実定数$a$、正整数$n$、$n$項の非負実数列${\left\{a_i\right\}}$、$n$項の実数列${\left\{b_i\right\}}$について、
$$
\int_{-\infty}^{\infty} f\left(x + a - \sum_{i = 1}^{n}\frac{a_i}{x+b_i}\right) \mathrm{d}x = \int_{-\infty}^{\infty} f(x) \mathrm{d}x
$$
が成り立つ。
前回の記事 で証明載せてるので、よければ見てね
今回は、この積分の被積分関数$f\left(x + a - \sum_{i = 1}^{n}\frac{a_i}{x+b_i}\right)$に注目します。
(数学初心者なのでお手柔らかにお願いします)
この問題を解いてみます。
$\displaystyle{f(x) = \frac{2x-x^3}{1-x^2}}$とおく。
曲線$y=\left|f(x)\right|$と直線$y=1$で囲まれた領域の面積の合計$S$を求めよ。
$xy$-平面で表すとこんな感じ(赤色の領域の面積の合計が$S$)
まず正攻法で解いてみます。
.........。
めっっっちゃやりたくない。
ここで、Glasser's master theorem を導入します。
\begin{align} S & = \int_{-\infty}^{\infty} \max(0, 1-|f(x)|) \dx \\ & = \int_{-\infty}^{\infty} \max(0, 1 - \left|x - \frac{1/2}{x-1} - \frac{1/2}{x+1}\right|) \dx \\ & = \int_{-\infty}^{\infty} \max(0, 1 - |x|) \dx \qquad (\because Glasser's \; master \; theorem) \\ & = 1 \end{align}
4行で終わります。
ちなみに、2つ目の解法の1行目の被積分関数$\max(0, 1-|f(x)|)$のグラフはこうなります。
$y = \max(0, 1-|f(x)|)$
確かに$\displaystyle{\int_{-\infty}^{\infty} \max(0, 1-|f(x)|) \dx}$が$S$と等しくなるのがわかるでしょう。
$\max$関数を使って、無理やり$\displaystyle{\int_{-\infty}^{\infty}}$の形にした、という感じです。
このような操作を一般の連続関数に対しても考えると、次のような定理が成り立つことがわかります。
連続な関数$f$と実定数$a,t$、正整数$n$、$n$項の非負実数列${\left\{a_i\right\}}$、$n$項の実数列${\left\{b_i\right\}}$について、
曲線$y=f\left(x + a - \sum_{i = 1}^{n}\frac{a_i}{x+b_i}\right)$と直線$y=t$に囲まれた領域のうち、直線に対して片側の領域の面積のみを足し合わせた値を$S$とおき、その値が有限であるとき、$S$はどんな$a,n,\left\{a_i\right\}\left\{b_i\right\}$に対しても同じ値をとる。
また、その値は、曲線$y=f(x)$と直線$y=t$に囲まれた領域のうち、直線に対して、上に述べた領域と同じ側にある領域の面積を足し合わせた値と等しい。
......表現が難しい(国語弱者)
$y=t$に対して上側の領域を考えるとき、
\begin{align}
S & = \int_{-\infty}^{\infty} \max\left(0, f\left(x + a - \sum_{i = 1}^{n}\frac{a_i}{x+b_i}\right) - t\right) \dx \\
& = \int_{-\infty}^{\infty} \max(0, f(x) - t) \dx \qquad (\because Glasser's \; master \; theorem) \\
\end{align}
この値は$a,n,\left\{a_i\right\}\left\{b_i\right\}$に依存せず、曲線$y=f(x)$と直線$y=t$に囲まれた領域のうち上側にある領域の面積を足し合わせた値と等しい。
$y=t$に対して下側の領域を考えるとき、
\begin{align}
S & = \int_{-\infty}^{\infty} \max\left(0, t - f\left(x + a - \sum_{i = 1}^{n}\frac{a_i}{x+b_i}\right)\right) \dx \\
