凸四角形 $\mathrm{ABCD}$ において、
$$
\mathrm{AB}=39,\quad \mathrm{BC}=41,\quad \mathrm{CD}=3,\quad \mathrm{DA}=13
$$
であり、$\angle\mathrm{DAB}=90^\circ$ とする。
(1) 対角線 $\mathrm{AC}$ の長さを求めよ。
(2) 三角形 $\mathrm{ABC}$ の内接円の半径を求めよ。
与えられた直角から直ちに定まる長さは $\mathrm{BD}$ だけである。この値を残りの二辺と照合すると,問題文に書かれていない第二の直角が現れる。
$L=13\sqrt{10}$,$\angle\mathrm{BCD}=90^\circ$ である。したがって $\mathrm{A},\mathrm{C}$ はともに線分 $\mathrm{BD}$ を直径とする円 $\Gamma$ の周上にあり,三角形 $\mathrm{ABD},\mathrm{CBD},\mathrm{ABC},\mathrm{ACD}$ はすべて $\Gamma$ を外接円とする。$\Gamma$ の半径は $R=\dfrac{L}{2}=\dfrac{13\sqrt{10}}{2}$ である。
$\angle\mathrm{DAB}=90^\circ$ より $L^2=39^2+13^2=1690$。一方 $\mathrm{BC}^2+\mathrm{CD}^2=41^2+3^2=1690=L^2$ であるから,三平方の定理の逆より $\angle\mathrm{BCD}=90^\circ$。線分 $\mathrm{BD}$ を直角に見込む点は $\mathrm{BD}$ を直径とする円周上にある(円周角の定理の逆)。
本問の数値の核は
$$
39^2+13^2=41^2+3^2=1690
$$
である。四角形 $\mathrm{ABCD}$ は,斜辺 $\mathrm{BD}$ を共有する二つの直角三角形 $\mathrm{ABD}$,$\mathrm{CBD}$ を $\mathrm{BD}$ の両側に貼り合わせた図形であり,以下のすべての解法は円 $\Gamma$ と直径 $\mathrm{BD}$ を共通の舞台とする。
(i) 対角線 $\mathrm{AC},\mathrm{BD}$ は互いの内部の点 $\mathrm{P}$ で交わる。特に $\mathrm{A},\mathrm{C}$ は直線 $\mathrm{BD}$ の反対側に,$\mathrm{B},\mathrm{D}$ は直線 $\mathrm{AC}$ の反対側にある。また,各辺を含む直線に関して,残りの2頂点は同じ側にある。
(ii) $\beta=\alpha+\gamma$。
(iii) $\Gamma$ の周上で4点は $\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D}$ の巡回順に並ぶ。したがって $\angle\mathrm{ABC}+\angle\mathrm{ADC}=180^\circ$ であり,$\angle\mathrm{ACD}=\angle\mathrm{ABD}=\alpha$,$\angle\mathrm{CAD}=\angle\mathrm{CBD}=\gamma$,$\angle\mathrm{ACB}=\angle\mathrm{ADB}=90^\circ-\alpha$ などの円周角の等式が成り立つ。
(i) は凸四角形の基本性質である。
(ii) $\mathrm{P}$ は線分 $\mathrm{AC}$ の内部にあるから半直線 $\mathrm{BP}$ は $\angle\mathrm{ABC}$ の内部を通り,$\mathrm{P}$ は線分 $\mathrm{BD}$ の内部にあるから $\mathrm{D}$ は半直線 $\mathrm{BP}$ 上にある。よって $\angle\mathrm{ABC}=\angle\mathrm{ABD}+\angle\mathrm{DBC}$。
(iii) 直径 $\mathrm{BD}$ は $\Gamma$ を二つの半円に分け,(i) より $\mathrm{A},\mathrm{C}$ は異なる半円上にある。ゆえに周上の並びは $\mathrm{B},\mathrm{A},\mathrm{D},\mathrm{C}$ の巡回順であり,向きを逆にたどれば $\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D}$ の巡回順である。この順に円に内接する四角形では対角の和が $180^\circ$ である。また (i) より,弦 $\mathrm{AD}$ に関して $\mathrm{B},\mathrm{C}$ は,弦 $\mathrm{CD}$ に関して $\mathrm{A},\mathrm{B}$ は,弦 $\mathrm{AB}$ に関して $\mathrm{C},\mathrm{D}$ はそれぞれ同じ側にあるから,円周角の等式が従う。最後の等式の $\angle\mathrm{ADB}=90^\circ-\alpha$ は直角三角形 $\mathrm{ABD}$ による。
凸性の役割は,それを外したときに何が起こるかを見ると明確になる。$\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{D}$ を固定すると,$\mathrm{C}$ は $\mathrm{B}$ を中心とする半径 $41$ の円と $\mathrm{D}$ を中心とする半径 $3$ の円の交点であり,交点は中心線 $\mathrm{BD}$ に関して対称な2点 $\mathrm{C},\mathrm{C}'$ である。$\mathrm{C}'$ は $\mathrm{A}$ と同じ半円上にある。その半円上の点 $\mathrm{X}$ について $\angle\mathrm{DBX}$ は $\mathrm{D}$ から $\mathrm{B}$ へ向かって単調に増加するから,$\angle\mathrm{DBC}'=\gamma < \alpha=\angle\mathrm{DBA}$ より周上の並びは $\mathrm{B},\mathrm{A},\mathrm{C}',\mathrm{D}$ となる。したがって $\mathrm{BC}'$ と $\mathrm{AD}$ は円に内接する凸四角形 $\mathrm{BAC'D}$ の対角線として交わり,折れ線 $\mathrm{A}\to\mathrm{B}\to\mathrm{C}'\to\mathrm{D}\to\mathrm{A}$ は自己交差する。凸四角形 $\mathrm{BAC'D}$ にトレミーの定理を用いると $13\cdot41=39\cdot3+\mathrm{AC}'\cdot L$ である。
| 配置 | $\mathrm{B}$ における角 | 対角線と $L$ の積 | 対角線の長さ |
|---|---|---|---|
| 凸($\mathrm{C}$) | $\alpha+\gamma$ | $39\cdot3+13\cdot41=650$ | $5\sqrt{10}$ |
| 自己交差($\mathrm{C}'$) | $\alpha-\gamma$ | $13\cdot41-39\cdot3=416$ | $\dfrac{16\sqrt{10}}{5}$ |
凸性は,角の和と差,積の和と差のどちらを採るかを決める条件である。以下の解法で凸性を用いる箇所(角の和,高さの和,垂足の位置,座標の符号,回転の向き)は,すべてこの二択に対応する。
(i) $\tan\alpha=\dfrac13$,$\tan\gamma=\dfrac{3}{41}$ であり,$0^\circ < \alpha < 45^\circ$,$0^\circ < \gamma < 45^\circ$,$0^\circ < \beta < 90^\circ$ である。
(ii) $\cos\beta=\dfrac{12}{13}$,$\sin\beta=\dfrac{5}{13}$,$\tan\dfrac{\beta}{2}=\dfrac15$ である。
(i) 直角三角形 $\mathrm{ABD}$(直角は $\mathrm{A}$),$\mathrm{CBD}$(直角は $\mathrm{C}$)より $\tan\alpha=\frac{13}{39}=\frac13$,$\tan\gamma=\frac{3}{41}$ で,いずれも $1$ 未満の正数である。
補題3
(ii) より $\beta=\alpha+\gamma$ であるから $0^\circ < \beta < 90^\circ$。
(ii) 複素数 $3+i$,$41+3i$ の偏角はそれぞれ $\alpha$,$\gamma$ であるから,積
$$
(3+i)(41+3i)=120+50i=10(12+5i)
$$
の偏角は $\alpha+\gamma=\beta$ である。$\lvert12+5i\rvert=13$ より $\cos\beta=\frac{12}{13}$,$\sin\beta=\frac{5}{13}$。さらに $\tan\frac{\beta}{2}=\dfrac{\sin\beta}{1+\cos\beta}=\dfrac{5}{25}=\dfrac15$。
この計算は次の構造の一部である。二つの直角三角形の脚を複素数 $z_1=39+13i$,$z_2=41+3i$ で表すと,$\lvert z_1\rvert=\lvert z_2\rvert=L$,$\arg z_1=\alpha$,$\arg z_2=\gamma$ であり,
$$
\begin{aligned}
z_1z_2&=(39\cdot41-13\cdot3)+(39\cdot3+13\cdot41)i=1560+650i,\\
z_1\overline{z_2}&=(39\cdot41+13\cdot3)+(13\cdot41-39\cdot3)i=1638+416i
\end{aligned}
$$
の絶対値はともに $L^2=1690$ である。
| 関係 | 対応する角 | 現れる場所 |
|---|---|---|
| $39^2+13^2=41^2+3^2$ | $\alpha$,$\gamma$(斜辺の共有) | 共円性( 補題2 ) |
| $5^2+12^2=13^2$ | $\beta=\alpha+\gamma$ | $\sin\beta$,$\cos\beta$,$\tan\frac{\beta}{2}$ |
| $16^2+63^2=65^2$ | $\alpha-\gamma$ | 対角線のなす角,自己交差配置 |
$[\mathrm{ABCD}]=315$,$[\mathrm{ABC}]:[\mathrm{ACD}]=41:1$,$S=[\mathrm{ABC}]=\dfrac{615}{2}$ である。
凸四角形は対角線 $\mathrm{BD}$ で二つの三角形に分かれるから,二つの直角三角形の面積の和として $[\mathrm{ABCD}]=\frac12\cdot39\cdot13+\frac12\cdot41\cdot3=\frac{507+123}{2}=315$。
補題3
(iii) より $\sin\angle\mathrm{ADC}=\sin(180^\circ-\beta)=\sin\beta$ であるから
$$
\frac{[\mathrm{ABC}]}{[\mathrm{ACD}]}=\frac{\frac12\cdot39\cdot41\sin\beta}{\frac12\cdot13\cdot3\sin\beta}=41.
