本を読んだ内容を少し紹介します。
例えば、A、B、Cの選択肢から、一番好きな物と一番嫌いな物を7人で多数決をとる場合、以下のようになったとします。
$$好 A:3人、B:2人、C:2人$$
$$嫌 A:4人、B:1人、C:2人$$
一番好きな物でB、Cの票に入れていた4人が全員が、一番嫌いな物でAに入れています。
日常では、例えば選挙のときに使われます。
Aには絶対に入れたくないという人がB、Cに散り
Aに当選するパターンもあります。
これは僕も使っています。
iPodで「お気に入り」というプレイリストを作っているのですが、曲の順番がプレイリストに追加した順になってしまうんですね。
追加した順番は覚えていないので、一番上から探す羽目になるのですが、ここで使うのが並び替えです。
あるルールに従って並び変えると、探す時間が省けて便利です。
例えば、CDがたくさん並んでいる棚から、聞きたいCDを1つ取り出す場面を想定します。
CDの枚数をn枚とすると、上から順番に探した場合、聞きたいCDが見つかるまで探すと、最大でn回取り出す必要があります。
一番最後に聞きたいCDがあった場合に取り出す回数が最大になります。
しかし、並び替えを行うことで、この取り出す回数を少なくすることができます。
例えば、曲名を50音順に並び変えると、CDを一つ取り出したときに、そのCDが聞きたいCDではないなら、聞きたいCDはそのCDよりも前にあるか後ろにあるかが分かるはずです。
ここで「CD群の中から真ん中のCDを取り出し、そのCDよりも前にあれば前半分、後にあれば後半分の真ん中を探す」という作業を繰り返すと、最長でも$log_{2}n$回取り出すだけで済みます。
CDが全部で64枚あったとすると、最初に真ん中を取ると32枚まで絞り込めます。
その32枚の中の真ん中を取ると、16枚に絞り込めます。
16枚、8枚、4枚、2枚と絞っていき、最終的に1枚に残ります。
この時取り出した回数は$log_{2}64=6(回)$です。
これを二分探索法と言い、コンピュータの世界でかなり使われている手法です。
使ってみて下さい。
【問】水深100cmあった水が、1時間後に90cmになった
このまま水を抜くと、どれだけ時間がかかるか
中学生までの知識だと、一次関数を使います。
水深を$y$、水を抜いてから経過した時間を$x$とすると
$$y=-10x + 100 (y > 0)$$
となり、$10$時間で水深が$0$cmとなります。
しかし、実際にやってるとそうはいきません。
より正確に予測するには、物理や微分積分の知識が必要です。
深さ$xcm$のとき、排水溝から流れる水の速さは$\sqrt{x}$に比例するので、水位を$10cm$ごとに分け、それぞれの位置で速さを割り出し、$10cm$減る時間をすべて合計しています。
水位の変化 | 平均の深さ$x$ | $\sqrt{x}$ | 10cm減る時間 |
---|---|---|---|
$100-90$ | $95$ | $9.7$ | $\frac{9.7}{9.7} = 1.0$ |
$90-80$ | $85$ | $9.2$ | $\frac{9.7}{9.2} = 1.1$ |
・・・ | |||
$10-10$ | $5$ | $2.2$ | $\frac{9.7}{2.2} = 4.4$ |
水がすべて抜ける時間は
$1.0+1.1+...+4.4=17.5時間$
これは、区切れば区切るほど正確です。
書籍では、ここまでしか紹介されていないので、詳しく調べてみました。
以下の条件を設定します。
$$プールは直方体とする。$$
$$水の体積:V$$
$$水の高さ:y$$
$$高さyにおける断面積:S$$
$$排出時間:x$$
$$排水溝の断面積:μ$$
$$排水溝から流れる水の速度:v$$
$$重力加速度:g$$
すると、以下の方程式を得ます。
$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} V = Sy ・・・①\\ \frac{dV}{dx} = -μv ・・・②\\ \frac{1}{2}v^2 = gy ・・・③ \end{array} \right. \end{eqnarray} $
③の理由は、運動量保存の法則から
$$(排水溝へ流れる水のエネルギー) = (位置エネルギー)$$
$$\frac{1}{2}mv^2 = mgy$$
$$\frac{1}{2}v^2 = gy$$
①、②から
$$\frac{dV}{dx} = \frac{dV}{dy} ・ \frac{dy}{dx} = S・\frac{dy}{dx} = -μv$$
$$\frac{dy}{dx} = -\frac{μv}{S}$$
③と、$v > 0$から
$$v = \sqrt{2gy}$$
よって
$$\frac{dy}{dx} = -\frac{μ \sqrt{2gy}}{S}$$
$t=\sqrt{y}$とおくと
$$\frac{dt}{dy} = \frac{1}{2 \sqrt{y}}$$
$$\frac{dt}{dx} = \frac{dt}{dy}・\frac{dy}{dx} = \frac{1}{2 \sqrt{y}}・(-\frac{μ \sqrt{2gy}}{S})=-\frac{μ \sqrt{g}}{\sqrt{2}S}$$
よって
$$\frac{d}{dx} \sqrt{y} = -\frac{μ \sqrt{g}}{\sqrt{2}S}$$
$$∴ \sqrt{y} = -\frac{μ \sqrt{g}}{\sqrt{2}S}x + \sqrt{y_{0}} (y_0:最初の水の高さ)$$
このことから、深さ$ycm$のとき、排水溝から流れる水の速さは$\sqrt{y}$に比例することがわかります。
以下、$a=-\frac{μ \sqrt{g}}{\sqrt{2}S}$とおきます。
$$y = (ax + \sqrt{y_{0}})^2$$
$y_0=100$より
$$y = (ax + 10)^2$$
$(x,y)=(1,90)$より
$$90=(a + 10)^2$$
$$±\sqrt{90}=a + 10$$
$$a=-10 ± \sqrt{90}$$
$0 < \sqrt{y} = ax + 10$より
$$a=-10 + \sqrt{90}$$
$$y = (ax + 10)^2 = a^2(x + \frac{10}{a})^2$$
$$y = 0 ⇒ x = -\frac{10}{a}$$
$$x = -\frac{10}{a}$$
$$ = -\frac{10}{-10+\sqrt{90}}$$
$$ = -\frac{10(-10-\sqrt{90})}{(-10+\sqrt{90})(-10-\sqrt{90})}$$
$$ = \frac{10(10+\sqrt{90})}{100-90}$$
$$ = \frac{10(10+\sqrt{90})}{10}$$
$$ = 10+\sqrt{90}$$
$\sqrt{90}$は、$9$と$10$の真ん中くらいなので、$19.5$時間くらいだと予想されます。
($90.25 = 9.5^2$)
一次関数で計算した場合は$10$時間だったので、結構ずれが大きいということが分かります。差は約2倍ですからね?
ちなみに、自動で抜く場合は問題ないですが、ずっと監視する必要があるとしたら残業確定ですよね?
その他にも、「TVより映画の方が迫力があるのはなんで?」「電車で一番揺れない席は?」「海岸線は長さがわからない?」など、色々な内容が入っています。
計算というよりは、読み物として面白かったので、読んでみて下さい。