どうもaminoです.課題が終わってないけど暇だったので久しぶりにMathlogを書きたいと思います.
今回書きたい問題はこれです.
$$\cos{(x\pi)} = y$$
となる$x,y \in \mathbb{Q}(0 \lt x \lt \frac{1}{2})$をすべて求めよ.
まず見つかるのは$(x,y) = (\frac{1}{3},\frac{1}{2})$です.実はこれしかないことを示していきます.
その前に次の補題を示しておきます($\mathbb{N}$は正整数の集合を表すものとします).
$$a_1 = r \in \mathbb{Q}(0 \lt r \lt 1),\ \ \ \ a_{n + 1} = 2a_{n}^2 - 1$$
という数列を定めると,$a_i = a_j$なる$i,j \in \mathbb{N}(i \neq j)$が存在する$r$の条件は
$$r=\frac{1}{2}$$
である.
$r = \frac{b}{a}$とする.ただし$a$と$b$は互いに素とする.$0 \lt r \lt 1$より$a \geq 2$としてよい.
$a = 2$のとき
$0 \lt r \lt 1$より$b = 1$であり,$a_2 = a_3 = -\frac{1}{2}$となり題意を満たす.
$a \geq 3$のとき
$a_n$を既約分数で表したときの分母が狭義単調増加であることを示す.
第$n$項まで$a_n$の分母が狭義単調増加であると仮定したとき, $a_n$の分母は$3$以上である.
よって,$a_n = \frac{d}{c}(c \perp d)$とするとき,$c \geq 3$であり,
\begin{align}
a_{n + 1} &= 2a_{n}^2 - 1\\
&= 2\frac{d^2}{c^2} - 1\\
&=\frac{2d^2 - c^2}{c^2}
\end{align}
ここでユークリッドの互除法より$gcd(2d^2 - c^2,c^2) = gcd(2d^2,c^2)$であり,$gcd(c,d) = 1$であることを考えれば$gcd(2d^2,c^2) = 1 \ or \ 2$である.($c$が奇数のとき$1$,偶数のとき$2$)
よって$a_{n + 1}$の分母は$\frac{c^2}{2}$以上であり,$c \geq 3$のとき$\frac{c^2}{2} \gt c$が成り立つので$a_n$の分母は狭義単調増加である.よって$a\geq 3$のとき$a_i = a_j$なる$i,j \in \mathbb{N}(i \neq j)$は存在しない.
さて,勘のいい人はもうお気づきかもしれませんが,上の数列は$\cos$の倍角公式そのものです.よって補題から次のことがただちに従います.
$\cos{\alpha} = r \in \mathbb{Q}(0 \lt r \lt 1)$となる$\alpha$について,$r$を既約分数で表したときの分母が$3$より大きければ,任意の非負整数$i,j (i \lt j)$において
$\cos{(2^i\cdot \alpha)} \neq \cos{(2^j\cdot \alpha)}$
$\cos$が異なれば中身の角度も異なる(ちなみに逆は言えない)ので,$2^i\cdot \alpha \not \equiv 2^j\cdot \alpha \ (mod\ 2\pi)$です(以後$mod\ 2\pi$は省略することとします).これを変形すると$2^i\alpha(2^{j - i} - 1) \not \equiv 0$であり,$j \gt i \geq 0$よりこの式は$2^n\alpha(2^m - 1) \not \equiv 0(n,m \in \mathbb{Z},n \geq0, m\geq 1)$と表せます.これを補題2とします.
$\cos{\alpha} = r \in \mathbb{Q}(0 \lt r \lt 1)$となる$\alpha$について,$r$を既約分数で表したときの分母が$3$より大きければ,任意の非負整数$n$と正整数$m$において
$2^n\alpha(2^m - 1) \not \equiv 0$
さて,ここで最初の問題に戻りたいと思います.$\cos{x\pi} = y$を満たす$x,y \in \mathbb{Q}$について,$y$を既約分数で表したときの分母が$3$以上にならないことを示します.$y$の分母が$3$以上であることを仮定して矛盾を導いていきたいと思います.
$\cos{x\pi} = y(x,y\in \mathbb{Q})$とし,$y$を既約分数で表したときの分母が$3$以上とする.
$\beta = x\pi$とする.$x$は有理数より,$k\beta \equiv 0 (mod\ 2\pi)$となる$k \in \mathbb{N}$が存在する.
ここで$k$が$2$で割り切れる最大回数を$v_2(k)$と表すとすると,$k$は奇数$l$を用いて$k = 2^{v_2(k)}l$と表せる.よって$2^{v_2(k)}\beta l \equiv 0$である.
ここで$l$は奇数より,$2$と互いに素なのでオイラーの定理から,$2^{\varphi(l)} - 1$は$l$の倍数である.よって$2^{\varphi(l)} - 1 = al$となる$a \in \mathbb{N}$が存在する.$2^{v_2(k)}\beta l \equiv 0$より$2^{v_2(k)}\beta al \equiv 0$,よって$2^{v_2(k)}\beta(2^{\varphi(l)} - 1) \equiv 0$.
しかし仮定より$\cos\beta = y \in \mathbb{Q}$であり,$y$を既約分数で表したときの分母は$3$以上より補題$2$で$\alpha = \beta,n = v_2(k),m = \varphi(l)$としたときの$2^{v_2(k)}\beta(2^{\varphi(l)} - 1) \not \equiv 0$に矛盾.よって$\cos{x\pi} = y(x,y\in \mathbb{Q})$のとき,$y$を既約分数で表したときの分母が$3$以上になることはない.
よって$y$の分母が$2$であることが言えました!分母が$2$の$0$より大きく$1$より小さい既約分数は$\frac{1}{2}$しかなくこれは題意を満たすので,求める$(x,y)$の組は$(\frac{1}{3},\frac{1}{2})$となります.