この記事の目標
ちょっと待っててね…
この項目は,執筆者が編集しすぎて大変長くなっています。特にスマホの場合は表示されるまで少し時間がかかりますが,カップラーメンでも食べながら気長にお待ち下さい。
また,証明をとばせば,何しているかはすぐに読めます。証明を折りたたむ機能を付けていないのは,単に僕がCSSについて知らないだけです。
この記事は,はてなブログで投稿した記事を, Mathlog で再編集,再掲したものです。これを書きながら Mathlog に慣れる目的もあります。
https://marukunalufd0123.hatenablog.com/entry/infinitetetlation
Mathlogについての感想は,一番下に書きました。
証明したいこと
無限テトレーション
を正の実数とする。またで定義される関数の列を,によって定める。このが収束するためのに関する必要十分条件は,である。
ちなみに,である。
上記の定義において,に対してを取る操作のことを,(階)テトレーションをとると言います。としたときを無限テトレーションと名付けることにします。更に,が存在するときは,その値をと書くことにします。例えばであり,は存在しないことが簡単に分かります。
を正の実数と仮定しているのは,単に議論を簡単にしたいからであって,解析的にはは任意の複素数をとったときが面白いです。
http://neqmath.blogspot.com/2018/06/blog-post_29.html
上記サイトが具体的に図示をしてくれて面白いです。
入試問題より
の場合は,非自明ですが収束することが分かります。これを高校生に考えさせた問題があります。2011年度同志社大学全学部日程(理系)の第Ⅳ問です。
数列は漸化式を満たしている。として次の問いに答えよ。
(1) におけるの最大値と最小値を求めよ。
(2) におけるの最大値と最小値を求めよ。
(3) が成立することを数学的帰納法を用いて示せ。
(4) が成立することを数学的帰納法を用いて示せ。
(5) を求めよ。
この問題を解き切ることで,の極限値がであることが従います。この問題の解答は,読者の皆様にお任せ致します。
認める事実
まず,高等学校における学習指導要領の数学Ⅲまでは既知としています。そのうえで,次の命題を認めます。
有界単調数列は収束
上に有界な単調増加数列は収束する。つまり数列が次の2条件を満たすとき,数列は収束する。
- 任意の正の整数に対してである
- ある定数が存在して,任意の正の整数に対してを満たす
また,上界を持たない単調増加数列は発散する。
(下に有界であっても同様である。)
高校の数学では,上記命題を認めた上で話を進めることが多いですが,表立って主張を述べているわけではありませんので,ここで触れておくことにしました。
また,次の性質も成り立ちます。
定理1を証明しよう
上記の内容を認めた上で,定理1に証明を与えます。
のとき
のときは任意の正の整数に対してですから,であり,収束しています。
のとき
いくつか補題を与えながら証明を進めていきます。
数学的帰納法
のときはより,だったからである。
のときにが成り立つと仮定する。のとき,より,だったからである。
以上より数学的帰納法から補題は示された。♦
の範囲でも,場合分けをすることで考えていきます。
やはり数学的帰納法
のときは明らか。
のときにが成り立つと仮定する。の定義から,である。つまり,である。よってが成り立つ。
以上より数学的帰納法から補題は示された。♦
補題4,補題5から,においては上に有界な単調増加数列ですので,収束します。
のときは収束する
次に,のときにどうなるかを見ていきます。
少なくともは上界ではない
のとき,ある(十分大きな)正の整数が存在してを満たす。
を評価する
補題3,4より,正の整数に対してが成り立っていた。そこで区間に対して,関数に対して平均値の定理を適用する。つまり,ある定数が存在して,を満たすようにとれる。特になので,であり,を得る。この左辺にあるについては,と変形できるので,結局である。ここで仮定より,十分大きい正の整数が存在して,ならばだったので,である。ここである正の実数をを満たすようにとれば,がで成り立つ。これは,が収束しないことを言っている。
従って,のときは収束しないことが示せました。
のときは収束しない
のとき
まずは発想を共有しよう
のときよりも,のときの方が難しいです。今回考えた発想の手がかりをまず初めに言っておきます。
としてみましょう。を計算した結果は次のようになります。
この事実が何を教えてくれるかというと,が偶数であるか奇数であるかによって,値が大きく振れてしまうことです。
ですので,のときは偶奇に分けて考察をしていきましょう。
いざ証明
まずは次を示します。
を以上の整数とする。
の定義から,が成り立つので,両辺の(自然)対数をとり,
①
同様に,
②
①-②から,
③
のときから考える。 だったから である。また,
だから,③式の右辺は正と負の積となっているので負である。したがって