$$
対角線 $\mathrm{AC}$ による分割 $[\mathrm{ABCD}]=[\mathrm{ABC}]+[\mathrm{ACD}]$ と合わせて $S=315\cdot\frac{41}{42}=\frac{615}{2}$。
補題5
の要点は,$S$ が $\mathrm{AC}$ を求める前に確定することである。したがって
$$
r=\frac{S}{s}=\frac{615}{80+\mathrm{AC}}
$$
となり,(2) は (1) の値を代入する問題に帰着する。一方,接線長と半角の関係(
補題6
)と
補題4
(ii) から $r=\frac{80-\mathrm{AC}}{2}\tan\frac{\beta}{2}=\frac{80-\mathrm{AC}}{10}$ でもある。二つの表示を等置すると
$$
\mathrm{AC}+10r=80,\qquad (80+\mathrm{AC})(80-\mathrm{AC})=6150
$$
を得る。後者は $\mathrm{AC}^2=6400-6150=250$ を与え,面積と半角だけからも (1) が決まる(
3.17 節
)。
以下は数値設定からの分析であり,出題者の意図についての推定を含む。
| 着目する構造 | 数学的な翻訳 | 導かれる解法 |
|---|---|---|
| 共円性と既知の四辺 | トレミーの定理 | 本解 |
| 対角の補角 | 余弦の消去 | 別解1 |
| $\beta=\alpha+\gamma$ | 加法定理 | 別解2 |
| 対角線の交点 | 円周角による二組の相似 | 別解3 |
| 和と差の一致 $41^2-39^2=13^2-3^2$ | 半角の直接決定 | 別解4,3.1 節 |
| 外接円の共有 | 面積 $=\frac{\text{三辺の積}}{4R}$ | 別解5 |
| 面積の先行決定 | 面積比 $41:1$ | 別解6 |
| 共通の斜辺 | 斜辺への直交射影 | 別解7 |
| 円周角と短い辺 | 対角線への垂線 | 別解8 |
| $\mathrm{C}$ における直角 | 長方形の補完 | 別解9 |
| 二本の直角の辺の延長 | 外部三角形の相似 | 参考解1 |
| 二つの距離条件 | 二円の交点 | 参考解2 |
| 直角と辺の比 | 複素数による回転 | 参考解3 |
| 対角線の内積と面積 | ラグランジュの恒等式 | 参考解4 |
二平方和の一致から $\angle\mathrm{BCD}=90^\circ$ を示し,$\mathrm{ABCD}$ が $\mathrm{BD}$ を直径とする円に内接することを得る。四辺が既知で対角線が未知であるから,トレミーの定理で $\mathrm{AC}$ を一次式として決定する。(2) では同じ円が三角形 $\mathrm{ABC}$ の外接円でもあることから正弦定理で $\sin\beta$ を得て,面積と $S=rs$ を用いる。
$\angle\mathrm{DAB}=90^\circ$ より
$$
\mathrm{BD}^2=39^2+13^2=1690,\qquad \mathrm{BD}=13\sqrt{10}.
$$
また $\mathrm{BC}^2+\mathrm{CD}^2=41^2+3^2=1690=\mathrm{BD}^2$ であるから,三平方の定理の逆より $\angle\mathrm{BCD}=90^\circ$。よって $\mathrm{A},\mathrm{C}$ はともに $\mathrm{BD}$ を直径とする円周上にあり,凸四角形 $\mathrm{ABCD}$ の4頂点はこの円周上に $\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D}$ の順に並ぶ(
補題3
)。トレミーの定理より
$$
\mathrm{AC}\cdot\mathrm{BD}=\mathrm{AB}\cdot\mathrm{CD}+\mathrm{AD}\cdot\mathrm{BC}=39\cdot3+13\cdot41=650.
$$
ゆえに
$$
\mathrm{AC}=\frac{650}{13\sqrt{10}}=\frac{50}{\sqrt{10}}=5\sqrt{10}.
$$
三角形 $\mathrm{ABC}$ の外接円は $\mathrm{BD}$ を直径とする円であるから,正弦定理より
$$
\sin\beta=\frac{\mathrm{AC}}{\mathrm{BD}}=\frac{5\sqrt{10}}{13\sqrt{10}}=\frac{5}{13}.
$$
よって
$$
S=\frac12\cdot39\cdot41\cdot\frac{5}{13}=\frac{615}{2},\qquad s=\frac{39+41+5\sqrt{10}}{2}=\frac{80+5\sqrt{10}}{2}.
$$
$S=rs$ より
$$
r=\frac{615}{80+5\sqrt{10}}=\frac{123}{16+\sqrt{10}}=\frac{123(16-\sqrt{10})}{246}=8-\frac{\sqrt{10}}{2}.
$$
| 設問 | 答 |
|---|---|
| (1) | $\mathrm{AC}=5\sqrt{10}$ |
| (2) | $r=8-\dfrac{\sqrt{10}}{2}$ |
3.1〜3.3 節は (1) の結果 $\mathrm{AC}=5\sqrt{10}$ を受けた (2) の別証,3.4〜3.12 節は高校数学で完結し答案として推奨できる別解,3.13〜3.16 節は高校数学の範囲で書けるが配置の確認や計算が重い,あるいは一般理論への接続を主眼とする参考解である。各別解の (2) では,その解法の中で得られた量から $S$ または $r$ を求め,最後は本解と同じく $S=rs$ を用いる。
内接円の半径は,面積を経由せず,頂点から接点までの接線長と半角の正接の積として直接表せる。 補題4 の $\tan\frac{\beta}{2}=\frac15$ が単純であることを用いる。
三角形 $\mathrm{XYZ}$ の半周長を $\sigma$,内接円の半径を $\rho$,頂点 $\mathrm{Y}$ の対辺の長さを $y$ とすると
$$
\rho=(\sigma-y)\tan\frac{\angle\mathrm{XYZ}}{2}.
$$
頂点 $\mathrm{X},\mathrm{Y},\mathrm{Z}$ から内接円への接線長を $t_{\mathrm{X}},t_{\mathrm{Y}},t_{\mathrm{Z}}$ とすると,各辺は両端からの接線長の和であるから $t_{\mathrm{X}}+t_{\mathrm{Y}}+t_{\mathrm{Z}}=\sigma$,$t_{\mathrm{Z}}+t_{\mathrm{X}}=y$,よって $t_{\mathrm{Y}}=\sigma-y$。内心を $\mathrm{J}$,辺 $\mathrm{YX}$ 上の接点を $\mathrm{T}$ とすると,$\mathrm{YJ}$ は $\angle\mathrm{XYZ}$ の二等分線,$\mathrm{JT}\perp\mathrm{YX}$ であるから,直角三角形 $\mathrm{YTJ}$ において $\rho=\mathrm{JT}=\mathrm{YT}\tan\frac{\angle\mathrm{XYZ}}{2}=t_{\mathrm{Y}}\tan\frac{\angle\mathrm{XYZ}}{2}$。
三角形 $\mathrm{ABC}$ で $\mathrm{Y}=\mathrm{B}$ とすると $s-\mathrm{AC}=\frac{80-\mathrm{AC}}{2}$ であり,
補題4
(ii) より
$$
r=\frac{80-5\sqrt{10}}{2}\cdot\frac15=8-\frac{\sqrt{10}}{2}.
$$
$\tan\frac{\beta}{2}=\frac15$ は $5:12:13$ の直角三角形から作図でも読み取れる。直角の頂点を $\mathrm{W}$,角 $\beta$ の頂点を $\mathrm{V}$ とし,$\mathrm{VW}=12$,$\mathrm{WU}=5$,$\mathrm{VU}=13$ とする。半直線 $\mathrm{WV}$ 上の $\mathrm{V}$ の先に $\mathrm{VX}=13$ となる点 $\mathrm{X}$ をとると,三角形 $\mathrm{VXU}$ は二等辺三角形で,その外角 $\angle\mathrm{UVW}=\beta$ は底角 $\angle\mathrm{VXU}$ の2倍である。よって $\tan\frac{\beta}{2}=\frac{\mathrm{WU}}{\mathrm{WX}}=\frac{5}{12+13}=\frac15$。これは $\tan\frac{\beta}{2}=\frac{\sin\beta}{1+\cos\beta}$ の図形的な表現である。
$S=rs$ と 補題6 を併せると $S=s(s-\mathrm{AC})\tan\frac{\beta}{2}$ である。$u=\frac{\mathrm{AC}}{2}=\frac{5\sqrt{10}}{2}$ とおくと $s(s-\mathrm{AC})=(40+u)(40-u)=1600-\frac{125}{2}=\frac{3075}{2}$ で,その $\frac15$ 倍は $\frac{615}{2}=S$ に一致する( 補題5 )。本解の有理化 $\frac{615}{80+5\sqrt{10}}=\frac{80-5\sqrt{10}}{10}$ が整うのは,この恒等式による。
三辺 $39,41,\mathrm{AC}$ だけから $r$ を求める。$u=\frac{\mathrm{AC}}{2}$ とおくと $s-39$ と $s-41$ が $u\pm1$ という対称な組になり,根号が外れる。
$u=\frac{5\sqrt{10}}{2}$ とおくと $u^2=\frac{125}{2}$,$s=40+u$ であり
$$
s-39=u+1,\qquad s-41=u-1,\qquad s-\mathrm{AC}=40-u.
