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量子統計力学に出てくる特殊関数-その2 ゼータ関数の定義と諸性質

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$$\newcommand{dv}[3]{\frac{{\rm d}^{#1}{#2}}{{\rm d}{#3}^{#1}}} \newcommand{pdv}[3]{\frac{\partial^{#1}{#2}}{\partial{#3}^{#1}}} $$

本記事は、 統合ゼミのアドベントカレンダー4日目 の一部です。

量子統計力学に出てくる特殊関数-その2 ゼータ関数の定義と諸性質

今回は、ゼータ関数についてみていきたいと思います。
途中で積分と総和をえいやと入れ替える作業があるのですが、今回は問題ないとしてみていきたいと思います。(ごめんなさい)

ゼータ関数定義とよく知られた値

まずは、ゼータ関数の定義です。

ゼータ関数

無限級数
\begin{align}
\zeta(s)=\sum_{k=1}^\infty\frac{1}{k^s}
\end{align}
は、$s>1$である限り、収束し、これを指数$s$の関数と見なした時、Riemannのゼータ関数と呼ぶ。

よく知られている・使われているゼータ関数はこんなものがあります。
\begin{align} &\zeta(0)=-\frac{1}{2},\\ &\zeta\left(\frac{3}{2} \right)\approx2.612,\\ &\zeta(2)=\frac{\pi^2}{6}\approx1.645,\\ &\zeta\left(\frac{5}{2} \right)\approx1.342,\\ &\zeta(3)=\frac{\pi^3}{25.79436\cdots}\approx1.202,\\ &\zeta(4)=\frac{\pi^4}{90}\approx1.082,\\ &\zeta(5)=\frac{\pi^5}{295.12\cdots}\approx1.037,\\ &\zeta(6)=\frac{\pi^6}{945}\approx1.017,\\ \end{align}
複素積分とかをすると出てくるので興味がある方は計算してみたらいいのではないでしょうか?

一般に、$s=2l\ (l=1,2,3,\cdots)$のときは、
\begin{align} \zeta(2l)=\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{2^{2l}}=\frac{(2\pi)^{2l}}{2(2l)!}B_{2l} \end{align}
のように表せます。ここで、$B_{2l}$
\begin{align} \frac{z}{e^z-1}+\frac{z}{2}&=\left(\frac{z}{2} \right)\frac{e^z+1}{e^z-1}=\left(\frac{z}{2} \right)\frac{e^{\frac{z}{2}+e^{-\frac{z}{2}}}}{e^{\frac{z}{2}}-e^{-\frac{z}{2}}}\cr &=\left(\frac{z}{2} \right)\frac{\cosh(\frac{z}{2})}{\sinh(\frac{z}{2})}=\frac{z}{2}\coth(\frac{z}{2}) \end{align}
で与えられる関数を、$z$の偶数冪乗に
\begin{align} \frac{z}{2}\coth(\frac{z}{2})=\sum_{l=0}^\infty\frac{B_{2l}}{(2l)!}z^{2l} \end{align}
と展開したときの展開係数であり、Bernoulli数と呼ばれるらしいです。

ガンマ関数とゼータ関数の関係

$\zeta$関数と$\Gamma$関数の関係式を得るために、まずは、ガンマ関数の定義式を変形していきましょう!積分変数を$t=nx$と変換すると、
\begin{align} \Gamma(s) &=\int_0^\infty t^{s-1}e^{-t}\cdot n{\rm d}x\\ &=\int_0^\infty (nx)^{s-1}e^{-nx}\cdot n{\rm d}x\\ &=\int_0^\infty n^sx^{s-1}e^{-nx}{\rm d}x\\ &=n^s\int_0^\infty x^{s-1}e^{-nx}{\rm d}x\\ \end{align}
よって、
\begin{align} \therefore\frac{1}{n^s}=\frac{1}{\Gamma(s)}\int_0^\infty x^{s-1}e^{-nx} \end{align}
となります。これをゼータ関数の定義式に代入すると、
\begin{align} \zeta(s)&=\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^s}=\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{\Gamma(s)}\int_0^\infty x^{s-1}e^{-nx}\ {\rm d}x\cr &=\frac{1}{\Gamma(s)}\int_0^\infty x^{s-1}\sum_{n=1}^\infty e^{-nx}\ {\rm d}x \end{align}
となりました。ここで、かわいいきつね神様の力によって総和$\sum$と積分$\int$を入れ替えました。
ここで、被積分関数の$\sum_{n=1}^\infty e^{-nx}$は、
\begin{align} \sum_{n=1}^\infty e^{-nx}=\frac{1}{e^x-1} \end{align}
となるので、これを元の式に代入すると、ゼータ関数の積分表示を得ることができます。

