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解説大学数学以上
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半群だが群でない例

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半群

$S$を集合とする. 写像$*:S \times S \to S$$S$の演算という. $*(f, g)$$f*g$と書くことにする. $S$
結合律:$(f*g)*h=f*(g*h)$
を満たすとき, $S$を半群という.

$N$次元ユークリッド空間$\mathbb{R}^N$においてルベーグ積分の意味で積分可能な関数の空間$L^1$は畳み込み
$$(f*g)(x)=\int f(y)g(x-y)dy$$
を演算として半群を成す. $L^1$は単位元を持たないゆえ, 群ではない.

緩増加超関数の空間$\mathcal{S}'\supset L^1$の意味でのフーリエ変換$\mathcal{F}$を考える. $L^1$が畳み込みについて単位元を持ちそれが$e$だとすると, 任意の$f\in L^1$に対して
$f*e=f$である. 両辺をフーリエ変換すると畳み込みの性質より
$\mathcal{F}(f)\mathcal{F}(e)=\mathcal{F}(f).$
緩増加超関数のフーリエ変換は$\mathcal{S}'$から$\mathcal{S}'$への(連続線型全)単射であるから$f\neq 0$とすると, $\mathcal{F}(e)=1$(定数関数としての$1$)でなければならない. 再び単射性より$e$はデルタ超関数(の$N$による定数倍)でなければならない. デルタ超関数は可積分関数ではないから$L^1$は半群であるが群ではない. (台がコンパクトな超関数の積分は正当化されるが, $L^1$$f*e=f$は成り立たない.)

参考文献

投稿日:30日前
更新日:19日前

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収入が少ないので, Mathlogのお金を支払う機能で支援してくだされば幸いです. 研究の記事の他に, 発見シリーズ, 行間シリーズ, 超入門シリーズも書いています. 北田均『数理解析学概論』新訂版序文の「ほぼ独学と思われる熱心な読者」, 結城浩『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』あとがきの「類太郎」. 指摘を受けたり自分で誤りに気付いて, 後から訂正することも多々ある. 寛容な目で温かい目で見て頂きたい. 何かあればご連絡を頂きたい. 悪意のあるきつい言い方をされたことも多々あったが, それさえしなければ指摘には真摯に対応したい. 数式, 特に偏微分方程式が好き. 多変数複素解析のヘルマンダーの方法:複素多様体における外微分 d を d=∂′+∂′′ とするとき‚ 既知微分形式 f と未知微分形式 u について ∂′′u=f (ディーバー方程式)の可解性で諸問題を考える方法, 複素多様体における微分幾何として複素モンジュ-アンペール方程式の解の存在, 代数解析の偏微分方程式への応用でも何かを遺したい.

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