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ネーター加群の全射自己準同型は自己同型である

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導入

ちょっと有名な、タイトルを示すのが目的の短い記事です。

環といったら可換とは限らない単位的結合的な環、加群は単位的な左加群とします。

前提知識

環上の加群の定義を知っている、ネーター加群を知っている、核を知っている、余核の一意性やfive lemmaを知っている人。

主定理と証明

早速主定理を述べて証明を書きます。

主定理

A上の左加群Mがネーター的と仮定する。このとき、自己準同型f:MMが全射ならば、自動的に同型である、すなわち単射である。

いまMの部分加群の増大列KerfKerf2がある。よってネーター性よりあるiが存在してKerfi=Kerfi+1となる。するとfi+1fiが全射なことに注意すると、次の短完全列からなる可換図式ができる:
0KerfiMfiM0f0Kerfi+1Mfi+1M0
よってfive lemmaもしくは余核の一意性によりfは同型である。

感想

昔ごちゃごちゃ元をとって示したことがある気がするのですが、単にfive lemmaで一瞬ということが先日のセミナーで気づいたので記事にしました。後輩に感謝。

  • 上の証明でそのまま「アーベル圏のネーター的な対象の全射自己準同型は単射」や、双対的に「アルティン的対象の単射自己準同型は全射」という主張を示すことができます。
  • 実は環A可換なら、ネーター性を外して有限生成だけで十分らしいですが、証明はごちゃごちゃした可換っぽいやりかたでやります。
投稿日:20201128
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H.E.
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某大ポスドク、詳しくはtwitterまで。自分の分野(環の表現論)でよく使われるfolkloreの解説記事を主に書いています。

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