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巡回群の自己同型群について

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$$\newcommand{Aut}[0]{\mathop{\mathrm{Aut}}} $$

自己同型群の定義

$G$の自己同型写像全体の集合を
\begin{align*} \Aut(G):=\{\varphi\mid \varphi\colon G\to G\text{は同型写像}\} \end{align*}
で定めるとき, $\Aut(G)$は写像の合成により群をなす. これを$G$自己同型群(automorphism group)という.

本記事では巡回群の自己同型群の構造を明らかにします. 無限巡回群, 有限巡回群それぞれに対して自己同型群を考えていきます.

無限巡回群の自己同型群

無限巡回群の自己同型群

加法群$(\mathbb{Z},+)$の自己同型群について$\Aut(\mathbb{Z})\cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$である.

$f\in \Aut(\mathbb{Z})$とすると$f$$\mathbb{Z}$の生成元$1,-1$によって決定される. さらに$f$は全射準同型なので
\begin{align*} f(\mathbb{Z})=f(\langle 1\rangle)=\langle f(1)\rangle=\mathbb{Z} \end{align*}
すなわち$f(1)$$\mathbb{Z}$の生成元となるので$f(1)=\pm 1$である.

  1. $f(1)=1$のとき任意の$n\in\mathbb{Z}$に対して
    \begin{align*} f(n)=f(n\cdot 1)=nf(1)=n \end{align*}
    であるからこれは恒等写像である. これを$e$としておく.
  2. $f(1)=-1$のときは任意の$n\in\mathbb{Z}$に対して
    \begin{align*} f(n)=f(n\cdot 1)=nf(1)=-n \end{align*}
    となる. この準同型写像を$f_-$とおく. ここで$f_-\neq e$かつ$f_-^2=f_-$である.

以上より$\Aut(\mathbb{Z})=\{e,f_-\}\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$が分かる.

有限巡回群の自己同型群

有限巡回群の自己同型群

$G$を位数$n$の巡回群とするとき$\Aut(G)\cong(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}$である.

$G=\langle a\rangle$とする. このとき$f\in \Aut(G)$は生成元の行先$f(a)$を定めることで決定されることに注意する.
$\varphi\colon (\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}\to \Aut(G)$$\overline{k}\mapsto f_k$, $f_k(a):=a^k$で定める. このとき以下を確かめることで題意が示される.

  1. $\varphi$はwell-definedである. つまり代表元によらず定まり, $f_k\in \Aut(G)$.
  2. $\varphi$は全単射な群準同型である.

以降, これを示す.

  1. まず$\varphi$が代表元によらず定まることを示す. $\overline{k}=\overline{l}\in (\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}$と仮定すると$k-l$$n$で割り切れる. このとき$a^n=e$を用いると
    \begin{align*} f_k(a)f_l(a)^{-1}=a^{k}a^{-l}=a^{k-l}=e \end{align*}
    すなわち$f_k(a)=f_l(a)$が分かる. つまり$\varphi$は代表元によらず定まる. 今$(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}$の代表元$k\in \mathbb{Z}$$0\leq k< n$かつ$n$と互いに素であるものとして取ることができる.
    次に$f_k\in \Aut(G)$について$f_k$が全単射であることを示す.
    $0\leq i,j< n$に対して$f(a^i)=f(a^j)$とすると$a^{ik}=a^{jk}$なので$a^{(i-j)k}=e$である. $a$の位数は$n$なので$(i-j)k$$n$で割り切れる.$k$$n$と互いに素なので$i-j$$n$で割り切れる. このことから$a^{i-j}=e$となるから$a^i=a^j$より$f_k$の単射性が分かる.
    また, $\overline{kl}=\overline{1}\in(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}$となる$l\in\mathbb{Z}$が存在する. このとき$kl=1+nx\,(x\in\mathbb{Z})$とすれば任意の$a^i\in G$に対して
    \begin{align*} f_k(a^{li})=a^{kli}=a^{(1+nx)i}=a^i \end{align*}
    となるから$f_k$が全射であることも分かる. 以上より$f_k\in \Aut(G)$.
  2. $\varphi$が群準同型であることは任意の$\overline{k},\overline{l}\in(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}$に対して
    \begin{align*} \varphi(\overline{k}\overline{l})(a)=f_{kl}(a)=(a^l)^k=(f_kf_l)(a)=\varphi(\overline{k})\varphi(\overline{l}) \end{align*}
    であることから分かる.
    次に$\varphi$が単射であることを示す. $\overline{k}\in(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}$に対して$\varphi(\overline{k})(a)=f_k(a)=a^k=a$, つまり$f_k$が恒等写像であるとすると$\overline{k}=\overline{1}$なので$\ker\varphi=\{\overline{1}\}$.
    より$\varphi$は単射.
    また, 任意の$f\in\Aut(G)$$f(a)=a^m\in G,\,(0\leq m< n)$で表されるが$f(a)$$G$の生成元になっているので$m$$n$と互いに素である. よって$\overline{m}\in(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}$より$\varphi(\overline{m})=f_{m}=g$. すなわち$\varphi$は全射.

以上より$\varphi$が群同型$\Aut(G)\cong (\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}$を与えることが分かる.

おわりに

今回は巡回群の自己同型群について考えました. 自己同型群といえば対称群の自己同型群について$n\neq 6$のときは$\Aut(S_n)\cong S_nであるが\Aut(S_6)$のときだけ例外になっているようで面白そうです. 今後はこの証明を追ってみたいと思います. 内容に間違いがあればコメントで教えてください.

投稿日:1012
更新日:1012
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kz
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数学科です 短い数学の話題を不定期でかきます

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