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APMO2021問2

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今年のAPMOの問2について書いてみます。
なぜ問2にしたのかというと、書いてる人がいなそうだったからです。

多項式Pと正の整数nについて,Pna<bnをみたす正の整数の組(a,b)であって|P(a)||P(b)|nで割りきれるようなものの個数とする.任意のnについてPn2021となるような整数係数多項式Pをすべて求めよ.
https://www.imojp.org/archive/mo2021/apmo2021/problems/apmo33q.jpg

絶対値記号に苦しめられた人も多いのではないでしょうか。

まず、P0次以下のときは明らかに条件をみたさないのでP1次以上ですね。
絶対値記号があるのでPPが置き換えられ、Pの最高次の係数は正であるとできます。
また、xが十分大きいときはP(x)は常に正となるのでxが十分大きいときには絶対値記号が外せますね。

ここからは絶対値記号を外して考察します。
小さい次数で実験してみましょう。

P1次のとき
P(x)=px+qとおきます。
P(a)P(b)=p(ab)となるので、p2のときにはabnpの倍数(nはpの倍数です)となるように取ればよく、Pnnのオーダーで増加して、a,bが十分大きいとしていても問題がないことがわかりますね。

これにより、p=1の場合のみに絞られました。(これはまた後で考えます。)

P2次のとき
P(x)=px2+qx+rとおきます。
P(a)P(b)=(ab)(p(a+b)+q)となります。
q±1のときはqの約数を適当に1つ取ってm (>1)とします。
a+bmの倍数、abnmとなるようにします。

これでもいいのですが、記述がめんどくさいという理由で別の構成が思いつきます。

n=m2nとして、a,bmの倍数、abmnの倍数となるようにします。

こうすると、Pnnのオーダーで増やせることがわかりますね。

次に、q=±1の場合を考えたいところですが、これについては平行移動するだけでq±1とできるので、結局q±1の場合に帰着します。

よって、P2次のときは不適ですね。

P3次のとき
P(x)=p3x3+p2x2+p1x+p0とおきます。
P(a)P(b)=(ab)(p3(a2+ab+b2)+p2(a+b)+p1)となります。
2次のときと同じようにp1±1とできます。
ここで、2次のときに「めんどくさいから」ということで考えた構成が役に立ちます。面倒臭がりも悪くないですね。

4次以上のときも2次のとき同じように示せます。

残されたのはP(x)=x+cのときの十分性の確認(ここで絶対値記号を使います!)なんですが、これは下で書きます。

以下、解答です。

P0次以下のときは|P(a)||P(b)|=0となるので、Pn=n(n1)/2であり、n65のときにPn2080>2021となり、不適である。
よって、P1次以上の多項式である。
Pの最高次の係数が正であるときを考える。
limxP(x)=であるので、ある正の整数cが存在して、xcP(x)0が成り立つ。
(i)P2次以上の多項式であるとき
c0P(xc0)xの係数が±1とならないような非負整数のうち最小のものとする。(このようなc0が存在しないとするとddxP(x)=±1が無数の解をもつことになり矛盾)
P(xc0)=amxm+am1xm1+...+a0とおく。
ca<bであるとき、
|P(a)||P(b)|=P(a)P(b)=(ab)(am((a+c0)m1+(a+c0)m2(b+c0)+...+(b+c0)m1)+...+a1)
となる。
ここで、a1±1であるので、a1の正の約数のうち1でないものが存在する。そのようなもののひとつをkとおく。
n=k2nとおき、a+c0,b+c0kの倍数でba=knとなるようにする。
このとき、abknの倍数で、(am((a+c0)m1+(a+c0)m2(b+c0)+...+(b+c0)m1)+...+a1)kの倍数であるので、|P(a)||P(b)|nの倍数になる。
また、このようなa,bの取り方は[(k1)nkck2]通り以上存在するので、nが十分大きいときPn>2021となる。よって、P2次以上であるときは条件をみたす多項式は存在しない。
(ii)P1次の多項式であるとき
P(x)=px+qとおく。
ca<bのとき、
|P(a)||P(b)|=P(a)P(b)=p(ab)
となるので、p2のときはn=pnとおいて、ab=nとなるように取ればよく、Pn[(p1)npcp]となり、nが十分大きいときPn>2021となる。
p=1のときを考える。
||P(a)||P(b)||<|P(a)P(b)|=|ab|<nであるので、|P(a)||P(b)|nの倍数となるとき、|P(a)||P(b)|=0である。
a<bより、P(a)=P(b)とはならないので
|P(a)||P(b)|=0P(a)=P(b)a+b=2q
ここで、0<a<bなので、
「任意のnについてPn2021q2022 となる。
よって、Pの最高次の係数が正のときの条件をみたす多項式はP(x)=x+c(c2022)である。

Pの最高次の係数が負のときについては、Pが問題の条件をみたすこととPがみたすことは同値であるので、条件をみたす多項式はP(x)=(x+c)(c2022)である。

よって、条件をみたす多項式はP(x)=x+c,(x+c)(c2022)である。

投稿日:202148
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