はじめに
この記事では後の記事で必要となる一般化優高度合成数という数の性質について解説していきます。
以下を約数関数
としを固定します。このとき一般化優高度合成数とは次のように定義される数のことを言います。
高度合成数
自然数が任意のに対して
を満たすとき、は一般化高度合成数であると言う。
優高度合成数
自然数があると任意のに対し
を満たす(ただしにおいては真の不等号が成り立つ)とき、は一般化優高度合成数であると言う。
以下簡単のため"一般化"を省略して単に高度合成数や優高度合成数と呼ぶことにします。
上ではについて優高度合成数を定義しましたが、についても巨大過剰数というものが定義されます。と言っても、がについての巨大過剰数であるとは
(ただしならば等号不成立)が成り立つことを言うのですが、
なのでがについての巨大過剰数であることとについての優高度合成数であることは等価であり、結局について考えればいいことになります。実際、後の記事ではについての定理を解説しますが、その導出ではについて考察していくことになります。
ただ、がについての高度合成数であることとについての高度過剰数であること()は同値ではありません。高度合成数と同値なのは超過剰数であること()になります。
さらに注意が必要なのはここで高度合成数(優高度合成数)と超過剰数(巨大過剰数)が同値であると言ったのはの相互関係について言っており、通常、高度合成数(優高度合成数)や超過剰数(巨大過剰数)と言ったときにはそれぞれについてのそれを指すので、そういう意味では高度合成数(優高度合成数)と超過剰数(巨大過剰数)は同値とはなりません。
この記事では最後の節を除いて具体的な(優)高度合成数の例は紹介しないのもあって何かの参考にこれらのWikipediaのページでも貼っておきます。
・
高度合成数
(
Highly composite number
)
・
優高度合成数
(
Superior highly number
)
・
高度過剰数
(
Highly abundant number
)
・
超過剰数
(
Superabundant number
)
・
巨大過剰数
(
Colossally abundant number
)
なぜか優高度合成数(日本語版)の紹介は巨大過剰数の記事の中で行われています。まで一般化(Generalized)したものについての記事はなさそうな感じでした。
ちなみに巨大過剰数の記事の出典として使われていたQiitaの記事(→
高度合成数〜なんかよく見る数〜
)でもの(優)高度合成数の数値的な話やこの記事とはまた別の観点のお話を取り上げているので、よかったらそちらも見てみると面白いかもしれません。
以下、簡単のためとしての場合は最後の節で紹介します。
補題
これから(優)高度合成数についての性質を見ていく前にいくつかの解析的な補題を示しておく。
自然数とに対して
とおくとはそれぞれについて単調増加である。
自然数とに対して
とおくとはについて単調減少である。
または
に注意すればわかる。(ついでにについても単調減少であることがわかる。)
自然数とに対して方程式
はにおいてただ一つの解を持ち、その解はについて単調減少にへ収束する。
補題1よりはで単調増加で、
なのでこれがにおいてただ一点でになることがわかる。
またはについても単調増加なのでとすると
すなわちであり、有界単調性からの収束先をとおくと
よってがわかる。
高度合成数の性質
素数を小さい順に並べ、とおき、の素因数の内最大のものをとして
と素因数分解する。このとき
と表せることに注意する。
高度合成数があるに対しを満たすとする。このときとおくと
が成り立たなければならないが、から補題1より
であるので矛盾。よって主張を得る。
高度合成数に対しが成り立つ。
またが高度合成数となるのはが成り立つとき(大体くらい)、かつそのときに限る。
ステップ1:である
高度合成数がを満たすとする。このときベルトランの仮説よりであることに注意してとおくと
が成り立たなければならないが、補題2より
であるので矛盾。
ステップ2:ならばである
高度合成数がかつを満たすとする。このときならベルトランの仮設より
が成り立ち、またならより結局が成り立つことに注意してとおくと
が成り立たなければならないが、これも上と同様に
であるので矛盾。
ステップ3:ならばである
高度合成数がかつを満たすとする。このとき上の表よりが成り立つことに注意して自然数を取ると
が成り立つ。いまより
が成り立たたなければならないが、実はにおいて
が成り立つ。この証明については細かくは触れ(れ)ません(私の技術的に)が、次のように正当化することはできます。
