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大学数学基礎解説
文献あり

dep2の群の多重ゼータは全ての群を決定するのか?(1)

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目次

・はじめに
・準備
・群のゼータ関数
・既知の結果
・素朴な定義と疑問
・最後に

はじめに

どうも、色数です。
今回は僕が個人的に研究している内容「群の多重ゼータ値」についてを書き記そうと思います。(以降説明いたします)
度々Twitterにて質問を投げているのでご存じの方も少なくないとは思いますが一応大まかな考えを事前に説明しておきます。

一応先行研究を調べてみたのですが類似のものが見つけられなかったため今回の記事を公開します。既知ならば非常に申し訳ございません。

準備

群論ができれば十分です。
級数的な変形は少ないです。

群のゼータ関数

既知のものとして群のゼータ関数なるものが存在します。

群のゼータ関数

$\displaystyle \zeta_G(s):=\sum_{n=0}^\infty\frac{a_n(G)}{n^s}$
$\displaystyle \zeta_G^*(s):=\sum_{n=0}^\infty\frac{a_n^*(G)}{n^s}$
ここで$a_n(G)$は位数$n$$G$の部分群の個数を表し、$a_n^*(G)$は指数$n$$G$の部分群の個数を表す

ここでは上の定義を用いますが他にも定義方法はあります。個人的には$\displaystyle \zeta_G(s):=\sum_{H}\frac{1}{|H|^s}$という定義などの方がわかりやすかったのですが1番詳しく書いてある日本語pdfが上記のものを使かっていたため混乱する人を出さないためにも統一しておきました。
位数(指数)$n$の部分群に渡る、というところが重要なのでほとんど同じなのですが…

既知の結果

定義を済ませたので早速既知の結果を追っていきます。

$G$を有限群に限ると$\displaystyle \zeta_G(s)=\frac{1}{|G|^s}\zeta_G^*(-s)$が成り立つ

ラグランジュの定理より$\displaystyle \frac{1}{|H|^s}=\frac{\lbrack G:H\rbrack^s}{|G|^s}$であるため成立する

定理2~4は少し考えれば自明なので証明は省略する

$\displaystyle \zeta_G(s)=\zeta_{G’}(s)\implies |G|=|G’|$

$|G|,|G’|$が互いに素なら$\displaystyle \zeta_{G\times G’}(s)=\zeta_G(s)\times\zeta_{G’}(s)$

$\zeta_G(s)$の係数が全て$1$$\iff$$G$は巡回群

群のゼータは有限非可換群を決定しない

位数$n$の巡回群を$C_n$,$p\in\mathbb P,m,n\in\mathbb N$に対し位数$p^{m+n}$の非可換群$G_p(m,n)$$G_p(m,n):=\{\sigma,\tau|\sigma^{p^m}=\tau^{p^n}=1,\tau\sigma\tau^{-1}=\sigma^{1+p^{m-1}}\}$と定める
簡単のため$G_p(m,n)=G$とおく
$G$の位数$p^m$の元$x$$x=\sigma^i\tau^i$($p\nmid i $)と表せるため$\langle x\rangle$$G$の正規部分群であり$\langle x\rangle$を含む部分群は$G/\langle x\rangle\cong C_{p^n}$の部分群と一対一対応する
一方で$G$の部分群$H$が位数$p^m$の元を含まなければ$H\subset\langle \sigma^p,\tau\rangle\cong C_{p^{m-1}}\times C_{p^n}$である
以上からこのとき$\zeta_{G_p(m,n)}(s)=\zeta_{C_{p^m}\times C_{p^n}}(s)$となる

素朴な定義と疑問

さて、ここまでで少し既知の結果を追ったわけ(残りは次回に続く)だがこのような群ゼータを環ゼータ以外の方法で拡張することはできないでしょうか?
そこで僕はゼータ関数が多重ゼータ値(関数)に拡張されたように群ゼータを群の多重ゼータ値に拡張したものを扱うことができないかを考えてみました(以降GMZV:Group Multiple Zeta valueと呼ぶことします)

GMZV

\begin{equation}\zeta_G(\mathbf s):=\sum_{\substack{H_1\subset H_2\subset\cdots\subset H_r\subset G\\|H_1|<|H_2|<\cdots<|H_r|<\infty}}\frac{1}{|H_1|^{s_1}\cdots|H_r|^{s_r}}\end{equation}
\begin{equation}\zeta_G^\ast(\mathbf s):=\sum_{\substack{H_1\subset H_2\subset\cdots\subset H_r\subset G\\\lbrack H_2:H_1\rbrack<\cdots<\lbrack G:H_r\rbrack}}\frac{1}{\lbrack H_2:H_1\rbrack^{s_1}\cdots\lbrack G:H_r\rbrack^{s_r}}\end{equation}
これらの和は部分群に渡ってとっている

例えば$\zeta_{\mathbb Z}^*(\mathbf s)=\zeta(\mathbf s)$が成り立つ
これは具体例として$\zeta_{\mathbb Z}^*(s_1,s_2)$などを考えればすぐにわかります。

このように定義したとき次のような素朴な疑問がでてきます

1:多重ゼータ値との関係性は?
2:双対性を持つ群はどのようなものか?
3:dep1では有限非可換群を決定しない(上記)がdep2,3,…だとどうなるのか?
4:dep1では有限アーベル群を決定するがdep2,3,…でも同様に成り立つのか?
5:双対性以外の関係式族はあるのか?

しかしこの定義だと部分群の列が$2$以上である必要性がでてきてかなり複雑な問題になるので先に

正規化した群の多重ゼータ値

$\displaystyle \mathfrak Z_G(\mathbf k):=\sum_{\substack{H_1,…,H_r\subset G\\|H_1|<\cdots <|H_r|<\infty}}\frac{1}{|\mathbf H|^{\mathbf k}}$

指数に渡るものはどうように$\ast$をつけて表示する(いきなり太字使ってごめん)
このようなものを次回以降考察していくこととします。

最後に

今回は僕が今考えているものを紹介するだけにとどまりました。
次回は「群のゼータ関数がアーベル群を決定すること」や「群のゼータ関数のオイラー積表示」について証明をおってみます。

参考文献

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更新日:31日前

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