0
大学数学基礎解説
文献あり

非整数階常微分方程式の解の存在性と一意性について

294
0

Caputo type fractional ordinary differential equations

ここでは, mN,α(m1,m)とし, 次の初期値問題
(1){0cDtαu(t)=f(t,u(t)),u(k)(0)=u0kR,  k=0,,m1
を考える. ただし,0cDtαα階Caputo微分と呼ばれ, 十分滑らかなuに対して,
0cDtαu(t)=Imα(u(m)(t))=1Γ(mα)0t(ts)mα1u(m)(s) ds
と定義される非整数階微分の概念の一種である. ただし, (m)=dmdtmである. さらに, Iαα階Riemann-Liouville積分と呼ばれる非整数階積分である.

さて, 問題(1)の解の存在性, 一意性はfにどんな条件を与えれば得られるのかを考察する. 実は, 通常の常微分方程式と同様, fが第2変数に対してLipschitz連続であれば, 存在性, 一意性が得られることが次の定理でわかる.

Existence and Uniqueness Theorem

mN, α(m1,m), u00,,u0m1R, K,T>0とし, G
G={(t,u);t[0,T],|uk=0m1tkΓ(k+1)u0k|K}
と定義する. また, f:GRは連続かつ第2変数に対してLipschitz連続すなわち
|f(t,u)f(t,v)|L|uv|
となるL>0が存在すると仮定し, M=sup(t,x)G|f(t,u)|,
T0={Tif  M=0,min{T,(KΓ(α)M)1α}else
とする. このとき, 初期値問題(1)の解uC([0,T0])が一意に存在する.

定理1を証明するため, 次の補題を示す.

定理1と同様の仮定をする. このとき, uC([0,T0])が積分方程式
(2)u(t)=k=0m1tkΓ(k+1)u0(k)+1Γ(α)0t(ts)α1f(s,u(s)) ds
の解であるとき, 初期値問題(1)の解になる.

方程式(1)の両辺をα階Riemann-Liouville積分すると, 左辺は
Iα(0cDtαu)(t)=1Γ(α)0t(ts)α1{1Γ(mα)0s(sτ)mα1u(m)(τ) dτ}ds=1Γ(α)Γ(mα)0tu(m)(τ){τt(ts)α1(sτ)mα1 ds}dτ=1Γ(α)Γ(mα)0tu(m)(τ){Γ(α)Γ(mα)Γ(m)(tτ)m1} dτ=1Γ(m)0t(tτ)m1u(m)(τ) dτ
となる. これはCauchyの積分公式よりu(m)m階積分したものをみなせる. よって,
1Γ(m)0t(tτ)m1u(m)(τ) dτ=Imu(m)(t)=u(t)k=0m1tkΓ(k+1)u0(k)
となるので, 補題の証明が完了した.

定理1の証明において, 特に一意性の証明で次のGronwallの不等式の一般化を用いる.

Generalized Gronwall's inequality

α>0, T>0とする, a,wLloc1[0,), a,g,wは非負かつgは非減少で有界とする. さらにwが不等式
w(t)a(t)+g(t)(Iαw)(t),  for  t[0,T]
をみたすとする. このとき,
w(t)k=0gk(t)(Iαka)(t),  for  t[0,T]
が成立する.

では, 定理1の証明を行う.