$$
ヘロンの公式 $S^2=s(s-39)(s-41)(s-\mathrm{AC})$ と $S=rs$ より
$$
r^2=\frac{(s-39)(s-41)(s-\mathrm{AC})}{s}=\frac{(u^2-1)(40-u)}{40+u}=\frac{u^2-1}{1600-u^2}(40-u)^2.
$$
$$
\frac{u^2-1}{1600-u^2}=\frac{\frac{123}{2}}{\frac{3075}{2}}=\frac{1}{25}
$$
であるから $r^2=\left(\frac{40-u}{5}\right)^2$。$40-u > 0$,$r > 0$ より
$$
r=\frac{40-u}{5}=8-\frac{\sqrt{10}}{2}.
$$
比 $\frac{u^2-1}{1600-u^2}=\frac{(s-39)(s-41)}{s(s-\mathrm{AC})}$ は半角公式により $\tan^2\frac{\beta}{2}$ に等しく,$\frac{1}{25}=\left(\frac15\right)^2$ は 補題4 と整合する。$r=\frac{40-u}{5}=\frac{s-\mathrm{AC}}{5}$ は 3.1 節 と同じ形である。
辺 $\mathrm{AB}$ を $x$ 軸上に置けば,$r$ は内心の $y$ 座標である。内心は各頂点に対辺の長さを重みとして付けた重み付き平均で表される。
$\mathrm{A}(0,0)$,$\mathrm{B}(39,0)$,$\mathrm{D}(0,13)$ とおくと $\mathrm{C}\left(\frac{15}{13},\frac{205}{13}\right)$ である(
3.14 節
)。点とその座標を同一視すると,内心 $\mathrm{I}$ は
$$
\mathrm{I}=\frac{\mathrm{BC}\cdot\mathrm{A}+\mathrm{CA}\cdot\mathrm{B}+\mathrm{AB}\cdot\mathrm{C}}{\mathrm{BC}+\mathrm{CA}+\mathrm{AB}}
$$
で与えられるから,その $y$ 座標は
$$
\frac{39\cdot\frac{205}{13}}{41+5\sqrt{10}+39}=\frac{615}{80+5\sqrt{10}}.
$$
$\mathrm{I}$ は $x$ 軸の上側にあり,$x$ 軸は辺 $\mathrm{AB}$ を含むから $r$ はこの値に等しく,$r=8-\frac{\sqrt{10}}{2}$。
$x$ 座標は $\frac{39\cdot5\sqrt{10}+39\cdot\frac{15}{13}}{80+5\sqrt{10}}=\frac{5\sqrt{10}}{2}-1=s-41$ であり,$\mathrm{A}$ から辺 $\mathrm{AB}$ 上の接点までの接線長 $s-\mathrm{BC}$ に一致する。$y$ 座標は $\frac{\mathrm{AB}\cdot y_{\mathrm{C}}}{2s}=\frac{2S}{2s}$ であるから,この方法は $S=rs$ の座標表示であり,$S=rs$ と独立な証明ではない。
未知の対角線 $x=\mathrm{AC}$ を変数とし,$\mathrm{AC}$ で分けた二つの三角形に余弦定理を用いる。円に内接する四角形では対角が補角であるから二つの余弦の和は $0$ であり,$x^2$ の一次方程式を得る。トレミーの定理を用いない標準的な方法である。
$x=\mathrm{AC}$ とおく。
補題2
と
補題3
(iii) より $\angle\mathrm{ABC}+\angle\mathrm{ADC}=180^\circ$,すなわち $\cos\angle\mathrm{ABC}+\cos\angle\mathrm{ADC}=0$。余弦定理より
$$
\cos\angle\mathrm{ABC}=\frac{39^2+41^2-x^2}{2\cdot39\cdot41}=\frac{3202-x^2}{3198},\qquad
\cos\angle\mathrm{ADC}=\frac{13^2+3^2-x^2}{2\cdot13\cdot3}=\frac{178-x^2}{78}.
$$
$3198=41\cdot78$ であるから,二式の和を $3198$ 倍して
$$
(3202-x^2)+41(178-x^2)=0,\qquad 42x^2=10500,\qquad x^2=250.
$$
$x > 0$ より $\mathrm{AC}=5\sqrt{10}$。
$\cos\beta=\frac{3202-250}{3198}=\frac{12}{13}$,$0^\circ < \beta < 180^\circ$ より $\sin\beta=\frac{5}{13}$。よって $S=\frac12\cdot39\cdot41\cdot\frac{5}{13}=\frac{615}{2}$,$r=\frac{615}{80+5\sqrt{10}}=8-\frac{\sqrt{10}}{2}$。
$\cos\angle\mathrm{ADC}=\frac{178-250}{78}=-\frac{12}{13}$ で補角関係が確認できる。四辺を $a=\mathrm{AB}$,$b=\mathrm{BC}$,$c=\mathrm{CD}$,$d=\mathrm{DA}$ とすると,同じ消去で一般に $x^2=\frac{cd(a^2+b^2)+ab(c^2+d^2)}{ab+cd}$ を得る。本問では $\frac{39\cdot3202+1599\cdot178}{1638}=250$ である。この方法が用いるのは共円性だけで,$\beta$ の鋭角性は不要である。
$\mathrm{AC}$ を含む三角形 $\mathrm{ABC}$ の角 $\beta$ を,対角線 $\mathrm{BD}$ で二つの直角三角形の角 $\alpha,\gamma$ に分解し,加法定理で合成する。
直角三角形 $\mathrm{ABD}$,$\mathrm{CBD}$ より
$$
\sin\alpha=\frac{13}{L},\quad \cos\alpha=\frac{39}{L},\quad \sin\gamma=\frac{3}{L},\quad \cos\gamma=\frac{41}{L}.
$$
補題3
(ii) より $\beta=\alpha+\gamma$ であるから
$$
\cos\beta=\cos\alpha\cos\gamma-\sin\alpha\sin\gamma=\frac{39\cdot41-13\cdot3}{1690}=\frac{1560}{1690}=\frac{12}{13}.
$$
三角形 $\mathrm{ABC}$ の余弦定理より
$$
\mathrm{AC}^2=39^2+41^2-2\cdot39\cdot41\cdot\frac{12}{13}=3202-2952=250,\qquad \mathrm{AC}=5\sqrt{10}.
$$
$$
\sin\beta=\sin\alpha\cos\gamma+\cos\alpha\sin\gamma=\frac{13\cdot41+39\cdot3}{1690}=\frac{650}{1690}=\frac{5}{13}
$$
より $S=\frac{615}{2}$,$r=8-\frac{\sqrt{10}}{2}$。
正接の加法定理では $\tan\beta=\dfrac{\frac13+\frac{3}{41}}{1-\frac13\cdot\frac{3}{41}}=\dfrac{50}{120}=\dfrac{5}{12}$ を得る。$\tan\beta$ だけからは $\cos\beta$ の符号は決まらないが, 補題4 (i) の鋭角性から $\cos\beta=\frac{12}{13}$ と確定する。共円性を併用すれば正弦定理 $\mathrm{AC}=L\sin\beta=13\sqrt{10}\cdot\frac{5}{13}$ で直ちに求まり,余弦定理は不要になる。$\sin\beta$ の分子 $13\cdot41+39\cdot3=650$ はトレミーの定理の右辺に一致する( 1.4 節 )。
対角線の交点 $\mathrm{P}$ に着目すると,円周角から二組の相似三角形が得られ,四つの線分 $\mathrm{AP},\mathrm{BP},\mathrm{CP},\mathrm{DP}$ の比が決まる。対角線の比と,(2) に必要な面積比が同時に得られる。
補題3
(iii) より $\angle\mathrm{PAB}=\angle\mathrm{CAB}=\angle\mathrm{CDB}=\angle\mathrm{PDC}$ であり,対頂角 $\angle\mathrm{APB}=\angle\mathrm{DPC}$ と合わせて $\triangle\mathrm{PAB}\sim\triangle\mathrm{PDC}$。よって
$$
\frac{\mathrm{AP}}{\mathrm{DP}}=\frac{\mathrm{BP}}{\mathrm{CP}}=\frac{\mathrm{AB}}{\mathrm{DC}}=13.
