有限集合 $A_1,\dots,A_k$ が相互に素、すなわち $i\ne j$ なら $A_i\cap A_j=\varnothing$ とする。このとき
$$
\left|\bigcup_{i=1}^k A_i\right|=\sum_{i=1}^k |A_i|
$$
が成り立つ。
数学的帰納法により示す。
-これにより、$k+1$ 個の場合も成立することが示され、
帰納法により任意の自然数 $k$ に対して命題が成立することが証明された。
$$ \Box$$
集合 $A$ に対して、ある $n\in\mathbb N_0$ との全単射
$$
\varphi : [n] \longrightarrow A
$$
が存在するとき、$A$ を有限集合といい、そのときの $n$ を $|A|$ と書く。
$ $
すなわち、証明中の$|A_1|=n$ から、定義より、ある全単射
$$
\varphi : [n] \longrightarrow A_1
$$
が存在し、全単射には逆写像が存在するので、
$$
\varphi^{-1} : A_1 \longrightarrow [n]
$$
もまた全単射である。ここで $\{1,\dots,n\}:=[n]$ なので、
$$
f := \varphi^{-1} : A_1 \longrightarrow \{1,\dots,n\}
$$
と置けば、証明の中で触れられている
$$
f : A_1 \to \{1,\dots,n\}
$$
という全単射が存在することになる。
もし $\bigcup_{i=1}^k A_i$ という集合と $A_{k+1}$ という集合は互いに素でない場合、
ある $j \leq k$ に対して $x \in A_j$ かつ $x \in A_{k+1}$ となる。
しかしこれは $j \neq k+1$ なので、仮定($A_i$ が相互に素)に矛盾する。
ゆえに共通部分は空である。
-◇ 単射性の証明
$h(x)=h(y)$ を仮定して場合分けする。
-◇ 全射性の証明
終域の任意の元 $z \in \{1, 2, \dots, n+m\}$ をとり、
その値の範囲によって場合分けをして、対応する元の存在を示す。
$ $
-したがって、1, 2 のいずれの場合も、任意の $z \in \{1, \dots, n+m\}$ に対して、
$h(x) = z$ となる $x \in A_1 \cup A_2$ が見つかった。ゆえに、$h$ は全射である。
$ $
-結論
以上から $h$ は全単射である事が示された。
互いに素な事象$A,B$について、 $A$ が $m$ 通り、事象 $B$ が $n$ 通りの方法で起こるとする。
このとき、「$A$ または $B$ のいずれかが起こる」方法の総数は、
$$
m + n
$$
通りである。
この命題は「有限加法性(加法原理)」の特別な場合($k=2$)のケース)にすぎない。
既に示した通り、相互に素な有限集合族 ($(A_i)_{i=1}^k$) に対して
$$
\left|\bigcup_{i=1}^k A_i\right|=\sum_{i=1}^k |A_i|
$$
が成り立つ、というもので、この命題はこれの $k=2$(かつ$|A|=m,\ |B|=n$)に相当し、
$$
|A\cup B|=|A|+|B|=m+n
$$
となる、という位置づけである。
互いに素な事象 $A,B$ があり、$A$ は互いに素な事象 $A_1,\dots,A_m$ の和、
$B$ もまた互いに素な事象 $B_1,\dots,B_n$ の和で、
$$
A=\bigsqcup_{i=1}^m A_i,\quad B=\bigsqcup_{j=1}^n B_j,\quad |A_i|=|B_j|=1,\quad A\cap B=\varnothing
$$
とする。すると
$$
\begin{aligned}
|A\cup B|
&=\Bigl|\bigl(\bigsqcup_{i=1}^m A_i\bigr)\cup \bigl(\bigsqcup_{j=1}^n B_j\bigr)\Bigr| \quad \because\ \text{仮定より }A=\bigsqcup_{i=1}^m A_i,\ B=\bigsqcup_{j=1}^n B_j \\
&=\sum_{i=1}^m |A_i|+\sum_{j=1}^n |B_j| \quad \because\ A=\bigsqcup_{i=1}^m A_i,\ B=\bigsqcup_{j=1}^n B_j,\ A\cap B=\varnothing\ \text{なので互いに素な族の有限加法性より}\\
&=\sum_{i=1}^m 1+\sum_{j=1}^n 1 \quad \because\ |A_i|=|B_j|=1\\
&=m+n \quad \because\ \sum_{i=1}^m 1=m,\ \sum_{j=1}^n 1=n
\end{aligned}
$$
より、方法の総数は $m+n$ 通りである。
$$ \Box$$
有限集合 $ A $ と $ B $ に対して、
$$
