以下の記事を読んでからこの記事を読むと理解度が上がると思います。
ベクトル解析 その1
お久しぶりです。翠です。これで、はじめましての方も次回から久しぶりと言えるようになりましたね。そんなことはさておき、今回はベクトル解析 その2の記事を頑張って書きます。
前回の記事ではベクトルの内外積や三重積について紹介しました。この記事ではベクトルの微分積分や場というものについて紹介しようと思います。
まず微分積分って、皆さんは実関数でしか扱ったことがないと思います。これがなんと複素関数や今回お話するベクトル関数でも扱えてしまうんですね。まあベクトル解析その1を見てもらうと分かる通り、実関数と複素関数、ベクトル関数では扱い方が違うので実関数で成立するものがこいつらでも全て成立しているとは言えない部分はあります。(交換、結合、分配法則とか)なので今回はベクトル関数での正しい(?)扱い方を説明しようと思います。
ベクトル関数の導関数は実関数と同様の結果が得られます。
$\frac{d}{dt}\boldsymbol{A}(t)=\lim_{ \Delta t\to 0}\frac{\boldsymbol{A}(t+\Delta t)- \boldsymbol{A}(t)}{\Delta t} $
こちらを成分表示して考えてみます。
$\frac{d}{dt}\boldsymbol{A}(t)=(\lim_{ \Delta t\to 0}\frac{A_x(t+\Delta t)-A_x(t)}{\Delta t})\boldsymbol{i}+(\lim_{ \Delta t\to 0}\frac{A_y(t+\Delta t)-A_y(t)}{\Delta t})\boldsymbol{j}+(\lim_{ \Delta t\to 0}\frac{A_z(t+\Delta t)-A_z(t)}{\Delta t})\boldsymbol{k}$
これを見れば分かる通り、ベクトルの各成分毎に微分してokです。
ここで、ベクトル関数の微分の性質を見ていきましょう。
$(\boldsymbol{A},\boldsymbol{B}:ベクトル関数,f:スカラー関数,k:スカラー定数)$
ベクトル関数の微分では以下の性質が成立する。
$1,\frac{d}{dx}k\boldsymbol{A}=k\frac{d}{dx}\boldsymbol{A}$
$2,\frac{d}{dx}(\boldsymbol{A} \pm \boldsymbol{B})=\frac{d}{dx}\boldsymbol{A}\pm\frac{d}{dx}\boldsymbol{B}$
$3,\frac{d}{dx}f\boldsymbol{A}=\frac{df}{dx}\boldsymbol{A}+\frac{d\boldsymbol{A}}{dx}f$
$4,\frac{d}{dx}(\boldsymbol{A} \cdot\boldsymbol{B})=\frac{d}{dx}\boldsymbol{A} \cdot\boldsymbol{B}+\boldsymbol{A}\cdot\frac{d}{dx}\boldsymbol{B}$
$5,\frac{d}{dx}(\boldsymbol{A} \times\boldsymbol{B})=\frac{d}{dx}\boldsymbol{A} \times\boldsymbol{B}+\boldsymbol{A}\times\frac{d}{dx}\boldsymbol{B}$
$4,5$を示してみましょう。
$\boldsymbol{A}=(a_x,a_y,a_z),\boldsymbol{B}=(b_x,b_y,b_z)$とする。
また、$\boldsymbol{A},\boldsymbol{B}$はそれぞれ$t$を変数とするベクトル関数である。
$(\boldsymbol{A} \cdot\boldsymbol{B})=a_xb_x+a_yb_y+a_zb_z$
$\boldsymbol{A},\boldsymbol{B}$の成分表示はそれぞれスカラー関数を表しているので、項ごとに微分を考える。
積の微分を用いると以下のように表せる。
$\frac{d}{dt}(\boldsymbol{A} \cdot\boldsymbol{B})$
$=(a_xb_x+a_yb_y+a_zb_z)^{\prime}$
$=(a_x'b_x+a_y'b_y+a_z'b_z)+(a_xb_x'+a_yb_y'+a_zb_z')$
$\frac{d}{dx}\boldsymbol{A} \cdot\boldsymbol{B}+\boldsymbol{A}\cdot\frac{d}{dx}\boldsymbol{B}$
(条件は$4$と同じ設定で行います。それとこの証明、文字が多くて横に並べるとすごく長くなってしまって見づらくなってしまうので成分は縦に書きます。ごめんね。)
$\boldsymbol{A}=\begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cc}
a_x \\
a_y \\
a_z
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}$$\boldsymbol{B}=\begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cc}
b_x \\
b_y \\
b_z
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}$とする
$\frac{d}{dt}(\boldsymbol{A}\times\boldsymbol{B})$
=$\begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cc}
