数列 $\lbrace x_n\rbrace$、$\lbrace y_n\rbrace$ を次の式
$$
x_1=0,\quad x_{n+1}=x_n+n+2\cos\left(\frac{2\pi x_n}{3}\right)\quad(n=1,2,3,\cdots)
$$
$$
y_{3m+1}=3m,\quad y_{3m+2}=3m+2,\quad y_{3m+3}=3m+4\quad(m=0,1,2,\cdots)
$$
により定める。このとき、数列 $\lbrace x_n-y_n\rbrace$ の一般項を求めよ。
本稿を通じて次の記号を用いる。$n$ は正の整数を動く。
漸化式は $x_n$ を余弦の中に含み,見かけ上は非線形かつ自己参照的である。しかし $x_n$ が整数である限り,余弦の引数は $\frac{2\pi}{3}$ の整数倍に限られる。
整数 $k$ に対して
$$
2\cos\frac{2\pi k}{3}=\begin{cases}2&(k\equiv0\pmod 3),\\-1&(k\not\equiv0\pmod 3).\end{cases}
$$
すなわち $1+2\cos\frac{2\pi k}{3}=3\cdot\mathbf{1}_{3\mid k}$ であり,特に $2\cos\frac{2\pi k}{3}$ は整数で,$2\cos\frac{2\pi k}{3}\equiv-1\pmod 3$ を満たす。
$\cos$ は周期 $2\pi$ をもつから,$2\cos\frac{2\pi k}{3}$ は $k$ を $3$ で割った余りのみで定まる。$\cos0=1$,$\cos\frac{2\pi}{3}=\cos\frac{4\pi}{3}=-\frac12$ より前半を得る。後半は $2\equiv-1\pmod 3$ による。
すべての $n$ について $x_n\in\mathbb{Z}$,$c_n\in\lbrace 2,-1\rbrace$ であり,
$$
x_{n+1}\equiv x_n+n-1\pmod 3. \tag{L}
$$
$x_1=0\in\mathbb{Z}$ である。$x_n\in\mathbb{Z}$ ならば 補題1 より $c_n\in\lbrace 2,-1\rbrace\subset\mathbb{Z}$ であり,$x_{n+1}=x_n+n+c_n\in\mathbb{Z}$ となる。数学的帰納法により前半を得る。このとき $c_n$ は整数で $c_n\equiv-1\pmod 3$ であるから,漸化式から (L) が従う。
論証の順序が本質的である。合同式は整数に対して定義されるから,$c_n\equiv-1$ と書く前に $c_n$ が整数であること,すなわち $x_n\in\mathbb{Z}$ を確定させなければならない。
(L) の右辺には $c_n$ が現れない。余弦項は $x_n$ の値に応じて $2$ と $-1$ を切り替えるが,その差 $3$ は法 $3$ では見えない。実際
補題1
より
$$
x_{n+1}=x_n+(n-1)+3\cdot\mathbf{1}_{3\mid x_n}
$$
と書け,状態に依存する部分は $3$ の倍数の加算にすぎず,その発生を決める $x_n\bmod 3$ 自身を変えない。すなわち帰還(フィードバック)は法 $3$ の力学に影響しない。これが非線形性が見かけだけである理由である。
構造的には,$\Psi_n(t+3)=\Psi_n(t)+3$ が成り立つ。漸化式は $3$ による平行移動と可換であり,法 $3$ への還元が整合的に定義される。同時に,$(x_n)$ が漸化式を満たせば $(x_n+3)$ も同じ漸化式を満たすから,解の決定には初期値 $x_1=0$ が不可欠である(
3.4 節
)。
$y_n$ は3系列に分けて定義されているが,一つの式にまとまる。
すべての $n$ について
$$
y_n=(n-1)+r_n=2(n-1)-3\left\lfloor\frac{n-1}{3}\right\rfloor,
$$
$$
\Delta y_n=y_{n+1}-y_n=\begin{cases}2&(3\nmid n),\\-1&(3\mid n).\end{cases}
$$
各 $n$ は $m\geqq0$,$r\in\lbrace 0,1,2\rbrace$ を用いて $n=3m+1+r$ と一意に表され,このとき $r_n=r$ である。$r=0,1,2$ に対し $(n-1)+r=3m,\ 3m+2,\ 3m+4$ となり,定義と一致する。$n-1=3\left\lfloor\frac{n-1}{3}\right\rfloor+r_n$ より第2の表示を得る。また $r_n\in\lbrace 0,1\rbrace$ のとき $r_{n+1}=r_n+1$,$r_n=2$ のとき $r_{n+1}=0$ であるから,$\Delta y_n=1+(r_{n+1}-r_n)$ は前者で $2$,後者で $-1$ となる。$r_n=2\iff3\mid n$ である。
$\Delta y_n$ は $2,2,-1$ を繰り返す周期 $3$ の列で,1周期の平均は $(2+2-1)/3=1$ である。$y_n=(n-1)+r_n$ は,平均 $1$ による一次の部分と周期 $3$ ののこぎり波 $r_n$ への分解にほかならない( 5.6 節 )。3系列による定義はこの単純な構造を覆い隠している。
