こんにちは、itouです.
(2024/09/24 いろいろミスがあったので訂正)
(2024/09/30 訂正)
圏論を用いると数学の多くの対象を整理された言葉で表現することができる。
位相空間論を圏論の言葉を用いて書き直してみると、位相空間の諸概念は圏論的に性質が良いものだと気づく。
この記事では位相空間に関連する圏論的な話題を集めた。
位相空間$(X,\mathcal O_X)$について、対象を開集合、射を包含関係$\subset$とし、$\mathcal O_X$を自然に圏とみなそう。位相$\mathcal O_X$に付された条件は以下の通りであった。
(1)$\varnothing ,X\in \mathcal O_X$
(2)$\mathcal O_X$は任意個数の和で閉じている.
(3)$\mathcal O_X$は有限個の交わりで閉じている.
圏論的には、以下のように言い換えられる。
小圏$\mathcal O_X$は対象を開集合、射を包含関係$\subset$とする圏で、
(1)$\mathcal O_X$は余完備である.
(2)$\mathcal O_X$は有限完備である.
(3)$X\in \mathcal O_X$が終対象である.
このとき、小圏$\mathcal O_X$は$X$の位相とみなすことができる。
$\mathcal O_X$とべき集合の圏$2^X$(射は包含)との間に、以下のような随伴がある。開核(内部)作用素$\text{Int}$、閉包作用素$\text{Cl}$として、
\begin{align}
\text{Int}\dashv\text{Cl}
\end{align}
これは
\begin{align}
\text{Int}(A)\subset U\Longleftrightarrow A\subset \text{Cl}(U)
\end{align}
から分かる.
ミスがあったので撤回しておきます
$X$に入る位相$\mathcal O_X$全体を対象の集合、射を包含として圏と見なし、$C_X$とかくことにする。
離散位相と密着位相はそれぞれ圏$C_X$の終対象、始対象である。
関数$f:X\rightarrow Y$について
対応: $U\in \mathcal O_Y\mapsto f^{-1}(U)\in \mathcal O_X$
が関手であるとき、$f$は連続関数である。
逆に、$\mathcal O_Y$が定められていて、$C_X$の充満部分圏$C_{X,f}$を、「関数$f:X\rightarrow Y$について$f$が連続であるような$X$上の位相」を対象に選ぶことで定めると、逆像位相は$C_{X,f}$の始対象である。
$X$の部分集合$S$に関する相対位相とは、包含写像$\iota:S\rightarrow X$に関する逆像位相である.
さらに、すべての位相空間の圏$\mathbf {Top}$に舞台を移そう。以下の概念はすべて
位相空間の族$\{X_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda}$の直積は$\prod_{\lambda\in \Lambda}X_{\lambda}$からの射影$p_{\lambda}$がそれぞれ連続写像になるような最弱の位相であり、$\mathbf {Top}$における積対象である。
「部分をとる操作」であるイコライザに対応する。
和空間はあまりなじみがないが、$\mathbf {Top}$における余積対象である。
位相空間の族$\{X_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda}$の直和は$\coprod_{\lambda\in \Lambda}X_{\lambda}$の任意の開集合$U$について,任意の$\lambda$について$X_{\lambda}$との共通部分が$X_{\lambda}$の開集合になる位相。
余イコライザに対応する。
位相空間$(X,\mathcal O)$に対し、台集合$X$を与える忘却関手$U:\text{Top}\rightarrow \text{Set}$がある。
$I,D:\text{Set}\rightarrow \text{Top}$を集合にそれぞれ密着、離散位相を入れる関手とすると、
\begin{align} I \dashv U\dashv D \end{align}
の随伴がある。
位相空間$(X,\mathcal O)$に対し、可測空間$(X,\sigma[\mathcal O])$を与える関手$\sigma:\text{Top}\rightarrow \text{Meas}$がある。
$U:\text{Meas}\rightarrow \text{Top}$を忘却として、
\begin{align} \sigma\dashv U \end{align}
の随伴がある。
基本群をとる関手を$\pi_1$とする。
$X$を位相空間とする.$U,V,U\cap V\subset X$が弧状連結な開集合であって $X = U\cup V$ であるとする.$ a\in U\cap V$のとき,
\begin{align}
\pi_1(X,a)=\pi_1(U,a)\underset{\pi_1(U\cap V,a)}{*}\pi_1(V,a)
\end{align}
が成立する.
Seifert-van Kampenの定理は
$\text{Top}$における押し出し:
\begin{CD} U\cap V @>>> U\\ @VVV @VVV \\ V @>>> X \end{CD}
に対して、これを$\pi_1$で送った先の図式:
\begin{CD} \pi_1(U\cap V,a) @>>> \pi_1(U,a) \\ @VVV @VVV \\ \pi_1(V,a) @>>> \pi_1(X,a)\end{CD}
が押し出しになることを主張している。
($\text{Grp}$における押し出しは融合積.)
ホモロジー群を与える関手$H_n$(めんどくさいので紹介だけ)がある。
誤植指摘等よろしくお願いします。