(a_y'b_z+a_yb_z')-(a_z'b_y+a_zb_y') \\
(a_z'b_x+a_zb_x')-(a_x'b_z+a_xb_x') \\
(a_x'b_y+a_xb_y')-(a_y'b_x+a_yb_x')
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}$
=$\begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cc}
(a_y'b_z-a_z'b_y)+(a_yb_z'-a_zb_y') \\
(a_z'b_x-a_x'b_z)+(a_zb_x'-a_xb_x') \\
(a_x'b_y-a_y'b_x)+(a_xb_y'-a_yb_x')
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}$
$=\frac{d}{dt}\boldsymbol{A}\times\boldsymbol{B}+\boldsymbol{A}\times\frac{d}{dt}\boldsymbol{B}$
高階微分、偏微分もスカラー関数と同様に定義されます。そこら辺の詳しい話については、今回は割愛します。
$\boldsymbol{D}(t)$の導関数を$\boldsymbol{A}(t)$とするとき、
$\boldsymbol{D}(t)=\int \boldsymbol{A}(t)dt$と表します。
また,$\boldsymbol{D}(t)+\boldsymbol{C}$の導関数は$\boldsymbol{A}(t)$($\boldsymbol{C}$は積分定数)となります。
成分表示を用いて考えると、以下のような結果が得られます。
$\int \boldsymbol{A}(t)dt=(\int A_x(t)dt)\boldsymbol{i}+(\int A_y(t)dt)\boldsymbol{j}+(\int A_x(t)dt)\boldsymbol{k}$
これを見れば分かる通り、ベクトル関数の積分も、微分と同様に成分ごとに積分すれば良いことがわかります。
ここで、ベクトル関数の積分の性質について見ていきましょう。
以下の性質が成立します。
$\int\boldsymbol{A}(t)\pm\boldsymbol{B}(t))dt=\int\boldsymbol{A}(t)dt\pm\int\boldsymbol{B}(t)dt$
$\int k\boldsymbol{A}(t)dt=k\int\boldsymbol{A}(t)dt$
こう見ると、関数の積についての積分が成立しないということがわかります、ちょっと意外な結果ですよね。
ベクトル関数の定積分の視覚化
$τ_i$は関数上の任意の点、$\Delta t$は$τ_i$を含む区間の変化量を表しています。
$\int_{a}^{b}\boldsymbol{A}(t)dt:= \lim_{n \to \infty} \sum_{i=0}^{n}\boldsymbol{A}(τ_i)\Delta t_i $
これはスカラー関数の定積分$\int_{a}^{b}f(x)dx:= \lim_{n \to \infty} \sum_{i=0}^{n}f(x)\Delta x$と同じですね。総和の中身がスカラー関数からベクトル関数に変わったものです。
また、成分表示を用いると以下のように計算できます。
$\int_{a}^{b}\boldsymbol{A}(t)dt=(\int_{a}^{b}A_x(t)dt)\boldsymbol{i}+(\int_{a}^{b}A_y(t)dt)\boldsymbol{j}+(\int_{a}^{b}A_z(t)dt)\boldsymbol{k}$
また、$\boldsymbol{D}$を$\boldsymbol{A}$の不定積分の一つとすると、以下のような結果が得られます。
$\int_{a}^{b}\boldsymbol{A}(t)dt=[\boldsymbol{D}(t)]_{a}^{b}=\boldsymbol{D}(b)-\boldsymbol{D}(a)$
数学では聞き慣れない言葉だと思います。でも漢字を見ると「空間を扱うのかな?」と考えることができます。それでは解説していきます。
空間中のある領域の各点に対してスカラーが対応しているとき、
その対応をスカラー場という。
空間中のある領域の各点に対してベクトルが対応しているとき、
その対応をベクトル場という。
日本語で書かれてもわかりませんね。具体例を使って説明します。
すごーく簡単に言うと、
スカラー場は「空間中にスカラー量が存在している状態」、
ベクトル場は「空間中にベクトル量が存在している状態」を指します。
スカラー場は温度分布とか電荷密度、ベクトル場は流体の速度分布や磁場、電場などが挙げられます。
終わり方なんかムズムズするけどごめんね。次回以降はキリがいいところまで進めます。
前回はそこまで難しい内容でなかったのに、今回は踏み込んだ内容で前回よりも分量が多くなっております。多大なるごめんなさいをしたいところです。次回の反省点ですね。ベクトル解析シリーズは多分修正が難しいので別のシリーズが始まったら考えます。orz
今回の記事ですが個人的にはわかりやすく噛み砕いて書いたつもりですが、人によっては分かりづらいかもしれません。分量調節バカみたいに下手だったし。なのでわからなかった場合は何回も記事を読み直すことをおすすめします。若しくはコメントで質問とか。答えられるものについてはわかりやすく丁寧に答えたいと思ってます。また、記事の感想、改善点、指摘も受け付けております。できれば優しい文面で書いてくれるとありがたいです...
次回の記事がいつになるかはわかりませんが、そのうち書こうと思います。ベクトル解析の続きじゃないかもしれないけど。でもわかりやすく書くのは心がけます。ではまたいつか会いましょう。