皆様ごきげんよう。
今回は、値を一つずつ計算するよりも、二つの集まりの作り方そのものを考えたい問題です。
問題
$0,1,2,\ldots,15$の$16$個の整数を、$8$個ずつ二つの集合$A,B$に分ける。ただし$0\in A$とする。
すべての実数$t$について
$$\sum_{a\in A}(t+a)^3=\sum_{b\in B}(t+b)^3$$
が成り立つ分け方を一組求めよ。
さらに、求めた分け方に対して
$$D(t)=\sum_{a\in A}(t+a)^4-\sum_{b\in B}(t+b)^4$$
を求め、$t$によらないことを示せ。
まずは展開してみます。
$$
(t+a)^3=t^3+3at^2+3a^2t+a^3.
$$
したがって、求める条件は、両方の個数が等しいことに加えて
$$
\sum_{a\in A}a=\sum_{b\in B}b,\qquad
\sum_{a\in A}a^2=\sum_{b\in B}b^2,\qquad
\sum_{a\in A}a^3=\sum_{b\in B}b^3
$$
が同時に成り立つことです。
和だけなら、端と端を組み合わせるなど、いろいろな作り方がありそうです。しかし二乗、三乗まで同時に合わせようとすると、試行錯誤だけでは見通しが立ちません。
そこで、「三次式を計算して一致させる」から、「三次式なら必ず消えてしまう操作を作る」へ考え方を移します。
多項式$q(t)$と実数$h$に対し
$$
\Delta_hq(t)=q(t+h)-q(t)
$$
とおく。$q$が$d$次の多項式で、その最高次の係数が$c$であるとき、二項定理より、$h\ne0$なら$\Delta_hq$は$d-1$次で、その最高次の係数は$cdh$である。ただし定数の差は$0$となる。
よって$q(t)=t^3$にこの操作を$4$回施すと
$$
\Delta_8\Delta_4\Delta_2\Delta_1q(t)=0
$$
となる。
左辺を展開すると、$1,2,4,8$のいくつかを選んだ和$s$について、$q(t+s)$が一回ずつ現れる。選んだ個数が偶数の項には正号、奇数の項には負号が付く。$0$から$15$までの整数は、このような和としてそれぞれただ一通りに表される。
したがって
$$
\boxed{A=\{0,3,5,6,9,10,12,15\}},
$$
$$
\boxed{B=\{1,2,4,7,8,11,13,14\}}
$$
とすれば、問題の等式がすべての実数$t$について成り立つ。
次に$q(t)=t^4$とする。同じ操作を施すと、最高次の係数は順に
$$
1\longrightarrow4\longrightarrow24\longrightarrow192\longrightarrow1536
$$
となり、次数は$4,3,2,1,0$と下がる。従って
$$
D(t)=\Delta_8\Delta_4\Delta_2\Delta_1(t^4)
=4!\cdot1\cdot2\cdot4\cdot8
=\boxed{1536}.
$$
これは定数であり、$t$によらない。
差を一回取ると、次数が一つ下がる。三次式を完全に消すには、四回の差が使えます。
ただ、四回差を取るだけでは、出てくる引数が$0$から$15$にちょうどそろうとは限りません。例えば$1,1,1,1$を使えば、同じ引数が何度も現れます。
$1,2,4,8$なら、それぞれを選ぶか選ばないかで$16$通り。その和は二進法の表現に対応するので、$0$から$15$が重複なく一度ずつ現れます。
つまりこの四つの数には、別々の二つの役割があります。
・四回の差で、三次式を消す
・部分和を、指定された$16$個の整数に一致させる
数字を思いつくだけでなく、この二つが同時に満たされることを確かめるのが構成の中心です。
次の多項式を考えます。
$$
F(x)=(1-x)(1-x^2)(1-x^4)(1-x^8).
$$
展開すると
$$
\begin{aligned}
F(x)={}&1-x-x^2+x^3-x^4+x^5+x^6-x^7\\
&-x^8+x^9+x^{10}-x^{11}+x^{12}-x^{13}-x^{14}+x^{15}.
