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高校数学解説
文献あり

k-ナッチ数のk-リュカ数による表現

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はじめに

 この記事ではk-ナッチ数をk-リュカ数の和として表す公式を導出します。
 いま多項式
f(x)=xkj=0k1xj
に対し、その根をそれぞれα1,α2,,αkとするとk-ナッチ数Fn(k)k-リュカ数Ln[k]はそれぞれ
Fn[k]=j=1kαjnf(αj),Ln[k]=j=1kαjn
と表せるのでした。
 よってk-リュカ数はk-ナッチ数を用いて次のように表せることが直ちにわかります。

Ln[k]=j=1k1(kj)Fn+j1[k]+kFn1[k]

Ln[k]=i=1kf(αi)αinf(αi)=i=1k(kαik1j=0k1jαij1)αinf(αi)=ki=1kαin+k1f(αi)j=1k1ji=1kαin+j1f(αi)=kFn+k1[k]j=1k1jFn+j1[k]=j=1k1(kj)Fn+j1[k]+kFn1[k]
とわかる。

 では逆にk-ナッチ数をk-リュカ数で表現しようとするとどうなるのでしょうか。それを考えてみたところ以下のような式が得られました。

Fn[k]=k12(2k)k(k+1)k+1(j=1k1(k+1)k1j((k+1)j2(2k)j1)Lnj+1[k]+2((2k)k1(k+1)k1)k1Lnk+1[k])

 かなりごちゃごちゃしていますが、具体的にk=2,3,4,5,6のときを計算してみると
Fn[2]=Ln[2]+2Ln1[2]5(=Ln+1[2]+Ln1[2]5)Fn[3]=188(8Ln[3]+4Ln1[3]+20Ln2[3])=2Ln[3]+Ln1[3]+5Ln2[3]22Fn[4]=11689(75Ln[4]+45Ln1[4]3Ln2[4]+258Ln3[4])=25Ln[4]+15Ln1[4]Ln2[4]+86Ln3[4]563Fn[5]=138336(864Ln[5]+576Ln1[5]+96Ln2[5]704Ln3[5]+4352Ln4[5])=27Ln[5]+18Ln1[5]+3Ln2[5]22Ln3[5]+136Ln4[5]1198Fn[6]=11029685(12005Ln[6]+8575Ln1[6]+2695Ln2[6]7385Ln3[6]24665Ln4[6]+92810Ln5[6])=2401Ln[6]+1715Ln1[6]+539Ln2[6]1477Ln3[6]4933Ln4[6]+18562Ln5[6]205937
となります。k=6のときの分母に現れる205937は素数なこともあって、とても実用的とは言えなさそうですね。

証明

 上でk-リュカ数をk-ナッチ数で表したときを思い出すと、α=α1,α2,,αkに対し1f(α)を負の冪を許したαについての多項式で表せればよいことになります。つまりは以下の等式を示します。

1f(α)=k12(2k)k(k+1)k+1(j=1k1(k+1)k1j((k+1)j2(2k)j1)αj+1+2((2k)k1(k+1)k1)k1αk+1)

 まず
(x1)f(x)=xk+12xk+1((x1)f(x))=xk((k+1)x2k)(α1)f(α)=αk1((k+1)α2k)
より
1f(α)=1αk1α1(k+1)α2k
が成り立ち、また1(k+1)α2kの有理化を考えると
1(k+1)α2k=1j=1k(2k(k+1)αj)j=1k(2k(k+1)αj)2k(k+1)α=1(k+1)kf(2kk+1)(k+1)k1f(2kk+1)2kk+1α
となるので、このそれぞれの因子を具体的に計算してみましょう。

(k+1)kf(2kk+1)=(k+1)k+12(2k)kk1

(x1)f(x)=xk+12xk+1
に注意すると
(k+1)kf(2kk+1)=(k+1)k(2kk+1)k+12(2kk+1)k+12kk+11=(2k)k+12(k+1)(2k)k+(k+1)k+12k(k+1)=(k+1)k+12(2k)kk1
とわかる。

(k+1)k1f(2kk+1)2kk+1α=1α1(j=1k1(k+1)j1((k+1)kj2(2k)k1j)αj+2((2k)k1(k+1)k1)k1)

 これは以下の補題から直ちに得られます。

f(x)xα=1α1(j=1k1(xkj2xkj1+1)αj+(1xk2xk1+1x1))

f(x)xα=j=0k1cjxj
とおくと
f(x)=(xα)f(x)xα=xkj=0k1xj
よりck1=1, cj1αcj=1つまりcj
cj=αkj1i=0kj2αi=αkj2αkj1+1α1
と求められる。よって
(α1)f(x)xα=j=0k1(αj+12αj+1)xkj1=(αk+j=1k1αjxkj)2(j=1k1αjxkj1+xk1)+j=0k1xkj1=j=1k1αj+j=1k1(xkj2xkj1)αj2xk1+xk1x1=j=1k1(xkj2xkj1+1)αj+1xk2xk1+1x1
を得る。

 以上より命題1が得られ、冒頭で公式1を導出したのと同様にして公式2を得る。
 ちなみにαk=1/(2α)から
1f(α)=α(2α)(k+1)kf(2kk+1)(k+1)k1(α1)f(2kk+1)2kk+1α
とも表せるのでk-ナッチ数をk-リュカ数のn以降の項の線形結合で表すこともできるが補題3を見てわかるようにとても煩雑になるのであまりお勧めはしない。

参考文献

投稿日:202125
更新日:2024514
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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