$\Delta y_n$ の値域 $\lbrace 2,-1\rbrace$ は余弦項の値域と一致する。この一致が設計の中核であり,次の命題により問題全体が一つの局所等式に帰着する。
次の3条件は同値である。
(i) すべての $n$ について $x_n-y_n=\binom{n}{2}$。
(ii) すべての $n$ について
$$
2\cos\frac{2\pi x_n}{3}=y_{n+1}-y_n. \tag{K}
$$
(iii) すべての $n$ について $3\mid x_n\iff3\nmid n$。
$d_n=x_n-y_n$ とおくと $d_1=0$,$\Delta d_n=n+c_n-\Delta y_n$ である。
(ii)⇒(i):$\Delta d_n=n$ より $d_n=d_1+\sum_{k=1}^{n-1}k=\binom{n}{2}$($n=1$ では空和)。
(i)⇒(ii):$\Delta d_n=\binom{n+1}{2}-\binom{n}{2}=n$ より $c_n=\Delta y_n$。
(ii)⇔(iii):
補題1
,
補題2
より $c_n=2\iff3\mid x_n$,$c_n=-1\iff3\nmid x_n$ である。
補題3
より $\Delta y_n=2\iff3\nmid n$,$\Delta y_n=-1\iff3\mid n$ である。$c_n$,$\Delta y_n$ はともに $\lbrace 2,-1\rbrace$ に値をとるから,$c_n=\Delta y_n$ は $3\mid x_n\iff3\nmid n$ と同値である。
以下のすべての解法は,(K) すなわち (iii) を示す異なる経路である。(i) と (ii) が同値であるから,(K) は答の十分条件であるだけでなく必要条件でもあり,本問の数学的内容を過不足なく表す。(K) の右辺は $n$ のみの既知関数であり,(K) は「自己参照的に見える余弦項が,実は $n$ のみで定まる」という主張である。
以上の構造から,作問の設計は次のように読める(数値設定からの分析であり,出題者の意図についての推定を含む)。
| 着目する構造 | 数学的翻訳 | 対応する解法 |
|---|---|---|
| 値域 $\lbrace 2,-1\rbrace\subset-1+3\mathbb{Z}$ | (L) を和分して $x_n\bmod 3$ を求める | 本解 |
| 剰余の組 $(n\bmod 3,\ x_n\bmod 3)$ の有限性 | 9状態上の決定的な遷移 | 3.1 節 |
| 余弦項が $n$ の既知関数になること | $x_n$ の閉形式を経由する | 3.2 節 |
| 必要な情報は $c_n$ のみ | $c_{n+3}=c_n$ を直接示す | 別解1 |
| 問われるのが差で,階差に $n$ が現れる | 候補 $y_n+\binom{n}{2}$ と解の一意性 | 別解2 |
| (L) のドリフト $n-1$ の離散原始関数 | 不変量 $x_n-\binom{n-1}{2}$ | 参考解1 |
| $1+c_n=3\cdot\mathbf{1}_{3\mid x_n}$ | 基準軌道と訪問回数への分解 | 参考解2 |
整数性を確定した後,漸化式を法 $3$ で読んで線形化し,$x_n\bmod 3$ を $n$ の式として求める。そこから余弦項の値を $n\bmod 3$ で決定し,$y_n$ の階差と比較して (K) を得る。最後に差 $x_n-y_n$ の階差を和分する。
$c_n=2\cos\frac{2\pi x_n}{3}$ とおく。
(整数性)整数 $k$ について,余弦の周期性より $2\cos\frac{2\pi k}{3}$ は $k$ を $3$ で割った余りのみで定まり,
$$
2\cos\frac{2\pi k}{3}=\begin{cases}2&(k\equiv0\pmod 3),\\-1&(k\equiv1,2\pmod 3)\end{cases} \tag{1}
$$
である。$x_1=0$ は整数であり,$x_n$ が整数なら (1) より $c_n\in\lbrace 2,-1\rbrace$ となって $x_{n+1}=x_n+n+c_n$ も整数である。よって数学的帰納法により,すべての $n$ で $x_n\in\mathbb{Z}$,$c_n\in\lbrace 2,-1\rbrace$ である。
(法 3 での線形化)$2\equiv-1\pmod 3$ より $c_n\equiv-1\pmod 3$ であるから,$k\geqq1$ に対し $x_{k+1}-x_k\equiv k-1\pmod 3$ である。これを $k=1,\ldots,n-1$ について加え,$x_1=0$ を用いると
$$
x_n\equiv\sum_{k=1}^{n-1}(k-1)=\frac{(n-1)(n-2)}{2}\pmod 3\qquad(n\geqq1) \tag{2}
$$
を得る($n=1$ では両辺とも $0$)。
(剰余の決定)$t_n=\frac{(n-1)(n-2)}{2}$ は整数であり,
$$
t_{n+3}-t_n=\frac{(n+2)(n+1)-(n-1)(n-2)}{2}=3n\equiv0\pmod 3.
