中学生で習う“平方根で表される無理数”(例えば,
例えば,
しかし,この評価はだいぶ雑である.いかんせん整数部分でしかその無理数を評価できないからである.そこで,中学生でも理解できる範疇で,もう少し精度の良い近似評価が得られれば,中学生の検算にも少しは役立つだろう...
とか何とか中学生のころ考えていた筆者であるが,最近Youtubeを見ていたとき,ある動画(参考文献[1]に挙げている)を見つけた.
その動画では,平方根で表される無理数の近似評価として次の例を挙げていた.
まず,
次に,この
これより,
なるほど,実際に電卓で計算してみると,
他にも,動画内では
ただし,動画はそのアルゴリズムの紹介のみで証明には言及していなかったので,今回の記事ではその証明を2通り書いた.
また,発展的な例も挙げておいた.
動画で言及されている“平方根(で表される無理数)”の近似値は,実は不等式として上から押さえた評価であると予想がつく.例えば,例1に挙げた
実際,表にしてみれば解りやすい.
無理数 | 真値(の有効数字5桁) | このアルゴリズムで得られる近似値(の有効数字5桁) |
---|---|---|
9.3274 | 9.3333 | |
8.0623 | 8.0625 | |
5.1962 | 5.2000 |
このことから,この近似評価アルゴリズムは次の命題として一般化が考えられる.
平方数でない任意の自然数を
が成立する.
例えば,
この命題1の証明を中学生向けと大学生向けの2通りで行った.
命題1の中学生向けの証明としては,平方根(で表される無理数)に対して,分母(あるいは分子)の有理化があったことを利用し示していく.
まず,
なる
式(
を得る.
次に,式(
を得る.これより,
なる上からの評価を得る.
したがって,
となり,結論を得る.
さて,中学生向けの証明では分子の有理化がポイントであったが,大学生(あるいは勤勉な高校生)向けには次に挙げる平均値の定理を使った証明の方が馴染み深いかもしれない.
関数
を満足する点
証明は各自,微分積分学等のテキスト・参考書を参照されたい.(例えば,参考文献[2]を挙げておく.)
それでは,平均値の定理を用いて命題1を証明していこう.
となる.
ここで,
である.特に,
となり,結論を得る.
さて,この平均値の定理を用いた証明では,
と定める.このとき
平均値の定理を用いた命題1の証明過程で式(
となる.先に
となり,結論を得る.
実際,例1に対して次のように下からの評価も得られる.
まず,命題1より,
を得る.
今回はYoutubeの動画をきっかけに平方根で表される無理数の近似評価を証明しました.中学時代にこの評価のテクニックを知っていれば,あの頃もう少し自信を持って平方根の問題に取り組めていたのかもしれない...(笑)
今後も面白いと思った色々な問題や命題をmathlogに挙げていきます.
それでは今回はここまで.有難うございました.
次回もよろしくお願いします.