$x$の2次方程式$x^2+px+q=0$が、偏角が$\theta$である虚数解を持つような実定数$p,q$に対して次が成り立ちます。
$\frac{\theta}{\pi}$が0でない有理数のとき、以下の2条件は同値である。
1.$a_{n+2}+pa_{n+1}+qa_n=0\cdots ①$を満たす(0でない項を持つ)周期実数列$\{a_n\}$が存在する。
2.$q=1$である。
これを示していきます。
ここでは、ある自然数$k$が存在して、任意の自然数$n$に対して、$a_{n+k}=a_n$となる数列$\{a_n\}$を周期数列と呼ぶことにします。
$x^2+px+q=0$の解は虚数であるので、$x=re^{\pm i\theta} (r>0)$というふうに置くことができます。(このとき、$r$は解の絶対値になります。)
すると、次が成り立ちます。
①を満たす全ての数列$\{a_n\}$の一般項は
$$ a_n=r^n\{A\cos (n\theta)+B\sin (n\theta)\}$$
と表せる。
ただし、$A,B$は任意の実定数とする。
①は隣接3項間漸化式であるのでその特性方程式$x^2+px+q=0$の解を$α,β(α\neq β)$とおくと、$\{a_n\}$の一般項は$a_n=C_1 α^n-C_2 β^n(C_1=\frac{a_1-βa_0}{α-β},C_2=\frac{a_1-αa_0}{α-β})$と表せます。(このことの証明は省略させていただきます。)
今回の話においては解は虚数であるので$α\neq β$であり、$α=re^{i\theta},β=re^{-i\theta}$(逆でもよい)であるから、
$$ a_n=C_1(re^{i\theta})^n-C_2(re^{-
i\theta})^n\\ a_n=r^n(C_1e^{in\theta}-C_2e^{-in\theta})$$ $$a_n=r^n\{C_1(\cos(n\theta)+i\sin(n\theta))-C_2(\cos(n\theta)-i\sin(n\theta))\}$$
$$ a_n=r^n\{(C_1-C_2)\cos(n\theta)+i(C_1+C_2)\sin(n\theta)\}$$
ここで、$C_1-C_2=a_0,$$i(C_1+C_2)=\frac{i(2a_1-(α+β)a_0)}{α-β}=\frac{i(2a_1+pa_0)}{α-β}$
$α,β$は共役複素数だから、これらは実数。それぞれ$A,B$とおくと、$$ a_n=r^n\{A\cos(n\theta)+B\sin(n\theta)\}$$
実数$a_0,a_1$のとり方によって$A,B$も任意の実数値をとる。
次に、求めた一般項を使って周期数列になるための条件を求めます。
$\{a_n\}$は実数列とする。
$\frac{\theta}{\pi}$が0でない有理数のとき、ある実定数$A,B$が存在して、$$
a_n=r^n\{A\cos(n\theta)+B\sin(n\theta)\}$$
が(0でない項をもつ)周期数列となるための必要十分条件は、$r=1$である。
$b_n=\frac{a_n}{r^n}$とおくと、$b_n=A\cos(n\theta)+B\sin(n\theta)$である。
$\frac{\theta}{\pi}$は有理数なので、それを$\frac{a}{b}(a,bは互いに素な整数)$とおくと、
$$ (n+2b)\frac{a}{b}\pi=\frac{na}{b}\pi+2a\pi$$
であるから、$$b_{n+2b}=b_n\cdots ②$$
よって数列$\{b_n\}$は周期数列である。
ここで、$$ N(k)=\{2kb+n\mid n=0,1,2,\cdots ,2b-1\}(k\in \mathbb{Z}_{\geq0})$$とおき、
$$ m(k)=\max_{n\in N(k)} | a_n |$$とおく。
②より、$$m(k+l)=r^{2bl} m(k)$$であるから、
$r>1$のとき、$$ \lim_{l \to \infty}m(k+l)=\infty$$となり、$\{a_n\}$は周期数列にならない。
$r<1$のとき、$$ \lim_{l \to \infty}m(k+l)=0$$となるが、
$\{a_n\}$は0でない項をもつので、この場合も$\{a_n\}$は周期数列にならない。
ゆえに、$\{a_n\}$が周期数列ならば、$r=1$である。
逆に、$r=1$とすると$a_n=b_n$であるので、$\{a_n\}$は周期数列である。
2次方程式の虚数解について、次が成り立ちます。
$x$の2次方程式$x^2+ax+b=0$($a,b$は実定数)$\cdots ③$が虚数解を持つとき、その虚数解の絶対値は$\sqrt b$である。
③を解くと、
$$ x=-\frac{a}{2}\pm \sqrt{\frac{a^2}{4}-b}$$
③は虚数解を持つので、判別式$a^2-4b$は負であるから、
$$ x=-\frac{a}{2}\pm \sqrt{b-\frac{a^2}{4}}i$$
これの絶対値は、
$$ |x|=\sqrt{(-\frac{a}{2})^2+b-\frac{a^2}{4}}=\sqrt b$$
補題4より、$r=\sqrt q$です。(虚数解を持つから常に$q>0$)
補題3より、$r=1$であるので、$\sqrt q=1$、すなわち$q=1$です。これで定理1が示されました。
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