において
と評価できるのでにおいて
すなわち
が成り立つ。またにおいては
と評価できるのでにおいて
が成り立つ。よって大域的にも(ほとんどので)
が成り立つと考えられる。といった具合である。
なにはともあれこれによって矛盾が得られる。
ステップ4:ならばである
高度合成数がかつを満たすとする。このときならばベルトランの仮設よりなので
が成り立ち、また上の表からにおいてもこの不等式は成り立つことに注意して自然数を取ると
が成り立たなければならないがが、上と同じように(厳密な証明ではないが)において
およびにおいて
と評価できるので矛盾。
ステップ5:ならばである
となるような、つまりは高度合成数である。実際
は全て未満である。
となるような高度合成数について、自然数を取ると
が成り立ち、また(厳密な証明ではないが)において
およびにおいて
が成り立つので
が言える。よってであり、単調性よりとなる。ここでであったのですなわちとなる。
ただしが未満で最大の高度合成数であること(定理やから簡単にわかる)に注意するとが高度合成数であるためにはであればよく、これを展開して整理すると
が必要十分条件ということになる。
定理5の証明はにおけるラマヌジャンの論証を元に自力で考えたものになっているためにを示す議論が多少不完全なものになっています。完全な証明はどこかに載っているのでしょうか...?ちなみにラマヌジャンは定理4と5のことを"We can easily show that (これは簡単に示すことができます)"と言っています。んなわけあるか。
優高度合成数の性質
優高度合成数はその定義から任意のに対して
を満たすので高度合成数となります。そして優高度合成数はを用いて次のように明示的に素因数分解できます。
任意に素数を取り、とおくと
が成り立ち、また任意に素数を取りとおくと
が成り立つ。これをそれぞれについて解くことで
すなわち
を得る。
いまつまりであるとするとに対してかつが成り立つので
となる。これをの形に戻してについて解くと
がわかるが、
より(この不等式については(めんどくさいので)証明しない)
なのでそのようなは存在しない。つまりは優高度合成数ではない。
以上よりなのでとおくと
すなわち
を得る。
いま示したのはが優高度合成数であればとを用いて明示的に表せる、という話であったが、逆にとから作られたは優高度合成数となることが言える。
の定義より定理6証明内の不等式が成り立つことに注意する。
いま任意にを取りと(負の指数も認めて)素因数分解する。このときより
が成り立つ。この各因数について、が負のとき
となり、またが正のとき
となるのでこれらを掛け合わせることで
を得る。
またのとき、少なくともどれか一つはとなるので真の不等号が成り立つ。よっては優高度合成数である。
また別の表現として次のような公式が成り立つ。これは後の記事でも使われるように不等式や近似と相性のいい公式となっている。
を優高度合成数とし、実数列を方程式
によって定める。このとき
とおくと
が成り立つ。
素因数分解においてとなるようなの内、最大のものをとおく。このときであったことを思い出すと、
が成り立つ。
いま定理6の証明内のを思い出すとより
であって、またを思い出すとより
が成り立つ。つまりとおくとなのでなる実数が存在し、特には以下の素数で最大のものとなる。すなわち
が成り立つ。
またからなのでにおいてが成り立つ(補題3参照)。つまりにおいてが成り立つ。
以上より
を得る。
任意の自然数とに対して
が成り立つ。特にのとき、等号が成立する。
定理よりは優高度合成数となるので任意のに対して
を得る。また少なくとものとき、この等号は成立する。
以上です。では。
おまけ:の(優)高度合成数の性質
の(優)高度合成数に成り立つ性質およびその証明はの時とほとんど同じです。というかにおける諸不等式をに飛ばせば全く同じ議論ができるので証明については省略します。
が高度合成数であるときが成り立ち、特にのときが成り立つ。
が優高度合成数であるとき、
が成り立つ。逆に任意のに対して
で自然数を定めると、は優高度合成数となる。
を優高度合成数とし、実数列を
によって定める。このとき
が成り立つ。また任意の自然数とに対して
が成り立つ。特にのとき、等号が成立する。
おまけ:における優高度合成数についての色々な表
(の)優高度合成数を小さい順にと置いたとき、およびは次のように求まります。
また対応するの取り得る値の範囲をとおくとこれらは次のように求まります。
そしてにおいて対応する実数列やは次のように求まります。