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高校数学の数列と微分積分は似ているという話(和分差分)

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これは別のサイトに以前執筆したものを移植したものです。誤植などのご指摘がありましたらお知らせください。

また、和分差分の定義、表記は様々な流派があることをご了承ください。

2023/6/8 追記

定和分の図が間違っていたので修正

はじめに

高校数学では数列と関数は全くの別物のように扱われているが、数列も主に自然数に対して定義されている歴とした関数である。

そのためここでは微分積分学との関係がわかりやすくなるよう数列をanといった表記ではなくf(x)という表記にする。

極限を扱う微分積分よりも以下に述べる和分差分は直感的に分かりやすい為、数列だけでなく微分積分の見方も変わるかも知れない。

微分法と差分法

差分

関数f(x)に対して
Δf(x)=f(x+1)f(x)
なるΔf(x)f(x)差分と呼ぶ。これは高校数学では階差数列と呼ばれるものである。

なお微分積分学では
ddxf(x)=limh0f(x+h)f(x)h
なるddxf(x)f(x)の微分と呼ぶ。

ここでh0という極限を取るのではなくh=1と固定したものが差分であるという見方もできる。

また、差分は微分と同様にf(x)の定数項はΔf(x)に関係がないことは微分よりも明確にわかる。

積分法と和分法

定積分と定和分

定和分

定和分 定和分
abf(x)δx=x=ab1f(x)
で表されるabf(x)δxf(x)aからbまでの定和分と呼び、上図の青色の部分の面積を表す。なお、終点bは含まれないことに注意する。

この時上図の長方形の横幅はそれぞれ1であるが、この幅の0への極限をとった時の面積が
abf(x)dx
であり、f(x)aからbまでの定積分である。

不定積分と不定和分

不定和分

差分の逆演算をしたもの、すなわち
Δf(x)δx=f(x)
を満たすf(x)δxf(x)不定和分と呼ぶ。

上述の通り差分は元の関数の定数項に関係ないため、不定和分は不定積分と同様に和分定数が生じる。(なお和分定数は定数だけでなく周期が1nの周期関数も含まれる。)

なお微分積分学では微分の逆演算をしたもの、すなわち
ddxf(x)dx=f(x)
を満たすf(x)dxf(x)の不定積分と呼ぶ。

和分差分学の基本定理

和分差分学の基本定理

Δaxf(t)δt=f(x)abf(t)δt=F(b)F(a)

Δaxf(t)δt=Δn=ax1f(n)=n=axf(n)n=ax1f(n)={f(x)+f(x1)++f(a)}{f(x1)+f(x2)++f(a)}=f(x)
より
Δaxf(t)δt=f(x)
となる。

また、F(x)=f(x)δxとした時、上で示した式と前節の不定和分の定義より
F(x)=axf(t)δt+C
となり、
abf(t)δt=F(b)F(a)
が成立する。前節のグラフを見ても明らかである。

これらは微分積分学の基本定理に対応する。

和分差分の性質

線形性

Δkf(x)=kΔf(x)Δ{f(x)+g(x)}=Δf(x)+Δg(x)kf(x)δx=kf(x)δ{f(x)+g(x)}δx=f(x)δx+g(x)δx

下降階乗

正の整数nに対して下降階乗xn
xn=x(x1)(x2)(xn+1)
と定義する。

xnδx=xn+1n+1+C

下降階乗の差分をとると
Δxn=(x+1)x(x1)(x2)(xn+2)x(x1)(x2)(xn+1)={(x+1)(xn+1)}x(x1)(x2)(xn+2)=nxn1
となり、和分差分学の基本定理より
xnδx=xn+1n+1+C
が従う。(下降階乗は整数全体にも拡張できるが、ここでは省略する。ただし上式が成立するのはn1であることに注意する。)

これはxnの微分積分に対応する。

二乗の和の公式の導出

この性質を用いると、
x=1nx2=1n+1x2δx=1n+1{x(x1)+x}δx=1n+1{x2+x1}δx=[x33+x22]1n+1=16n(n+1)(2n+1)
などn乗の和の公式を導くことができる。

指数関数(等比数列)

指数関数axの差分は
Δax=ax+1ax=(a1)ax
となるので、両辺和分をとって整理すると

指数関数の和分

a1のとき
axδx=axa1+C

となる。

等比数列の和の公式

高校数学で見慣れた等比数列の和の公式もここから導出できる。
k=1nark1=1n+1arx1δx=[arx1r1]1n+1=arnr1a1r1=arn1r1

積の差分と部分和分

積の微分に対して積の差分は
Δ{f(x)g(x)}=f(x+1)g(x+1)f(x)g(x)=f(x)g(x+1)f(x)g(x)+f(x+1)g(x+1)f(x)g(x+1)=f(x)Δg(x)+g(x+1)Δf(x)
となり、両辺を和分し整理することによって

部分和分

f(x)Δg(x)δx=f(x)g(x)g(x+1)Δf(x)δxabf(x)Δg(x)δx=[f(x)g(x)]ababg(x+1)Δf(x)δx

を導ける。

実際に部分和分を使用して高校数学でお馴染みの和を求めてみる。
k=1nk2k=1n+1x2xδx=1n+1xΔ2xδx=[x2x]1n+11n+12x+1Δxδx=(n+1)2n+121n+12x+1δx=(n+1)2n+12[2x+1]1n+1=(n+1)2n+12(2n+24)=(n1)2n+1+2

投稿日:2020117
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  1. はじめに
  2. 微分法と差分法
  3. 積分法と和分法
  4. 定積分と定和分
  5. 不定積分と不定和分
  6. 和分差分学の基本定理
  7. 和分差分の性質
  8. 線形性
  9. 下降階乗
  10. 指数関数(等比数列)
  11. 積の差分と部分和分