$$
$t_1=0$,$t_2=0$,$t_3=1$ であるから,帰納的に $t_n\bmod 3$ は $0,0,1$ を繰り返す。(2) と合わせて
$$
x_n\equiv\begin{cases}0&(n\equiv1,2\pmod 3),\\1&(n\equiv0\pmod 3).\end{cases} \tag{3}
$$
(1),(3) より
$$
c_n=\begin{cases}2&(n\equiv1,2\pmod 3),\\-1&(n\equiv0\pmod 3).\end{cases} \tag{4}
$$
($y_n$ の階差)$m\geqq0$ に対し
$$
y_{3m+2}-y_{3m+1}=2,\qquad y_{3m+3}-y_{3m+2}=2,\qquad y_{3m+4}-y_{3m+3}=3(m+1)-(3m+4)=-1.
$$
$n\geqq1$ は $3m+1,\ 3m+2,\ 3m+3$($m\geqq0$)のいずれか一つの形に一意に表されるから
$$
y_{n+1}-y_n=\begin{cases}2&(n\equiv1,2\pmod 3),\\-1&(n\equiv0\pmod 3).\end{cases} \tag{5}
$$
(結論)(4),(5) より,すべての $n$ で $c_n=y_{n+1}-y_n$ である。ゆえに
$$
(x_{n+1}-y_{n+1})-(x_n-y_n)=n+c_n-(y_{n+1}-y_n)=n.
$$
$x_1-y_1=0-0=0$ であるから,$n\geqq1$ に対し
$$
x_n-y_n=\sum_{k=1}^{n-1}k=\frac{n(n-1)}{2}.
$$
$$
\boxed{\ x_n-y_n=\frac{n(n-1)}{2}\ }
$$
| $n$ | $1$ | $2$ | $3$ | $4$ | $5$ | $6$ | $7$ | $8$ | $9$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $x_n$ | $0$ | $3$ | $7$ | $9$ | $15$ | $22$ | $27$ | $36$ | $46$ |
| $x_n\bmod 3$ | $0$ | $0$ | $1$ | $0$ | $0$ | $1$ | $0$ | $0$ | $1$ |
| $c_n$ | $2$ | $2$ | $-1$ | $2$ | $2$ | $-1$ | $2$ | $2$ | $-1$ |
| $y_n$ | $0$ | $2$ | $4$ | $3$ | $5$ | $7$ | $6$ | $8$ | $10$ |
| $x_n-y_n$ | $0$ | $1$ | $3$ | $6$ | $10$ | $15$ | $21$ | $28$ | $36$ |
3.1〜3.2 節は本解の一部に対する別証・他の導出,3.3〜3.4 節は高校数学の範囲で完結する独立な別解,3.5〜3.6 節は保存量と計数の観点を示す参考解である。
(L) によれば,$x_{n+1}\bmod 3$ は組 $(n\bmod 3,\ x_n\bmod 3)$ のみで定まる。したがってこの組は有限集合 $(\mathbb{Z}/3\mathbb{Z})^2$ 上の一定の写像で遷移し,和分の計算なしに周期が得られる。
$\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$ の元を代表 $0,1,2$ で表し,$P_n=(n\bmod 3,\ x_n\bmod 3)$,$\Phi(s,\rho)=(s+1,\ \rho+s-1)$(成分は法 $3$)とおく。
補題2
の (L) より $P_{n+1}=\Phi(P_n)$ である。$P_1=(1,0)$ から
$$
P_1=(1,0)\ \longmapsto\ P_2=(2,0)\ \longmapsto\ P_3=(0,1)\ \longmapsto\ P_4=(1,0)=P_1.
$$
$P_n=\Phi^{n-1}(P_1)$ であり,$\Phi^3(P_1)=P_1$ より $P_{n+3}=\Phi^{n-1}\bigl(\Phi^3(P_1)\bigr)=P_n$ である。よって $x_n\bmod 3$ は $0,0,1$ を繰り返し,本解の (3) を得る。以下は本解と同じである。
一般に $\Phi^3(s,\rho)=\bigl(s,\ \rho+(s-1)+s+(s+1)\bigr)=(s,\ \rho+3s)=(s,\rho)$ であり,$\Phi^3$ は9状態すべてを固定する( 5.2 節 )。初期状態 $(1,0)$ から訪れる状態は9個のうち3個のみである。
本解の (4) が得られれば,余弦項は $n$ の既知関数である。漸化式を直接和分して $x_n$ の閉形式を求め, 補題3 の $y_n$ の閉形式と比較する。
$n=7$ で $21+12-6=27=x_7$ である。ガウス記号を含む部分が $x_n$ と $y_n$ で完全に一致し,差をとると消える。これは問う量として $x_n-y_n$ が選ばれた理由を示している( 1.5 節 )。本節は (4) を前提とするから,独立な解法ではなく本解の後処理である。
(K) の証明に必要なのは $x_n\bmod 3$ の一般形ではなく,余弦項 $c_n$ の値の列だけである。$c_n$ を未知の数列とみなし,その周期性 $c_{n+3}=c_n$ のみを直接示す。
補題2
より $x_n\in\mathbb{Z}$ であり,$x_{k+1}-x_k\equiv k-1\pmod 3$ である。これを $k=n,\ n+1,\ n+2$ について加えると
$$
x_{n+3}-x_n\equiv(n-1)+n+(n+1)=3n\equiv0\pmod 3.