が成り立ち,この式から となるから, が従う。
のときは③式の右辺が正であることが分かるので, のときと同様に, である。
この議論を繰り返すことで,
であることが示される。
また,補題1より であり, と正の実数 について が成り立つことから,
である。よって,
が分かり,証明は完了した。◆
この証明によって,関数列 は上に有界な単調増加数列なので,ある収束先 が存在します。同様に関数列 は下に有界な単調減少数列なので,ある収束先 が存在します。
もしもならば は存在するし, ならば は存在しないというとです。
というわけで, となるための についての必要十分条件を探すことが,当分の目標になります。
まずはが満たすべき式を提示します。
の定義より, だが,この両辺を 倍することで,
を得る。この式によって偶数列と奇数列だけに分離することができて,
この2式についてとすることで,
を得る。◆
といっても示した式はさすがに煩雑ですので,と置き換えます。すると,
となり,ちょっとすっきりしました。
ちょっとだけのとりうる値の範囲も考えておきます。といっても,,なので
ということなのですが。。。
のとき
のとき,であることを示します。
そのために, について, の定義域の内部で微分可能な関数 を考察します。
④
これを で微分すると,
となります。特に は常に0以上です。なぜなら, は, で最大値 をとることが増減を調べることによってわかります。今,としましたので となります。つまり, の範囲では常に となりますので, は常に0以上です。
以上より, の範囲では ですので, は単調減少な関数であることが分かりました。
つまり, は中間値の定理から, となるような は高々1つしか存在しないことになります。
が存在すれば, でなきゃいけないって言ってるんですね。
しかし, の存在性から の存在は保証されているので,結局 です。
∴ のときは は存在する。
のとき
のとき,であることを背理法で示します。
関数 について平均値の定理から, と の間にある実数 が存在して,
となるようにとれます。この式を変形すると,
となりますが,これはこの記事の②式を代入することで,
となります。ここで,次の補題を使います。
この補題3を認めてしまえば, が十分大きいときには
となり,これは が収束すると仮定したことに矛盾します。
(ε論法でやるべきと思いますが,ここではがばがばに証明します。)
が収束すると仮定する。このとき,次の関数 を考える。この関数については が成り立つ。(なぜなら, でなければならないから。)
また,唐突に を計算すると,また, は では明らかに単調増加である。従って,
⑤
である。
また, は と の間にある実数だから,はさみうちの原理から,
⑥
となる。 が十分大きいときは,⑤⑥より,
が成り立ち,これよりが従う。◆
これで定理1が正しいことは証明できました。
を正の実数としたとき, が収束するための必要十分条件は,
である。
その他の話題
今回考えましたについては,逆関数がであることが分かっています。
特にこのは,今求めた定義域内で微分可能な関数です。
まとめ
たいへんでした。総括を書く気力が起こりませんね。
おまけ:実験程度にMathlogで執筆した
初期設定から,かなりたくさんのデザインCSS定義があり,見た目的には満足しています。
しかし\bfseries
コマンド及び\bm
パッケージが用意されていないため,数式で太字を表すことが難しいですね。例えば現在の環境ですと,\pmb{ma=mg+T}
と入力すればと表せることは出来るのですが,プラスの文字を見ればわかる通り,文字に文字を重ねて太字を作っているため,あまり使いたくありません。まだまだ発展途上でしょうか。完全に思い違いでした。\boldsymbol
で太字に出来ます。(2020年11月11日追記)
そのほか,不等式を打つときに$y < x$
のように,“<”と“x”は空白を入れて書かないとエラーが出ました。これは裏でhtmlの書き方をサポートしていることが原因と思われます。11月11日のアップデートでこの不具合が解消されました。
align
環境は普通に使えたので嬉しいです。他にも,自分で定義したコマンドが使えるというのも有り難いです。僕は大量にマクロを定義してTeXの文書を書く人間ですので,それを流用できたのはありがたかったです。(例えば,分数の標線がデフォルトよりちょっと長いことに気づきました?)
ただ,\hbox{},\vbox{}
が正しく動いるわけではなさそうです。でもこれはMathJaxが悪いだけかな。。。
ていうか,任意の執筆者は
https://docs.mathjax.org/en/v2.7-latest/tex.html
を読もう。更に,
http://memopad.bitter.jp/web/mathjax/TeXSyntax.html
も読もう。
はてなブログから移行してもいいかなーとも思いました。これからMathlogが発展することを楽しみにしています。