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現代数学解説
文献あり

Hirsch 微分トポロジーの問題1.2.10

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 今回は小問集みたいな問題ですね。念のため、各記号の説明だけ先にしておきます。$G(n,k)$はGrassmann多様体、$P^n$は実射影空間、$SO(n)$は特殊直交群、$\widetilde{ G _k} (\mathbb R^n)$は向き付けられたGrassmann多様体、$\approx$は微分同相の関係を表します。

問題1.2.10

1.$G(3,2)\approx P^2$
2.$SO(3)\approx P^3$
3.$\widetilde{ G _2} (\mathbb R^4)\approx S^2×S^2$

 1.は自明なのでいいとして、今回は関係ないですが、何を使ってもいいのであれば、2.は$SO(3)\approx SU(2)/\{\pm 1\} \approx S^3/\{\pm1\}=P^3$、3.は$\widetilde{ G _2} (\mathbb R^4)\approx SO(4)/(SO(2)×SO(2))\approx(SU(2)_+ × SU(2)_-)/(S^1_+ × S^1_-) \approx (SU(2)_+/S^1_+) × (SU(2)_-/S^1_-)\approx S^2×S^2$
という変形でいけるっぽいです。(やはり等質空間表現…等質空間表現は全てを破壊する…)

1.問題1.2.4より$G(3,2)\approx G(3,1)$かつ、実射影空間$P^{n-1}$の定義とGrassmann多様体$G(n,1)$の定義は集合や構造レベルから一致する事から$G(3,1)=P^2$。すなわち$G(3,2)\approx P^2$

2.前提として、$P^3$はその構成方法から、四元数単位空間の各元のプラスマイナスを同一視した空間$S^3/\{\pm1\}$と同じであることに注意する。すなわち$[w:x:y:z]=[w+xi+yj+zk/\sqrt{w^2+x^2+y^2+z^2}]_\pm$
(右辺の$[]_\pm$は、四元数の$\pm$を同一視した商空間の元ということ)という自然な同一視がある。

いま、$R:S^3\to SO(3)$を、$v\in \mathbb R^3$に対して$v\mapsto qvq^{-1}$となるような変換$R(q)$で定義する。(ただし$v$$v=(x,y,z)$に対して$ix+jy+kz$と同一視されているとする。)
 するとこの$R(q)$$q=a+bi+cj+dk$に対して、

$\begin{pmatrix} a^2+b^2-c^2-d^2 & 2(bc-ad) & 2(bd+ac) \\ 2(bc+ad) & a^2-b^2+c^2-d^2 & 2(cd-ab)\\ 2(bd-ac) & 2(cd+ab) & a^2-b^2-c^2+d^2\\ \end{pmatrix}$

 と表される。この$R(q)$$SO(3)$の元になる事は線形代数の問題なので省略する。(簡単には、ノルムでみると内積保存されているため行列式が$\pm1$しかないかつ、その連続性から$R(1)$だけ計算すればよく、よって$SO(3)$の元である事がわかる。)
 特に$R(q)=R(-q)$であることから、この$R$によって、well-defindな連続写像$R:S^3/\{\pm1\}\to SO(3)$を得る。

 ここで、本来なら$R$が2:1の被覆写像になっていることと、コンパクトHausdorff性から、すぐに(ではないかもしれないが)全単射で逆も滑らか(正確には、局所的に滑らか$\to$大域的に滑らか)である事が従うので$R$が微分同相であると言っていいのだが、かなり抽象的な議論になってしまう。
 そのため、Markley,F.L.[1]による初等(?)的に示す方法を紹介する。

 次に、逆となる$F:SO(3)\to P^3$を構成するため、いくつか記号を導入する:
 $A\in SO(3)$に対して、その第$(i,j)$成分を$A_{ij}$
 $s_0=1+\tr A$
 $s_1=1+2A_{11} - \tr A$
 $s_2=1+2A_{22} - \tr A$
 $s_3=1+2A_{33} - \tr A$
 $\Delta_{ij}=A_{ij}-A_{ji}$
 $\Sigma_{ij}=A_{ij}+A_{ji}$
 $v_0=(s_0,\Delta_{32},\Delta_{13},\Delta_{21})$
 $v_1=(\Delta_{32},s_1,\Sigma_{12},\Sigma_{13})$
 $v_2=(\Delta_{13},\Sigma_{12},s_2,\Sigma_{23})$
 $v_3=(\Delta_{21},\Sigma_{13},\Sigma_{23},s_3)$

