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現代数学解説
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フルトンハリス表現論入門上 第1講 問題解答

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フルトンハリス表現論入門の第1講の練習問題の解答を作ってみました。解答の正しさについては全く自信はありませんので、間違っているところを見つけましたら、ご指摘をよろしくお願いします。

補足

表現としての同型

有限群Gの有限次元複素ベクトル空間上の表現(V,ρ)(V,ρ)G同型、あるいは表現として同型であるとは、G線形かつ線形同型な写像φ:VVが存在するということである。

perfect paring

VWn次元ベクトル空間、Uを1次元ベクトル空間とする。双線型写像β:V×WUがperfect paringであるとは、それが非退化、すなわち
(wW,β(v,w)=0)v=0
が成り立つということである。

perfect paringと線形同型

VWn次元ベクトル空間、Uを1次元ベクトル空間とする。このとき、perfect paringβ:V×WUが存在するならば、写像
φ:VHom(W,U),v(wβ(v,w))
は線形同型となる。

perfect paringとG同型

Gを有限群、n次元ベクトル空間V,WGの表現、1次元ベクトル空間UGの自明表現とする。いまperfect paringβ:V×WUが存在し、βG不変すなわち、任意のgGに対してβ(gv,gw)=β(v,w)であれば、定理1の線形同型φは表現としての同型になる。

練習問題1.1

ρ(g1)(v),ρ(g)(v)=vρ(g1)ρ(g)(v)=vρ(g1g)(v)=v(v)=v,v


練習問題1.2

φHomG(V,W)ρW(g)φρV(g1)=φρHom(V,W)(g)(φ)=φφHom(V,W)G


練習問題1.3

双線形写像β:kV×nkVnV,(v1vk,vk+1vn)v1vn
は、detρ(g)=1の仮定からG不変なperfect paringであるから、表現としての同型
φ:kVHom(nkV,nV),v1vk(vk+1vnv1vn)
を引き起こす。よって
kV(nkV)nkV
二つ目の同型では、標準的な表現としての同型を用いた。

練習問題1.4

(a)

特性関数ϕg:GRϕg(h)=δg,h={1g=h0ghと定め、線形同型写像φ:VC[G],egϕgによる同一視を行う。このとき
φρV(g)(aheh)=φ(ahegh)=ahϕghρC[G](g)φ(aheh)=ρC[G](g)(ahϕh)=ahϕhg1
ここで
ahϕgh(h)=ahδgh,h=ag1hahϕh(g1h)=ahδh,g1h=ag1h
より、φg=gφ が成立するので、二つの表現は同値である。

(b)

特性関数ϕg:GRϕg(h)=δg,hで定義する。(gα)(h)=α(g1h)による表現空間をC[G]1(gα)(h)=α(hg)による表現空間をC[G]2とする。このとき
φ:C[G]1C[G]2,ϕgϕg1
とすれば、これが二つの表現の同型を与える((a)と同様な計算をすればよい)。

練習問題1.10

計算する。例えば
τα=(123)(ω,1,ω2)=(ω2,ω,1)=ωα
である。

練習問題1.11

Sym2Vの分解

Sym2Vαα,αβ,ββで張られ、これらはそれぞれ固有値ω2,1,ωを持つτの固有ベクトルであり、σααββを入れ替え、αβは変えない。よって、αα,ββVと同型な部分表現を張り、αβは自明表現Uを張る:
Sym2VUV

Sym3Vの分解

Sym3Vααα,ααβ,αββ,βββで張られ、これらはそれぞれ固有値1,ω2,ω,1を持つτの固有ベクトルであり、σαααβββααβαββを入れ替える。よって、ααβ,αββVを張り、ααα+βββUを、αααβββUを張る:
Sym3VUUV

練習問題1.12

(1)

S3={1,τ,τ2,σ,στ,στ2}である。στσ=τ2なので
τσ=στ2,τστ=σ,τστ2=στ
であることに注意すれば
U1=(1+τ+τ2)+(σ+στ+στ2)UU1=(1+τ+τ2)(σ+στ+στ2)UV1=1+ωτ+ω2τ2,σ+ωστ+ω2στ2VV2=1+ω2τ+ωτ2,σ+ω2στ+ωστ2V
である。よって
RUUV2

(2)

0i,jkに対して
vi,j=ααiββjSymi+jV
とおく。vi,ji+j=kSymkVの基底となる。vi,jに対するτ,σの作用は
τvi,j=ω2i+jvi,j,  σvi,j=vj,i
となる。よって
τvk+6,0=ω2kvk+6,0,  τvk+5,1=ω2k+2vk+5,1,  τvk+4,2=ω2k+1vk+4,2
である。よって、vk+6,0,vk+5,1,vk+4,2の中にτの固有値1に対する固有ベクトルがただ一つ存在する。例えば、vk+6,0がそうであるとすると
U1=vk+6,0+v0,k+6UU1=vk+6,0v0,k+6UV1=vk+5,1,v1,k+5VV2=vk+4,2,v2,k+4V
である。よって
vk+6,0,vk+5,1,vk+4,2,v2,k+4,v1,k+5,v0,k+6R
となる。これは他の場合でも成り立つ。また
φ:vk+3,3,vk+2,4,,v3,k+3SymkV,vi,jvi3,j3
とすると、これは表現としての同型を与える。よって
Symk+6VUUV2SymkVRSymkV

である。
具体計算((1)と同様の計算)により
Sym4VUV2Sym5VUUV2Sym6VU2UV2
なので、Symk+6VSymkVRと合わせて、全てのkについてSymkVが計算される。

練習問題1.13

Sym3VUUVなので、Sym3V=u,u,α.β, uU,uU,α,βVとしてよい。このとき
uuU,  uuU,  αα,ββV,  uuU,uα,uβV,uα,uβV,αβU
より
Sym2(Sym3V)U3UV3
である。同様にして
Sym3(Sym2V)U3UV3
が示せるので
Sym2(Sym3V)Sym3(Sym2V)
である。

練習問題1.14

(存在性)命題1.5の証明の際に構成している。
(一意性)H,HG不変なエルミート内積とする。このとき
H~:VV,v(wH(v,w))
とすると、これはVVの表現としての同型を与える。H~が別のものとするとき、(H~)1H~:VVG線形であるので、シューアの補題より、あるλCが存在して、(H~)1H~=λIである。すなわち、H~=λH~である。

参考文献

[1]
W.フルトン、J.ハリス、木本一史訳, フルトン-ハリス表現論入門上, 丸善出版, 2023
投稿日:519
更新日:520
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  1. 補足
  2. 練習問題1.1
  3. 練習問題1.2
  4. 練習問題1.3
  5. 練習問題1.4
  6. 練習問題1.10
  7. 練習問題1.11
  8. 練習問題1.12
  9. 練習問題1.13
  10. 練習問題1.14
  11. 参考文献