U}(y)$より$x,y\in\lim\mathcal{F}$となる。

この補題により、このことから次が導かれる。

Hausdorff性とフィルターの収束

位相空間$X$に対して次が同値である。

  1. $X$はHausdorff空間である。
  2. $X$上の任意の収束フィルター基底の極限は一意に定まる。

証明本文
  • [i.$\Longrightarrow$ii.]
  • 仮定より、$\mathcal{F}$を収束するフィルター基底として任意にとり固定したとき、$x\neq y$を満たすように$x,y\in\lim\mathcal{F}$をとったとき先の補題から$\mathcal{U}(x)$$\mathcal{U}(y)$は両立するため、任意の$U\in\mathcal{U}(x)$,$V\in\mathcal{U}(y)$に対して$U\cap V\neq\emptyset$となるが仮定に矛盾。よって、$\mathcal{F}$の極限は一意である。
  • [ii.$\Longrightarrow$i.]
  • $x\neq y$なる$x,y\in X$に対して、仮定より$x\in\lim\mathcal{F}$を満たす任意の収束フィルターに対して$y\notin\lim\mathcal{F}$なため、先の補題から$\emptyset\in\mathcal{U}(x)\wedge\mathcal{U}(y)$となるため$U\cap V=\emptyset$となる$U\in\mathcal{U}(x),V\in\mathcal{U}(y)$が取れる。よって、$X$はHausdorff空間である。

極限点全体の性質

フィルター基底$\mathcal{F}$の極限点全体$\lim\mathcal{F}$の性質をいくつかまとめる。

極限点と堆積点

$\mathcal{F}$を位相空間$X$上のフィルター基底とする。$x\in X$に対して$\mathcal{F}$$\mathcal{U}(x)$が両立するとき点$x$$\mathcal{F}$堆積点という。
このとき、次がそれぞれ成り立つ。

  1. $\mathcal{F}$の堆積点全体は$\bigcap_{F\in\mathcal{F}}\overline{F}$である。
  2. $\bigcup\{\lim\mathcal{G}\colon\mathcal{G}\mbox{は}\mathcal{G}<\mathcal{F}\mbox{を満たすようなフィルター基底}\}=\bigcap_{F\in\mathcal{F}}\overline{F}$が成り立つ。
特に、$\mathcal{F}$が超フィルターであるとき$\lim\mathcal{F}=\bigcap_{F\in\mathcal{F}}\overline{F}$となる。

証明本文
  1. $x$$\mathcal{F}$の堆積点としたとき、$\emptyset\notin\mathcal{F}\wedge\mathcal{U}(x)$なため$F\in\mathcal{F}$を任意にとり固定したとき、$U\in\mathcal{U}(x)$に対して$U\cap F\neq\emptyset$より$x\in\overline{F}$となる。よって、$x\in\bigcap_{F\in\mathcal{F}}\overline{F}$となる。他方、$x\in\bigcap_{F\in\mathcal{F}}\overline{F}$に対して$F\in\mathcal{F}$を任意にとり固定したとき、$x\in\overline{F}$より任意の$U\in\mathcal{U}(x)$に対して$U\cap F\neq\emptyset$となるため、$\emptyset\notin\mathcal{F}\wedge\mathcal{U}(x)$となる。よって、$\mathcal{F}$$\mathcal{U}(x)$は両立するため、$x$$\mathcal{F}$の堆積点である。
  2. $x\in\bigcap_{F\in\mathcal{F}}\overline{F}$に対して$\mathcal{G}=\mathcal{F}\wedge\mathcal{U}(x)$とすると$\mathcal{G}$はフィルター基底であり$\mathcal{G}<\mathcal{F}$かつ$\mathcal{G}<\mathcal{U}$を満たすため、$x\in\lim\mathcal{G}$である。逆に$\mathcal{G}$$\mathcal{G}<\mathcal{F}$を満たすようなフィルター基底を任意にとり固定したとき、$x\in\lim\mathcal{G}$に対して$\mathcal{G}<\mathcal{U}(x)$より$\mathcal{G}<\mathcal{F}\wedge\mathcal{U}(x)$となるため$\emptyset\notin\mathcal{F}\wedge\mathcal{U}(x)$となる。よって、$\mathcal{F}$$\mathcal{U}(x)$は両立するため、$x$$\mathcal{F}$の堆積点となる。

対角線集合

対角線集合

集合$X$の対角線集合$\Delta(X)$$\Delta(X)=\{(x,x)\colon x\in X\}$と定める。

積空間について復習

位相空間$X,Y$に対して積集合$X\times Y$$\{G\times H\colon G\mbox{は}X\mbox{の開集合},H\mbox{は}Y\mbox{の開集合}\}$の生成する位相により位相空間となっている。