$$
$c_n$ は $x_n$ を $3$ で割った余りのみで定まるから(
補題1
),$c_{n+3}=c_n$ である。また $x_1=0$,$x_2=0+1+2=3$,$x_3=3+2+2=7$ より $c_1=2$,$c_2=2$,$c_3=-1$ である。
一方
補題3
より $\Delta y_n$ も周期 $3$ をもち,$\Delta y_1=2$,$\Delta y_2=2$,$\Delta y_3=-1$ である。周期 $3$ の二つの数列が $n=1,2,3$ で一致すれば,$n$ に関する帰納法によりすべての $n$ で一致する。よって $c_n=\Delta y_n$,すなわち (K) が成り立ち,
命題4
により $x_n-y_n=\binom{n}{2}$ である。
$x_4=7+3-1=9\equiv x_1\pmod 3$ と,周期が実際に閉じていることを確認できる。「最初の3項が $2,2,-1$ であるから周期 $3$」とする推論は誤りであり,周期性の根拠は $x_{n+3}\equiv x_n$ の証明にある。また $c_n+c_{n+1}+c_{n+2}=3=y_{n+3}-y_n$ と,1周期の和も一致する。
問われているのは差 $x_n-y_n$ であり,漸化式の階差には $n$ が現れる。$n$ の離散原始関数は $\binom{n}{2}$ であるから,$x_n=y_n+\binom{n}{2}$ を予想し,右辺で定義した数列が $x_n$ と同じ初期値と漸化式を満たすことを確かめる。$x_n$ を一度も解析しない逆算型の解法である。
$a_n=y_n+\binom{n}{2}$ とおく。
補題3
の $y_n=(n-1)+r_n$ と $n-1\equiv r_n\pmod 3$ より
$$
y_n\equiv2r_n\equiv-r_n\pmod 3.
$$
また $2\binom{n}{2}=n(n-1)\equiv(r_n+1)r_n\pmod 3$ であり,$2$ は法 $3$ で可逆($2\cdot2\equiv1$)であるから $\binom{n}{2}\equiv\frac{r_n(r_n+1)}{2}\pmod 3$(右辺は整数)である。よって
$$
a_n\equiv-r_n+\frac{r_n(r_n+1)}{2}=\frac{r_n(r_n-1)}{2}\pmod 3.
$$
右辺は $r_n=0,1,2$ に対して $0,0,1$ であるから,$3\mid a_n\iff r_n\in\lbrace 0,1\rbrace\iff3\nmid n$ である。
補題1
より $2\cos\frac{2\pi a_n}{3}$ は $3\nmid n$ のとき $2$,$3\mid n$ のとき $-1$ であり,
補題3
よりこれは $y_{n+1}-y_n$ に等しい。したがって
$$
a_{n+1}=y_{n+1}+\binom{n+1}{2}=y_n+\binom{n}{2}+n+(y_{n+1}-y_n)=a_n+n+2\cos\frac{2\pi a_n}{3}.
$$
また $a_1=y_1+\binom{1}{2}=0=x_1$ である。$(x_n)$ と $(a_n)$ はともに $u_1=0$,$u_{n+1}=\Psi_n(u_n)$ を満たすから,帰納法によりすべての $n$ で $a_n=x_n$ である。ゆえに $x_n-y_n=\binom{n}{2}$ である。
$a_1,\ldots,a_4=0,3,7,9$ は $x_1,\ldots,x_4$ と一致する。剰余の計算は次の表でも確認できる。
| $n\bmod 3$ | $1$ | $2$ | $0$ |
|---|---|---|---|
| $y_n\bmod 3$ | $0$ | $2$ | $1$ |
| $\binom{n}{2}\bmod 3$ | $0$ | $1$ | $0$ |
| $a_n\bmod 3$ | $0$ | $0$ | $1$ |
初期値の確認は省けない。 1.2 節 で見たとおり $(a_n+3)$ も同じ漸化式を満たすから,漸化式の一致だけでは $a_n=x_n$ は従わない。なお,$x_n-y_n=\binom{n}{2}$ を帰納法の仮定として次の項を示す通常の帰納法は,本解法と論理的に同型である( 3.7 節 )。
(L) のドリフト $n-1$ は $\binom{n}{2}-\binom{n-1}{2}=n-1$ と階差の形に書ける。この離散原始関数を $x_n$ から引いた移動座標は,法 $3$ で動かない。漸化式を解くのではなく,保存量を設計する解法である。
補題2
より $x_n\in\mathbb{Z}$,$c_n\in\lbrace 2,-1\rbrace$ である。$I_n=x_n-\binom{n-1}{2}$ とおくと $I_n\in\mathbb{Z}$ であり,
$$
I_{n+1}-I_n=(x_{n+1}-x_n)-\left\lbrace\binom{n}{2}-\binom{n-1}{2}\right\rbrace=n+c_n-(n-1)=1+c_n\in\lbrace 3,0\rbrace.
