本記事は、 統合ゼミのアドベントカレンダー4日目 の一部です。
さて、まずはじめはガンマ関数についてみていきたいと思います!
まずは、ガンマ関数の定義です。
実部が正である複素数$n$に対して、定積分
\begin{align}
\Gamma(n)=\int_0^\infty e^{-t}t^{n-1}\ {\rm d}t
\end{align}
は収束する。これを指数$n$の関数と見なしたとき、ガンマ関数と呼ぶ。
この定義式を部分積分すると、
\begin{align}
\Gamma(n)
&=\int_0^\infty e^{-t}t^{n-1}\ {\rm d}t\cr
&=\int_0^\infty e^{-t}\left(\frac{1}{n}t^n \right)'\ {\rm d}t\cr
&=\left[e^{-t}\frac{1}{n}t^n\right]_0^\infty+\frac{1}{n}\int_0^\infty e^{-t}t^n\ {\rm d}t\cr
&=\frac{1}{n}\Gamma(n+1)
\end{align}
となります。つまり、$\Gamma(n+1)$と$\Gamma(n)$の間には次の関係があることがわかります。
\begin{align} \Gamma(n+1)=n\Gamma(n) \end{align}
$n$が整数の時、これを繰り返し用いると、
\begin{align}
\Gamma(n+1)&=n\Gamma(n)\\
&=n(n-1)\Gamma(n-1)\\
&\quad\vdots\\
&=n(n-1)(n-2)\cdots1\times\Gamma(1)
\end{align}
となります。ここで、ガンマ関数の定義式において$n=1$とすると、
\begin{align}
\Gamma(1)&=\int_0^\infty e^{-t}t^{1-1}\ {\rm d}t\cr
&=\int_0^\infty e^{-t}\ {\rm d}t\cr
&=-\left[e^{-t} \right]_0^\infty\\
&=1
\end{align}
であるので、
\begin{align}
\Gamma(n+1)=n(n-1)(n-1)\cdots1\times1.
\end{align}
よって、$\Gamma(n+1)$は階乗の定義そのものになります。なんかごつい名前の関数と慣れ親しんだ階乗がこうして結びつくのは感動ものですね。
\begin{align} \Gamma(n+1)=n! \end{align}
また、ガンマ関数の定義式を用いると、階乗の積分表示を得ることができます。
\begin{align} n!=\Gamma(n+1)=\int_0^\infty e^{-t}t^n\ {\rm d}t \end{align}
次に半整数値を変数とするガンマ関数についてみていこうと思います!
はじめに、$n$が半整数値のときの【公式1】の初期値$\Gamma(\frac{1}{2})$を計算してみましょう。
\begin{align}
\Gamma\left(\frac{1}{2} \right)=\int_0^\infty e^{-t}t^{-\frac{1}{2}}\ {\rm d}t
\end{align}
積分変数を$t=x^2$と変換すれば、この積分はガウス積分となります。
\begin{align}
\Gamma\left(\frac{1}{2} \right)
&=\int_0^\infty e^{-x^2}x^{2(-\frac{1}{2})}\cdot 2x\ {\rm d}x\cr
&=2\int_0^\infty e^{-x^2}\ {\rm d}x\cr
&=\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2}\ {\rm d}x\cr
&=\sqrt{\pi}
\end{align}
これと、【公式1】を繰り返し用いることで、$n$が半整数値のときのガンマ関数を次のように求めることができます。
\begin{align}
\Gamma\left(\frac{3}{2} \right)&=\Gamma\left(\frac{1}{2}+1 \right)=\frac{1}{2}\Gamma\left(\frac{1}{2} \right)=\frac{1}{2}\sqrt{\pi}\\
\Gamma\left(\frac{5}{2} \right)&=\Gamma\left(\frac{3}{2}+1 \right)=\frac{3}{2}\Gamma\left(\frac{3}{2} \right)=\frac{3}{2}\frac{1}{2}\sqrt{\pi}\\
\Gamma\left(\frac{7}{2} \right)&=\Gamma\left(\frac{5}{2}+1\right)=\frac{5}{2}\Gamma\left(\frac{5}{2}\right)=\frac{5}{2}\frac{3}{2}\frac{1}{2}\sqrt{\pi}\\
\Gamma\left(\frac{9}{2} \right)&=\Gamma\left(\frac{7}{2}+1 \right)=\frac{7}{2}\Gamma\left(\frac{7}{2} \right)=\frac{7}{2}\frac{5}{2}\frac{3}{2}\frac{1}{2}\sqrt{\pi}\\
&\vdots\nonumber
\end{align}
一般に、$n=(2l+1)/2\ (l=0,1,2,3,\cdots)$のときは、
\begin{align}
\Gamma\left( \frac{2l+1}{2}\right)&=\frac{(2l-1)!!}{2^l}\sqrt{\pi}
\end{align}
となります。ここで、$\{\ \}!!$という記号は、2重階乗を表しており、整数$m$に対して、次のように定義されています。ただし、$(-1)!!\equiv1$です。
\begin{align}
m!!=
\begin{cases}
m(m-2)(m-4)\cdots 3 \cdot 1 & m\ \text{:奇数}\\
m(m-2)(m-4)\cdots 4 \cdot 2 & m\ \text{:偶数}\\
\end{cases}
\end{align}
通常の階乗だけを用いて、一般の場合を表すことを考えます。2重階乗の定義式において、$m=2l$とすると、$(2l)!!=2^ll!$と表すことができるので、これを用いると、
\begin{align}
\Gamma\left(\frac{2l+1}{2} \right)
&=\frac{(2l-1)!!}{2^l}\frac{(2l)!!}{2^ll!}\sqrt{\pi}\cr
&=\frac{(2l)!}{2^{2l}l!}\sqrt{\pi}
\end{align}
と表すことができました。
さて、ガンマ関数がよく出てくる例ってなんですかね?私が思うに$N$次元球の話だと思っています。
そこで、最後は半径$r$の$N$次元球の体積$V_N$と表面積$S_N$を求めてみたいと思います!
