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量子統計力学に出てくる特殊関数-その1 ガンマ関数の定義と諸性質

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本記事は、 統合ゼミのアドベントカレンダー4日目 の一部です。

量子統計力学に出てくる特殊関数-その1 ガンマ関数の定義と諸性質

さて、まずはじめはガンマ関数についてみていきたいと思います!

ガンマ関数の定義と階乗

まずは、ガンマ関数の定義です。

ガンマ関数

実部が正である複素数nに対して、定積分
Γ(n)=0ettn1 dt
は収束する。これを指数nの関数と見なしたとき、ガンマ関数と呼ぶ。

この定義式を部分積分すると、
Γ(n)=0ettn1 dt=0et(1ntn) dt=[et1ntn]0+1n0ettn dt=1nΓ(n+1)
となります。つまり、Γ(n+1)Γ(n)の間には次の関係があることがわかります。

Γ(n+1)=nΓ(n)

nが整数の時、これを繰り返し用いると、
Γ(n+1)=nΓ(n)=n(n1)Γ(n1)=n(n1)(n2)1×Γ(1)
となります。ここで、ガンマ関数の定義式においてn=1とすると、
Γ(1)=0ett11 dt=0et dt=[et]0=1
であるので、
Γ(n+1)=n(n1)(n1)1×1.
よって、Γ(n+1)は階乗の定義そのものになります。なんかごつい名前の関数と慣れ親しんだ階乗がこうして結びつくのは感動ものですね。

階乗の定義

Γ(n+1)=n!

また、ガンマ関数の定義式を用いると、階乗の積分表示を得ることができます。

階乗の積分表示

n!=Γ(n+1)=0ettn dt

半整数値を変数とするガンマ関数

次に半整数値を変数とするガンマ関数についてみていこうと思います!
はじめに、nが半整数値のときの【公式1】の初期値Γ(12)を計算してみましょう。
Γ(12)=0ett12 dt
積分変数をt=x2と変換すれば、この積分はガウス積分となります。
Γ(12)=0ex2x2(12)2x dx=20ex2 dx=ex2 dx=π
これと、【公式1】を繰り返し用いることで、nが半整数値のときのガンマ関数を次のように求めることができます。
Γ(32)=Γ(12+1)=12Γ(12)=12πΓ(52)=Γ(32+1)=32Γ(32)=3212πΓ(72)=Γ(52+1)=52Γ(52)=523212πΓ(92)=Γ(72+1)=72Γ(72)=72523212π
一般に、n=(2l+1)/2 (l=0,1,2,3,)のときは、
Γ(2l+12)=(2l1)!!2lπ
となります。ここで、{ }!!という記号は、2重階乗を表しており、整数mに対して、次のように定義されています。ただし、(1)!!1です。
m!!={m(m2)(m4)31m :奇数m(m2)(m4)42m :偶数
通常の階乗だけを用いて、一般の場合を表すことを考えます。2重階乗の定義式において、m=2lとすると、(2l)!!=2ll!と表すことができるので、これを用いると、
Γ(2l+12)=(2l1)!!2l(2l)!!2ll!π=(2l)!22ll!π
と表すことができました。

N次元球の体積と表面積

さて、ガンマ関数がよく出てくる例ってなんですかね?私が思うにN次元球の話だと思っています。
そこで、最後は半径rN次元球の体積VNと表面積SNを求めてみたいと思います!

体積VNは、どうせrNに比例することが予想されるので、比例定数をCNとすると、
VN=CNrN
と表すことができます。また、表面積SNはこれをrで微分することにより、
SN=dVNdr=CNNrN1
と表すことができます。

次はこのCNを計算すれば良いのですが。。。おやおや、何やら統合稲荷神社の方から御神託が聞こえて来ましたよ。

(^・ω・^)「N重ガウス積分を計算しなさい。さすれば道は自ずと開かれるであろう」

かわいいきつねさんが言うので間違いありません、とりあえずN重ガウス積分
IN=exp{(r12+r22+rN2)} dr1dr2drN
を計算していきたいと思います!まずは、直接積分してやりましょう。
被積分関数の指数関数はバラすことができるので、変数分離することができるので、
IN=exp(r12) dr1exp(r22) dr2exp(rN2) drN={exp(r2) dr}N=(Γ(12))N=πN/2
となります。別の方法として、N次元空間の極座標を導入して計算する方法があります。このとき、被積分関数はr2=r12+r22rN2で与えられるrのみの関数となります。角度変数に関する積分は、SN=dVNdr=CNNrN1を用いると、
IN=0exp(r2)SN dr=0exp(r2)CNNrN1 dr=CNN0exp(r2)rN1 dr
となります。ここで、積分変数をr2=tと変換すると、
IN=CNN0exp(r2)rN1 dr=CNN0exp(t)t(N2)/2dt2=CNN20exp(t)t(N2)/2dt=CNN2Γ(N2)
となります。これらの別々の方法によって得られた結果を等しいとおくと、
CNN2Γ(N2)=πN2
よって、求めたい比例定数は
CN=πN/2N2Γ(N2)=2πN/2NΓ(N2)=πN/2Γ(N2+1)
となります。(御神託のおかげだなあ(しみじみ)。)
よって、N次元球の体積VNと表面積SN

N次元球の体積と表面積

VN=πN/2Γ(N2+1)rN,SN=πN/2NΓ(N2+1)rN1

と表すことができます。

さて、ガンマ関数はまだまだ色々と性質がありますが今回はこの辺で終えておこうと思います。
それでは、次の記事に参りましょう!

投稿日:2021124
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