次の定理は、二個直積に限らず任意個の位相空間よる直積空間においても成り立つ。

積空間における閉包

$A,B$をそれぞれ位相空間$X,Y$の部分集合とする。このとき、積空間$X\times Y$において$\overline{A\times B}=\overline{A}\times\overline{B}$が成り立つ。

証明本文$(x,y)\in\overline{A\times B}$に対して、$U,V$$X,Y$における$x,y$の近傍とすると$U\times V$$X\times Y$における$(x,y)$の近傍なため$A\times B\cap U\times V=(A\cap U)\times(B\times V)\neq\emptyset$なため$A\cap U\neq\emptyset$かつ$B\cap V\neq\emptyset$となる。よって$(x,y)\in\overline{A}\times\overline{B}$となる。他方、$(x,y)\in\overline{A}\times\overline{B}$に対して$W$を積空間$X\times Y$における$(x,y)$の近傍とすると$U\times V\subseteq W$となる$X,Y$における$x,y$の近傍$U,V$が取れるため、$\emptyset\neq(A\cap U)\times(B\cap V)=A\times B\cap U\times V\subseteq A\times B\cap W$となる。よって$(x,y)\in\overline{A\times B}$となる。
積空間と連続写像

位相空間$X,Y,A$と写像$f\colon A\to X\times Y$に対して、次が同値となる。

  1. $f$は連続写像である。
  2. $p\colon X\times Y\to X,q\colon X\times Y\to Y$をそれぞれ射影としたとき、$p\circ f,q\circ f$はそれぞれ連続写像である。

証明本文
  • [i.$\Longrightarrow$ii.]
  • 各射影が連続写像であることから明らか。
  • [ii.$\Longrightarrow$i.]
  • $G$を積空間$X\times Y$の開集合としたとき$\bigcap_{i=1}^{n}(A_i\times B_i)\subseteq G$を満たすような$X,Y$の有限開集合列$(A_i),(B_i)$が取れる。ここで、
    $f^{-1}\left(\bigcap_{i=1}^{n}(A_i\times B_i)\right)=\bigcap_{i=1}^{n}f^{-1}(p^{-1}(A_i)\cap q^{-1}(B_i))=\bigcap_{i=1}^{n}(p\circ f)^{-1}(A_i)\cap\bigcap_{i=1}^{n}(q\circ f)^{-1}(B_i)$
    となるため、$p\circ f,q\circ f$の連続性から$f^{-1}(G)$$A$の開集合となる。
    したがって、$f$は連続写像となる。

Hausdorff性と対角線集合

Hausdorff性と対角線集合

位相空間$X$に対して次が同値である。

  1. $X$はHausdorff空間である。
  2. $\Delta(X)$は積空間$X\times X$において閉集合である。

証明本文
  • [i.$\Longrightarrow$ii.]
  • $(x,y)\in\overline{\Delta(X)}$を任意にとり固定する。このとき、$U,V$$X$における$x,y$の近傍として任意にとったとき$U\times V\cap\Delta(X)\neq\emptyset$より$U\cap V\neq\emptyset$となる。よって、$x\neq y$なら仮定に反するため$x=y$となる。すなわち、$\overline{\Delta(X)}\subseteq\Delta(X)$となるため、$\Delta(X)$$X\times Y$において閉集合である。
  • [ii.$\Longrightarrow$i.]
  • $x\neq y$として点$x,y\in X$を任意にとり固定する。このとき、$(x,y)\notin\Delta(X)$より仮定から$U\times V\cap\Delta(X)=\emptyset$となる$X$における$x,y$の近傍$U,V$が取れる。よって、$U\cap V=\emptyset$となるため、$x,y$は近傍で分離される。したがって、$X$はHausdorff空間である。

位相空間$X,Y$に対して、$Y$がHausdorff空間ならば任意の連続写像$f,g\colon X\to Y$に対して$f,g$の等化子$\operatorname{Eq}(f,g)=\{x\in X\colon f(x)=g(x)\}$$X$において閉集合である。

証明本文$Y$をHausdorff空間と仮定すると$\Delta(Y)$は積空間$Y\times Y$において閉集合となる。ここで、写像$t\colon X\to Y\times Y$$t(x)=(f(x),g(x)),x\in X$として定めると$f,g$の連続性より$t$も連続写像となるため、$\operatorname{Eq}(f,g)=t^{-1}(\Delta(Y))$より$\operatorname{Eq}(f,g)$$X$において閉集合である。
投稿日:510
更新日:510

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

桜武
桜武
5
393
ガジェットとお酒を愛する成人男性 圏論の、特に豊穣圏とかが好き

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中