$$
同様に $\angle\mathrm{PBC}=\angle\mathrm{DBC}=\angle\mathrm{DAC}=\angle\mathrm{PAD}$,$\angle\mathrm{BPC}=\angle\mathrm{APD}$ より $\triangle\mathrm{PBC}\sim\triangle\mathrm{PAD}$ で
$$
\frac{\mathrm{BP}}{\mathrm{AP}}=\frac{\mathrm{CP}}{\mathrm{DP}}=\frac{\mathrm{BC}}{\mathrm{AD}}=\frac{41}{13}.
$$
$\mathrm{DP}=t$ とおくと $\mathrm{AP}=13t$,$\mathrm{BP}=\frac{41}{13}\mathrm{AP}=41t$,$\mathrm{CP}=\frac{\mathrm{BP}}{13}=\frac{41}{13}t$。$\mathrm{P}$ は両対角線の内部にあるから(
補題3
(i))
$$
\frac{\mathrm{AC}}{\mathrm{BD}}=\frac{\mathrm{AP}+\mathrm{CP}}{\mathrm{BP}+\mathrm{DP}}=\frac{13+\frac{41}{13}}{42}=\frac{5}{13},\qquad \mathrm{AC}=\frac{5}{13}\cdot13\sqrt{10}=5\sqrt{10}.
$$
三角形 $\mathrm{ABC}$,$\mathrm{ACD}$ は底辺 $\mathrm{AC}$ を共有し,$\mathrm{B},\mathrm{P},\mathrm{D}$ は一直線上にあって $\mathrm{P}$ は直線 $\mathrm{AC}$ 上にあるから,高さの比は $\mathrm{BP}:\mathrm{DP}=41:1$ である。よって $[\mathrm{ABC}]:[\mathrm{ACD}]=41:1$。$[\mathrm{ABCD}]=315$( 補題5 )と合わせて $S=\frac{615}{2}$,$r=8-\frac{\sqrt{10}}{2}$。
方べきの定理 $\mathrm{AP}\cdot\mathrm{CP}=\mathrm{BP}\cdot\mathrm{DP}$ が $13t\cdot\frac{41}{13}t=41t\cdot t$ として成り立つ。面積比 $41:1$ は 補題5 の正弦による導出と一致する。三角関数・座標を一切用いない点が特徴である。
$\beta$ の正弦・余弦を経由せず,半角の正接を和積の公式で直接求める。共通の斜辺のために分母が揃い,$\tan\frac{\beta}{2}$ は二組の脚の和の比になる。半角は (2) の接線長にそのまま接続する。
$\beta=\alpha+\gamma$(
補題3
(ii))であり,$0^\circ < \alpha,\gamma < 45^\circ$ より $\cos\frac{\alpha-\gamma}{2} > 0$,$\cos\frac{\alpha+\gamma}{2} > 0$ である。和積の公式より
$$
\frac{\sin\alpha+\sin\gamma}{\cos\alpha+\cos\gamma}=\frac{2\sin\frac{\alpha+\gamma}{2}\cos\frac{\alpha-\gamma}{2}}{2\cos\frac{\alpha+\gamma}{2}\cos\frac{\alpha-\gamma}{2}}=\tan\frac{\beta}{2}.
$$
左辺に
3.5 節
の値を代入すると,分母 $L$ が約されて
$$
\tan\frac{\beta}{2}=\frac{13+3}{39+41}=\frac{16}{80}=\frac15.
$$
$1-\cos\beta=2\sin^2\frac{\beta}{2}=\dfrac{2\tan^2\frac{\beta}{2}}{1+\tan^2\frac{\beta}{2}}=\dfrac{1}{13}$ であり,余弦定理を差の平方の形に書き換えて
$$
\mathrm{AC}^2=(41-39)^2+2\cdot39\cdot41(1-\cos\beta)=4+\frac{3198}{13}=4+246=250,\qquad \mathrm{AC}=5\sqrt{10}.
$$
補題6
より
$$
r=(s-\mathrm{AC})\tan\frac{\beta}{2}=\frac{80-5\sqrt{10}}{2}\cdot\frac15=8-\frac{\sqrt{10}}{2}.
$$
$41^2-39^2=13^2-3^2$($=160$)は $(41-39)(41+39)=(13-3)(13+3)$ と書けるから
$$
\frac{13+3}{39+41}=\frac{41-39}{13-3}=\frac15.
$$
角の二等分線を軸にとると $\mathrm{A},\mathrm{C}$ は $\mathrm{B}$ から距離 $39,41$,偏角 $\pm\frac{\beta}{2}$ の位置にあり,$\mathrm{AC}^2=(41-39)^2\cos^2\frac{\beta}{2}+(41+39)^2\sin^2\frac{\beta}{2}=\frac{4\cdot25+6400}{26}=250$ と一致する。面積計算も有理化も不要で,二つの設問が $\mathrm{AC}^2=250$,$\mathrm{AC}+10r=80$ の二式に集約される。
四角形の面積を対角線 $\mathrm{AC}$ で分割し,各三角形の面積を共通の外接円半径 $R$ を用いた公式 $[\triangle]=\frac{\text{三辺の積}}{4R}$ で表す。未知の対角線が面積の式の中に一次で現れる。
$x=\mathrm{AC}$ とおく。
補題2
より三角形 $\mathrm{ABC}$,$\mathrm{ACD}$ の外接円半径はともに $R=\frac{L}{2}$ であるから
$$
[\mathrm{ABC}]=\frac{39\cdot41\cdot x}{2L},\qquad [\mathrm{ACD}]=\frac{13\cdot3\cdot x}{2L}.
$$
対角線 $\mathrm{AC}$ は凸四角形を二つの三角形に分けるから,
補題5
の $[\mathrm{ABCD}]=315$ と等置して
$$
\frac{(1599+39)x}{2L}=315,\qquad \frac{x}{L}=\frac{630}{1638}=\frac{5}{13},\qquad \mathrm{AC}=5\sqrt{10}.
$$
$S=\dfrac{39\cdot41}{2}\cdot\dfrac{x}{L}=\dfrac{1599}{2}\cdot\dfrac{5}{13}=\dfrac{615}{2}$ より $r=8-\frac{\sqrt{10}}{2}$。
対角線 $\mathrm{BD}$ による分割に同じ公式を用いると $[\mathrm{ABCD}]=\frac{(39\cdot13+41\cdot3)L}{4R}$ となり,二つの分割の等置は $(39\cdot41+3\cdot13)\,\mathrm{AC}=(39\cdot13+41\cdot3)\,\mathrm{BD}$,すなわちトレミーの第二定理( 定理7 )である。比 $\frac{630}{1638}=\frac{5}{13}$ は本解の $\frac{\mathrm{AC}}{\mathrm{BD}}$ と一致する。角も座標も用いない。
$S$ は $\mathrm{AC}$ より先に決まる( 補題5 )。面積から $\sin\beta$ を求め,鋭角性で $\cos\beta$ を確定し,余弦定理で $\mathrm{AC}$ を復元する。別解5 が面積の等置で長さを直接決めるのに対し,本法は面積から角を経由して長さに戻る。
補題5
より $S=\frac{615}{2}$ であるから
$$
\frac12\cdot39\cdot41\sin\beta=\frac{615}{2},\qquad \sin\beta=\frac{615}{1599}=\frac{5}{13}.
$$
補題4
(i) より $\beta$ は鋭角であるから $\cos\beta=\sqrt{1-\frac{25}{169}}=\frac{12}{13}$。余弦定理より
$$
\mathrm{AC}^2=39^2+41^2-2\cdot39\cdot41\cdot\frac{12}{13}=250,\qquad \mathrm{AC}=5\sqrt{10}.
$$
$S$ は既知であり,$r=\frac{615}{80+5\sqrt{10}}=8-\frac{\sqrt{10}}{2}$。
鋭角性を確かめずに $\cos\beta=-\frac{12}{13}$ を採ると $\mathrm{AC}^2=3202+2952=6154$ となる。ヘロンの公式 $16S^2=\left((39+41)^2-x^2\right)\left(x^2-(41-39)^2\right)$ から逆算しても
$$
4\cdot615^2=(6400-x^2)(x^2-4)\iff (x^2-250)(x^2-6154)=0
$$
となり,同じ偽の根 $6154$ が現れる。これは $\mathrm{B}$ における角が $180^\circ-\beta$ の三角形に対応し,面積だけでは区別できない。
補題4
(i) によって $x^2=250$ を選ぶ。
二つの直角三角形の共通の斜辺 $\mathrm{BD}$ を基準線にとり,$\mathrm{A},\mathrm{C}$ を $\mathrm{BD}$ へ射影する。直角三角形の射影定理により,二次方程式を解かずに $\mathrm{A},\mathrm{C}$ の位置が一次の演算で決まる。
$\mathrm{A},\mathrm{C}$ から直線 $\mathrm{BD}$ に下ろした垂線の足を $\mathrm{E},\mathrm{F}$ とする。直角三角形 $\mathrm{ABD}$,$\mathrm{CBD}$ の $\mathrm{B},\mathrm{D}$ における角は鋭角であるから,$\mathrm{E},\mathrm{F}$ は線分 $\mathrm{BD}$ の内部にある。直角三角形の相似から
$$
\mathrm{BE}=\frac{\mathrm{AB}^2}{L}=\frac{1521}{L},\qquad \mathrm{BF}=\frac{\mathrm{BC}^2}{L}=\frac{1681}{L},
$$
$$
\mathrm{AE}=\frac{\mathrm{AB}\cdot\mathrm{AD}}{L}=\frac{507}{L},\qquad \mathrm{CF}=\frac{\mathrm{BC}\cdot\mathrm{CD}}{L}=\frac{123}{L}.
