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現代数学解説
文献あり

Hirsch 微分トポロジーの問題1.4.3、1.4.4、1.4.5

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問題1.4.3

 $M$を閉上半平面とする。任意の$C^1$級写像$g:\mathbb R\to \mathbb R$に対して、$M$から$\mathbb R$への写像$f(x,y)=y+g(x)$を定めると、これは$M$上の各点で正則である。
 いま、$g(x)$を以下で定める。
 $g(x)=\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} e^{-1/x^2}\sin (1/x),(x\neq 0) \\ 0,(x=0) \end{array} \right. \end{eqnarray}$
 このとき、$f$$C^\infty$級であり、特に$0$$f$の正則値であるが、しかし$f^{-1}(0)$は多様体にはならない。

 一般に$f$が各点で正則であることは、$\partial/\partial yf(x,y)=1$よりランクが1以上である事からすぐにわかる。
 以下、問題で与えられた具体的な$g$について考える。
 これは特に$C^\infty$級のため、これによる$f$は各点で正則。つまり特に0は$f$の正則値である。
 よって最後に、$f^{-1}(0)$が多様体にならない事をみる。
 この時$f=0$なので$y=-g(x)$を満たすため、$f^{-1}(0)$がもし多様体となるのであれば、それは局所的に$(a,b)$または$[a,b)$という形をしている必要がある事がわかる。
 しかし、特に点$(0,0)$の近傍を見ると、$(x,y)\in H$(つまり$y\geq 0$)かつ$g$は原点付近で$\sin$によって$y$座標が無限回入れ替わる、すなわち無限個の連結成分が$(0,0)$に集積している事がわかり、これは明らかに$(a,b)$または$[a,b)$とは局所同相ではない事をしめす。
 よって、$f^{-1}(0)$は多様体ではない。  

問題1.4.4

 $r\geq 1$として、$A\subset N$$C^r$級neat(整然)部分多様体、$f:(M,\partial M)\to (N,\partial N)$$C^r$級写像とする。$A$$\partial A$の各点がそれぞれ$f$$f|_{\partial M}:\partial M\to \partial N$の正則値である時、$f^{-1}(A)$$M$のneat$C^r$級部分多様体である。

 この問題には、以下の定理を使う。($f$$A$と横断することを、$f\pitchfork A$と書く。)

定理1.4.2(修正版)

 $r\geq 1$とし、$A\subset N$$C^r$級neat部分多様体、$f:(M,\partial M)\to (N,\partial N)$$C^r$級写像とする。$f\pitchfork A$かつ$f|_{\partial M}\pitchfork \partial A$ならば、$f^{-1}(A)$は境界$f^{-1}(A)\cap \partial M$を持つ$M$$C^r$級neat部分多様体である。

 (修正版としているのは、英語版で出ているerrataを反映しているためです。)

 この定理を使うために、横断性を確認します。

 $y\in A$$f$の正則値なので、任意の$x\in f^{-1}(y)$$df_x$は全射。よって、$df_x(T_x M)=T_y N$であって、これは$T_y A$を含む。よって当然$df_x(T_x M)+ T_y A=T_y N$であり、$f\pitchfork A$を満たす。
 同様の理由により、$f|_{\partial M}\pitchfork \partial A$も満たす。
 よって、定理1.4.2より$f^{-1}(A)$$M$のneat$C^r$級部分多様体である。

問題1.4.5

 $f:M\to \mathbb R$$C^r$級($r>0$)とし、$f$$\partial M$の各連結成分上で定数をとると仮定する。さらに、実数$a,b$$f$の正則値とする。この時、$f^{-1}(a),f^{-1}[a,b],f^{-1}(a,b],f^{-1}[a,\infty)$$C^r$級多様体である。

 $f^{-1}(a)$が多様体である事は問題1.4.4より自明。また、$f^{-1}[a,b],f^{-1}(a,b],f^{-1}[a,\infty)$の内点のチャートについては、境界を除いた部分で問題1.4.4を適用すれば良いため省略する。
 そこで、$f^{-1}[a,b]$の境界チャートの取り方を考えればよい。(残りの$f^{-1}(a,b],f^{-1}[a,\infty)$の境界については同様なので省略する。)
 任意に、$x\in f^{-1}[a,b]$$x\in \partial M$なるものをとる。
 もし$f(x)\in(a,b)$であるなら、その近傍は$f$の連続性と$(a,b)$が開集合であることから標準的な境界チャートが取れる。
 そこで、$f(x)=a$(または$b$)とする。
 この場合、$df_x\neq 0$かつ境界上で定数より$df_x|_{T_x\partial M}=0$なので、境界の法線方向のみに微分を持つ。
 従って陰関数定理により、次を満たす(角がない)境界チャート$\phi:U\to \mathbb H^n$が存在する:
$(f-f(x))\circ \phi^{-1}(y_1,…,y_n)=\epsilon y_n,(\epsilon =\pm 1)$
 故に任意の$f^{-1}(a)$(または$f^{-1}(b)$)付近でも境界チャートをとれる事がわかり、よって$f^{-1}[a,b]$$C^r$級多様体である。

参考文献

[1]
M.W.Hirsch(松本堯生(訳)), 微分トポロジー, p37
投稿日:7日前
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