$S$を集合とする. 写像$*:S \times S \to S$を$S$の演算という. $*(f, g)$を$f*g$と書くことにする. $S$が
結合律:$(f*g)*h=f*(g*h)$
を満たすとき, $S$を半群という.
$N$次元ユークリッド空間$\mathbb{R}^N$においてルベーグ積分の意味で積分可能な関数の空間$L^1$は畳み込み
$$(f*g)(x)=\int f(y)g(x-y)dy$$
を演算として半群を成す. $L^1$は単位元を持たないゆえ, 群ではない.
緩増加超関数の空間$\mathcal{S}'\supset L^1$の意味でのフーリエ変換$\mathcal{F}$を考える. $L^1$が畳み込みについて単位元を持ちそれが$e$だとすると, 任意の$f\in L^1$に対して
$f*e=f$である. 両辺をフーリエ変換すると畳み込みの性質より
$\mathcal{F}(f)\mathcal{F}(e)=\mathcal{F}(f).$
緩増加超関数のフーリエ変換は$\mathcal{S}'$から$\mathcal{S}'$への(連続線型全)単射であるから$f\neq 0$とすると, $\mathcal{F}(e)=1$(定数関数としての$1$)でなければならない. 再び単射性より$e$はデルタ超関数(の$N$による定数倍)でなければならない. デルタ超関数は可積分関数ではないから$L^1$は半群であるが群ではない. (台がコンパクトな超関数の積分は正当化されるが, $L^1$で$f*e=f$は成り立たない.)