$$
$\mathrm{B}$ を原点,半直線 $\mathrm{BD}$ を $x$ 軸の正の部分とし,$\mathrm{A}$ の側を $y > 0$ とする座標をとる。
補題3
(i) より $\mathrm{C}$ は $y < 0$ の側にあるから
$$
\mathrm{A}\left(\frac{1521}{L},\frac{507}{L}\right),\qquad \mathrm{C}\left(\frac{1681}{L},-\frac{123}{L}\right).
$$
$$
\mathrm{AC}^2=\frac{(1681-1521)^2+(507+123)^2}{L^2}=\frac{160^2+630^2}{1690}=\frac{650^2}{1690}=250,\qquad \mathrm{AC}=5\sqrt{10}.
$$
同じ座標で
$$
S=\frac12\left\lvert\frac{1521\cdot(-123)-507\cdot1681}{L^2}\right\rvert=\frac12\cdot\frac{1039350}{1690}=\frac{615}{2}
$$
であり,$r=8-\frac{\sqrt{10}}{2}$。
$160=41^2-39^2$ は射影の差,$630=2[\mathrm{ABCD}]$ は高さの和に $L$ を掛けたものであり,$160:630:650=16:63:65$ は対角線のなす角を表す( 1.4 節 )。$\mathrm{AC}\cdot L=650$ はトレミーの定理と一致する。自己交差配置では $\mathrm{C}'$ が $y > 0$ の側に移って高さが差 $\frac{507-123}{L}=\frac{384}{L}$ となり,$160^2+384^2=416^2$($5:12:13$ の $32$ 倍)から $\mathrm{AC}'=\frac{416}{L}$ を得る。射影長の差と高さの和という選択が凸性に依存している。
短い辺 $\mathrm{CD}$ をもつ三角形 $\mathrm{ACD}$ で,$\mathrm{D}$ から対角線 $\mathrm{AC}$ に垂線を下ろす。円周角によって三角形 $\mathrm{ACD}$ の底角が既知の角 $\alpha,\gamma$ に移るので,$\mathrm{AC}$ は二つの線分の和として求まる。
$\mathrm{D}$ から直線 $\mathrm{AC}$ に下ろした垂線の足を $\mathrm{H}$ とする。
補題3
(iii) より $\angle\mathrm{ACD}=\alpha$,$\angle\mathrm{CAD}=\gamma$ であり,ともに鋭角であるから(
補題4
(i)),$\mathrm{H}$ は線分 $\mathrm{AC}$ の内部にある。$\cos\alpha=\frac{3}{\sqrt{10}}$,$\cos\gamma=\frac{41}{13\sqrt{10}}$ より
$$
\mathrm{CH}=\mathrm{CD}\cos\alpha=\frac{9}{\sqrt{10}},\qquad \mathrm{AH}=\mathrm{AD}\cos\gamma=\frac{41}{\sqrt{10}},
$$
$$
\mathrm{AC}=\mathrm{AH}+\mathrm{HC}=\frac{50}{\sqrt{10}}=5\sqrt{10}.
$$
$\mathrm{DH}=\mathrm{CD}\sin\alpha=\frac{3}{\sqrt{10}}$ より $[\mathrm{ACD}]=\frac12\cdot5\sqrt{10}\cdot\frac{3}{\sqrt{10}}=\frac{15}{2}$。対角線 $\mathrm{AC}$ による分割と 補題5 の $[\mathrm{ABCD}]=315$ より $S=315-\frac{15}{2}=\frac{615}{2}$,$r=8-\frac{\sqrt{10}}{2}$。
$\mathrm{DH}$ は $\mathrm{AD}\sin\gamma=13\cdot\frac{3}{13\sqrt{10}}=\frac{3}{\sqrt{10}}$ とも計算でき,一致する。$\mathrm{AH}$ を三平方の定理で求めても $\sqrt{169-\frac{9}{10}}=\sqrt{\frac{1681}{10}}=\frac{41}{\sqrt{10}}$ となる。$S:[\mathrm{ACD}]=41:1$ は 補題5 と一致する。垂足が線分の内部にあることを示さなければ $\mathrm{AC}=\mathrm{AH}+\mathrm{HC}$ とは書けない点が論証の要である。
$\mathrm{C}$ における直角を座標軸のように用い,$\mathrm{A}$ から直線 $\mathrm{CD}$,$\mathrm{BC}$ に垂線を下ろして長方形を作る。$\mathrm{AC}$ はその対角線であり,円周角から辺の比 $1:3$ が決まる。
$\mathrm{A}$ から直線 $\mathrm{CD}$,$\mathrm{BC}$ に下ろした垂線の足をそれぞれ $\mathrm{M},\mathrm{N}$ とする。$\angle\mathrm{ACD}=\alpha$,$\angle\mathrm{ACB}=90^\circ-\alpha$ はともに鋭角であるから(
補題3
(iii)),$\mathrm{M}$ は半直線 $\mathrm{CD}$ 上に,$\mathrm{N}$ は半直線 $\mathrm{CB}$ 上にあり,$\angle\mathrm{BCD}=90^\circ$ と合わせて四角形 $\mathrm{CMAN}$ は長方形である。
$\tan\angle\mathrm{ACM}=\tan\alpha=\frac13$ より,$\mathrm{AM}=t\,(t > 0)$ とおくと $\mathrm{CM}=3t$,$\mathrm{AC}=\sqrt{10}\,t$。三角形 $\mathrm{ACD}$ の角 $\angle\mathrm{ADC}=180^\circ-\beta$ は鈍角であるから(
補題4
(i)),$\mathrm{M}$ は直線 $\mathrm{CD}$ 上で $\mathrm{D}$ の先にあり,$\mathrm{DM}=3t-3$。直角三角形 $\mathrm{AMD}$ において
$$
t^2+(3t-3)^2=13^2\iff 10t^2-18t-160=0\iff 2(t-5)(5t+16)=0.
$$
$t > 0$ より $t=5$,$\mathrm{AC}=5\sqrt{10}$。
長方形より $\mathrm{AN}=\mathrm{CM}=15$ で,$\mathrm{AN}\perp\mathrm{BC}$ であるから $S=\frac12\cdot41\cdot15=\frac{615}{2}$,$r=8-\frac{\sqrt{10}}{2}$。
$\mathrm{AM}=5$,$\mathrm{DM}=12$,$\mathrm{AD}=13$ で,三角形 $\mathrm{AMD}$ は $5:12:13$ の直角三角形である。その $\mathrm{D}$ における角は $180^\circ-\angle\mathrm{ADC}=\beta$ であり,$\sin\beta=\frac{5}{13}$ と整合する。また $\mathrm{CN}=\mathrm{AM}=5$,$\mathrm{BN}=41-5=36=\sqrt{39^2-15^2}$ で,三角形 $\mathrm{ABN}$ は $15:36:39=3\cdot(5:12:13)$ である。$t=5$ をピタゴラス数から推測するだけでは一意性が示されないので,方程式を解いて正の解が $t=5$ だけであることを確かめる。
直角をはさむ辺 $\mathrm{AD}$ と $\mathrm{BC}$ を延長して交点 $\mathrm{Q}$ をとると,$\mathrm{A},\mathrm{C}$ は三角形 $\mathrm{QBD}$ の二本の垂線の足になる。外部三角形の二段階の相似で $\frac{\mathrm{AC}}{\mathrm{BD}}$ を決める。
$\mathrm{C},\mathrm{D}$ は直線 $\mathrm{AB}$ の同じ側にあり(
補題3
(i)),$\angle\mathrm{DAB}+\angle\mathrm{ABC}=90^\circ+\beta < 180^\circ$ であるから,半直線 $\mathrm{AD}$ と半直線 $\mathrm{BC}$ はその側の点 $\mathrm{Q}$ で交わる。$\mathrm{A},\mathrm{D}$ はともに直線 $\mathrm{BC}$ 上にないから $\mathrm{Q}\neq\mathrm{A},\mathrm{D}$ である。$\mathrm{Q}$ が $\mathrm{A}$ と $\mathrm{D}$ の間にあれば $\mathrm{A},\mathrm{D}$ は直線 $\mathrm{BC}$ の反対側にあることになり,
補題3
(i) に反する。よって $\mathrm{D}$ は $\mathrm{A}$ と $\mathrm{Q}$ の間にある。同様に,$\mathrm{B},\mathrm{C}$ が直線 $\mathrm{AD}$ の同じ側にあることから,$\mathrm{C}$ は $\mathrm{B}$ と $\mathrm{Q}$ の間にある。
$\angle\mathrm{QAB}=90^\circ$,$\angle\mathrm{QCD}=180^\circ-\angle\mathrm{BCD}=90^\circ$ で $\angle\mathrm{Q}$ は共通であるから $\triangle\mathrm{QAB}\sim\triangle\mathrm{QCD}$ であり
$$
\frac{\mathrm{QA}}{\mathrm{QC}}=\frac{\mathrm{QB}}{\mathrm{QD}}=\frac{\mathrm{AB}}{\mathrm{CD}}=13.