 このとき$F(A)$を、各$s_k$の中で正の値をもつ$k$に対して$[v_k]\in P^3$と定めると、これはwell-defindになる。(具体的には、ロドリゲスの回転公式を用いて気合いでwell-defindである事を確認するか、先に示した$R$が全射である事を示して、$A$に対応する四元数$q$が存在することを使ってwell-defindを確かめるかすれば良い。)
 また、これが$R$の逆写像になることも分かる。(これもやはり、気合いで合成したものを計算したり、$A$に対応する四元数$q$が存在することを使って計算したりすれば良い。)

 よって、この$R$は滑らかな全単射であり、その逆$F$もまた滑らかなので、$SO(3)\approx S^3/\{\pm1\}=P^3$を得る。

3.各$P\in \widetilde{ G _2} (\mathbb R^4)$に対して向き付きなので、その向きに沿った正規直交基底$e_1,e_2$が取れる。それに対して、まず単純2-形式$\omega=e_1\wedge e_2\in \wedge^2\mathbb R^4(:=\wedge^2)$を与える。
 この$\omega$は、正規直交基底の取り方に依らない形式である事に注意する。(つまり、他の任意の向きに沿った正規直交基底$e_1',e_2'$を取った時、$R(\theta)\in SO(2)$に対して$(e_1',e_2')=(e_1,e_2)R(\theta)$と表せて、$e_1'\wedge e_2'=\omega$となる。)

 今、Hodge作用素$\star:\wedge^2 \to \wedge^{2} $を考える。(これは、各$\alpha, \beta \in \wedge^2 $に対して$ \alpha \wedge \star\beta = ⟨\alpha, \beta⟩ \mathrm{vol} $が成り立つようなもの。ただし$\mathrm{vol}$は体積要素で、$\mathbb R^4$の標準基底$r_1,…r_4$に対して$r_1\wedge ⋯ \wedge r_4$のこと。)

 この時、$\star$による自己双対・反自己双対成分への固有空間分解$\wedge^2 \mathbb R^4= \wedge^2_+ \oplus \wedge^2_-,(\wedge^2_\pm=\{\omega\in \wedge^2|\star \omega=\pm\omega\})$があり、各$\wedge^2_\pm$の大きさが1のもの(これを$S\wedge^2_+,S\wedge^2_-$と書く)は単位球面に自然に同相になる。(すなわち$S^2=S\wedge^2_\pm$。)
 また、特に任意の$\omega\in \wedge^2$に対して$\omega_+,\omega_-$$\omega_\pm\mapsto(\omega\pm \star\omega)/\sqrt 2$で定めると、これらはちょうどそれぞれ自己双対・反自己双対になっていて、これにより元の固有分解表現$\omega\mapsto\omega_++\omega_-$ができる。(特に$\omega$の大きさが$1$なら、Hodge作用素の定義から$\omega_\pm$それぞれの大きさも$1$になる)

 以上により、$\phi: \widetilde G_2(\mathbb R^4) \to S(\wedge^2_+) × S(\wedge^2_-), \phi(V) = (\omega_+, \omega_-)$
がwell-defindに定まり、その構成は明らかに滑らかである。

 また、$\psi:S(\wedge^2_+) × S(\wedge^2_-)\to \widetilde G_2(\mathbb R^4)$を各$(a,b)\in S(\wedge^2_+) × S(\wedge^2_-)$に対して、$\omega=(a+b)/\sqrt 2$が単純な大きさ1の2形式だから、ある$v_1,v_2$$\omega=v_1\wedge v_2$となることを用いて、これによって張られる向き付けられた2平面$V=span\{v_1,v_2\}$に写す写像$(a,b)\mapsto V$とする。
 これは、定義から$\phi$の逆写像になっている。
 よって$\phi$は全単射滑らか。$\psi$も特異な変換はなく滑らか※なので、$\phi$は微分同相。

 よって、$\widetilde{ G _2} (\mathbb R^4)\approx S^2×S^2$

$\phi$は単に多項式の変換なので滑らかなのは良いが、$\psi$は途中で“存在”といった構成で滑らかか怪しいじゃないかというのはもっともなので、念のため付記をする。
 これは普通に$\phi$のヤコビアンを計算して0にならない事を言い、局所微分同相であることを言えば良い。
 具体的には、$SO(4)$-同変性(共変性)から点$P_0=span\{e_0,e_1\}$に対して確認すればよく、近傍が$Graph(F)$で表現できる事から、あとは気合いで計算をすれば結論を得る。

参考文献

[1]
M.W.Hirsch(松本堯生(訳)), 微分トポロジー, p23
[2]
Markley, F. L., Unit Quaternion from Rotation Matrix, Journal of Guidance, Control, and Dynamics
投稿日:4日前
更新日:10時間前
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