$$
よって $I_{n+1}\equiv I_n\pmod 3$ であり,$I_1=0$ から $I_n\equiv0$,すなわち $x_n\equiv\binom{n-1}{2}\pmod 3$ である。これは本解の (2) であり,以下 (3)〜(5) により (K) を得て,
命題4
から $x_n-y_n=\binom{n}{2}$ である。
$I_1,\ldots,I_5=0,3,6,6,9$ はすべて $3$ の倍数である。引く量は $\binom{n-1}{2}$ であって答の $\binom{n}{2}$ ではない。前者は法 $3$ のドリフト $n-1$ を消すための補正,後者は差 $x_n-y_n$ の値であり,添字が一つずれている。さらに $I_n$ は法 $3$ で不変であるだけでなく,$I_n/3$ はそれまでに $1+c_k=3$ となった回数に等しい(参考解2)。
補題1
より $c_n=-1+3\cdot\mathbf{1}_{3\mid x_n}$ であるから,漸化式は
$$
x_{n+1}=x_n+(n-1)+3\cdot\mathbf{1}_{3\mid x_n}
$$
となる。第 $n$ 段階では $n-1$ だけ進み,$3$ の倍数にいるときに限り追加で $3$ 進む。三角関数を計数に置き換え,$x_n$ と $y_n$ が同じ訪問回数を共有することを示して大域的に消去する。
$N_n=\#\lbrace k\mid 1\leqq k\leqq n-1,\ 3\mid x_k\rbrace$ とおく。上式を $k=1,\ldots,n-1$ について加えると,等式として
$$
x_n=\binom{n-1}{2}+3N_n \tag{6}
$$
を得る。特に $x_k\equiv\binom{k-1}{2}\pmod 3$ であり,追加の $3$ は剰余を変えないから,その発生時刻は追加を無視した基準軌道 $\binom{k-1}{2}$ だけで決まる。本解と同様に,$t_{k+3}\equiv t_k$ と $t_1,t_2,t_3=0,0,1$ より $3\mid\binom{k-1}{2}\iff3\nmid k$ であるから
$$
N_n=\#\lbrace k\mid 1\leqq k\leqq n-1,\ 3\nmid k\rbrace=(n-1)-\left\lfloor\frac{n-1}{3}\right\rfloor.
$$
一方
補題3
より
$$
y_n=2(n-1)-3\left\lfloor\frac{n-1}{3}\right\rfloor=3N_n-(n-1).
$$
これを (6) から引いて
$$
x_n-y_n=\binom{n-1}{2}+(n-1)=\binom{n}{2}.
$$
$n=4$ では,$x_1,x_2,x_3=0,3,7$ のうち $3$ の倍数は2個で $N_4=2=3-1$ であり,$x_4=3+6=9$,$y_4=6-3=3$ となる。(6) の $3N_n$ は参考解1 の $I_n$ そのものである。本解法は $x_n\bmod 3$ の決定を参考解1 と共有するが,(K) という局所的な一致ではなく,共通の計数 $3N_n$ の大域的な相殺によって答に達する点で,消去の機構が異なる。
以下は独立の解法とは数えず,既出の解法の表現違いまたは後処理として扱う。
| 解法 | 主に利用する構造 | 直接の対象 | 論理の向き | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 本解 | 値域の単一剰余類,合同式の和分 | $x_n\bmod 3$ | 順方向 | 発想の飛躍がなく再現性が高い | $2$ での除算を含む剰余計算 |
| 3.1 節 | 有限集合上の決定的な写像 | $(n,\ x_n)\bmod 3$ | 順方向 | 和分が不要 | 周期の根拠 $\Phi^3(P_1)=P_1$ の明示 |
| 3.2 節 | 指示関数の和 | $x_n$ の閉形式 | 順方向 | $x_n$ 自体が得られる | (4) が前提 |
| 別解1 | 3段階での剰余の不変性 | $c_n$ の周期 | 順方向 | 必要な情報だけを解く | 数項からの周期の断定を避ける |
| 別解2 | 解の一意性 | 候補 $y_n+\binom{n}{2}$ | 逆方向 | $x_n$ を解析しない | 候補の発見,初期値の確認 |
| 参考解1 | ドリフトの離散原始関数 | 不変量 $I_n$ | 保存量 | 不変量設計の典型 | $\binom{n-1}{2}$ と $\binom{n}{2}$ の混同 |
| 参考解2 | $1+c_n=3\cdot\mathbf{1}_{3\mid x_n}$ | 訪問回数 $N_n$ | 大域的な相殺 | 隠れた共通項を可視化 | 計数範囲の端点 |
すべての解法は高校数学の範囲で完結する。試験場での第一選択は本解である。各段階(整数性,合同,剰余,階差の一致,和分)が問題文から最短距離にあり,(3),(4),(5) の各段で数値による検算ができる。$y_n$ の階差に先に気付いた場合は別解1 が最短であり,数項から三角数が見えた場合は別解2 が最も記述量が少ない。参考解は,(L) の背後にある「帰還が剰余を変えない」という構造を,保存量と計数という二つの側面から明示する。