$$
$\mathrm{QC}=p$,$\mathrm{QD}=q$ とおくと $\mathrm{QA}=13+q$,$\mathrm{QB}=41+p$ であるから
$$
13p=13+q,\qquad 13q=41+p.
$$
これを解いて $p=\frac54$,$q=\frac{13}{4}$,したがって $\mathrm{QA}=\frac{65}{4}$,$\mathrm{QB}=\frac{169}{4}$。
$\frac{\mathrm{QA}}{\mathrm{QB}}=\frac{\mathrm{QC}}{\mathrm{QD}}=\frac{5}{13}$ と共通の角 $\angle\mathrm{Q}$ より $\triangle\mathrm{QAC}\sim\triangle\mathrm{QBD}$($\mathrm{A}\leftrightarrow\mathrm{B}$,$\mathrm{C}\leftrightarrow\mathrm{D}$)。よって $\frac{\mathrm{AC}}{\mathrm{BD}}=\frac{5}{13}$,$\mathrm{AC}=5\sqrt{10}$。
$\mathrm{QA}:\mathrm{AB}:\mathrm{QB}=\frac{65}{4}:39:\frac{169}{4}=5:12:13$ であり,$\mathrm{C}$ は半直線 $\mathrm{BQ}$ 上にあるから $\sin\beta=\sin\angle\mathrm{QBA}=\frac{\mathrm{QA}}{\mathrm{QB}}=\frac{5}{13}$。よって $S=\frac{615}{2}$,$r=8-\frac{\sqrt{10}}{2}$。
$\mathrm{QA}-\mathrm{QD}=13$,$\mathrm{QB}-\mathrm{QC}=41$ を満たす。$\mathrm{BA}\perp\mathrm{QD}$,$\mathrm{DC}\perp\mathrm{QB}$ であるから $\mathrm{A},\mathrm{C}$ は三角形 $\mathrm{QBD}$ の頂点 $\mathrm{B},\mathrm{D}$ からの垂線の足であり,一般に垂線の足を結ぶ線分について $\mathrm{AC}=\mathrm{BD}\,\lvert\cos\angle\mathrm{Q}\rvert$ が成り立つ。本問では $\cos\angle\mathrm{Q}=\frac{\mathrm{QA}}{\mathrm{QB}}=\frac{5}{13}$ である。発想上の独立性は高いが,$\mathrm{Q}$ の位置の確認と連立方程式のために試験場では本解より時間を要する。
共円性を発見しなくても,既知の直角を座標軸にとれば $\mathrm{C}$ は二円の交点として決まる。二つの円の方程式の差をとって二次項を消去する。
$\mathrm{A}(0,0)$,$\mathrm{B}(39,0)$,$\mathrm{D}(0,13)$,$\mathrm{C}(x,y)$ とおく。
$$
(x-39)^2+y^2=41^2,\qquad x^2+(y-13)^2=3^2
$$
を展開すると $x^2+y^2-78x=160$,$x^2+y^2-26y=-160$。差をとって $-78x+26y=320$,すなわち $y=3x+\frac{160}{13}$。これを第2式に代入すると
$$
x^2+\left(3x-\frac{9}{13}\right)^2=9\iff 845x^2-351x-720=0\iff (13x-15)(65x+48)=0.
$$
$\mathrm{B},\mathrm{C}$ は直線 $\mathrm{AD}$($x=0$)の同じ側にあるから(
補題3
(i))$x > 0$。よって $\mathrm{C}\left(\frac{15}{13},\frac{205}{13}\right)$ であり
$$
\mathrm{AC}^2=\frac{15^2+205^2}{13^2}=\frac{42250}{169}=250,\qquad \mathrm{AC}=5\sqrt{10}.
$$
辺 $\mathrm{AB}$ は $x$ 軸上にあるから $S=\frac12\cdot39\cdot\frac{205}{13}=\frac{615}{2}$,$r=8-\frac{\sqrt{10}}{2}$。
$\mathrm{BC}^2=\frac{492^2+205^2}{169}=1681$,$\mathrm{CD}^2=\frac{15^2+36^2}{169}=9$ である。他方の交点 $\mathrm{C}'\left(-\frac{48}{65},\frac{656}{65}\right)$ は直線 $\mathrm{BD}$ に関する $\mathrm{C}$ の鏡映であり(中点 $\left(\frac{27}{130},\frac{1681}{130}\right)$ は直線 $x+3y=39$ 上にある),$\mathrm{AC}'^2=\frac{512}{5}$ となって 1.3 節 の自己交差配置に一致する。差をとって得た直線 $y=3x+\frac{160}{13}$ は二円の根軸で,方向ベクトル $(1,3)$ は $\overrightarrow{\mathrm{BD}}=(-39,13)$ に直交する。
$\angle\mathrm{BCD}=90^\circ$ を内積 $0$ としてではなく,「$\overrightarrow{\mathrm{CD}}$ を $90^\circ$ 回転して $\frac{41}{3}$ 倍すると $\overrightarrow{\mathrm{CB}}$ になる」という回転相似として表す。距離条件を連立する座標法と異なり,$\mathrm{C}$ は一次方程式で決まる。
複素平面上で $\mathrm{A}=0$,$\mathrm{B}=39$,$\mathrm{D}=13i$,$\mathrm{C}=z$ とする。凸四角形の周を $\mathrm{A}\to\mathrm{B}\to\mathrm{C}\to\mathrm{D}$ の順にたどる向きは三角形 $\mathrm{DAB}$ の向きと一致し,正の向き(反時計回り)である。よって三角形 $\mathrm{BCD}$ も正の向きであり,$\mathrm{C}$ における内角が $90^\circ$ であるから,$\overrightarrow{\mathrm{CD}}$ を正の向きに $90^\circ$ 回転したものは $\overrightarrow{\mathrm{CB}}$ と同じ向きである。$\mathrm{CB}:\mathrm{CD}=41:3$ より
$$
39-z=\frac{41}{3}i(13i-z)\iff 117-3z=-533-41iz\iff (3-41i)z=650.
$$
絶対値をとって $\sqrt{3^2+41^2}\,\lvert z\rvert=650$,すなわち
$$
\mathrm{AC}=\lvert z\rvert=\frac{650}{13\sqrt{10}}=5\sqrt{10}.
$$
$z=\frac{650}{3-41i}=\frac{650(3+41i)}{1690}=\frac{5}{13}(3+41i)$ より $\mathrm{C}\left(\frac{15}{13},\frac{205}{13}\right)$。$S=\frac12\cdot39\cdot\frac{205}{13}=\frac{615}{2}$,$r=8-\frac{\sqrt{10}}{2}$。
$\lvert3-41i\rvert^2=1690=L^2$,右辺の $650$ はトレミーの定理の右辺であり,(1) の式は $\mathrm{AC}\cdot\mathrm{BD}=650$ の複素数版である。回転の向きを逆にすると $39-z=-\frac{41}{3}i(13i-z)$ から $(3+41i)z=-416$ となり,$z=\left(-\frac{48}{65},\frac{656}{65}\right)$,$\lvert z\rvert=\frac{416}{L}$ の自己交差配置を得る。向きの決定が凸性の使用箇所である。
頂点の位置や角を求めず,四角形全体の二つの量,すなわち対角線ベクトルの内積と,対角線が張る平行四辺形の面積に注目する。両者からラグランジュの恒等式で対角線の積が決まる。
$\boldsymbol{u}=\overrightarrow{\mathrm{AC}}$,$\boldsymbol{v}=\overrightarrow{\mathrm{BD}}$ とおく。
(a) 任意の4点について,位置ベクトルで展開すると
$$
\mathrm{AD}^2+\mathrm{BC}^2-\mathrm{AB}^2-\mathrm{CD}^2=2\,\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{v}
$$
が成り立つ。本問では $2\,\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{v}=169+1681-1521-9=320$,$\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{v}=160$。
(b) $\boldsymbol{u}=(u_1,u_2)$,$\boldsymbol{v}=(v_1,v_2)$ に対し $\det(\boldsymbol{u},\boldsymbol{v})=u_1v_2-u_2v_1$ とおく。対角線のなす角を $\theta$ とすると,$\mathrm{P}$ が両対角線の内部にあることから(
補題3
(i)),四角形を $\mathrm{P}$ を頂点とする4つの三角形に分けて
$$
[\mathrm{ABCD}]=\frac12\sin\theta\,(\mathrm{AP}+\mathrm{CP})(\mathrm{BP}+\mathrm{DP})=\frac12\,\mathrm{AC}\cdot\mathrm{BD}\sin\theta=\frac12\lvert\det(\boldsymbol{u},\boldsymbol{v})\rvert.
$$
よって $\lvert\det(\boldsymbol{u},\boldsymbol{v})\rvert=2\cdot315=630$。
(c) 成分計算で確かめられるラグランジュの恒等式
$$
(u_1^2+u_2^2)(v_1^2+v_2^2)=(u_1v_1+u_2v_2)^2+(u_1v_2-u_2v_1)^2
$$
より
$$
\mathrm{AC}^2\cdot\mathrm{BD}^2=160^2+630^2=650^2,\qquad \mathrm{AC}=\frac{650}{13\sqrt{10}}=5\sqrt{10}.
