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2019 JMO本選4番の複素平面を使った解法

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問題は こちら です.

「三角形ABCの内心をI, 内接円をωとする. また, 辺BCの中点をMとする. 点Aを通り直線BCに垂直な直線と, 点Mを通り直線AIに垂直な直線の交点をKとするとき, 線分AKを直線とする円はωに接することを示せ. 」

初等で解くとかなり少ない手順で解けるらしいのですが, 今回は複素平面を使って解いていきたいと思います.

以下, 計算式中に大きな文字の$\mathrm{A}$$\mathrm{B}$がでてきたとき, それをAの座標やBの座標という意味を表すことにします. また, 二点A, Bの距離を$\mathrm{AB}$と表すことにします.

まず, 問題文中で三角形と内接円が与えられ, なおかつ内心も出てくるということから, 内心を0, 内接円と辺の3つの接点をそれぞれ文字で置いて, A, B, C の座標を求めていくという解法が思いつきます.
(ここらへんのことは『獲得』に載っています. 調べてみましょう. )

ここではBC上, CA上, AB上の接点をそれぞれ$(a), (b), (c)$とおいて話を進めます. このときA, B, C の座標はそれぞれ
\begin{equation} \left( \frac{2bc}{b+c} \right), \left( \frac{2ca}{c+a} \right), \left( \frac{2ab}{a+b} \right) \end{equation} となります. このとき, Mの座標は
\begin{equation} \left(\frac{2ca}{c+a}+\frac{2ab}{a+b}\right)÷2 =\frac{a(ac+ab+2bc)}{(a+c)(a+b)} \end{equation}
となることがすぐにわかります.

また, 点Kの座標を$(k)$とおくと, 条件から次のような二本の式が立ちます. ただし, 次の$ \mathbb{R} i$は純虚数の集合を表します. (これは一般的な記法ではないので, 使用する際は必ず断ってから使いましょう. )
\begin{equation} \frac{k-\mathrm{A}}{\mathrm{B-C}}\in \mathbb{R} i \Longleftrightarrow\frac{k-\frac{2bc}{b+c}}{\frac{2ca}{c+a}-\frac{2ab}{a+b}}\in\mathbb{R}i \end{equation}

\begin{equation} \frac{k-\mathrm{M}}{\mathrm{A-I}}\in \mathbb{R} i \Longleftrightarrow\frac{k-\frac{a(ac+ab+2bc)}{(a+c)(a+b)}}{\frac{2bc}{b+c}-0}\in\mathbb{R}i \end{equation}
この計算を行うと,
\begin{equation} k=\frac{2b^2c^2+2abc^2+2ab^2c+a^2c^2+a^2b^2}{(a+b)(b+c)(c+a)} \end{equation}
が導かれます. これは複素計算の良い練習になるので, 一度やってみて損はないと思います.

これですべての頂点の座標が求まったので, あとは主張を導くだけです. 線分AKを直径とする円の方程式と$|z|=1$を連立して...とやってもよいのですが, ここでは問題文を少し言い換えて,
「AKの中点(AKを直径とする円の中心)と内心I(内接円ωの中心)の距離が, 二円の半径の差または和になればよい」
とします. これは円の性質からすぐわかることなので, 不安な人は確かめておきましょう.

これを実行するために, AKの中点をNとおいてその座標を求めます. この座標を$(n)$と置けば,
\begin{align} n&=\left(\frac{2bc}{b+c}+\frac{2b^2c^2+2abc^2+2ab^2c+a^2c^2+a^2b^2}{(a+b)(b+c)(c+a)}\right)\div 2 \\ &=\frac{(2a+b+c)^2}{2(a+b)(b+c)(c+a)}\\ \end{align}
また, $|a|=|b|=|c|=1$に注意して$\bar{n}$を求めると
\begin{equation} \bar{n}=\frac{\left(\frac{2}{a}+\frac{1}{b}+\frac{1}{c}\right)^2}{2\left(\frac{1}{a}+\frac{1}{b}\right)\left(\frac{1}{b}+\frac{1}{c}\right)\left(\frac{1}{c}+\frac{1}{a}\right)} =\frac{(2bc+ca+ab)^2}{2(a+b)(b+c)(c+a)} \end{equation}
となります. ここから$\mathrm{NI}$(中心間距離)がわかり, これは$|n|=\sqrt{n\bar{n}}$であるから
\begin{equation} |n|=\left|\frac{(2a+b+c)(2bc+ca+ab)}{2(a+b)(b+c)(c+a)}\right| \end{equation}
がわかりました. 同様に, 直径をAKとする円の半径, つまり$\mathrm{NA}$を求めたいですね. これは$|k-a|\div2$で求められます.
\begin{align} k-a &=\frac{2b^2c^2+2abc^2+2ab^2c+a^2c^2+a^2b^2}{(a+b)(b+c)(c+a)}-\frac{2bc}{b+c} \\ &=\frac{a^2(b-c)^2}{(a+b)(b+c)(c+a)}\\ \overline{k-a}&=\frac{(b-c)^2}{(a+b)(b+c)(c+a)}\\ \frac{|k-a|}{2}&=\left|\frac{a(b-c)^2}{2(a+b)(b+c)(c+a)}\right| \end{align}
このとき, $|k-a|$は実数であるから,
\begin{equation} x=\frac{a(b-c)^2}{2(a+b)(b+c)(c+a)} \end{equation}
としたときの$x$は実数となります.
ここで,
\begin{align} \mathrm{NI}&=\left|\frac{(2a+b+c)(2bc+ca+ab)}{2(a+b)(b+c)(c+a)}\right|\\ &=\left|\frac{a(b-c)^2}{2(a+b)(b+c)(c+a)}+1\right|\\ &=|x+1| \end{align}
が導かれます. いま, AKを直径とする円の半径を$r_{1}$, ωの半径を$r_{2}$, 中心間距離を$s$とすれば,
$r_{1}=|x|, r_{2}=1, s=|x+1|$
と表せる. 先ほど述べた理由から,
$r_{1}+r_{2}=s$または$|r_{1}-r_{2}|=s$
を示せばよいことになります.
いま$x$は実数なので, 次のように場合分けをして考えます.
[1] $x\lt -1$のとき
$r_{1}=-x, s=-(x+1)$より前者が成り立つ.
[2] $-1\leq x\lt 0$のとき
$r_{1}=-x, s=x+1$より後者が成り立つ
[3] $0\leq x$のとき
$r_{1}=x, s=x+1$より前者が成り立つ.

以上より, 題意が示されました

ここまで読んでいただきありがとうございました. 疑問点や不審な点、その他要望等がありましたら, コメントで教えていただけるとありがたいです.

投稿日:2021518

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まいん
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