はじめに
を正の実数とするとき,
という不等式が成り立つことはよく知られている.左辺,中辺,右辺はそれぞれの調和平均,相乗平均,相加平均と呼ばれる.
一方で解析をちょっとかじったことのある人なら,という不等式を目にしたことがあるだろう.ここで,はを満たす測度空間,は上の可測関数, である.
この記事の目標は,一見全く関係ないように見えるこれら2つの不等式の共通の一般化となる定理を証明することである.
関数
以下,確率空間および上の正値可測関数を固定する.なお,は有界であると仮定しておく.
のとき,はのノルムに他ならない.
であるときを考え,とおく.このとき,である.よって,はそれぞれの調和平均,相乗平均,相加平均に他ならない.
以外の点でが連続であることは有界収束定理を使って容易に示せる.よってがで連続であることを示す.
関数をによって定める.このとき,は上で微分可能でとなる.よって,
となり,での連続性も従う.
の単調増加性
この記事の目標は以下の定理を証明することである.
命題1よりは上連続で,また以外の点では微分可能であるから,に対しであることを示せば十分である.
に対し,が成り立つ.ゆえに,を示せばよいが,これは関数が凸関数であることから,Jensenの不等式より従う.
上の定理より,特にである.この不等式をの場合に適用することによって相加平均,相乗平均,調和平均の大小関係を得る.