\end{aligned}
$$
正の係数を持つ指数が$A$、負の係数を持つ指数が$B$です。二組への所属が、係数の符号として記録されています。
$F(x)$は$(x-1)^4$を因数に持つため、$F(1)$と、$1$における一階、二階、三階の導関数はすべて$0$です。微分は通常の多項式の微分を繰り返すだけです。
これから、個数、および
$$
\sum a,\quad\sum a(a-1),\quad\sum a(a-1)(a-2)
$$
が二組で等しくなります。さらに
$$
a^2=a(a-1)+a,
$$
$$
a^3=a(a-1)(a-2)+3a(a-1)+a
$$
を使えば、一乗和、二乗和、三乗和が等しいことが分かります。
一方、
$$
F(x)=(1-x)^4(1+x)(1+x+x^2+x^3)(1+x+\cdots+x^7)
$$
なので、$1$における四階導関数は$4!\cdot2\cdot4\cdot8=1536$です。
$a^4-a(a-1)(a-2)(a-3)$は三次以下の式なので、その二組の和の差は$0$。従って四乗和の差も$1536$となります。
微分を繰り返す方法になじみがなければ、先ほどの差を取る解答だけで完結します。
実際の値も並べておきましょう。
| 調べるもの | A | B |
|---|---|---|
| 個数 | 8 | 8 |
| 一乗和 | 60 | 60 |
| 二乗和 | 620 | 620 |
| 三乗和 | 7200 | 7200 |
| 四乗和 | 89924 | 88388 |
最初の四つの行だけを見れば、両者は区別できません。それでも、集合そのものが同じになったわけではありません。
一般の三次以下の多項式$q$は、$1,x,x^2,x^3$の定数倍の和なので
$$
\sum_{a\in A}q(a)=\sum_{b\in B}q(b)
$$
です。三次以下の多項式による合計だけでは区別できず、四次に上げると差が現れる。この意味で、見分けるために必要な最初の次数は$4$です。
$0$は一乗和、二乗和、三乗和には寄与しません。しかし集合の個数には一つとして数えます。
「合計への寄与がない」ことと「要素ではない」ことは違います。個数の行を、意味の確認なしに$0^0$の計算へ置き換える必要はありません。
全体を$U=\{0,1,\ldots,15\}$と決めれば、$B=U\setminus A$です。
ただし、全体がどこまでなのかを先に決める必要があります。途中までしか調べていない段階で、見つからなかったものをすべて補集合へ入れることはできません。
今回の並べ方は、区間を半分に分けると、後半の符号が前半の符号をすべて入れ替えたものになっています。
$0$から$7$の中では$A$側が$0,3,5,6$。後半では所属を入れ替え、各数に$8$を足すので、$A$側には$9,10,12,15$が入ります。
すべての項を個別に覚えなくても、この作り方から次の所属を予想し、確認できます。
まず$0+3=1+2$という、和の一致から始めても構いません。
この二組をずらしてコピーし、所属を入れ替えると、二乗和まで一致する二組へ進めます。もう一度同じことをすると、三乗和まで一致する今回の二組になります。
差を取る解答は、この「コピーして、ずらして、引く」をまとめて書いたものでした。最初から大きな集合を当てようとするより、小さな一致を、一段強い一致へ育てられないかと考える方が見通しが立つことがあります。
ここで
$$
G(x)=(1-x)(1-x^2)(1-x^4)
$$
とおくと、先ほどの多項式は
$$
F(x)=G(x)-x^8G(x)
$$
です。$G$の次数は$7$なので、$F$の$0$次から$7$次までの係数は、$G$の係数とそのまま一致します。それでも、$F$と$G$は同じ多項式ではありません。
一致する部分を確かめたうえで差を取ると
$$
F(x)-G(x)=-x^8G(x)
$$
が残ります。比較する時は、同じ次数の係数どうしをそろえます。符号の数が同じだからといって、項の位置を取り替えてよいわけではありません。
小さい多項式は、大きい多項式の中で消えたのではなく、位置を保った一つのかたまりとして残っています。展開された項だけを見る場合と、元のかたまりへまとめ直す場合で、見えやすい性質が変わります。
今回は、計算結果だけでなく、二組を作った操作そのものが答えになっています。
同じ合計を持つ二つの集まりを見た時、その背後に、ずらす・入れ替える・差を取るといった操作がないかも考えてみてください。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。