本稿では,整数の合同に関する5つの基本的な性質の証明を与える.
整数$a,b$を正の整数$n$で割ったときの余りが一致することを
$$
a\equiv b\ \mathrm{mod}\ n
$$
と書く.
以下,正の整数$n$をひとつ固定する.特に断りのない限り,$a\equiv b$と書いた場合は$a\equiv b\ \mathrm{mod}\ n$を意味するものとする.
整数$a,b$が$a\equiv b$を満たすとき,$a-b\equiv0$が成り立つ.
$a,b$を$n$で割ったときの商をそれぞれ$q,q'$とする.さらに,$a\equiv b$であることに注意して,$a,b$を$n$で割ったときの余りを$r$とする.このとき$a-b=(nq+r)-(nq'+r)=n(q-q')$であるから$a-b\equiv0$が成り立つ.
整数$a,b,c,d$が$a\equiv b$かつ$c\equiv d$を満たすとき,以下が成り立つ:
補題1および$a\equiv b$かつ$c\equiv d$より,$a-b$と$c-d$はともに$n$で割り切れるから,整数$k,l$を用いて$a-b=nk,c-d=nl$と表せる.
$7001\equiv 1\ \mathrm{mod}\ 7$,$43\equiv 1\ \mathrm{mod}\ 7$より
$8000=7777+210+13$と合同式を用いて,$8000$を$7$で割ったときの余りを求めよ.
整数$a,b$が$a\equiv b$を満たすとき,任意の$2$以上の整数$m$に対して$a^m\equiv b^m$が成り立つ.
以上より,任意の$2$以上の整数$m$に対して$a^m\equiv b^m$が成り立つ.
$120^{100}$を$7$で割ったときの余りを求めよう.$120=7\cdot17+1$より$120\equiv1\ \mathrm{mod}\ 7$であるから,命題3より$120^{100}\equiv1^{100}\ \mathrm{mod}\ 7$が成り立つ.従って,$120^{100}$を$7$で割ったときの余りは$1$である.
$120^{100}$を$11$で割ったときの余りを求めよ.
整数$a,b,c$が$ab\equiv ac$を満たすとき,$a$と$n$が互いに素ならば$b\equiv c$が成り立つ.
補題1および$ab\equiv ac$より,$ab-ac=a(b-c)$は$n$で割り切れるから,整数$k$を用いて$a(b-c)=nk$と表せる.よって,$a$と$n$が互いに素ならば,ある整数$k'$が存在して$b-c=nk'$であるから$b\equiv c$が成り立つ.
「整数$a,b,c$が$ab\equiv ac$を満たすとき,$a$が$n$の倍数でなければ$b\equiv c$」は成り立つか.成り立つ場合は証明し,成り立たない場合は反例を挙げよ.
$7777\equiv210\equiv0\ \mathrm{mod}\ 7$,$13\equiv6\ \mathrm{mod}\ 7$より$7777+210+13\equiv0+0+6\ \mathrm{mod}\ 7$すなわち$8000\equiv6\ \mathrm{mod}\ 7$であるから,$8000$を$7$で割ったときの余りは$6$である.
$120=11^2-1$より$120\equiv-1\ \mathrm{mod}\ 11$であるから,命題3より$120^{100}\equiv(-1)^{100}\ \mathrm{mod}\ 11$が成り立つ.従って,$120^{100}$を$11$で割ったときの余りは$1$である.
成り立たない.実際,$n=9,a=3,b=1,c=4$とすると,$3\cdot1\equiv3\cdot4\ \mathrm{mod}\ 9$かつ$3$は$9$の倍数ではないが,$1\equiv4\ \mathrm{mod}\ 9$は成り立たない.