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分数関数の最大値、最小値の微分を使わない求め方

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ある関数$f(x),g(x)$によって$\displaystyle h(x)=\frac{f(x)}{g(x)}$と表される関数$h(x)$が最大値や最小値を持つ時、それを求めるのには微分を使うのが普通であるが、最大値や最小値を$M$$m$とおいて$f(x)-Mg(x),\;f(x)-mg(x)$の最大値、最小値を評価することで微分を使わずに$M,m$の値を求める方法がある。
以下で具体例を見ていこう。
(問題は全て数Ⅲの青チャートか赤チャートから持ってきてた気がします。)

$\displaystyle\frac{1-x}{x^2+2}$が最大値、最小値を持つとき、その値を求めよ。

いま最大値を$M\;(x<1$の時を考えると明らかに$M>0)$とおくと、
すべての実数$x$について$\displaystyle\frac{1-x}{x^2+2}\leq M$であって、$x^2+2>0$より$1-x\leq M(x^2+2)$
つまり$\displaystyle0\leq Mx^2+x+2M-1=M(x+\frac{1}{2M})^2+\frac{8M^2-4M-1}{4M}$となる。

これがすべての実数$x$について成り立ち、ある実数$x$において等号が成立しなければならないので、
$\displaystyle\frac{8M^2-4M-1}{4M}=0$つまり$\displaystyle M=\frac{1+\sqrt{3}}{4}$となる。
(上記の不等式より$\displaystyle x=-\frac{1}{2M}=1-\sqrt{3}$のとき最大値を取る。)

同様に最小値を$m\;(m<0)$とおくと、
$\displaystyle m(x+\frac{1}{2m})^2+\frac{8m^2-4m-1}{4m}\leq0$より$\displaystyle\frac{8m^2-4m-1}{4m}=0$つまり$\displaystyle m=\frac{1-\sqrt{3}}{4}$となる。
($\displaystyle x=-\frac{1}{2m}=1+\sqrt{3}$のとき最小値を取る。)

$\displaystyle\frac{x-b}{x^2+a}\;(a>0)$が最大値に$\displaystyle\frac{1}{6}$最小値に$\displaystyle-\frac{1}{2}$を持つ時、$a,b$の値を求めよ。(弘前大)

いま$\displaystyle-\frac{1}{2}\leq\frac{x-b}{x^2+a}\leq\frac{1}{6}$であって、$x^2{+}a>0$より$-(x^2+a)\leq2(x-b),\;6(x-b)\leq x^2+a$
つまり
$0\leq x^2+2x+a-2b=(x+1)^2+a-2b-1$
$0\leq x^2-6x+a+6b=(x-3)^2+a+6b-9$となる。

これがすべての実数$x$について成り立ち、それぞれある実数$x$において等号が成立しなければならないので、
$a-2b-1=0,\;a+6b-9=0$つまり$a=3,\;b=1$である。
(上記の不等式より$x=3$のとき最大値を、$x=-1$のとき最小値をとる。)

$\displaystyle\frac{ax+b}{x^2+x+1}$$x=2$で最大値$1$をとるとき、$a,b$の値を求めよ。

いま$\displaystyle\frac{ax+b}{x^2+x+1}\leq1$であって、$\displaystyle x^2+x+1=(x+\frac{1}{2})^2+\frac{3}{4}>0$より、$ax+b\leq x^2+x+1$
つまり$\displaystyle0\leq x^2-(a-1)x-b+1=(x-\frac{a-1}{2})^2-\frac{(a-1)^2}{4}-b+1$となる。

これがすべての実数$x$について成り立ち、$x=2$のとき等号が成立しなければならないので、$\displaystyle\frac{a-1}{2}=2,\;-\frac{(a-1)^2}{4}-b+1=0$つまり$a=5,\;b=-3$である。

$\displaystyle\frac{\sin x}{\cos x+4}$が最大値、最小値を持つとき、その値を求めよ。

いま最大値を$M\;(M>0)$とおくと、
$\displaystyle\frac{\sin x}{\cos x+4}\leq M$であって、$\cos x+4\geq-1+4=3>0$より、$\sin x\leq M(\cos x+4)$
つまり$\displaystyle\sin x-M\cos x=\sqrt{M^2+1}(\frac{1}{\sqrt{M^2+1}}\sin{x}-\frac{M}{\sqrt{M^2+1}}\cos{x})\leq4M$となる。

ここで$\displaystyle\cos\alpha=\frac{1}{\sqrt{M^2+1}},\;\sin\alpha=\frac{M}{\sqrt{M^2+1}}$なる$\alpha$を取ると、$\sqrt{M^2+1}\sin{(x-\alpha)}\leq4M$となり、
これがすべての実数$x$について成り立ち、ある実数$x$において等号が成立しなければならないので、$\sqrt{M^2+1}=4M$つまり$\displaystyle M=\frac{1}{\sqrt{15}}$である。

同様に最小値を$m\;(m<0)$とおくと、
$4m\leq\sqrt{m^2+1}\sin(x-\beta)$より$4m=-\sqrt{m^2+1}$つまり$\displaystyle m=-\frac{1}{\sqrt{15}}$である。
(関数の奇関数性からもわかる。)

投稿日:202129

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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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