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みゆ🌹の魔法 その3 平方和と立方和の恒等式

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みゆ🌹の魔法 その3 平方和と立方和の恒等式

 ある日、うちのナマギリ女神さま(?) が次の2つの魔法を私に授けてくださいました。

平方和の恒等式を再帰的に生成する魔法





魔法3-a "平方和の恒等式” を再帰的に生成する等式
{a2+c2=b2+d2 ,ab}

(am+bn)2+(cm+dn)2=(an+bm)2+(cn+dm)2

12+72=52+52
 (1m+5n)2+(7m+5n)2=(1n+5m)2+(7n+5m)2

22+92=62+72
 (2m+6n)2+(9m+7n)2=(2n+6m)2+(9n+7m)2

32+112=72+92
 (3m+7n)2+(11m+9n)2=(3n+7m)2+(11n+9m)2

42+132=82+112
 (4m+8n)2+(13m+11n)2=(4n+8m)2+(13n+11m)2


立方和の恒等式を再帰的に生成する魔法





魔法3-b "立方和の恒等式" を再帰的に生成する等式(複号同順)
{a3+c3=b3+d3 ,ab}

(am2+bn2±(c+d)cdbamn)3+(cm2+dn2±(a+b)abdcmn)3=(an2+bm2±(c+d)cdbanm)3+(cn2+dm2±(a+b)abdcnm)3

13+123=93+103
   (1m2+9n2±11mn)3+(12m2+10n2±20mn)3
 =(1n2+9m2±11nm)3+(12n2+10m2±20nm)3

33+43=(5)3+63
   (3m25n2±5mn)3+(4m2+6n24mn)3
 =(3n25m2±5nm)3+(4n2+6m24nm)3

73+143=(17)3+203
   (7m217n2±17mn)3+(14m2+20n220mn)3
 =(7n217m2±17nm)3+(14n2+20m220nm)3

ちなみに、63+(3)3=43+53 からは
(6m2+4n2±4mn)3+(3m2+5n2±5mn)3=(6n2+4m2±4nm)3+(3n2+5m2±5nm)3
を得られ、これはかの有名なラマヌジャン氏が発見した立方和の恒等式の1つ( wikipedia参照
(6A24AB+4B2)3+(3A25AB+5B2)3=(4A24AB+6B2)3+(5A25AB3B2)3
と一致します。


ところが、自分でも「こんな等式どっから出てきたの?」とよくわからなくなってしまいました。(最初にひらめいたアイデアがどんなだったか…)
単に証明するだけなら、平方和のほうは展開すれば容易に可能です。
でも立方和のほうは展開するだけでもタイヘンで、計算ミスの多い私にはお手上げ状態・・・

 成り立ってるんだし、まいっか(;´∀`)

と放置していたのですが、私のハーディ先生こと 巨大数大好きbot さんの多大なるご協力のもと、無事この式にも証明を与えることができました。

その際、私達が試行錯誤した過程を出題してみたらどうかなという話になり、是非この等式の面白さを皆様にも味わっていただきたく、作問の運びと相成りました。よろしければ挑戦してみていただければ幸いです!

問題






次の等式が m,n についての恒等式となるように x,ya,b,c,d を用いて表わせ。
{a3+c3=b3+d3 , ab}

(am2+bn2+mnx)3+(cm2+dn2+mny)3=(an2+bm2+nmx)3+(cn2+dm2+nmy)3

解答例

(am2+bn2+mnx)3+(cm2+dn2+mny)3=(an2+bm2+nmx)3+(cn2+dm2+nmy)3展開して両辺を右辺で引くと+(a3m6+b3n6+m3n3x3+6abm3n3x+3a2bm4n2+3ab2m2n4+3am4n2x2+3bm2n4x2+3a2m5nx+3b2mn5x)+(c3m6+d3n6+m3n3y3+6cdm3n3y+3c2dm4n2+3cd2m2n4+3cm4n2y2+3dm2n4y2+3c2m5ny+3d2mn5y)(b3m6+a3n6+m3n3x3+6abm3n3x+3ab2m4n2+3a2bm2n4+3bm4n2x2+3am2n4x2+3b2m5nx+3a2mn5x)(d3m6+c3n6+m3n3y3+6cdm3n3y+3cd2m4n2+3c2dm2n4+3dm4n2y2+3cm2n4y2+3d2m5ny+3c2mn5y)=0相殺できる項を消し、全体を 3mn でくくると[+(a2bm3n+ab2mn3+am3nx2+bmn3x2+a2m4x+b2n4x)+(c2dm3n+cd2mn3+cm3ny2+dmn3y2+c2m4y+d2n4y)(ab2m3n+a2bmn3+bm3nx2+amn3x2+b2m4x+a2n4x)(cd2m3n+c2dmn3+dm3ny2+cmn3y2+d2m4y+c2n4y)](3mn)=0分配則を用いて (m3nmn3)  (m4n4) でくくると[+(a2b+ax2+c2d+cy2+ab2bx2cd2+dy2)(m3nmn3)+(a2x+c2yb2xd2y)(m4n4)](3mn)=0整理して、両項を (m2n2) でくくると[+[ab(ab)+cd(cd)+(ab)x2+(cd)y2]mn+[(a2b2)x+(c2d2)y](m2+n2)]3mn(m2n2)=0

x, ya,b,c,d で表され m,n の値には依存しないため、第一因子内の mn の係数と m2+n2 の係数は共に 0 でなければなりません。(さもなくば等式全体を 0 にするために x, ym, n の値に依存させざるを得なくなります。)
そこで、次の連立方程式の解より x,y を導きます。
{ab(ab)+cd(cd)+(ab)x2+(cd)y2=0 (1)(a2b2)x+(c2d2)y=0 (2)