$$
補題2 と正弦定理より $\sin\beta=\frac{\mathrm{AC}}{\mathrm{BD}}=\frac{5}{13}$,$S=\frac{615}{2}$,$r=8-\frac{\sqrt{10}}{2}$。
$a=\mathrm{AB}$,$b=\mathrm{BC}$,$c=\mathrm{CD}$,$d=\mathrm{DA}$ とし,$X=b^2-a^2$,$Y=ad+bc$,$Z=ac+bd$ とおくと
$$
Z^2-Y^2=(ac+bd)^2-(ad+bc)^2=(b^2-a^2)(d^2-c^2).
$$
本問では $b^2-a^2=d^2-c^2=160$(
補題2
の平方和の一致の言い換え)であるから $Z^2=X^2+Y^2$ となり,$160^2+630^2=650^2$ は数値上の偶然ではない。また一般の凸四角形では $\mathrm{AC}\cdot\mathrm{BD}\leqq ac+bd$(トレミーの不等式)であり,本問は等号の場合にあたる(
5.3 節
)。
以下は,上記のいずれかの解法と発想の核を共有するため,独立の解法として数えない。
| 解法 | 主に利用する構造 | 凸性・配置の使い方 | (2) への接続 | 計算量 |
|---|---|---|---|---|
| 本解 | 共円性,トレミーの定理 | 頂点の巡回順 | 正弦定理で $S$ | 少 |
| 別解1 | 対角の補角,余弦定理 | 対角の和 $180^\circ$ | $\cos\beta$ から $S$ | 少 |
| 別解2 | 角の加法定理 | $\beta=\alpha+\gamma$ | $\sin\beta$ から $S$ | 中 |
| 別解3 | 交点における二組の相似 | $\mathrm{P}$ が両対角線の内部 | 面積比 $41:1$ | 少 |
| 別解4 | 和と差による半角 | $\beta=\alpha+\gamma$ | 接線長と半角 | 少 |
| 別解5 | 外接円の共有 | 対角線 $\mathrm{AC}$ による分割 | 同じ式で $S$ | 少 |
| 別解6 | 面積の先行決定 | $\beta$ の鋭角性 | $S$ が既知 | 中 |
| 別解7 | 共通斜辺への射影 | $\mathrm{A},\mathrm{C}$ が $\mathrm{BD}$ の両側 | 同じ座標で $S$ | 中 |
| 別解8 | 円周角と対角線への垂線 | 垂足が線分の内部 | $[\mathrm{ACD}]$ を引く | 少 |
| 別解9 | 長方形の補完 | 垂足が延長上 | 高さ $15$ | 中 |
| 参考解1 | 外部三角形の相似 | 延長線の交点の位置 | $5:12:13$ | 多 |
| 参考解2 | 二円の交点 | $x$ 座標の符号 | 座標で $S$ | 多 |
| 参考解3 | 複素数による回転 | 周の向き | 虚部で $S$ | 中 |
| 参考解4 | 内積と面積 | $\mathrm{P}$ が両対角線の内部 | 正弦定理 | 中 |
試験場での第一選択は本解である。平方和の一致から共円性を経てトレミーの定理に至る流れには発想の飛躍がなく,(2) も同じ円から正弦定理で直ちに接続する。ただしトレミーの定理は教科書で発展事項として扱われることが多いので,余弦定理だけで完結する別解1 が同等の有力候補である。別解4 は計算量が最も少なく,二つの設問を半角という一つの量で統一する。別解3・別解5 は角も座標も用いずに対角線の比と面積を同時に得る。参考解はいずれも答案としては迂遠であるが,複素数・内積・行列式という異なる言語で同じ等式 $\mathrm{AC}\cdot\mathrm{BD}=650$ に到達し,その等式が何を表しているかを照らし出す。
本問から,直角・円・四角形の計量問題一般に適用できる手順を抽出する。
| 症状 | 検討する表現・道具 | 本問での例 |
|---|---|---|
| 平方和が二通りに一致する | 共通の斜辺,共円性 | 補題2 |
| 円に内接し四辺が既知 | 対角線の積と比 | 本解,別解5 |
| 対角が補角 | 余弦の消去 | 別解1 |
| 角が既知の角の和・差 | 加法定理,複素数の積 | 別解2, 補題4 |
| 平方差の一致 | 和と差の因数分解,半角 | 別解4 |
| 内接円の半径 | 接線長と半角,$S=rs$,ヘロン | 3.1〜3.3 節 |
| 対角線の交点が生じる | 円周角による相似,方べき | 別解3 |
| 共通の辺に直角が二つ | その辺への直交射影 | 別解7 |
| 二つの距離条件 | 二円の方程式の差(根軸) | 参考解2 |
| 直角と辺の比 | 複素数による回転相似 | 参考解3 |
| 対角線・面積・四辺の関係 | 内積と行列式 | 参考解4 |
| 交点の候補が二つ | 鏡映,符号,向きの吟味 | 1.3 節 |
本問の構造はそのまま類題の作り方になる。整数 $n$ の二通りの表示 $n=p^2+q^2=m^2+k^2$ を選び,$\mathrm{AB}=p$,$\mathrm{DA}=q$,$\mathrm{BC}=m$,$\mathrm{CD}=k$,$\angle\mathrm{DAB}=90^\circ$ の凸四角形を考えると,$\angle\mathrm{BCD}=90^\circ$ と共円性が自動的に従い,$z_1=p+qi$,$z_2=m+ki$ の積から
$$
\cos\angle\mathrm{ABC}=\frac{pm-qk}{n},\qquad \sin\angle\mathrm{ABC}=\frac{pk+qm}{n},
$$
$$
\mathrm{AC}=\frac{pk+qm}{\sqrt{n}},\qquad \tan\frac{\angle\mathrm{ABC}}{2}=\frac{q+k}{p+m}
$$
を得る。角の三角比と半角の正接は常に有理数であり,三角形 $\mathrm{ABC}$ の内接円の半径は $\mathrm{AC}$ の一次式になる。たとえば $1690$ の第三の表示 $27^2+31^2$ を用いれば,同じ直径 $\mathrm{BD}$ をもつ別の四角形が作れる。
| 事項 | 高校数学での扱い | 一般理論 |
|---|---|---|
| 共円性 | 円周角の定理の逆 | 円に内接する多角形の計量 |
| トレミーの定理 | 発展事項(相似による証明) | トレミーの不等式,複素数による恒等式 |
| 対角線の比 | 面積の分割 | トレミーの第二定理,ブラーマグプタの対角線公式 |
| 四角形の面積 | 三角形への分割 | ブラーマグプタの公式,ブレトシュナイダーの公式 |
| 角の合成 | 加法定理,複素数の積 | ガウス整数環 $\mathbb{Z}[i]$,ノルムの乗法性 |
| ピタゴラス数 | 三平方の定理 | 円の有理点,二平方和の理論 |
| 内接円 | $S=rs$,ヘロンの公式 | 半角公式,オイラーの公式 |
| 二円の交点 | 方程式の差 | 根軸,方べき |
本解・別解1〜9 と 3.1〜3.3 節はすべて左欄の範囲で完結する。参考解は左欄の道具で書けるが,右欄の理論への接続点を示している。以下の 5.2 節以降は右欄の内容である。
円に内接する凸四角形 $\mathrm{ABCD}$ において $a=\mathrm{AB}$,$b=\mathrm{BC}$,$c=\mathrm{CD}$,$d=\mathrm{DA}$ とおくと
$$
\mathrm{AC}\cdot\mathrm{BD}=ac+bd,\qquad \frac{\mathrm{AC}}{\mathrm{BD}}=\frac{ad+bc}{ab+cd}
$$
が成り立つ。したがって
$$
\mathrm{AC}^2=\frac{(ac+bd)(ad+bc)}{ab+cd},\qquad \mathrm{BD}^2=\frac{(ac+bd)(ab+cd)}{ad+bc}.
$$
第一式はトレミーの定理である。外接円の半径を $R$ とすると,円に内接する三角形の面積は三辺の積を $4R$ で割ったものであるから,四角形の面積を対角線 $\mathrm{AC}$,$\mathrm{BD}$ でそれぞれ分割して
$$
[\mathrm{ABC}]+[\mathrm{ACD}]=\frac{(ab+cd)\,\mathrm{AC}}{4R},\qquad [\mathrm{ABD}]+[\mathrm{BCD}]=\frac{(ad+bc)\,\mathrm{BD}}{4R}.