& = \int_{-\infty}^{\infty} \max(0, t - f(x)) \dx \qquad (\because Glasser's \; master \; theorem) \\
\end{align}
この値は$a,n,\left\{a_i\right\}\left\{b_i\right\}$に依存せず、曲線$y=f(x)$と直線$y=t$に囲まれた領域のうち下側にある領域の面積を足し合わせた値と等しい。
また、今度は次の問題を見てみましょう。
$\displaystyle{f(x) = \frac{2x-x^3}{1-x^2}}$とおき、
曲線$y=|f(x)|$と直線$y=1$の6つの交点を$x$座標が小さい順に$A,B,C,D,E,F$とおく。
$AB + CD + EF$の値を求めよ。
問題1の時と同じように$\alpha, \beta, \gamma$をおくと、
$$
\alpha + \beta + \gamma = 1
$$
より、
\begin{align}
AB + CD + EF & = |-\gamma - \beta| + |-\alpha - \alpha| + |-\beta - \gamma| \\
& = 2|\beta + \gamma| + 2|\alpha| \\
& = 2(\beta + \gamma) + 2\alpha \qquad \left(\because \alpha \geq 0, -\beta \leq \gamma\right) \\
& = 2(\alpha + \beta + \gamma) \\
& = 2 \cdot 1 \\
& = 2
\end{align}
これもGlasser's master theoremを使って簡単に解くことができます。
問題1で求めた値を引き続き$S$とおき、線分$AB$と$x$軸、線分$CD$と$x$軸、線分$EF$と$x$軸を平行な辺のうちの一組とする3つの長方形の面積の和を$S'$とおく。
$$
g(x) =
\begin{cases}
x & \text{if $x \leq 1$,} \\
0 & \text{if $x > 1$,}
\end{cases}
$$
と置くと、
\begin{align}
S' = 1 \cdot (AB + CD + EF) & = S + \int_{-\infty}^{\infty} g\left(\left|f(x)\right|\right) \d x \\
& = S + \int_{-\infty}^{\infty} g\left(|x|\right) \d x \\
& = 1 + 1 \\
& = 2
\end{align}
$$
\therefore AB + CD + EF = 2
$$
グラフを見てみましょう。
$y=|f(x)|$と$y=1$のグラフ
$S$が赤色の部分、$\int_{-\infty}^{\infty} g\left(\left|f(x)\right|\right) \d x$ が緑色の部分、そして赤と緑を足した部分が$S'$になっています。
$S'$の部分は高さが同じ長方形の和で、高さは1とわかっていますので、$S'$が求まってしまえば、求めるのは底辺の合計ですから、逆算で求めることができるというわけです。
これも一般化できる...と思います(厳密な議論ができる気がしない)
多分上みたいな手法でいけるかと思われる。
連続な関数$f$と実定数$a,t$、正整数$n$、$n$項の非負実数列${\left\{a_i\right\}}$、$n$項の実数列${\left\{b_i\right\}}$について、$y=f\left(x + a - \sum_{i = 1}^{n}\frac{a_i}{x+b_i}\right)$が実数全体で連続で、その曲線と直線$y=t$の交点の個数が正の偶数になるとき、その個数を$2k(n + 1)$個$(k \in \Z^+)$とし、それらの交点を$x$座標の小さい順に$A_1, B_1, A_2, B_2, A_3, B_3, \cdots, A_{k(n + 1) - 1}, B_{k(n + 1) - 1}, A_{k(n + 1)}, B_{k(n + 1)}$とおくと、$\sum_{i = 1}^{(n + 1)k}A_iB_i$はどんな$a,n,\left\{a_i\right\}\left\{b_i\right\}$に対しても同じ値をとる。
また、その値は、曲線$y=f(x)$と直線$y=t$の$2k$個の交点を$x$座標の小さい順に$C_1, D_1, C_2, D_2, C_3, D_3, \cdots, C_{k - 1}, D_{k - 1}, C_k, D_k$とおくと、$\sum_{i = 1}^{k}C_iD_i$と等しい。
(厳密性?知らない子だね...)
三角形の等積変形みたいで面白い!!!!!!