本問から抽出される,状態に依存する関数を含む漸化式に対する探索手順を述べる。
| 症状 | 検討する表現・道具 | 本問での例 |
|---|---|---|
| 未知数が三角関数や $(-1)^{x}$ の中にある | 入力の離散性,有限値化 | 補題1,補題2 |
| 関数値は複数だが,ある法で互いに合同 | その法での線形化 | (L) |
| 漸化式が $n$ に依存し,状態は有限 | $(n\bmod m,\ x_n\bmod m)$ の遷移 | 3.1 節 |
| 必要なのは駆動項の値だけ | 駆動項の周期性 | 別解1 |
| 答の形が予想できる | 候補解と一意性 | 別解2 |
| 時間に依存するドリフトがある | 離散原始関数を引いた移動座標 | 参考解1 |
| 状態依存項が定数と $m$ 倍の指示関数の和 | 訪問回数の計数 | 参考解2 |
| 場合分けで定義された数列 | 階差,床関数による一本化 | 補題3 |
本問の核心は次の形に一般化される。
$m\geqq2$ と $\gamma$ を整数とし,$F:\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}$ はすべての整数 $k$ で $F(k)\equiv\gamma\pmod m$ を満たすとする。整数 $x_1$ と整数列 $(a_n)$ に対し,$x_{n+1}=x_n+a_n+F(x_n)$ により $(x_n)$ を定める。このとき次が成り立つ。
(i) $x_n\equiv x_1+\sum_{k=1}^{n-1}(a_k+\gamma)\pmod m$ であり,右辺は $F$ によらない。
(ii) さらに $F(k)$ が $k\bmod m$ のみで定まるならば,$F(x_n)$ は $n$ の既知関数であり,$Y_n=\sum_{k=1}^{n-1}F(x_k)$ とおくと
$$
x_n-Y_n=x_1+\sum_{k=1}^{n-1}a_k.
$$
(i) $x_{k+1}-x_k=a_k+F(x_k)\equiv a_k+\gamma\pmod m$ を $k=1,\ldots,n-1$ について加える。(ii) 前半は (i) から,後半は漸化式を $k=1,\ldots,n-1$ について加えることから従う。
本問は $m=3$,$\gamma=-1$,$a_k=k$,$x_1=0$,$F(k)=2\cos\frac{2\pi k}{3}$ の場合である。(i) は $x_n\equiv\binom{n-1}{2}\pmod 3$ を与え,(ii) の $Y_n$ は問題の $y_n$ に一致する(
補題3
と本解の (4))。問題文は $Y_n$ を3系列の形で与え,$x_n-Y_n=\binom{n}{2}$ を問うている。
条件 $F(k)\equiv\gamma\pmod m$ を満たす $F$ は,一般の $m$ に対して
命題6
により $F_m(k)=\sum_{j=1}^{m-1}\cos\frac{2\pi jk}{m}=m\cdot\mathbf{1}_{m\mid k}-1$ として三角関数で構成できる。$m=3$ では $F_3(k)=2\cos\frac{2\pi k}{3}$ である。
定理5 は類題の設計原理としても読める。法 $m$ と $F_m$ を選び,駆動項 $a_n$ と初期値 $x_1$ を与えると,$x_n\bmod m$ は $x_1+\sum_{k=1}^{n-1}(a_k-1)$ で定まり,$F_m(x_n)$ は $n$ の既知関数となる。その累積和 $Y_n$ を場合分けや床関数で偽装して与え,$x_n-Y_n$ を問えばよい。初期値は余弦項が定数にならない位相を選ぶ必要がある(本問で $x_1\equiv1$ とすると $c_n=-1$ となる。 1.5 節 )。
| 事項 | 高校数学での扱い | 一般理論 |
|---|---|---|
| 余弦項の二値性 | $\cos$ の周期性と特殊角 | 指標の直交関係,離散フーリエ変換 |
| $2\equiv-1\pmod 3$ | 合同式 | $\mathbb{Z}[\omega]$ の素元 $1-\omega$ を法とする合同 |
| 余弦が整数値をとる条件 | 個別の計算 | Niven の定理,代数的整数 |
| $x_n\bmod 3$ の周期 | 剰余の追跡 | 有限状態力学系,歪積(skew product) |
| 階差と和 | 階差数列と $\sum$ | 差分法,離散原始関数 |
| $y_n=(n-1)+r_n$ | 場合分けの一本化 | 周期列の平均と振動成分への分解 |
| 候補解と一意性 | 数学的帰納法 | 初期値問題の解の一意性 |
本解・別解・参考解はすべて左欄の範囲で完結する。右欄は,それらの計算が成り立つ理由を説明する理論である。
$\Psi_n(t+3)=\Psi_n(t)+3$ であるから,$\Psi_n$ は $\mathbb{R}/3\mathbb{Z}$ 上の写像を誘導する。整数点に制限すると,
