この記事では、ライプニッツの公式
$$ \begin {aligned} \sum _{0\leq n}\frac {(-1)^{n}}{2n+1}&=\frac {\pi }4 \end {aligned} $$
を導出し、またより強い近似式を導きます。内容は簡単めです。余談ですが、この級数は僕が積分に興味を持つきっかけになった級数なので思い出深い(?)です。ちゃんと証明したのは最近ですが...()
まず、$X$についての恒等式
$$
\begin {aligned}
\frac {X^{2n}(1-X)}{1+X}&=\frac {X^{2n}(-(1+X)+2)}{1+X}\\
&=-X^{2n}+\frac {2X^{2n}}{1+X}\\
&=-X^{2n}+\frac {2}{1+X}-\frac {2(1-(-X)^{2n})}{1-(-X)}\\
&=-X^{2n}+\frac {2}{1+X}-2\sum _{k=0}^{2n-1}(-X)^k
\end {aligned}
$$
において、$X=x^2$とおくと
$$
\frac {x^{2n}(1-x^{2})}{1+x^{2}}=-x^{4n}+\frac {2}{1+x^{2}}-2\sum _{k=0}^{2n-1}(-1)^{k}x^{2k}
$$
となり、両辺を$x$で積分して
$$
\begin{aligned}
\int _0^1\frac {x^{2n}(1-x^{2})}{1+x^{2}}dx
&=-\int _{0}^{1}x^{4n}dx+\int _{0}^{1}\frac {2}{1+x^{2}}dx-2\sum _{k=0}^{2n-1}\int _{0}^{1}(-1)^{k}x^{2k}dx\\
&=-\frac {1}{4n+1}+\frac {\pi }2-2\sum _{k=0}^{2n-1}\frac {(-1)^{k}}{2k+1}\quad \cdots (*)
\end{aligned}
$$
を得ます。左辺は明らかに正で、
$$
\begin {aligned}
\quad (左辺)&<\int _{0}^{1}x^{2n}dx\\
&=\frac 1{2n+1}\to 0\quad (n\to \infty )
\end {aligned}
$$
ですから、$(*)$について$n \to \infty$の極限を考えることでライプニッツの公式
$$
\begin {aligned}
\sum _{0\leq n}\frac {(-1)^{n}}{2n+1}&=\frac {\pi }4
\end {aligned}
$$
を得ます。
ライプニッツの公式から、以下が分かります。
$$ \begin {aligned} \sum _{k=0}^{2n-1}\frac {(-1)^k}{2k+1}<\frac {\pi }4 <\sum _{k=0}^{2n}\frac {(-1)^k}{2k+1} \end {aligned} $$
しかし、これは精度があまり良くなく、例えば$n=1$とすると
$$
2.666\cdots<\pi<3.4666\cdots
$$
しか得られません。ここで、$(*)$の左辺が正であることに注目してみると、
$$
\begin {aligned}
\sum _{k=0}^{2n-1}\frac {(-1)^{k}}{2k+1}+\frac {1}{2(4n+1)}<\frac {\pi }4
\end {aligned}
$$
が得られます。また同様に$\frac{x^{2n+1}(1-x^2)}{1+x^2}$を積分することで
$$
\begin {aligned}
\sum _{k=0}^{2n}\frac {(-1)^{k}}{2k+1}-\frac {1}{2(4n+3)}>\frac {\pi }4
\end {aligned}
$$
も得られます。
つまりライプニッツ級数の$n$項目までの和と$n+1$項目までの和の平均値と、$\frac{\pi}4$との大小関係が交互に入れ替わる事を意味します。これは元のライプニッツ級数より収束が速く、例えば$n=1$とすれば
$$
3.066\cdots <\pi<3.180\cdots
$$
が得られます。
今回使った方法で、メルカトル級数($\sum_{0< n}\frac{(-1)^{n-1}}n=\ln 2$)についても同様の議論ができます(むしろライプニッツ級数よりも簡単)。しかしまだまだ収束は遅く、隣り合う項の平均値の平均値や、更にその平均値などに関する不等式の作り方を考えても面白そうです。最後まで読んでくださりありがとうございました。
追記
これ、一般的に絶対値が単調減少な交代級数で成り立ちますね...