$$
両辺はともに四角形の面積であるから第二式を得る。残りの二式は第一式と第二式の積と商である。
本問では $ac+bd=650$,$ad+bc=630$,$ab+cd=1638$ であり,$\mathrm{AC}^2=\frac{650\cdot630}{1638}=250$,$\mathrm{BD}^2=\frac{650\cdot1638}{630}=1690$ となる。四辺だけから,直角の情報を用いずに両対角線が決まることに注意する。直角の条件は,この四辺が円に内接する配置を与えるために使われている。円に内接する四角形の対角線の公式は,ブラーマグプタ(7世紀)の著作に遡るとされる。
円に内接する四角形の半周長を $\sigma$ とすると,ブラーマグプタの公式
$$
[\mathrm{ABCD}]=\sqrt{(\sigma-a)(\sigma-b)(\sigma-c)(\sigma-d)}
$$
が成り立つ。本問では $\sigma=48$ で $\sqrt{9\cdot7\cdot45\cdot35}=315$ となり,
補題5
と一致する。一般の凸四角形ではブレトシュナイダーの公式
$$
[\mathrm{ABCD}]^2=(\sigma-a)(\sigma-b)(\sigma-c)(\sigma-d)-abcd\cos^2\frac{\angle\mathrm{B}+\angle\mathrm{D}}{2}
$$
が成り立ち,$\angle\mathrm{B}+\angle\mathrm{D}=180^\circ$ のときにブラーマグプタの公式に帰着する。
参考解4
の三つの事実 (a)(b)(c) を組み合わせると,任意の凸四角形について
$$
16[\mathrm{ABCD}]^2=4\,\mathrm{AC}^2\,\mathrm{BD}^2-(b^2+d^2-a^2-c^2)^2
$$
を得る。一方,一般の4点についてトレミーの不等式 $\mathrm{AC}\cdot\mathrm{BD}\leqq ac+bd$ が成り立ち,等号は4点がこの順に同一円周上にあるときに限る(
5.5 節
)。したがって四辺を固定した凸四角形の中で面積が最大になるのは円に内接するものである。本問の $160^2+630^2=650^2$ は,この等号の場合を数値で見たものである。
$z=x+yi$,$w=u+vi$($x,y,u,v$ は実数)に対する $\lvert zw\rvert=\lvert z\overline{w}\rvert=\lvert z\rvert\lvert w\rvert$ は
$$
(x^2+y^2)(u^2+v^2)=(xu-yv)^2+(xv+yu)^2=(xu+yv)^2+(yu-xv)^2
$$
と同値である(ブラーマグプタ・フィボナッチの恒等式)。
1.4 節
の $z_1z_2$,$z_1\overline{z_2}$ はこの二通りの分解であり,凸配置と自己交差配置がそれぞれに対応する。
ガウス整数環 $\mathbb{Z}[i]$ は一意分解整域であり,$1690=2\cdot5\cdot13^2$ は
$$
1690=-i(1+i)^2(2+i)(2-i)(3+2i)^2(3-2i)^2
$$
と素元分解される。本問の数値は
$$
3+i=(1+i)(2-i),\qquad 41+3i=(1+i)(2+i)(3-2i)^2,\qquad 12+5i=i(3-2i)^2
$$
と分解され,$(3+i)(41+3i)=(1+i)^2(2-i)(2+i)(3-2i)^2=10(12+5i)$ となる。$5:12:13$ はガウス素数 $3-2i$ の平方(単数倍を除く)から生じるピタゴラス数であり,ユークリッドの公式 $(m^2-n^2,\,2mn,\,m^2+n^2)$ の $(m,n)=(3,2)$ の場合にあたる。
正の整数 $n$ を整数の平方二つの和に表す方法の数(符号と順序を区別する)は $r_2(n)=4\bigl(d_1(n)-d_3(n)\bigr)$ で与えられる。ここで $d_j(n)$ は $4$ で割って $j$ 余る $n$ の正の約数の個数である(ヤコビの二平方定理)。$1690$ の奇数の約数 $1,5,13,65,169,845$ はすべて $4$ で割って $1$ 余るから $r_2(1690)=24$ であり,正の整数による順序を除いた表示は $\frac{24}{8}=3$ 通り,すなわち $3^2+41^2=13^2+39^2=27^2+31^2$ である。
任意の複素数 $a,b,c,d$ について
$$
(a-c)(b-d)=(a-b)(c-d)+(a-d)(b-c)
$$
が展開によって確かめられる。絶対値をとり三角不等式を用いるとトレミーの不等式 $\mathrm{AC}\cdot\mathrm{BD}\leqq\mathrm{AB}\cdot\mathrm{CD}+\mathrm{AD}\cdot\mathrm{BC}$ を得る。等号は右辺の2項の比 $\dfrac{(a-b)(c-d)}{(a-d)(b-c)}$ が正の実数のとき,すなわち4点がこの順に同一円周上にあるときに成り立つ。4点が同一円周上にあってもこの比が負になる並び(本問の $\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}',\mathrm{D}$)では,$\mathrm{AC}'\cdot\mathrm{BD}=\lvert\mathrm{AB}\cdot\mathrm{C}'\mathrm{D}-\mathrm{AD}\cdot\mathrm{BC}'\rvert=\lvert117-533\rvert=416$ となる。
1.3 節
の「和か差か」は,この比の符号の問題である。
円の有理パラメータの観点からは,$t=\tan\frac{\theta}{2}$ によって単位円上の点が $\left(\frac{1-t^2}{1+t^2},\frac{2t}{1+t^2}\right)$ と表され,$t$ が有理数であることと点が有理点であることは同値である。$\beta$ では $t=\frac15$ から $\left(\frac{12}{13},\frac{5}{13}\right)$ を得る。三角形 $\mathrm{ABC}$ は辺 $\mathrm{AC}$ が無理数であるが,角 $\beta$ が有理点に対応するために,内接円の半径が $r=(s-\mathrm{AC})\cdot\frac15$ という一次式で書ける。
二円の方程式 $f_1=0$,$f_2=0$($x^2,y^2$ の係数を $1$ にそろえたもの)の差 $f_1-f_2=0$ は一次式であり,二円の根軸と呼ばれる。根軸上の点では二円に関する方べきが等しく,二円が2点で交わるときは根軸がその2点を通る直線になる。 参考解2 の $y=3x+\frac{160}{13}$ はこれであり,中心線 $\mathrm{BD}$ に垂直で,$\mathrm{C}$ と $\mathrm{C}'$ はこの直線上で $\mathrm{BD}$ に関して対称に並ぶ。 別解3 の $\mathrm{AP}\cdot\mathrm{CP}=\mathrm{BP}\cdot\mathrm{DP}$ は点 $\mathrm{P}$ の $\Gamma$ に関する方べきである。
三角形の外心 $\mathrm{O}$,内心 $\mathrm{I}$,外接円の半径 $R$,内接円の半径 $r$ について
$$
\mathrm{OI}^2=R(R-2r)
$$
が成り立つ(チャップル,オイラー)。
3.14 節
の座標では,$\mathrm{O}$ は直径 $\mathrm{BD}$ の中点 $\left(\frac{39}{2},\frac{13}{2}\right)$,$\mathrm{I}=\left(\frac{5\sqrt{10}}{2}-1,\ 8-\frac{\sqrt{10}}{2}\right)$(
3.3 節
)であるから
$$
\mathrm{OI}^2=\frac{(5\sqrt{10}-41)^2+(3-\sqrt{10})^2}{4}=\frac{1950-416\sqrt{10}}{4}.
$$
一方 $R=\frac{13\sqrt{10}}{2}$,$2r=16-\sqrt{10}$ より
$$
R(R-2r)=\frac{13\sqrt{10}}{2}\left(\frac{15\sqrt{10}}{2}-16\right)=\frac{1950-416\sqrt{10}}{4}
$$
で両者は一致する。$r$ の値を,(2) のどの解法とも異なる関係式で確かめたことになる。
トレミーの定理は,2世紀のプトレマイオスが『アルマゲスト』で弦の表を作るために用いた。直径を対角線とする円内接四角形に適用すると弦の和の公式,すなわち正弦の加法定理が得られる。本問の配置はまさにこの古典的な使い方の再現である( 1.4 節 )。円に内接する四角形の面積と対角線の公式はブラーマグプタ(628年)に,二平方和の積の恒等式はブラーマグプタとフィボナッチ(『平方の書』,1225年)に帰される。ガウス整数はガウスが4次剰余の研究(1832年)で導入し,二平方定理の約数公式はヤコビ(1829年)による。外心と内心の距離の公式はチャップル(1746年)とオイラー(1765年)が独立に与え,一般の四角形の面積公式はブレトシュナイダー(1842年)による。
| 量 | 値 | 根拠 |
|---|---|---|
| $\mathrm{BD}$ | $13\sqrt{10}$ | 三平方の定理 |
| $\angle\mathrm{BCD}$ | $90^\circ$ | $41^2+3^2=1690$ と三平方の定理の逆 |
| $(\cos\beta,\ \sin\beta)$ | $\left(\frac{12}{13},\ \frac{5}{13}\right)$ | $(3+i)(41+3i)=10(12+5i)$ |
| $\tan\frac{\beta}{2}$ | $\frac15$ | $\frac{13+3}{39+41}=\frac{41-39}{13-3}$ |
| $[\mathrm{ABCD}]$ | $315$ | 二つの直角三角形の和 |
| $S$ | $\frac{615}{2}$ | 面積比 $41:1$ |
| $\mathrm{AC}$ | $5\sqrt{10}$ | $\mathrm{AC}\cdot\mathrm{BD}=650$ |
| $r$ | $8-\frac{\sqrt{10}}{2}$ | $\mathrm{AC}+10r=80$ |