補題2
により $\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$ 上の写像 $\rho\mapsto\rho+n-1$ となる。これは状態に依存しない平行移動であり,時間 $n$ に依存する回転である。時間 $n\bmod 3$ も状態に含めると,自律的な写像
$$
\Phi:(\mathbb{Z}/3\mathbb{Z})^2\to(\mathbb{Z}/3\mathbb{Z})^2,\qquad\Phi(s,\rho)=(s+1,\ \rho+s-1)
$$
が得られる。これは底空間 $\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$ 上の回転 $s\mapsto s+1$ の上に,ファイバー方向の平行移動 $\rho\mapsto\rho+(s-1)$ を重ねた歪積である。ファイバー方向の移動量の1周期の和は $(1-1)+(2-1)+(0-1)=0$ であるから $\Phi^3=\mathrm{id}$ となり,9状態は長さ $3$ の三つの軌道に分かれる。初期値 $x_1$ の剰余が軌道を選ぶ。
| $x_1\bmod 3$ | $x_n\bmod 3$($n\equiv1,2,0$) | 余弦項の周期列 |
|---|---|---|
| $0$ | $0,\ 0,\ 1$ | $2,\ 2,\ -1$ |
| $1$ | $1,\ 1,\ 2$ | $-1,\ -1,\ -1$ |
| $2$ | $2,\ 2,\ 0$ | $-1,\ -1,\ 2$ |
周期 $3$ は初期値によらないが,周期列の形は初期値に依存する。問題の $y_n$ は第1行の軌道に合わせて与えられている。
$m\geqq2$,$\zeta=e^{2\pi i/m}$ とする。整数 $k$ に対して
$$
\sum_{j=0}^{m-1}\zeta^{jk}=m\cdot\mathbf{1}_{m\mid k},\qquad\text{したがって}\qquad\sum_{j=1}^{m-1}\cos\frac{2\pi jk}{m}=m\cdot\mathbf{1}_{m\mid k}-1.
$$
特に右の和は整数であり,常に法 $m$ で $-1$ に合同である。
$m\mid k$ ならば各項は $1$ である。$m\nmid k$ ならば $\zeta^k\neq1$ であり,等比数列の和は $\frac{\zeta^{km}-1}{\zeta^k-1}=0$ である。実部をとり,$j=0$ の項 $1$ を移項する。
$m=3$ では $\cos\frac{4\pi k}{3}=\cos\frac{2\pi k}{3}$ であるから左辺は $2\cos\frac{2\pi k}{3}$ となり, 補題1 の $1+2\cos\frac{2\pi k}{3}=3\cdot\mathbf{1}_{3\mid k}$ が再現される。すなわち本問の余弦項は,$\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$ の非自明な指標 $k\mapsto\omega^{k}$,$k\mapsto\omega^{-k}$ の和であり,$3\cdot\mathbf{1}_{3\mid k}$ の離散フーリエ展開 $\sum_{j=0}^{2}\omega^{jk}$ から定数項を除いたものである。参考解2 の指示関数化は,この展開を逆にたどる操作にあたる。
$2\equiv-1\pmod 3$ という一見偶然の一致には,代数的整数論による説明がある。$\mathbb{Z}[\omega]=\lbrace a+b\omega\mid a,b\in\mathbb{Z}\rbrace$(Eisenstein 整数)において $\lambda=1-\omega$ とおくと,$\omega^2=-1-\omega$ より
$$
\lambda^2=1-2\omega+\omega^2=-3\omega,\qquad\text{すなわち}\qquad3=-\omega^2\lambda^2.
$$
$\omega\equiv1\pmod\lambda$ であるから,任意の整数 $k$ に対して $\omega^k+\omega^{-k}\equiv2\pmod\lambda$ である($\omega^{-1}=\omega^2\in\mathbb{Z}[\omega]$)。一方,有理整数 $z$ について $\lambda\mid z\iff3\mid z$ が成り立つ。実際,ノルム $N(a+b\omega)=a^2-ab+b^2$ は乗法的で $N(\lambda)=3$ であり,$z=\lambda\beta$ ならば $z^2=3N(\beta)$ より $3\mid z$ である。逆は $\lambda\mid3$ による。$2\cos\frac{2\pi k}{3}=\omega^k+\omega^{-k}$ は有理整数であるから
$$
2\cos\frac{2\pi k}{3}\equiv2\pmod 3.
