因数分解でたすき掛けを使うと思いますが、自分はたすき掛けの方法を覚えていません。
なぜなら、使う必要がないからです。
使わなければ覚える必要もなく、覚えなければ忘れることもないのです。
(・・・本音を言うと、たすき掛けは何をやってるのかわかりづらかったので使っていないだけなのですが。
それと、僕の記憶の容量が少ないので、覚えるコストを削りたかったというのもあります。)
()の中の符号が「$+$」「$+$」
$(sx+α)(tx+β) = ax^2+bx+c$
()の中の符号が「$+$」「$-$」
$(sx+α)(tx-β) = ax^2+bx-c$
or
$(sx+α)(tx-β) = ax^2-bx-c$
()の中の符号が「$-$」「$-$」
$(sx-α)(tx-β) = ax^2-bx+c$
例:$x^2+5x+6$を因数分解せよ。
まず、符号に着目すると上記の1.の$「+」「+」$のパターンです。
$x^2+5x+6 = (x+α)(x+β)$
次に、6の約数を考えます。
$6=1×6, 6=2×3$
と2通りの分け方があるので
$(x+1)(x+6)$
または
$(x+2)(x+3)$
となります。
それぞれ展開してみると
$(x+1)(x+6) = x^2+7x+6$
$(x+2)(x+3) = x^2+5x+6$
となり、正解は$x^2+5x+6$ = $(x+2)(x+3)$となります。
例:$5x^2-12x+4$を因数分解せよ。
符号は4.の$「-」「-」$のパターンです。
$5x^2-12x+4 = (sx-α)(tx-β)$
次に、5の約数と4の約数を考えます。
$5=1×5, 4=1×4, 4=2×2$
となります。
$5$は素数なので分かりやすいですね。
この時点で因数分解すると
$5x^2-12x+4 = (5x-α)(x-β)$
ここで、$α,β$の値を調べるわけですが、展開するとこうなります。
$(x-α)(5x-β) = 5x^2-(5α+β)x + αβ$
なので、$4=α×β$としたときに、$5α+β=12$となるものを探せばよいです。
$4$の約数は
$4=4×1, 4=2×2$の2通りです。
①$5×4+1=21$
②$5×2+2=12$
なので、②の$α=2,β=2$の組み合わせが正しいということになります。
よって
$5x^2-12x+4 = (5x-2)(x-2)$
となります。
先ほどまでは場合分けが少ないので暗算でもできると思いますが、場合分けを増やします。
例:$4x^2-31x-8$を因数分解せよ
今度は$4=1×4, 4=2×2, 8=1×8, 8=2×4$と、場合分けが増えます。
しかも、符号も2.で「$+$」「$-$」か「$-$」「$+$」かを考えなくてはなりません。
全通りを書くと
①$(4x+1)(x-8)$
②$(4x-1)(x+8)$
③$(2x+1)(2x-8)$
④$(2x-1)(2x+8)$
⑤$(4x+2)(x-4)$
⑥$(4x-2)(x+4)$
⑦$(2x+2)(2x-4)$
⑧$(2x-2)(2x+4)$
となり、とても暗算できるとは思えません。
(暗算できる人もいそうですが、もっと簡単な方法はあります。)
しかし、ここで候補をある程度絞ることができます。
例えば、③$(2x+1)(2x-8)$とありますが、これはさらに因数分解することができます。
$(2x+1)(2x-8) = 2(2x+1)(x-4)$
もしこれが正しいとすると、元の式も$2$で割り切れなければなりません。
しかし、$4x^2-31x-8$は$2$で割り切れないので、③は間違い、ということになります。
このように候補を絞ると、以下の候補が残ります。
①$(4x+1)(x-8)$
②$(4x-1)(x+8)$
これなら大丈夫ですよね。
展開してみると
①$(4x+1)(x-8)$
$=4x^2-31x-8$
②$(4x-1)(x+8)$
$=4x^2+31x-8$
となり、①が正解となります。
このように、候補が多い場合は絞れる場合があります。
絞れなければ頑張りましょう。
(とはいえ、ここまでの説明が理解できればたすき掛けは必要なくなると思います)
単純に、因数分解された形を展開すればわかります。
$ax^2 + bx + c = (sx+α)(tx+β)$
$= stx^2 + (sβ+αt)x + αβ$
$⇒a=st, b=(sβ+αt), c=αβ$
まず$x^2$の係数$a$と、定数部分$c$から、$a$の約数と$c$の約数を洗い出しました。
$a=st, c=αβ$
その後、$b=(sβ+αt)$となるような$s,t,α,β$を見つけるのが、上記の暗算の方法となります。
高校生の範囲であれば可能ですが、大学受験、大学数学となると暗算は難しいと思います。
しかし、この方法で因数分解を行えば、もはやたすき掛けは不要と言えます。