$M$を閉上半平面とする。任意の$C^1$級写像$g:\mathbb R\to \mathbb R$に対して、$M$から$\mathbb R$への写像$f(x,y)=y+g(x)$を定めると、これは$M$上の各点で正則である。
いま、$g(x)$を以下で定める。
$g(x)=\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
e^{-1/x^2}\sin (1/x),(x\neq 0) \\
0,(x=0)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$
このとき、$f$は$C^\infty$級であり、特に$0$は$f$の正則値であるが、しかし$f^{-1}(0)$は多様体にはならない。
一般に$f$が各点で正則であることは、$\partial/\partial yf(x,y)=1$よりランクが1以上である事からすぐにわかる。
以下、問題で与えられた具体的な$g$について考える。
これは特に$C^\infty$級のため、これによる$f$は各点で正則。つまり特に0は$f$の正則値である。
よって最後に、$f^{-1}(0)$が多様体にならない事をみる。
この時$f=0$なので$y=-g(x)$を満たすため、$f^{-1}(0)$がもし多様体となるのであれば、それは局所的に$(a,b)$または$[a,b)$という形をしている必要がある事がわかる。
しかし、特に点$(0,0)$の近傍を見ると、$(x,y)\in H$(つまり$y\geq 0$)かつ$g$は原点付近で$\sin$によって$y$座標が無限回入れ替わる、すなわち無限個の連結成分が$(0,0)$に集積している事がわかり、これは明らかに$(a,b)$または$[a,b)$とは局所同相ではない事をしめす。
よって、$f^{-1}(0)$は多様体ではない。
$r\geq 1$として、$A\subset N$を$C^r$級neat(整然)部分多様体、$f:(M,\partial M)\to (N,\partial N)$を$C^r$級写像とする。$A$と$\partial A$の各点がそれぞれ$f$と$f|_{\partial M}:\partial M\to \partial N$の正則値である時、$f^{-1}(A)$は$M$のneat$C^r$級部分多様体である。
この問題には、以下の定理を使う。($f$が$A$と横断することを、$f\pitchfork A$と書く。)
$r\geq 1$とし、$A\subset N$を$C^r$級neat部分多様体、$f:(M,\partial M)\to (N,\partial N)$を$C^r$級写像とする。$f\pitchfork A$かつ$f|_{\partial M}\pitchfork \partial A$ならば、$f^{-1}(A)$は境界$f^{-1}(A)\cap \partial M$を持つ$M$の$C^r$級neat部分多様体である。
(修正版としているのは、英語版で出ているerrataを反映しているためです。)
この定理を使うために、横断性を確認します。
$y\in A$は$f$の正則値なので、任意の$x\in f^{-1}(y)$で$df_x$は全射。よって、$df_x(T_x M)=T_y N$であって、これは$T_y A$を含む。よって当然$df_x(T_x M)+ T_y A=T_y N$であり、$f\pitchfork A$を満たす。
同様の理由により、$f|_{\partial M}\pitchfork \partial A$も満たす。
よって、定理1.4.2より$f^{-1}(A)$は$M$のneat$C^r$級部分多様体である。
$f:M\to \mathbb R$を$C^r$級($r>0$)とし、$f$が$\partial M$の各連結成分上で定数をとると仮定する。さらに、実数$a,b$は$f$の正則値とする。この時、$f^{-1}(a),f^{-1}[a,b],f^{-1}(a,b],f^{-1}[a,\infty)$は$C^r$級多様体である。
$f^{-1}(a)$が多様体である事は問題1.4.4より自明。また、$f^{-1}[a,b],f^{-1}(a,b],f^{-1}[a,\infty)$の内点のチャートについては、境界を除いた部分で問題1.4.4を適用すれば良いため省略する。
そこで、$f^{-1}[a,b]$の境界チャートの取り方を考えればよい。(残りの$f^{-1}(a,b],f^{-1}[a,\infty)$の境界については同様なので省略する。)
任意に、$x\in f^{-1}[a,b]$で$x\in \partial M$なるものをとる。
もし$f(x)\in(a,b)$であるなら、その近傍は$f$の連続性と$(a,b)$が開集合であることから標準的な境界チャートが取れる。
そこで、$f(x)=a$(または$b$)とする。
この場合、$df_x\neq 0$かつ境界上で定数より$df_x|_{T_x\partial M}=0$なので、境界の法線方向のみに微分を持つ。
従って陰関数定理により、次を満たす(角がない)境界チャート$\phi:U\to \mathbb H^n$が存在する:
$(f-f(x))\circ \phi^{-1}(y_1,…,y_n)=\epsilon y_n,(\epsilon =\pm 1)$。
故に任意の$f^{-1}(a)$(または$f^{-1}(b)$)付近でも境界チャートをとれる事がわかり、よって$f^{-1}[a,b]$は$C^r$級多様体である。