ゼータ関数の積分表示

\begin{align} \zeta(s)=\frac{1}{\Gamma(s)}\int_0^\infty \frac{x^{s-1}}{e^x-1}\ {\rm d}x \end{align}

同様に、$\Gamma(s+1)$を変数変換して整理します。\begin{align} \Gamma(s+1)&=\int_0^\infty (nx)^se^{-nx}\cdot n\ {\rm d}x\cr &=n^{s+1}\int_0^\infty x^se^{-nx}\ {\rm d}x \end{align}
変形して、
\begin{align} \frac{1}{n^s}=\frac{1}{\Gamma(s+1)}\int_0^\infty x^s ne^{-nx}\ {\rm d}x \end{align}
となります。これをゼータ関数の定義式に代入すると、
\begin{align} \zeta(s)=\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^s} =\frac{1}{\Gamma(s+1)}\int_0^\infty x^s \underbrace{\sum_{n=1}^\infty ne^{-nx}}_{\equiv S_n}\ {\rm d}x \end{align}
ここで、被積分関数の$\sum_{n=1}^\infty ne^{-nx}$
\begin{align} S_n&\equiv\sum_{n=1}^\infty ne^{-nx}\cr &=1\cdot e^{-x}+2\cdot e^{-2x}+3\cdot e^{-3x}+4\cdot e^{-4x}+\cdots \end{align}
について考えることにします。$S_n$$e^x$をかけたものは
\begin{align} e^xS_n =1+2\cdot e^{-x}+3\cdot e^{-2x}+4\cdot e^{-3x}+5\cdot e^{-4x}+\cdots \end{align}
となります。この2式の差は、次のように計算することができます。
\begin{align*} \begin{array}{llllllllll} &e^xS_n&=&1&+2\cdot e^{-x}&+3\cdot e^{-2x}&+4\cdot e^{-3x}&+5\cdot e^{-4x}&+\cdots\\ -\big{)} &S_n&=&0&+1\cdot e^{-x}&+2\cdot e^{-2x}&+3\cdot e^{-3x}&+4\cdot e^{-4x}&+\cdots\\ \hline &(e^x-1)S_n&=&1&+e^{-x}&+e^{-2x}&+e^{-3x}&+e^{-4x}&+\cdots\\ & &=&1&+{\displaystyle \sum_{n=1}^\infty e^{-nx}}\\ & &=&1&+{\displaystyle \frac{1}{e^x-1}} \end{array} \end{align*}
よって、$S_n$は、
\begin{align} S_n=\frac{1}{e^x-1}+\frac{1}{(e^x-1)^2}=\frac{e^x}{(e^x-1)^2} \end{align}
となります。これを元の式に代入すると、$\zeta(s)$$\Gamma(s+1)$の関係式は、
\begin{align} \zeta(s)=\frac{1}{\Gamma(s+1)}\int_0^\infty \frac{x^se^x}{(e^x-1)^2}\ {\rm d}x \end{align}
と表すことができます。
さて、ここでわかったこととして、よくわからない定積分
\begin{align} \int_0^\infty \frac{x^{s-1}}{e^x-1}\ {\rm d}x \end{align}
がガンマ関数とゼータ関数の積で表すことができるということです!

ガンマ関数は、階乗の形で表すことができましたし、ゼータ関数はいくつかもう値が知られていることを考えるとこの定積分があっという間に計算できちゃいます!やったね!
例)$s=4$
\begin{align} \int_0^\infty\frac{x}{e^x-1} &=\zeta(4)\Gamma(4)\\ &=\frac{\pi^4}{90}\Gamma(3+1)\\ &=\frac{\pi^4}{90}\cdot3!\\ &=\frac{\pi^4}{15} \end{align}
脳死で計算できましたね!やったぜ!
実際、Bose-Einsetein凝縮などの計算の際にめちくちゃ出てきますね。

さて、ゼータ関数はまだまだ色々と性質がるらしいですが、今回はこの辺で終えておこうと思います。

本当は、Appell関数とかボースアインシュタイン積分とかみたりしたかったのですが、少し時間がなかったので今回のアドカレ用の記事としては終わろうと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

他のアドカレの記事も宜しくお願いします!
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投稿日:2021124
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