a+b0 かつ c+d0 のケース

(2) より {x2=(c2d2)2(a2b2)2y2y2=(a2b2)2(c2d2)2x2 (3)
(3)x2(1) に代入すると
ab(ab)+cd(cd)+[(c2d2)2+(cd)(a+b)(a2b2)(a+b)(a2b2)]y2=0
y2=ab(a2b2)2+cd(cd)(a+b)(a2b2)(c2d2)2+(cd)(a+b)(a2b2)=(a+b)(a2b2)[ab(ab)+cd(cd)](cd)[(a+b)(a2b2)+(c+d)(c2d2)]ここで、前提条件より b3a3=c3d3 を利用して{(b3a3)+(a3b3)=0(c3d3)(a3b3)=0 を分子と分母の一部に加えます。=[(b3a3)+(a3b3)(a+b)(a2b2)][ab(ab)+cd(cd)](cd)[(a+b)(a2b2)+(c+d)(c2d2)(c3d3)(a3b3)]=[(b3a3)+(a3b3)(a3b3ab2+ba2)][ab(ab)+cd(cd)](cd)[(a+b)(a2b2)(a3b3)+(c+d)(c2d2)(c3d3)]=[(b3a3)+(ab2ba2)][ab(ab)+cd(cd)](cd)[(ab2+ba2)+(cd2+dc2)]=[(b3a3)+ab(ba)][ab(ab)+cd(cd)](cd)[ab(ab)+cd(cd)]=(ba)(b2+a2+ab+ab)cd=(ba)(a+b)2cd=(ab)(a+b)2dcy=±(a+b)abdc

(3) より xya,bc,d について対称な関係にあるため、

{x=±(c+d)cdbay=±(a+b)abdc


a+b=0 かつ c+d0 のケース

b=a より a3+c3=b3+d3a3+c3=a3+d3 ということになるため
2a3=d3c3 となり、(1)(2)
{(1) 2a3+cd(cd)+(ab)x2+(cd)y2=0(d3c3)+cd(cd)+(ab)x2+(cd)y2=0(1)(2) (c+d)(cd)y=0  y=0(2)
(2)(1) に代入して
(ab)x2=(d3c3)cd(cd)(ba)x2=(c3d3)+cd(cd)=(c2+d2+cd+cd)(cd)=(c+d)2(cd)x2=(c+d)2(cd)ba( 条件より ab )
{x=±(c+d)cdbay=0 (=±(a+b)abdc)


a+b0 かつ c+d=0 のケース

d=c より a3+c3=b3+d3a3+c3=b3c3 ということになるため
2c3=b3a3 となり、(1)(2)
{(1) ab(ab)2c3+(ab)x2+(cd)y2=0ab(ab)(b3a3)+(ab)x2+(cd)y2=0(1)(2) (a+b)(ab)x=0  x=0(2)
(2)(1) に代入して
(cd)y2=(b3a3)ab(ab)(dc)y2=(a3b3)+ab(ab)=(a2+b2+ab+ab)(ab)=(a+b)2(ab)y2=(a+b)2(ab)dc( 条件より ab すなわち cd )
{x=0 (=±(c+d)cdba)y=±(a+b)abdc


a+b=0 かつ c+d=0 のケース

b=a, d=c より a3+c3=b3+d3a3+c3=a3c3 ということになるため
a=c=b=d、すなわち (1) と (2) は
{(1) 2a32a3+2ax22ay2=0 x2=y2(2) 0(ab)x+0(cd)y=0 0=0
となることから、x,yx2=y2 を満たす範囲で任意の値をとることができ、
すなわち、このような解でも成立します。

{x=0 (=±(c+d)cdba)y=0 (=±(a+b)abdc)

全てのケースに共通する解は
{x=±(c+d)cdbay=±(a+b)abdc
であり、よってこの解は与式を m,n についての恒等式として成立させることができます。

Q.E.D.

検算


表記の便宜上、一時的に x=±(c+d)cdbay=±(a+b)abdc として展開します。
(am2+bn2+mnx)3+(cm2+dn2+mny)3=(an2+bm2+nmx)3+(cn2+dm2+nmy)3[+[ab(ab)+cd(cd)+(ab)x2+(cd)y2]mn+[(a2b2)x+(c2d2)y](m2+n2)]3mn(m2n2)=0x  y を戻します[+[ab(ab)+cd(cd)+(ab)(c+d)2(cd)ba+(cd)(a+b)2(ab)dc]mn+[±(a2b2)(c+d)cdba±(c2d2)(a+b)abdc ](m2+n2)]3mn(m2n2)=0
ここで、mn の項を整頓すると [(b3a3)+(d3c3)]mn となるため、
条件より a3b3=d3c3 であるため相殺されて 0 となります。

一方、m2+n2 の項は整頓すると
[±(ab)(cd)ba±(cd)(ab)dc ](a+d)(c+d)(m2+n2)
となりますが、条件より a3b3d3c3 が同符号、すなわち abdc が同符号であることを考慮して、次のように場合分けします。

ab>0dc>0 の場合
[±(ab)2(cd)ba(dc)2(ab)dc ](a+d)(c+d)(m2+n2)=[±(ab)(dc))(dc)(ab) ](a+d)(c+d)(m2+n2)=0

ab<0dc<0 の場合
[(ba)2(cd)ba±(cd)2(ab)dc ](a+d)(c+d)(m2+n2)=[(ba)(cd))±(cd)(ba) ](a+d)(c+d)(m2+n2)=0

与式の左辺と右辺が等しいことが示されたため、この等式は常に成り立ちます。
投稿日:2021122
更新日:2024829
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https://mathlog.info/articles/323         数学を愛する会 副会長 CCO / ガラパゴ数学 開拓者 / 猫舌・甘党・薄味派

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