体積$V_N$は、どうせ$r^N$に比例することが予想されるので、比例定数を$C_N$とすると、
\begin{align}
V_N=C_Nr^N
\end{align}
と表すことができます。また、表面積$S_N$はこれを$r$で微分することにより、
\begin{align}
S_N=\frac{{\rm d}V_N}{{\rm d}r}=C_NNr^{N-1}
\end{align}
と表すことができます。
次はこの$C_N$を計算すれば良いのですが。。。おやおや、何やら統合稲荷神社の方から御神託が聞こえて来ましたよ。
(^・ω・^)「$N$重ガウス積分を計算しなさい。さすれば道は自ずと開かれるであろう」
かわいいきつねさんが言うので間違いありません、とりあえず$N$重ガウス積分
\begin{align}
I_N=\int_{-\infty}^\infty\int_{-\infty}^\infty\cdots\int_{-\infty}^\infty\exp\{-(r_1^2+r_2^2+\cdots r_N^2)\}\ {\rm d}r_1{\rm d}r_2\cdots{\rm d}r_N
\end{align}
を計算していきたいと思います!まずは、直接積分してやりましょう。
被積分関数の指数関数はバラすことができるので、変数分離することができるので、
\begin{align}
I_N
&=\int_{-\infty}^\infty\exp(-r_1^2)\ {\rm d}r_1\int_{-\infty}^\infty\exp(-r_2^2)\ {\rm d}r_2\cdots\int_{-\infty}^\infty\exp(-r_N^2)\ {\rm d}r_N\\
&=\left\{\int_{-\infty}^\infty\exp(-r^2)\ {\rm d}r\right\}^N\\
&=\left(\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)\right)^N\\
&=\pi^{N/2}
\end{align}
となります。別の方法として、$N$次元空間の極座標を導入して計算する方法があります。このとき、被積分関数は$r^2=r_1^2+r_2^2\cdots r_N^2$で与えられる$r$のみの関数となります。角度変数に関する積分は、$S_N=\frac{{\rm d}V_N}{{\rm d}r}=C_NNr^{N-1}$を用いると、
\begin{align}
I_N&=\int_0^\infty\exp(-r^2)S_N\ {\rm d}r\\
&=\int_0^\infty\exp(-r^2)C_NNr^{N-1}\ {\rm d}r\\
&=C_NN\int_0^\infty\exp(-r^2)r^{N-1}\ {\rm d}r
\end{align}
となります。ここで、積分変数を$r^2=t$と変換すると、
\begin{align}
I_N
&=C_NN \int_0^\infty\exp(-r^2)r^{N-1}\ {\rm d}r\\
&=C_NN\int_0^\infty \exp(-t)t^{(N-2)/2}\frac{{\rm d}t}{2}\\
&=C_N\frac{N}{2}\int_0^\infty \exp(-t)t^{(N-2)/2}{\rm d}t\\
&=C_N\frac{N}{2}\Gamma\left(\frac{N}{2}\right)
\end{align}
となります。これらの別々の方法によって得られた結果を等しいとおくと、
\begin{align}
C_N\frac{N}{2}\Gamma\left(\frac{N}{2}\right)=\pi^{N-2}
\end{align}
よって、求めたい比例定数は
\begin{align}
C_N=\frac{\pi^{N/2}}{\frac{N}{2}\Gamma\left(\frac{N}{2}\right)}=\frac{2\pi^{N/2}}{N\Gamma\left(\frac{N}{2}\right)}
=\frac{\pi^{N/2}}{\Gamma\left(\frac{N}{2}+1\right)}
\end{align}
となります。(御神託のおかげだなあ(しみじみ)。)
よって、$N$次元球の体積$V_N$と表面積$S_N$は
\begin{align} V_N&=\frac{\pi^{N/2}}{\Gamma\left(\frac{N}{2}+1\right)}r^N,\\ S_N&=\frac{\pi^{N/2}N}{\Gamma\left(\frac{N}{2}+1\right)}r^{N-1} \end{align}
と表すことができます。
さて、ガンマ関数はまだまだ色々と性質がありますが今回はこの辺で終えておこうと思います。
それでは、次の記事に参りましょう!