A \times B := \{ (a, b) \mid a \in A,\ b \in B \}
$$
を $ A $ と $ B $ の直積と定義する。このとき、直積の元の個数は
$$
|A \times B| = |A| \cdot |B|
$$
となる。
有限集合 $ A $ と $ B $ に対して、各集合の要素数を、いま
$$
|A|=n
$$
$$
|B|=m
$$
とする。集合$A$の各元 $a \in A$ に対して、
$$
B_a = \{(a, b) \mid b \in B\}
$$
と定義する。この集合は、$a$が固定されているから、固定された$a$に対して各$b$のタプルからなる集合である。
例えば、$a=1$のとき$B=\{1,2,3\}$ならば
$$
B_1=\{(1,1),(1,2),(1,3)\}
$$
といった感じである。
このとき、定義から
$$
A \times B = \bigcup_{a \in A} B_a\cdots①
$$
が言える。
例えば$A=\{1,2,3\}$と$B=\{1,2,3\}$からなる集合であるとき、
$$
\bigcup_{a \in A} B_a=\{(1,1),(1,2),(1,3)\}\cup \{(2,1),(2,2),(2,3)\}\cup \{(3,1),(3,2),(3,3)\}
$$
となり、これは確かに直積
$$
A \times B=\{(a,b)|\ a\in A,b \in B\}
$$
と一致する。
また、この和は $a \neq a'$ のとき、$B_a$ の元は $(a, b)$、$B_{a'}$ の元は $(a', b')$ の形をしており、
第$1$成分が異なるため決して一致しない。ゆえに $B_a \cap B_{a'} = \varnothing$ である(=互いに素)。
$ $
ここで、一般に、有限集合 $ A_1, A_2, \dots, A_k $ が相互に素、すなわち $ A_i \cap A_j = \varnothing $ ($ i \neq j $)であるとき、
$$
\left| \bigcup_{i=1}^k A_i \right| = \sum_{i=1}^k |A_i|\cdots②
$$
が成り立つ(既に上で示した)。
ここで、任意の $a \in A$ に対して、$B_a$ の元は
$$
B_a = \{(a, b) \mid b \in B\}
$$
であったので、$B$ の各 $b$ に対して一意な組 $(a, b)$ が対応する。
$ $
さらに、$a$ は固定であるから、各$B_a$は$B$の要素数に一致する。したがって、
$$
|B_a| = |B| = m\cdots③
$$
である。
①より、$A \times B$ は $A$ の各元 $a$ に対応する $B_a$ の和集合(かつ各 $B_a$ は互いに素)である事を踏まえ、
$$
\begin{align}
|A \times B| &= \left|\bigcup_{a \in A} B_a \right|\ \because\ ①\\
&= \sum_{a \in A} |B_a|\ \because\ ②\\
&= \sum_{a \in A} m\ \because\ ③\\
&= |A| \times m \\
&= n \times m
\end{align}
$$
有限集合 $A$ と $B$ に対して
$$
|A|=n
$$
$$
|B|=m
$$
であるから、
$$
|A \times B| = |A| \cdot |B|
$$
が成り立つことが示された。
$$ \Box$$
すなわち、ある事象$A$が$m$通りの方法で起こり、その後に事象$B$が$n$通りの方法で起こる場合、
$A$と$B$が同時に行う場合の総数は
$$
m \times n
$$
通りである。
「異なる $n$ 個のもの」を集めた集合を
$$
X = \{x_1, x_2, \dots, x_n\}
$$
とする。「重複を許して順番を考慮して $r$ 個取る」とは、長さ $r$ の列
$$
(x_1,\dots,x_r)
$$
であって、各成分 $x_i$ が $X$ の元(すなわち $x_i \in X$)であるようなもの全体を数えることである。
このような長さ $r$ の列全体の集合を
$$
X^r := \underbrace{X \times X \times \cdots \times X}_{r\ \text{回}}
$$
と書く。このとき、$X^r$ の元の個数は
$$
|X^r| = n^r
$$
である。
$|X^r|=n^r$ を $r$ についての帰納法で示す。
-以上より、 $r=0$ で成り立ち、「$r$ で成り立つなら $r+1$ でも成り立つ」ことを示したので、
数学的帰納法により、任意の $r\in\mathbb N_0$ に対して
$$
|X^r| = n^r
$$
が成り立つ。
$$ \Box$$
したがって、異なる$n$個のものから重複を許して$r$個取ってできる順列の総数は
$$
n^r
$$
である。
$n^r$を$_n\Pi_r$と書くこともある。