$$
すなわち,$2$ と $-1$ が法 $3$ で等しいことは,$1$ の3乗根がすべて素元 $\lambda$ を法として $1$ に合同であること($3$ が $\mathbb{Q}(\omega)$ で完全分岐すること)の帰結である。素数 $p$ と $\zeta_p=e^{2\pi i/p}$ についても同様に $\zeta_p\equiv1\pmod{1-\zeta_p}$ であり,$\sum_{j=1}^{p-1}\zeta_p^{jk}\equiv p-1\equiv-1\pmod p$ を得る。これは $m$ が素数の場合の
命題6
の合同部分の別証になる。
正の整数 $m$ について次が成り立つ。
(i) すべての整数 $k$ で $2\cos\frac{2\pi k}{m}\in\mathbb{Z}$ となるのは,$m\in\lbrace 1,2,3,4,6\rbrace$ のときに限る。
(ii) そのうち,値がすべて法 $m$ の同一の剰余類に属するのは,$m\in\lbrace 1,2,3\rbrace$ のときに限る。
(i) 必要性:$k=1$ とすると $2\cos\frac{2\pi}{m}\in\mathbb{Z}\cap[-2,2]$ である。$0 < \frac{2\pi}{m}\leqq2\pi$ の範囲で値 $2,1,0,-1,-2$ を与える角のうち $m$ が整数となるものは,それぞれ $m=1,6,4,3,2$ に限る。十分性:値は $k\bmod m$ のみで定まり,$m=1,2,3,4,6$ に対する値の集合はそれぞれ $\lbrace 2\rbrace$,$\lbrace 2,-2\rbrace$,$\lbrace 2,-1\rbrace$,$\lbrace 2,0,-2\rbrace$,$\lbrace 2,1,-1,-2\rbrace$ である。
(ii) $m=1,2,3$ では値はそれぞれ法 $m$ で $0,0,2$ の一つの類に属する。$m=4$ では $2\not\equiv0\pmod 4$,$m=6$ では $2\not\equiv1\pmod 6$ である。
したがって,単一の余弦 $2\cos\frac{2\pi x}{m}$ によって「値は変わるが法 $m$ では定数」という帰還を作れるのは $m=2,3$ に限られ,$m=2$ では $2(-1)^x$ にすぎない。$m\geqq4$ では
命題6
の和 $F_m$ が必要になる。本問の $m=3$ は,この意味で単一の余弦による構成の最大の場合である。
より強く,Niven の定理は「$\theta/\pi\in\mathbb{Q}$ かつ $\cos\theta\in\mathbb{Q}$ ならば $\cos\theta\in\lbrace 0,\pm\frac12,\pm1\rbrace$」を主張する。証明は,$D_0(X)=2$,$D_1(X)=X$,$D_{j+1}(X)=XD_j(X)-D_{j-1}(X)$ で定まる整数係数のモニック多項式(Dickson 多項式)が $D_j(2\cos\theta)=2\cos j\theta$ を満たすことによる。$\theta=\frac{2\pi p}{q}$ ならば $2\cos\theta$ はモニック整数係数多項式 $D_q(X)-2$ の根であり,有理根定理によって有理数なら整数である。同じ事実は,格子を保つ回転の位数が $1,2,3,4,6$ に限られるという結晶学的制限の背景でもある(回転行列のトレース $2\cos\frac{2\pi}{m}$ が整数でなければならない)。
差分作用素 $\Delta$ と和 $\sum_{k=1}^{n-1}$ の間には,微積分学の基本定理の離散版
$$
\sum_{k=1}^{n-1}\Delta a_k=a_n-a_1
$$
が成り立つ。$\Delta\binom{n}{2}=n$ であり,一般に $\Delta\binom{n}{j}=\binom{n}{j-1}$ である。$\binom{n}{j}$ は下降階乗 $n(n-1)\cdots(n-j+1)$ を $j!$ で割ったもので,$\frac{x^j}{j!}$ の離散版にあたる。本問は $\Delta x_n=n+c_n$,$\Delta y_n=c_n$ から $\Delta(x_n-y_n)=n$ を得る構造である。
周期 $p$ の数列 $(c_k)$ の1周期の和を $S$ とすると,$g(n)=\sum_{k=1}^{n-1}\left(c_k-\frac{S}{p}\right)$ は $g(n+p)-g(n)=S-S=0$ を満たすから
$$
\sum_{k=1}^{n-1}c_k=\frac{S}{p}(n-1)+g(n)\qquad(g\text{ は周期 }p)
$$
と分解される。周期関数の原始関数が「平均による一次関数と周期関数の和」になることの離散版である。本問では $p=3$,$S=3$ であり,$y_n=(n-1)+r_n$(
補題3
)がこの分解にあたる。
振動成分を三角関数で表すと,$c_n=1-2\cos\frac{2\pi n}{3}$ であり,のこぎり波 $r_n$ は
$$
r_n=1-\cos\frac{2\pi(n-1)}{3}-\frac{1}{\sqrt3}\sin\frac{2\pi(n-1)}{3}
$$
と書ける(右辺は周期 $3$ をもち,$n=1,2,3$ で $0,1,2$ を与える)。したがって
$$
y_n=n-\cos\frac{2\pi(n-1)}{3}-\frac{1}{\sqrt3}\sin\frac{2\pi(n-1)}{3},\qquad x_n=\binom{n}{2}+y_n.
$$
これは $y_n$ の3系列による定義と
3.2 節
の床関数表示を,離散フーリエ展開の形で統一したものである。
合同式の記号 $\equiv$ は Gauss の『Disquisitiones Arithmeticae』(1801)に始まる。$\mathbb{Z}[\omega]$ は Eisenstein の名を冠し,19世紀に3次の相互法則の研究で用いられた。差分と和分の計算法は Newton 以来の補間法の伝統にあり,Boole の『A Treatise on the Calculus of Finite Differences』(1860)で体系的に整理された。有理数倍の角の余弦が有理数となる場合の決定は Niven の『Irrational Numbers』(1956)に収められている。指標の直交関係は,有限アーベル群上のフーリエ解析の基礎である。本問は,これらの理論が交わる最も小さな具体例の一つになっている。