Picardの逐次近似法を用いて解の存在証明を行う. 関数列{un}
{u1(t)=k=0m1tkΓ(k+1)u0(k),un=k=0m1tkΓ(k+1)u0(k)+1Γ(α)0t(ts)α1f(s,un1(s)) ds  for  n2
と定義する. このun(t)があるu(t)に収束し, u(t)が積分方程式(2)をみたすことを示す. まず任意のnに対して,
(3)|un(t)k=0m1tkΓ(k+1)u0(k)|K
が成立することを確かめる. n=1のとき,
|u1(t)k=0m1tkΓ(k+1)u0(k)|=0<K
である. あるkNで式(3)が成立すると仮定すると, 仮定よりT0(KΓ(α+1)M)1αであるので,
|uk+1(t)k=0m1tkΓ(k+1)u0(k)|=1Γ(α)|0t(ts)α1f(s,uk(s)) ds|MΓ(α)0t(ts)α1 dsMΓ(α+1)T0αMΓ(α+1)KΓ(α+1)M=K
と評価できる. よって, 数学的帰納法より任意のnに対して式(3)が成立することが確かめられた. 次に, 定めた関数列{un(t)}がある関数u(t)に一様収束することを示す. 級数
(4)u1(t)+{u2(t)u1(t)}+{u3(t)u2(t)}++{un+1(t)un(t)}+
を考える. この級数の部分和は, u1(t),u2(t),,un(t)となるので, 級数が収束することがわかると, {un(t)}が収束することがわかる. そのため,任意のkNに対して
(5)|uk+1(t)uk(t)|Lk1t(k1)αΓ((k1)α+1)K
が成立することを示す. k=1のとき, 式(3)より
|u2(t)u1(t)|K
となる. 次に, あるkに対して式(5)が成立していると仮定すると,
|uk+2(t)uk+1(t)|1Γ(α)0t(ts)α1|f(s,uk+1(s))f(s,uk(s))| dsLΓ(α)0t(ts)α1|uk+1(s)uk(s)| dsLΓ(α)Lk1Γ((k1)α+1)K0t(ts)α1s(k1)α ds=LΓ(α)Lk1Γ((k1)α+1)KΓ(α)Γ((k1)α+1)Γ(kα+1)tkα=LktkαΓ(kα+1)K
と評価できるので, 任意のkNに対して式(5)が成立することが示された. このことから, さらに, 任意のkNに対して
|uk+1(t)uk(t)|Lk1t(k1)αΓ((k1)α+1)KLk1T0(k1)αΓ((k1)α+1)K1Γ((k1)α+1)K(LKΓ(1+α)M)k1
という評価が得られる. A=LKΓ(1+α)Mとおくと,
u1(t)+{u2(t)u1(t)}+{u3(t)u2(t)}++{un+1(t)un(t)}+|u1(t)|+|u2(t)u1(t)|+|u3(t)u2(t)|++|un+1(t)un(t)|+k=0m1tkΓ(k+1)|u0(k)|+K(1+AΓ(α+1)++An1Γ((n1)α+1)+}max0km1|u0(k)|k=0tkΓ(k+1)+Kn=0AnΓ(αn+1)max0km1|u0(k)|exp(KΓ(α+1)M)+KEα,1(A)<
と評価できる. ここで, Eα,β(z)=k=0zkΓ(αk+β)はMittag-Leffler関数と呼ばれる. 以上の議論より, 級数(4)はWeierstrassの優級数定理より一様に絶対収束することがわかるので, 関数列{un(t)}がある関数u(t)に一様収束することが示された. すなわち, 任意のε>0に対して, あるn0(ε)=n0Nが存在し, nn0のとき
|un(t)u(t)|<ε,  t[0,T0]
が成立する. 以下, 得られたu(t)が積分方程式(2)をみたしていることを確かめる. fのLipschitz連続性を用いると, nn0(ε)なるnに対して
|1Γ(α)0t(ts)α1f(s,un(s)) ds1Γ(α)0t(ts)α1f(s,u(s)) ds|1Γ(α)0t(ts)α1|f(s,un(s))f(s,u(s))| dsLΓ(α)0t(ts)α1|un(s)u(s)| ds<LΓ(α)T0ααεLKMε
と評価できる. よって,
un+1(t)=k=0m1tkΓ(k+1)u0(k)+1Γ(α)0t(ts)α1f(s,un(s)) ds=k=0m1tkΓ(k+1)u0(k)+1Γ(α)0t(ts)α1f(s,u(s)) ds+1Γ(α)0t(ts)α1(f(s,un(s))f(s,u(s))) ds
とし, nとすれば, 左辺はu(t)に収束し, 右辺第3項は0になるので,
u(t)=k=0m1tkΓ(k+1)u0(k)+1Γ(α)0t(ts)α1f(s,u(s)) ds
となり, 積分方程式(2)の解, すなわち問題(1)の解の存在性が示された. 次に, 一意性を示す. 
問題(1)の2つの解をu1(t), u2(t)とすると
|u1(t)u2(t)|1Γ(α)0t(ts)α1|f(s,u1(s))f(s,u2(s))| dsLΓ(α)0t(ts)α1|u1(s)u2(s)| ds
となる. よって, Gronwallの不等式より, |u1(t)u2(t)|=0すなわちu1(t)=u2(t)が得られる. 以上の議論より, 定理の証明が完了した.

参考文献

[1]
Ye. Haiping, Gao. Jianming, A generalized Gronwall inequality and its application to a fractional differential equation, J. Math. Anal. Appl., 2007, 1075--1081
[2]
I.Podlubny., Fractional Differential Equation, MATHEMATICS IN SCIENCE AND ENGINEERING, 1999
投稿日:2023820
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

カメ
カメ
7
1469
大学院では非線形拡散方程式(主にFast Diffusion, Porous Medium), 非整数階時間微分を含む拡散方程式を専攻していました. 現在は非整数階時間微分を含む拡散方程式の可解性の研究をしています.

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. Caputo type fractional ordinary differential equations
  2. 参考文献