1
高校数学問題
文献あり

等比数列と倍数にまつわる整数の問題〈解答アリ〉

143
1

nを正の整数,pを奇数の素数とし,kpで割った余りが1である自然数とする。また自然数NN=1+k+k2++kn1
と定める。このときNが持つ素因数pの個数とnが持つ素因数pの個数は等しいことを示せ。

例えばn=54=233p=3k=7としますと,N=23331937431098111063237711730725832531628413557556843
と素因数分解されますので,Nnはいずれも33回割り切れることが分かります。

問題 1 におけるp=2のとき

nを正の整数とし,k4で割った余りが1である自然数とする。また自然数NN=1+k+k2++kn1
とする。このときNが持つ素因数2の個数とnが持つ素因数2の個数は等しいことを示せ。

例えばn=48=243k=5としますと,N=2432713173131360111489390001152587500001
となります。

解答案

問題1の解答例

pを素数とし,npで“きっかり”s回割れるとする。このときnn=hpsと表せる(hpと互いに素)。このとき,N=1khps1k
である。右辺の分子はさらに次の形に因数分解できる。1khps=(1kps)(1+kps+k2ps++k(k1)ps)
k1(modp)なので,1+kps+k2ps++k(k1)ps1++1hh(modp)
である。hpは互いに素だから,1+kps+k2ps++k(k1)pspで割り切れない。よって1kps1k
pで何回割り切れるかを考えればよい。次の等式を利用する。()1kps1k=j=1s{1+(kpsj)+(kpsj)2++(kpsj)p1}
ここでpは奇数の素数で,k1(modp)だったので,kpsjはある整数qjを用いてkpsj=pqj+1と表される。()式の因数を書き換えると,1+(1+pqj)+(1+pqj)2++(1+pqj)p1
となっている。この式を展開して整理すると,次のようになる。(#)p+pCp2(pqj)+pCp3(pqj)2++(pqj)p1
部分についてはp2で割り切れるので,(#)はきっかりpで割り切れる。従って()はきっかりps回割り切れることになり,これはNps回割り切れることに等しい。

問題2の解答案【前半は問題1と同様の議論】

問題1の解答案において,()1kps1k=j=1s{1+(kpsj)+(kpsj)2++(kpsj)p1}
までの議論はp=2であっても同様である。この()p=2においては,()j=1s(1+k2sj)
と書き表せる。またk1(mod4)とすると,k2sj1(mod4)となる。従って()式は,j=1s(1+4Mj+1)(MjZ)
と表され,2+4Mj2の倍数だが4の倍数でないため,()2できっかりs回で割り切れる。よってN2できっかりs回割り切れる。

この問題は自分が高校生の頃に考えた問題です。答案では,()式にセンスが光りました。割り切れる回数を考察するために因数分解を行うという発想は普通ですが,()式のように一見自明でない因数分解によって解決できた爽快感は,今でも記憶に残っています。

追記

コメントにて delta 様から,類題を見たことがある旨を教えてくださいました。 近畿大学理学部数学コースのイベント記事 内のpdf,及びコメントのURLから閲覧が可能です。

参考文献

投稿日:2021620
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

ぱるち
ぱるち
142
26531
数学屋さんをしています。代数,数論系に興味があり,今は楕円曲線と戯れています。Mathlogは現実逃避用という噂もあります。@f_d00123

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中