概要
本稿では,整数の合同に関する5つの基本的な性質の証明を与える.
合同式の定義
合同式
整数を正の整数で割ったときの余りが一致することを
と書く.
合同式の性質とその証明
以下,正の整数をひとつ固定する.特に断りのない限り,と書いた場合はを意味するものとする.
をで割ったときの商をそれぞれとする.さらに,であることに注意して,をで割ったときの余りをとする.このときであるからが成り立つ.
補題1およびかつより,とはともにで割り切れるから,整数を用いてと表せる.
- よりである.
- よりである.
- よりである.
,より
- すなわちであるから,をで割ったときの余りはである.
- すなわちであるから,はで割り切れる.
- すなわちであるから,をで割ったときの余りはである.
合同式の累乗
整数がを満たすとき,任意の以上の整数に対してが成り立つ.
数学的帰納法
- のときは,命題2の3においてとすることにより成り立つ.
- ある以上の整数に対してであると仮定する.このとき,命題2の3においてとすることによりが得られる.
以上より,任意の以上の整数に対してが成り立つ.
整数の累乗の余り
をで割ったときの余りを求めよう.よりであるから,命題3よりが成り立つ.従って,をで割ったときの余りはである.
合同式の除法
整数がを満たすとき,とが互いに素ならばが成り立つ.
補題1およびより,はで割り切れるから,整数を用いてと表せる.よって,とが互いに素ならば,ある整数が存在してであるからが成り立つ.
「整数がを満たすとき,がの倍数でなければ」は成り立つか.成り立つ場合は証明し,成り立たない場合は反例を挙げよ.
問題の解答例
問題1
,よりすなわちであるから,をで割ったときの余りはである.
問題2
よりであるから,命題3よりが成り立つ.従って,をで割ったときの余りはである.
問題3
成り立たない.実際,とすると,かつはの倍数ではないが,は成り立たない.